死後事務委任契約とは?かかる費用は?相続発生後の面倒な事務手続きを代行

その他
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

 

1.死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の事務的な手続きを誰かに委任するための契約です。
詳しくは後述しますが、人が亡くなると、年金、保険、税金など、さまざまな役所関係の事務手続きが発生します。
一般的には遺族がこれらの手続きを行いますが、家族や親族がいない場合や、面倒な手続きで負担をかけたくない場合などは第三者に依頼しておかなければなりません。
そのための契約が、死後事務委任契約となります。
契約は誰とでも結ぶことができる
死後事務委任契約は、家族や親族としか結べない、という訳ではなく誰とでも結べます。
親しい友人やヘルパーさんなどでもかまいません。また、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に依頼することもできます。
お互いの合意があれば口約束でもいいのですが、あとから契約を反故にされないためにも、契約書という形で残しておくのが望ましいでしょう。
書面に残す場合は、自分の意思で契約したことを示すためにも、公正証書を作成することをおすすめします。
死後事務委任契約のポイント
● 死後に発生する事務手続きを任せられる契約
● 契約なので、遺言書と違い強制力がある
● 誰とでも契約できる(友人・知人、行政書士等の専門家)
● 口頭でも契約できるが、できる限り公正証書などの書面で残しておく

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2.死後事務の内容について

死後、発生する事務手続きは、役所への各種手続きをはじめ、未払い金の支払い、葬儀、解約手続きなどがあります。
具体的には次のような手続きが発生します。
● 役所への届出
● 家族や親族、友人への連絡
● 退職手続き
● 葬儀や埋葬に関する手続き
● 未払いの医療費の精算
● 家賃、管理費、敷金、保証金の支払い
● 未納分の税金の納付手続き
● 健康保険証や運転免許証などの返納
● 遺品の整理
● 賃借建造物の明け渡しなど、住居の処分に関する手続き
● 永代供養に関する手続き
● 電話やインターネット、クレジットカードなど、各種サービスの解約
● SNSのアカウント削除など
死後事務委任契約を結ぶと、これら全ての手続きを受任者に任せられます。
委任者は、支払いや解約の項目を生前に明確にしておき、もれなく手続きができるように準備しておくとよいでしょう。

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3.死後事務委任契約に必要な書類

1章でも解説したように、死後事務委任契約は口頭でも結べます。
が、契約を確かなものにするためには、やはり公正証書などの書面に残しておいた方がよいでしょう。
また、行政書士などの専門家に依頼すると、必ず公正証書を作成することになります。
公正証書を作成するためには、以下のいずれかの書類が必要になります。
● 運転免許証と認印
● 印鑑登録証明書と実印
● 住民基本台帳カード、もしくはマイナンバーカードと認印
印鑑登録証明書は、自分の住民票のある役所で手数料300円で入手できます。
住民基本台帳カードは、すでに持っている場合そのまま使えますが、新たに作る場合はマイナンバーカードになります。
マイナンバーカードを作るには、住民票のある役所に申請します。申請から入手までに約2週間かかり、受け取り時には500円の手数料がかかります。

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4.死後事務委任契約にかかる費用

死後事務を専門家に依頼した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここでは、行政書士に依頼したときの大まかな費用について解説します。
費用は大きく、契約時にかかるもの契約後にかかるものとに分けられます。
契約時に発生するのは、公正証書作成費や、死後事務を行うのに必要な費用です。死後事務にかかる費用は概算し、預託金という形で支払っておくことになります。
契約後に発生するのは、「見守りサービス」などと呼ばれるサービスに関する費用です。これは、依頼人の安否などを定期的に確認するサービスで、死後事務委任契約とセットで提供している事務所も少なくありません。
細かいサービス内容や費用は行政書士によって異なります。
実際に依頼する場合は、複数の事務所を比較検討するなどして納得できるものを選びましょう。

契約時にかかる費用

書類作成費

  • およそ10万円

公正証書を作成する場合、まず、公証役場への手数料として1万1,000円、公正証書の正本と謄本(写し)の発行費用として数千円かかります。
これに加えて、行政書士への報酬として8万円~10万円程度が必要になります。

契約費用

  • 150万円~300万円

行政書士に死後事務を依頼する場合は、契約時に預託金として150万~300万円程度の費用を預けます。この金額は契約内容によって大きく変動します。
たとえば、盛大な葬儀を行う場合は費用がかさみますし、解約や支払いの数が少なければ安く抑えられます。具体的には、次のような費用がかかります。
● 死亡直後の緊急対応:およそ15万円
● 葬儀・火葬の手続き:およそ10万円
● 埋葬・散骨の手続き:およそ10万円
● 未払い金の精算やサービスの解約:およそ2万円(1件当たり)
● 健康保険証などの返納:およそ1万円(1件当たり)
● 遺品整理:およそ5万円
● 不動産の解約や引き渡しなど:およそ5万円(1件当たり)
● 関係者への連絡:およそ1,000円(1件あたり)
死後事務を終えて預託金が余った場合は、相続財産に持ち戻されます。
また、友人や知人などに依頼する場合には、30万円~50万円が預託金の相場といわれています。
この場合も、契約時に受任者に渡しておくことになります。ただし、受任者がいらないといった場合は支払う必要はありません。

契約後にかかる費用

安否確認サービス料

  • およそ1万円/月

電話で月に1、2回、安否確認をしてくれるサービスです。電話の回数にもよりますが、毎月1万円ほどかかります。

緊急時の訪問サービス料

  • およそ1万円/回

安否確認ができなかった場合など、緊急時に自宅まできてくれるサービスです。サービスを利用した場合のみ、費用が発生します。
一回当たりで費用を設定しているところもありますが、一時間あたり3,000円など、時間当たりで設定しているところもあります。
さらに、緊急事態を知らせるセンサーなどを設置するケースもあり、その場合は設置工事費として1万5,000円~2万円程度の初期費用が発生します。
また、緊急事態によって自宅から遠く離れた場所に行かなければならない場合には、追加料金が発生することがあります。

定期訪問サービス料

  • 5,000円~2万円/月

担当者が定期的に自宅を訪問してくれるサービスです。
訪問回数や頻度はある程度自由に決められますが、上限回数が月に1回だったり月に3回だったりと、事務所によって大きく異なります。
基本的には、訪問回数が多くなるほど料金も高くなります。

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5.成年後見契約との違い

死後事務委任契約と似た制度に成年後見契約があります。
成年後見契約は、認知症など、精神上の障害によって判断力が衰えたときに、自分の代わりに財産の管理などを行ってもらう契約です。
判断力の有無によって、2種類に分けられます。
① 任意後見制度:判断力があるうちに後見人を選び、契約する制度
② 法定後見制度:判断力が衰えた後、裁判所が後見人を指名する制度
こちらの記事でも紹介しているように、生前対策としては、早い段階で「任意後見制度」を利用し、いざというときに備えておくことが大切になります。
死後事務委任契約との大きな違いは、後見人制度は、被後見人が生きている間だけその役割を担うということです。
被後見人が不利益を被らないようにサポートする立場なので、サポートする対象が亡くなると同時に後見人としての役割は終了します。
もし後見人に死後事務も任せたいという場合には、成年後見契約とは別に、死後事務委任契約を結ぶ必要があるのです。

死後事務委任契約 成年後見契約
契約開始 委任者の死亡時 被後見人の判断力が充分でないと判断されたとき
契約終了 死後事務終了時 被後見人の死亡時
契約方法 規定なし 公正証書に限る
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まとめ

死後事務委任契約は、自分の死後発生するさまざまな手続きを任せられる契約です。
「自分の死んだあとは関係ない」と考える人もいるかも知れませんが、放っておくと、死後、友人やヘルパーなど、お世話になった人に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
孤独死の後、長い間気付いてもらえなかったというニュースも聞かれますが、死後事務委任契約によって、こうした事態を避けることもできます。
死後のことをあれこれ気にかけず安心して老後を過ごすためにも、死後事務委任契約は有効な手段なのです。

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