【2024】内縁者の相続はどうなる?内縁の妻・夫が相続できる唯一のものとは

内縁者の相続法定相続
この記事を監修した専門家は、
増田考邦
税理士
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科修了(理学修士)2015年 税理士事務所開。税理士法人LRパートナーズ等で法人部門に勤務。専門分野は相続税・法人保険・創業支援・法人保険等。

近年、結婚に関する意識が大きく変わり、婚姻届を出して法律的に認められた夫婦から、同棲、事実婚などの内縁関係の夫婦などさまざまな関係があります。

では、相続に関して、婚姻届を出した夫婦と未提出の内縁関係の夫婦との間で、差はあるのでしょうか?今回は、特に内縁関係の妻(夫)の相続上の問題や、内縁のパートナーが相続で財産を受け取る方法などについて解説します。

内縁とは

内縁とは法律上の用語ではなく、明確な定義があるわけではありません。一般的には、婚姻届を出さないまま夫婦同然の生活をしている関係を指すことが多いでしょう。

婚姻届けを出さない理由は、法律上の婚姻に魅力を感じていていないためである場合もあれば、たとえば夫婦別姓を望んでいたり、同性間での婚姻を望んでいたりするにもかかわらず法制度が追い付いていないためであったりとさまざまです。

内縁関係と愛人関係との違い

愛人関係とは一般的に、その一方または双方にその相手とは別の婚姻関係にあるパートナーがいる状態で、相思相愛となっている状態を指します。

愛人関係は原則として、法律上の保護を一切受けることができません。むしろ、安定的な婚姻関係を脅かす存在であるとして、婚姻関係にあるパートナーから慰謝料を請求される可能性さえあるでしょう。

一方、内縁関係は単に婚姻届を提出していないのみであり、その他の実態は婚姻届を出した法律上の夫婦と何ら変わりはありません。そのため、法律上の夫婦と比べたら限定されているものの、法律上の保護を一定範囲で受けることが可能です。

内縁相手に認められている主な権利

婚姻届を出していない内縁関係であっても、次の権利は認められる可能性が高いでしょう。

ただし、戸籍謄本で婚姻関係の証明ができる法律上の夫婦とは異なり、内縁関係を客観的に証明することは困難です。仮に、単にいま一緒に暮らしている(住民票上の住所が一緒である)というだけでさまざまな制度の利用が認められてしまえば、脱法的な行為が頻発してしまいかねません。

そのため、制度ごとに内縁関係であることのさまざまな証明が求められ煩雑である他、内縁期間が短い場合には認められない可能性もゼロではないでしょう。

遺族年金など年金に関する権利

遺族年金をはじめとする年金に関する権利は、内縁関係であっても認められます。ただし、遺族年金の給付には要件がありますので、パートナーが亡くなった際には最寄りの年金事務所などへご相談ください。

死亡退職金を受け取る権利

勤務先の企業などから死亡退職金を受け取る権利は、内縁関係であっても認められる可能性が高いといえます。ただし、会社の就業規則や退職金給付規定などによって異なる場合がありますので、勤務先企業へ確認しておくと良いでしょう。

内縁解消時の慰謝料や財産分与

内縁解消時の慰謝料や財産分与などは、内縁関係であっても認められます。内縁関係であるからといって、いつでも一方的に解消できるわけではありません。

健康保険などの扶養へ入れること

内縁のパートナーであっても、健康保険や国民健康保険の扶養へ入れることは可能です。保険の扶養としておくことで、他の場面においても内縁関係を証明しやすくなるでしょう。

内縁相手に認められていない主な権利

次の権利は法律上の夫婦にはあるものの、内縁関係である場合には原則として認められません。税務と相続においては、内縁関係に対して厳しいスタンスであるようです。

相続を受ける権利や相続人としての権利

後ほど改めて解説しますが、内縁の配偶者には相続の権利はありません。また、遺留分(遺言などで自分の取り分が少なかった際に、財産を多くもらった相手へ一定額を請求できる権利)など相続人の立場を前提とした権利も認められていませんので、内縁のパートナーへ相続で財産を渡したい場合には、事前の対策が必要となります。

税務上の扶養へ入れること

内縁の配偶者は健康保険の扶養には入れられる一方で、税務上の扶養に入れることは認められていません。税務上は、内縁関係に対して厳しいスタンスであるといえるでしょう。

居住用不動産贈与時の配偶者控除など税制上の特例措置

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産などの贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。

税務上ではこの制度のように配偶者が優遇される制度がいくつか存在しますが、内縁関係であれば、これらの制度の適用を受けることはできません。

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内縁の妻・夫に相続権はある?

内縁の妻や夫に、相続の権利は一切ありません。つまり、何ら対策をすることのないままパートナーが亡くなってしまえば、相手の預貯金も相手名義である家や土地も、原則として一切引き継ぐことができないということです。

後ほど解説するように、「特別縁故者」という制度がありますが、これは相手に子や孫、親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪といった相続人となり得る親族が誰一人いない場合(もしくは全員が相続放棄をした場合)に初めて登場する概念です。

なお、たとえ疎遠となっていても、そのことのみを理由に相続人から除外されるわけではありません。相続人が誰もいないケースはさほど多くはないかと思いますので、内縁のパートナーの生活を守るためには、生前に遺言書を書くなどの対策が必須であるといえます。

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内縁の妻(夫)が相続できる唯一のもの

唯一、内縁関係の場合でも相続を認められているものがあります。それは、賃借権(ちんしゃくけん)です。賃借権とは、賃貸借契約に基づき、賃借人が契約の目的物を使用する権利のことです。

ケーススタディ

男性が内縁の妻と暮らすためにアパートを借りていました。この場合、夫が亡くなった場合、アパートの賃借権はどうなるのでしょうか?

答えは、夫が亡くなっても内縁の妻はそのアパートに住み続けることができます。これは「たとえ内縁の妻であっても、一緒に暮らしていた場所を奪うことはできない」という観点に立っています。

逆にいうと、もし夫に内縁の妻が居て、アパートを借りて居た場合、結婚の妻であっても相続することはできないため注意が必要です。

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内縁者が相続財産を受け取れる方法

内縁関係の妻には、相続権はないと、何度も書いてきました。しかし、内縁関係であっても、(賃借権だけでなく)特別に相続を受けられる場合があります。

その方法は2種類で

  1. 特別縁故者(とくべつえんこしゃ)になる場合
  2. 遺言書で相続を受け取るよう書いていた場合

です。

①特別縁故者になる

特別縁故者とは

特別縁故者とはどういう人のことでしょうか?

これは、相続人以外で、被相続人と生計を共にしており、被相続人の看護を献身的に行ったなど、被相続人と特別の縁故があった人のことです。

特別縁故者になると、内縁の妻(夫)であっても「被相続人の法定相続人が一人もいない場合に限り」相続財産を受け取ることができます。

法定相続人が一人もいない場合、つまり「相続人不存在の状態」とは、法定相続人すべてが死亡した場合、または法定相続人全員が相続放棄をした場合を指します。

家庭裁判所での申し立てが必要

気を付けなければならないのが、特別縁故者になるためには、家庭裁判所に特別縁故者の申し立てをする必要があるということです。

申し立ての時期としては、一般的に10か月以上かかるといわれている相続人不存在が確定してからがいいでしょう。

しかし、家庭裁判所に申し立てを行ったとしても、必ずしも特別縁故者として認められるわけではありませんのでご注意下さい。

手続きについて

相続人不存在が確認され、家庭裁判所に特別縁故者の申し立てを行い、それが認められた場合、相続税の手続きをする必要があります。

特別縁故者だからと言って、通常の相続税申告と異なる特別な手続きがいる訳ではありませんが、下記の2点は、ご留意ください。

  1. 相続税の申告は、財産取得が確定した日から10か月以内に行う必要があります
  2. 特別縁故者は、相続税加算の対象なので、通常の場合の20%増になります

②遺言書で相続を受け取るよう書いていた

内縁者が特別に相続を受け取れる方法の2つ目は、被相続人が遺言書に「内縁の妻が相続財産を受け取る人物である」と明記する方法です。

遺言書に相続財産を受け取る人物であると明記すれば、法定相続人でなくても、内縁者に限らず、たとえ赤の他人であっても相続財産を受け取ることができます。遺言書は、それほど大きな効力を持っているのです。

「相続財産のすべてを内縁の妻に譲ります」と、適切な方法で書かれている遺言書があれば、原則的にその通りに遺言が執行されます。ただ、遺留分については注意する必要があります。

遺留分減殺請求は、本来持っている権利の一部を取り戻す正当な権利行使で、このことによって、相続人と内縁の妻がもめないように配慮した遺言書を書いておくことが必要でしょう。

内縁者にも相続財産を遺したいと思うなら、事前に内縁者同士で十分話し合っておくことが大切です。

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まとめ

今回は、内縁関係にある妻(夫)には相続の権利がないことと、相続財産を受け取る方法について、詳しく説明しました。

自分の死後、内縁のパートナーを困らせてしまわないためには、遺言書の作成など生前の準備が不可欠です。ぜひ、早めから遺言書を作成し、対策を講じておきましょう。

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2004年 金沢大学大学院自然科学研究科修了(理学修士)2015年 税理士事務所開。税理士法人LRパートナーズ等で法人部門に勤務。専門分野は相続税・法人保険・創業支援・法人保険等。