【2024】相続争いの原因は?事例や対策をわかりやすく解説

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

争族 ということばを知っていますか?
いわゆる相続争いをしている家族や親族のことを、相続とかけて争族(ソウゾク)呼ぶ言葉です。
相続争いなんてうちには関係ないと思っても、実はいたるところに火種は隠れています。
争いの原因や対策方法、争族となってしまった場合の相続の流れについて詳しく知っておくことで、自分や自分の家族が争族になることを防げるかもしれません。
これを読んで、今からしっかり対策しておきましょう。

1.争族とは

争族は「そうぞく」と読み、遺産相続を巡って争っている親族のことを、俗に呼ぶ言葉です。
今までは仲がよかった家族が遺産相続をきっかけに険悪になったり、特に関わりの深くなかった親族間で禍根が生まれてしまったりといったことは、何もテレビドラマや小説の世界だけでのできごとではありません。
「うちには大した遺産がないから大丈夫」と考えていても、少ないからこそ取り分で問題になったり、あとから知らなかった遺産が出てくるといったこともありえます。
実は「遺産総額は少ない家庭の方が揉めやすい」ということもデータで分かっております。
※詳細はこちらの記事をチェック  相続では、相続税がかからない家庭の方が揉めやすい?
家族や親族の間でわだかまりを残さないためにも、遺言書など、生前にできる準備をしっかりと整えておくことが重要になるのです。

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2.事例について

相続争いといっても、具体的に想像するのは難しいかもしれません。
そこで、争族になってしまう事例をいくつかご紹介しましょう。

事例1:兄弟間での争い

  • 父親
  • 母親
  • 子供A(兄)
  • 子供B(弟)

父親が他界し、母親と、Aさん、Bさんの3人で相続を行いました。このとき、兄であるAさんは大学を卒業してすでに自立しており、弟のBさんはまだ学生で実家に暮らしていました。
母親は法定相続分どおり2分の1を受け取りましたが、Aさんは自分の経済状況やBさんが学生であることを理由に権利を主張。Bさんはそれに納得し、Aさんが残りの財産を全て相続することになりました。
それから数年後、今度は母親が亡くなりました。このとき、Bさんは大学院を卒業し、社会人になっていました。
するとBさんは、「父親の相続では遺産をもらえなかったんだから、今回は法定相続分以上に資産が欲しい」と主張します。
母親の遺言書を探すと「弟のBは大学院まで行き、その間も実家暮らしだったので何かと面倒を見てきた。遺す財産はAに多く受け取ってほしい」とメモが残されていましたが、これには法的拘束力が無く、正式な遺言書とは認められませんでした。
結果的に、弟のBさんの方が多く受け取るという形で遺産分割協議は決着が付きました。

事例1のポイント

相続は一般的に一次相続と二次相続に分けられます。両親のどちらかが先に亡くなった時に一次相続、もう一方が亡くなった時を二次相続という風にです。
これらは1回ごとに独立したものと考えますから、父親が亡くなった時(一次相続)と母親が亡くなった時(二次相続)とは別に考えなくてはなりません。
しかし、事例1のように相続人が重なっている場合には「あのとき不公平だったから」とあとから蒸し返されて問題になることがあります。
本来なら加味する必要のない出来事ですが、争いの火種にならないためにも、父親もきちんと遺言書を残しておくべきだったといえるでしょう。
また、母親は「遺す財産はAに多く受け取ってほしい」という意思がありながらも、法的拘束力のある遺言書を準備しなかったため、その通りにはなりませんでした。このように遺言書の準備をしていないと、被相続人、相続人の双方にとって残念な結果になることがあります。
また、この事例では、Aさんは大学を卒業してすぐに就職していますが、Bさんは大学院まで出ており、その分学費がかかっています。これが 特別受益 として認められれば、AさんはBさんよりも多くの財産を相続する権利があったのです。

事例2:信じて面倒を見ていたのに

  • 父親
  • 母親
  • 子供A
  • 子供B(両親と同居)
  • 子供C
  • 子供D

6人家族で、Bさん家族は父母と同居し、生活費はもちろん、税金類も支払うなど、さまざまな面で面倒を見てきました。
そんな中、父親が死亡。母親を筆頭に、Bさん以外の4人は、いずれはBさんが全ての財産を相続することに同意していますが、一次相続ではまず、母親が全てを相続することになりました。
口約束だけでは不安だったBさんは、書面で残しておいてくれるように兄弟に頼みますが、葬儀や諸手続きなどで何かと忙しいこともあり「ちゃんと覚えているから」ということで済まされてしまいます。
数年後、今度は母親も亡くなります。ところが、このときになって、Aさんが「法定相続分どおり分割すべきだ」と主張しはじめます。
相続財産は

  • 土地建物2300万円
  • 預貯金700万円

これを法定相続分どおりに分けると、1人あたり750万円になります。
Bさんは、自分が親の面倒を見ていたということもあり、かつ父親の相続時にいずれはBさんが全ての財産を相続することに同意していたということから、全ての財産を相続することを提案しました。
また、比較的近くに住んでいたAに対しては、750万円をBさんが代償金として支払うことも提案しました。ところが、この提案に対し他の兄弟は「どうしてAにだけ支払うのか」と反論されてしまいます。
これ以上兄弟間での争いを長引かせたくないと考えたBさんは、結局法定相続分どおりの分割に同意。
不動産も全て売り、750万円ずつ相続しましたが、Bさんは今まで暮らしてきた家も土地も失うことになってしまいました。

事例2のポイント

このケースでも、両親のどちらかが「全てBに相続させる」と遺言書を書いていれば、結果は違っていたかもしれません。いくら兄弟間とはいえ、口約束で済ませておくのも得策ではありませんでした。
財産のほとんどが土地建物で、売却しなければ分割が難しかったというのも、このケースでは大きなポイントとなっています。これによって、Bさんは住む場所を変えることを余儀なくされてしまったのです。
また、相続財産のうち、預貯金の700万円には、Bさんが生活費その他を支払っていたことで減らなかった分もあるはずです。これを 寄与分 といいますが、これをきちんと主張していれば、Bさんの取り分は多くなっていたはずです。

事例3:前妻の子どもが現れて

  • 父親A
  • 母親B
  • 子供C
  • 子供D(Aの前妻との子)

父親のAさんが亡くなり、相続が発生しました。法定相続分どおり、BさんとCさんとで2分の1ずつ財産を分割しようとしていましたが、そこに突然、Dさんが現れました。実はAさんは一度離婚しており、DさんはAさんと前妻との子どもだったのです。
母親であるBさんは、Aさんの前妻との子供であるDさんが相続することを許しませんでした。そこでDさんは状況を弁護士に相談しました。すると、AさんはDさんの事を認知していたという事が分かり、Dさんも実子として法定相続人となります。
結果、法定相続分どおり、妻のBさんが全体の2分の1、Cさん、Dさんは4分の1ずつを相続することになりました。

事例3のポイント

被相続人が離婚や再婚をしている場合、知らない兄弟がいるということは決して少ない話ではありません。子どもについては、嫡出子、非嫡出子に関係なく同じ権利を持っているので、相手がそれを主張してきた場合、退けることは難しいでしょう。
このケースでは、AさんとBさんの子供であるCさんは想定していた相続分の半分しか相続することができませんでした。もしAさんが遺言書に「BとCに相続させる」と書かれていれば、Dさんに渡すのは遺留分に当たる全体の8分の1で済んだかもしれません。

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3.よくある原因について

争族になってしまう原因には、いくつかのパターンがあります。
先に見てきた事例でもご紹介しましたが、

  • 配分の方法
  • 遺留分
  • 特別受益
  • 寄与分

などがポイントとなります。

配分で揉めるパターン

財産のほとんどが不動産で、預貯金など、現金化しやすいものが少ないといった場合によく起こります。
不動産しか財産がない場合、分割するには、あるものをそのまま分ける現物分割、それを売却する換価分割、誰かが相続して他の人に代償金を支払う代償分割、そして、ひとつの財産を複数人で共有する共有分割といった方法がありますが、どれもメリットとデメリットがあり、これならば平等に、公平に分けられるという方法はありません。
また、被相続人と同居していた相続人がいる場合、相続によってその家を失ってしまうこともあります。
財産の多い少ないに関わらず、相続問題は起こり得ますが、こうしたケースは財産が少なく分けづらいときに起こりやすいといえます。
※不動産の分け方について、詳しくはこちら

遺留分が侵害されるパターン

遺言書がきちんと残されていても、その内容によっては争いを生むことがあります。
たとえば、「妻には自宅の土地建物と預貯金の半分を、長男には残りの財産を与える」と遺言書に書いてあったとします。ところが、この家族には次男もいるのです。
法定相続人には、法定相続分の他に、「最低限受け取れる権利がある分」として、遺留分というのが定められています。
配偶者や子どもの場合は法定相続分の半分、親は3分の1など、被相続人との間柄によって割合は変わりますが、一定分の相続財産の受け取る権利を主張できるのです。
先ほどの例に戻ると、この遺言書は次男の遺留分を侵害しています。遺言書の内容をそのまま受け入れることもできますが、遺留分の侵害を理由に不服を申し立てることも、もちろん可能です。
もし次男が遺留分や法定相続分を受け取る権利を主張したら、財産の分け方を一から決めることになります。不動産が多くを占める場合は、売却しなければ分割できないこともあるでしょう。
※不動産の分け方について、詳しくはこちら

特別受益が考慮されていないパターン

特別受益とは、生前贈与や遺贈、死因贈与など、なんらかの形で被相続人から受けた財産のことです。
たとえば、前章の事例1のように兄より弟の方が明らかに学費がかかっているといった場合、法定相続分どおりに財産を分けたのでは不公平になってしまうとも考えられます。
その場合、特別受益を加味した上で相続分を計算し直さなければなりません。
特別受益は、放っておけば誰かが指摘してくれるものではありません。遺産分割の際、相続人の誰かが主張しなければならないのです。
特別受益を受けた人は、それを認めれば相続分が減ってしまいますから、簡単に認めないケースも多々あります。
また、特別受益があったことは認めても、その額について揉めることもしばしばです。
※特別受益について、詳しくはこちら

寄与分が認められないパターン

寄与分とは、遺産を増やしたり維持したりするのに貢献した人の相続分を増やす考え方です。
前章の事例2では、次男が両親と同居して生活費などを払っていましたが、こうした例では寄与分が認められることがあります。
しかし、寄与分も誰かが自動的に認めてくれるものではありません。遺言書にもなく、他の相続人からの指摘もなければ、本人が主張するしかないのです。
主張しても簡単に認められるとは限りませんし、その額についても細かく話し合うことになります。
※寄与分について、詳しくはこちら

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4.争族にならないための対策

生前に遺言書を用意しておく

自分が死んだあとに、遺した財産をめぐって家族や親族が争うのはできれば避けたいもの。自分の家族が争族になってしまわないためには、正しい形で遺言書を残しておくのが一番です。
遺言書には、主に次の3つの形式があります。

  • 自筆遺言:全文自筆でなければならず、日付の記載と署名捺印が必要。民法に定められた形式で書かなければ無効になってしまう。
  • 公正証書遺言:公証役場で、公証人というプロに意思を伝えて代わりに書いてもらう。
  • 秘密証書遺言:作成した遺言書を公証役場に持っていき、登録する。誰にも中身を知られたくないときに使う方法。遺言書の内容に不備があれば無効になる。

遺言書の書き方について詳しくはこちら
最も間違いがないのは公正証書遺言ですが、作成にお金がかかります。その他の形式は、書き方が間違っていると無効になってしまう危険性があります。
きちんと調べながら、正確に記す必要があります。
遺言書は自分の想いをつづるものですが、感情的に書くのとは違います。
たとえば、法定相続分より多く相続させたい場合には、その理由も含めてきちんと記さなければ、他の相続人は納得できないかもしれません。
他にも、特別受益や寄与分の有無、非嫡出子の有無、法定相続人以外への遺贈やその理由など、争いの種になりがちなことについて、明確にできるような内容が望まれます。
要らぬ争いや禍根を生みださないためにも、生前からの準備がなにより重要なのです。

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5.争族になってしまった場合の流れ

では、実際に相続を巡って争いが起きてしまったらどうすればよいのでしょうか。

遺産分割協議の実施

遺言書で相続内容が決まらなかった場合は、遺産分割協議に入ります。
名前の通り、遺産の分け方について話し合うもので、分割方法が決まったら「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書には遺産の分割の方法を細かく記した上で、法定相続人全員が署名捺印をします。全員が認めないものに関しては効力が認められません。
もし、遺産分割協議が終わった後で新たな相続人が出てきたら、協議はやり直しになってしまいます。事前にしっかりと調査しましょう。

遺産分割調停

遺産分割協議をしても決まらないときには、家庭裁判所に申し立てて遺産分割調停を行います。
ここでは調停員と調停官が間に入って分割方法の話し合いを行います。もし分割方法が決定したら、調停調書が作成され、終了となります。

審判(裁判)

調停でも決まらない、話し合いが不可能だと判断された場合、自動的に審判となります。
家庭裁判所の裁判官が分割方法を決めるもので、決定すると審判書が作成され、そのとおりに分割することになります。

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まとめ

相続争いは意外と身近な問題です。元々仲が良かった家族や親族であっても、争族となってしまったせいで縁が切れてしまうということもありえます。
そうならないためにも必要なのが、正しい知識と事前の準備です。
特別受益や寄与分などもしっかり加味した上で、財産をどのくらい遺せるのか、それをどう分けるのが適切かといったことを考慮して、きちんと遺言書の形で残しておきましょう。
それだけで、無駄な争いが生まれることを防げるはずです。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。