突然の訃報の連絡を受けたものの、日程的にどうしても葬儀や通夜に参列できない場合に利用する弔電ですが、依頼方法やマナーについては悩まれる方が多いものです。
そこで、今回は弔電の依頼方法を説明しながら「マナー・注意点」「費用相場」「送るタイミング」などを解説します。
また、誰でも簡単に気持のこもった弔電を送れるように、実際の弔電の文例を状況別・宗教別に分けてそれぞれ紹介しています。
いざというときのためにぜひご活用ください。
目次
弔電とはお悔やみの気持ちを伝える電報

弔電は、葬儀や告別式に参列できない際に、故人や遺族に対してお悔やみの気持ちを伝える電報です。
この電報は、遠く離れた相手に電文を早く届ける通信手段として明治時代の初期に誕生し、長い歴史の中で廃れることなく私たちの暮らしの中で活用されてきました。
特に、多くの通信手段がある現代においても、お悔やみの気持ちを伝えるための弔電は葬儀や告別式には欠かすことができないサービスとして、現在でも多くの方が利用しています。
弔辞に電報が選ばれる理由

現在でも葬儀や告別式で読まれる弔辞に、電報が選ばれているのはなぜなのでしょうか?
ここでは、他の通信手段にはない電報ならではの特徴を紹介します。
お悔やみの言葉が形に残る
お悔みの気持ちを文章にして台紙と共に届けることで、相手に対する思いが印象的な言葉となってそのまま形に残ります。
葬儀・告別式の中で披露される
一般的な葬儀では「弔電の紹介や披露」が葬儀を進行する中に組み込まれているため、「喪主」「遺族」「参列者」へお悔みの言葉を届けることができます。
日本全国へ当日中に届けることができる
突然の訃報の際にも、電報は午後7時までのお申し込みであれば当日中のお届けが可能です。
ただし、電報の種類によっては配達エリアが限定される商品もあります。
弔電用台紙が選べる
「押し花」「刺繡」「ブリザードフラワー」「お線香セット」など、弔電用の台紙や附属品のセットはさまざま種類から選択することが可能です。
故人にあった台紙を選びながら、しめやかな気持ちを伝えることができます。
弔電申し込みの流れ

弔電は、NTTのサービス2種類(D-MAIL)と郵便局のサービス(レタックス)の合計3種類の申し込み方法があります。
ここでは、NTTのサービスの手順と郵便局のサービスの概要について解説します。
インターネットの場合
NTTのD-MAILのインターネットからの申し込みは、申し込み専用サイトへアクセスして次の手順に従うことで簡単に申し込みが完了します。
サイト上では台紙のデザインを確認することもできるため、好みの台紙で弔電を送りたい方には最適です。
また、お申し込みは24時間対応しているため、急な訃報や日中に時間が取れない方でも弔電を送ることができます。
インターネットでの弔電の依頼手順は次のとおりです。
- 商品を選択する
- お届け日時とお届け先郵便番号で配送可否をチェックする
- メッセージを入力する
- 画面に従ってお届け先住所などを入力する
- お支払い方法を選択する
- 注文完了する
電話の場合
NTTのD-MAILを電話から申し込む場合は固定電話から「115」に電話して、以下の手順でオペレーターと相談しながら弔電を選ぶことができます。
受付時間は8時から20時で、19時までであれば全国当日配達が可能です。
携帯電話からはドコモとauからもつながりソフトバンクからはソフトバンクグループが運営する弔電サービスにつながります。
オペレーターとのやり取りの中で弔電の内容を決定するため、弔電を始めて打つ方にとってはこちらの方法が安心です。
電話での弔電の依頼方法手順は次のとおりです。
- ご自身の名前を伝える
- 電報の種類を伝える
- 漢字電報を送る事を伝える
- 配達日時を指定する
- 送り先の電話番号・住所・会館名を伝える
- 受け取り人の名前を伝える
- メッセージを伝える
- 差出人の名前を伝える
- 台紙の種類を選ぶ
- 明朝横書きか毛筆縦書きかを選ぶ
- 最終確認する
郵便局の場合
郵便局の弔電サービスは「レタックス」と呼ばれるもので、「電話」「窓口」「インターネット」「FAX」から申し込みが可能です。
なお、電話とインターネットからの申し込みでは配達状況を確認できる「追跡サービス」があるため、弔電が無事に届いたかどうかを確認することができ安心して弔電を依頼することができます。
レタックスの申し込み方法別の特徴は次のとおりです。
- 電話:申し込み後の承認請求書と料金を納めた後の手続きが必要。会社として弔電を打つ場合はおすすめ
- 窓口:好みのデザインの台紙を選び文例から文章を選ぶことができるため、弔電を始めて送る方におすすめ
- インターネット:365日24時間利用することができるため、突然の訃報や時間がない方におすすめ
- FAX:電話同様に承認請求書を提出した上で認証を受けた郵便局あてにFAXを送信。普段から郵便局と取引がある方にはおすすめ
弔電の値段や相場料金

弔電の値段は文字数や使用する台紙の種類によって大きく異なるため、平均的な価格帯があるわけではありません。
しかし、弔電をどのような立場で送るのかによっては、おおよその目安となる相場料金があります。
ここでは、個人として弔電を打つ場合と、会社として弔電を打つ場合に分けて、それぞれの相場料金を解説します。
会社として打つ場合
豪華になり過ぎず、かと言って安価に見えないような価格帯の弔電が選ばれる傾向にあります。
会社として弔電を打つ場合は、3,000円ほどが相場料金です。
個人で打つ場合
個人で弔電を打つ場合の金額の目安は、渡す予定の香典金額に見合った価格帯の弔電を送る方が一般的です。
例えば3,000円の香典を包む場合は1,500円程度の弔電、5,000円の香典を包む場合は2,000円~3,000円ほどの弔電が相場料金となります。
弔電台紙の選び方
弔電の台紙を選ぶ際にも、個人として送るのか会社として送るのかによって選び方は異なります。
台紙の種類は、スタンダードなタイプから刺繡が施されたタイプまで種類も費用もさまざまです。
料金も500円~10,000円と幅広いため、生前の個人との関係性によって台紙を選ぶと良いでしょう。
【状況別】弔電の文例

それでは、ここからは実際の弔電の文例を記載します。
なお、文例は弔電を送る方の状況別に次の5種類に分類しています。
ご自身の立場や遺族との関係性によって文章の内容を置き換えて活用すれば、どなたでも簡単に弔電を作成することが可能です。
文例①:一般的な弔電
ご逝去の知らせを受け、ただただ、驚いております。
ご生前のお姿を偲び、心よりご冥福をお祈りいたします。
文例②:親しい友人が亡くなった際の弔電
◯◯様(故人の名前)のご逝去の報に接し、心からお悔やみ申しあげます。
故人との語りつくせぬ思い出で胸がいっぱいです。
ご生前のご厚情に深く感謝いたしますとともに、安らかなご永眠をお祈りいたします。
文例③:受取人のご主人・奥様が亡くなった場合の弔電
ご主人が亡くなった場合
ご主人様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
奥様が亡くなられた場合
ご令室様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
文例④:受取人の実父・実母が亡くなった場合の弔電
実父が亡くなった場合
お父様の突然の悲報に、驚いております。
心からご冥福をお祈り申し上げます。
実母が亡くなった場合
ご母堂様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。
これからも御家族お力を合わせて、励ましあいながらこの度のご不幸を乗り越えられる事を心よりお祈りいたします。
文例⑤:会社関係者が亡くなった場合の弔電
会長様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。
これからも社員皆様お力を合わせて、励ましあいながらこの度のご不幸を乗り越えられる事を心よりお祈りいたします。
【宗教別】弔電の文例

故人が信仰する宗教によっては一般的な弔電に用いる言葉が相応しくない場合があるため、弔電内容は宗教によって使い分けなければなりません。
ここでは、私たちに馴染み深い次の3つの宗教の代表的な弔電の文例をご紹介します。
文例①:仏教の場合
○○様(故人の名前)のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
文例②:神道の場合
在りし日のお姿を偲びつつ、故人の安らかなお眠りをお祈りいたします。
文例②:キリスト教の場合
神の御許に召されました○○様(故人の名前)を偲び、ご遺族がこの悲しみに立ち向かいたくましく歩んでいかれますことをお祈りいたします。
弔電の書き方のマナー・注意点

続いては、弔電を作成する際のマナー・注意点を解説します。
- 故人の呼び名
- 忌み言葉・重ね言葉
- プライベートな内容
- 家族の意向
マナー・注意点①:故人の呼び名
故人の呼び名は、通常の生活ではあまり使うことがない「敬称」を用いるため注意が必要です。
なお、この敬称は弔電に限らず不幸事があった遺族に対しても用います。
故人の名前は敬意を込めて敬称を用いることで、故人と弔電を受け取る方の続柄や関係を表します。
以下は、敬称の一覧です。
弔電作成の際の参考にしてください。

マナー・注意点②:忌み言葉・重ね言葉
弔電は「忌み言葉」「重ね言葉」を避けなければなりません。
これらの言葉は次のような言葉です。
- 忌み言葉:「死ぬ」「生きる」「長生き」
- 重ね言葉:「重ね重ね」「度々」「返す返す」
また、この言葉以外にも仏教徒以外に仏教用語である次の言葉の使用や、キリスト教徒へ「お悔みを申し上げます」などの言葉も避けましょう。
- 仏
- 成仏
- ご愁傷様
- 供養
- 冥途
- 往生
マナー・注意点③:プライベートな内容
弔電に故人のプライベートを盛り込むのはおすすめできません。
これは遺族や参列者にとっても周知の事実と思っていた内容が、後々になってトラブルの原因となる可能性があるためです。
マナー・注意点④:家族の意向
最近では小規模な家族葬や簡易的な葬儀内容の「直葬」を行う方も多く、弔電をお断りしている場合も少なくありません。
このような葬儀に、ご自身の気持ちを優先させて弔電を送るのはマナー違反です。
葬儀に最も優先されるのは、遺族の意向と心得ましょう。
弔電を送るタイミング

弔電を送るタイミングは、「通夜」「葬儀」「告別式」のいずれかの日時です。
本来であれば、いずれかの儀式に参列して故人を弔いたい思いがあるけれど、諸事情でどうしても参列できない方が送るのが弔電となるからです。
なお、これらの儀式のどれにも弔電が間に合わない場合の対応方法は次のとおりです。
弔電が間に合わない際の対応方法
弔電が先ほど伝えした儀式のいずれかにも間に合わない場合は、弔電を諦めるしかありません。
弔電は「通夜」「葬儀」「告別式」で読まれることがなにより重要となるため、「遅れても送らないよりは良いだろう」という判断は、弔電には当てはまりません。
なお、弔電が送れなかった場合は後日故人のお宅を弔問するか香典と手紙を郵送します。
この際には、いずれの儀式にも参列できなかった旨と、弔電が間に合わなかったお詫びを伝えるのがマナーです。
弔電と香典の両方を送る際のマナー

通夜と葬儀に参列できない場合は弔電と香典の2つを送りますが、この際には贈る順番が重要です。
ここでは、弔電と香典を送る場合のマナーについて解説します。
はじめに弔電を送る
弔電はできるだけ通夜に間に合うように送るものですが、通夜に間に合わない場合でも告別式までに送るのがマナーです。
訃報を知るのは突然の場合も多く、ご自身の予定と照らし合わせて参列できないことがわかればすぐに弔電を手配します。
送り先は通夜や葬儀・告別式を行う場所に送るため、故人の自宅や斎場宛てに送るのが一般的ですが、葬儀を行う場所がわかない場合は故人もしくは喪主の自宅に送ります。
告別式までに弔電の手配がどうしても間に合わない場合は、電話で遺族に参列できない旨を伝え香典のみを送りましょう。
後から香典を送る
香典は葬儀・告別式が終わってから一週間以内のタイミングで送ります。
もしもこの一週間以内のタイミングで送ることができない場合でも、1ヶ月以内のタイミングで送りましょう。
遺族は三十五日や四十九日に忌明けの法要があり、この期間を境に香典返しを行うため、この時期を過ぎてしまった香典は遺族の負担となるため注意が必要です。
なお、香典にはお悔みの手紙を添え、香典は香典袋に包み現金書留で送りましょう。
弔電を受け取った際のお返しと文例

弔電を受けた際にはお礼をするのがマナーですが、お礼は品物ではなくお礼状を送りましょう。
お礼状は葬儀終了の一週間以内に送り、葬儀が滞りなく終了したことをお知らせします。
本来であれば相手の自宅に出向いて直接お礼を伝えるのが正式なマナーですが、近年ではお礼状での挨拶が一般的です。
とは言え、このお礼状という形は略称であることに変わりはないため、お礼状の文中で「略称ながら」と正式なマナーではないことを詫びる一文を記載しましょう。
お礼状の文例は次のとおりです。
拝啓 このたび 故 ○○儀の葬儀に際し ご多用中にも関わらずご丁寧な弔電をいただき ありがとうございました
お心遣いに励まされ おかげさまで滞りなく葬儀を執り行うことができました
茲に生前のご厚情に感謝いたしますとともに 今後も変わらぬご指導いただけますようお願い申し上げます
本来ならお伺いしてお礼を申し上げたいところではございますが 略儀ながら書中にて失礼いたします
敬具令和○○年○月○日
住所
喪主名
まとめ

弔電は故人に対するお悔みの気持ちを伝えるためのものですが、悲しみに沈む遺族に対しての励ましの気持ちを込めたメッセージでもあります。
葬儀に参列できない場合に必ず送るものではありませんが、個人との関係が深い場合や親族と今後も変わらないお付き合いを願う場合は、送るのがマナーと考えましょう。