お通夜や葬儀といった弔事で必ず行われる喪主の挨拶は、大切なシーンなだけに緊張してしまいますよね。
何を言えば良いかあらかじめまとめていてもうまく言葉が出なかったり、そもそも原稿の下書きをする段階で迷ってしまったりすることも少なくありません。
喪主の挨拶と聞くだけで難しく感じますが、実は押さえるべきポイントやコツがわかっていると、すんなりと言葉が出てきます。
今回は、喪主の挨拶のコツや注意点、マナーまで含めて詳しく解説していきます。
喪主の挨拶が必要となるタイミング

お通夜や葬儀などの法要は、故人の臨終からめまぐるしいスケジュールの中で行われるため、「いつ、どのような挨拶をすれば良いの?」と悩む喪主も多いことでしょう。
実は、喪主の挨拶のタイミングはある程度決まっているため、事前に知っておくと慌てることがありません。
ここでは、喪主の挨拶が必要となるタイミングについて、時系列に沿って解説します。
- お通夜の時
- 通夜振る舞いの時
- 告別式の時
- 出棺の時
- 精進落としの時
お通夜の時
葬儀の流れの中で、喪主が最初に行う挨拶のタイミングはお通夜のときです。
一般的なお通夜の流れは、
- 僧侶による法要
- お焼香
- 弔電紹介
となっており、喪主が挨拶を行うのはその後です。
ただし、地域の慣習や葬儀の形式によっては、お通夜際に喪主が挨拶しないケースもあります。
挨拶のタイミングに不安がある場合は、進行役の人と相談して流れを把握しておくと良いでしょう。
通夜振る舞いの時
お通夜の後に通夜振る舞いの席を設けている場合は、次のようなタイミングで喪主が挨拶を行います。
- 始まりの挨拶
- 献杯
- 終わりの挨拶
このうち、始まりと終わりの挨拶は喪主が行いますが、献杯は喪主以外の遺族が行うケースがほとんどです。
さらに、お通夜には法要後に遅れて参列する方もいますので、喪主は会場に待機して他の遺族が通夜振る舞いを仕切ることもあります。
通夜振る舞いの挨拶も、葬儀形式や地域の慣習によってタイミングが異なりますので、遺族・親族の間で事前に話し合い割り振りをしておきましょう。
告別式の時
告別式は、故人とお別れする最後の法要になりますので、喪主は訪れた人に感謝の気持ちを伝えるために挨拶をします。
一般的な告別式の流れは、僧侶による法要→お焼香→弔事→弔電・供物の紹介→花入れとなっており、喪主が挨拶するタイミングで一番多いのは花入れの前です。
ただし、法要後の式次第は葬儀内容によっても異なる上、地域によっては「出棺の時に挨拶をするから告別式ではしない」ということもあります。
式次第は葬儀社と話し合って決めていきますので、どのようなタイミングで喪主の挨拶をするべきか、事前に相談しておくと良いでしょう。
出棺の時
花入れが終わった棺は、遺族・親族の手で霊柩車へ乗せられます。
参列者は先に会場を出て、霊柩車を見送るために整列していますが、そこで行われるのが喪主からのお礼の挨拶です。
すでに告別式で挨拶をしている場合は、言葉を述べずに頭を下げ、そのまま霊柩車に乗り込むこともあります。
出棺時の挨拶は、告別式で挨拶をしたかによっても変わってきますので、全体的な流れを考えてタイミングを決めると良いでしょう。
精進落としの時
精進落としとは、火葬後に行われる食事会のことです。
火葬まで無事に済んだことと、お手伝いをしてくれた親族に対しての労いも兼ねて料理をいただきます。
多くの場合、精進落としに出席するのは遺族や近しい親族、お手伝いをしてくれた参列者です。
したがって、精進落としでの挨拶は、お通夜や告別式のように固い文章ではありません。
しかし、故人を見送るという大きな勤めを手助けしてくれた人たちとの食事ですから、短くても良いので心のこもった挨拶をしましょう。
喪主の挨拶の基本的な構成

喪主の挨拶というと難しく考えがちですが、実は基本となる構成がわかっているとスムーズに挨拶文を考えることができます。
ここでは、喪主の挨拶文を作成する上で押さえておくべき基本的な構成について、文章の流れに添って詳しく解説していきます。
- 感謝の気持ち
- 最期の様子
- 故人の人柄
- 遺族の思い
- お礼の言葉
感謝の気持ち
喪主の挨拶文は、最初に参列者に対する感謝の気持ちを伝える文章にします。
具体的な例文は次のとおりです。
本日は、お忙しい中亡き〇〇(続柄・故人の名前)の葬儀(お通夜)にご参列を賜りまして、誠にありがとうございました。故人の生前にはひとかたならぬご厚情をいただき、心より感謝いたします。こんなにたくさんの方々に見送られ、亡き〇〇と喜んでいることと思います。故人に代わり厚く御礼申し上げます。
法要の時の天気によっては、「本日は」の後に「お足元の悪い中」「厳しい寒さの中」などに変更しても良いでしょう。
使用する言葉が難しかったり言いにくかったりする場合は、優しい言葉に変換して気持ちを伝えるようにしましょう。
最期の様子
故人が亡くなる最期の様子は、伝えられる範囲内で文章を考えるようにします。
仮に、病気で闘病していた高齢の父親が亡くなった場合には、次のような例文になります。
故人は昨年頃から体調崩し気味になり闘病を続けておりましたが、最期は家族に見守られる中、眠るように息を引き取りました。
また、思いもよらぬ急病で亡くなった場合には、次のような例文になります。
故人は生前大変元気に過ごしておりましたが、突然の脳溢血で救急搬送されました。入院先でも賢明に治療に当たって頂いたのですが、残念ながら○月○日午前○時○分、静かに息を引き取りました。
故人の死因によっては、事情により細かく話せなかったり、話すことが辛かったりすることもあるかと思いますので、無理に入れる必要はありません。
ただし、話せる範囲内で少し状況を説明しておくと、事情を知らずに慌てて参列したという人にも情報が伝わるというメリットがあります。
可能な場合は、少しだけでも触れると良いでしょう。
故人の人柄
故人の人柄は、具体的な思い出話や少しほっこりするようなエピソードがあると深みが出ます。
具体的な例としては、次のような内容です。
- 何にでも一生懸命になる人でひたすら趣味に打ち込んでいた。
- 優しくて口数は少なかったが、いつも笑顔で周囲を朗らかにしていた。
- 仕事一筋で厳しい人だったが、困った時にはすぐに手を差し伸べてくれた。
- 楽しいことが大好きで、よく家族や友人たちを笑わせてくれた。
- 手先が器用でアイデア満載な人で、日曜大工やちょっとした修理を嫌な顔一つせず引き受けてくれた。
故人の人柄は、思い出のエピソードとつなげることでより鮮明になります。
参列者の人にも共感できるようなエピソードを盛り込んで、故人の人柄を思い出と一緒に話すようにしましょう。
遺族の思い
遺族の思いは、言い換えると故人へ手向ける言葉です。
たとえば、次のような言葉を入れると、遺族が故人の死に対してどのような思いを抱いているかがわかります。
穏やかな晩年を過ごせて天寿を全うでき、幸せな最期を迎えられたと思います。
故人とのたくさんの思い出は、家族にとって大切な宝物です。
故人とのお別れは悲しいですが、きっと家族を見守ってくれていることでしょう。
故人が安らかに旅立てるよう、家族全員で支えあっていきます。
故人の最期の時まで一緒に過ごすことができて、本当に幸せでした。
故人の人柄や思い出の流れから遺族の思いにつなげていくと、文章をスムーズに作成することができます。
自分の言葉で文章を綴った方がより心に響きますので、堅苦しく考えず柔らかな言葉を選んでみましょう。
お礼の言葉
喪主の挨拶の最後は、参列者へのお礼の言葉で締めくくります。
すでに最初に手厚い挨拶をしていますので、「本日は本当にありがとうございました」といった短い言葉で構いません。
もし、喪主の挨拶をする際に心の余裕があるようなら、「本日お集まり頂いたみなさまに見守られ、故人も安心して旅立てることと思います」というような一文を入れてからお礼の言葉につなげても良いでしょう。
無理に長くする必要はありませんので、言いやすい言葉を探して挨拶を締めましょう。
お通夜での喪主の挨拶例文

お通夜で行う喪主の挨拶は、お通夜の終了後と通夜振舞いのときに行われます。
お通夜は葬儀の前に行われますので、翌日に控えている葬儀へのご案内も兼ねた内容にしなければなりません。
では、どのような挨拶が適しているのか、具体的な挨拶例文を紹介していきます。
お通夜終了時
お通夜が終了した後、司会の方からうながされて喪主が挨拶します。
お通夜での喪主の挨拶は葬儀よりも短くて良いですが、通夜振舞いや葬儀へのご案内も含めているため次のような挨拶例文を参考にしてみましょう。
本日は、お忙しい中亡き〇〇の通夜に参列を賜りまして、誠にありがとうございました。故人の生前にはひとかたならないご厚情を頂き、故人に代わり厚く御礼申し上げます。たくさんの方々に見守られ、故人も喜んでいることと思います。ささやかではございますが、別室にて粗宴をご用意いたしましたので、お時間がございましたらお召し上がりいただければと思います。なお明日の葬儀は○時より〇〇会場にて行う予定ですので、よろしくお願いいたします。本日のご参列、誠にありがとうございました。
通夜振る舞いの時
通夜振舞いでの喪主の挨拶は、地域によって必要な場合と必要でない場合があります。
ここでは、献杯の音頭が必要な通夜振舞いのケースを想定した挨拶例文を紹介します。
始める時
始める時の喪主の挨拶は、献杯の音頭につながる形で行います。
すでにお通夜終了後に挨拶はしているので、あまり長くならないような挨拶にしましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日は亡き〇〇の通夜に参列を賜りまして、誠にありがとうございます。亡き〇〇と懇意にして頂いた皆さまにも、沢山の思い出話があることと思います。ささやかではございますがお食事を召し上がって頂きながら、亡き〇〇との思い出話をお聞かせください。それでは献杯をお願いします。
終わる時
通夜振舞いの終了時は、翌日の予定も踏まえたご挨拶を行います。
すでにお通夜の終了時に伝えていた場合でも、改めて日時を伝えておくと良いでしょう。
本日はお忙しい中、亡き〇〇の通夜に参列を賜りまして、誠にありがとうございました。皆さまからたくさんの思い出話を拝聴し、とても心が慰められました。明日の葬儀は○時から〇〇会場にて行われますので、よろしくお願いいたします。夜もふけておりますので、お足元に気をつけてお帰りください。本日はありがとうございました。
献杯
献杯とは故人に捧げる盃のことで、「献杯(けんぱい)」という声とともにグラスを掲げて故人に捧げます。
献杯をする時も音頭が必要ですが、献杯の音頭は喪主がとる必要はありません。
できれば、喪主に近しい親族の方にお願いし、通夜振舞いの席で思い出話がしやすくなる雰囲気を作るようにしましょう。
献杯時の挨拶例文は次のとおりです。
亡き〇〇の弟の△△です。本日は兄のお通夜にご参列を賜りありがとうございました。こんなに多くの方々にお集まり頂き、兄も喜んでいることでしょう。今夜は皆様と食事を共にしながら、兄の思い出話をできたらと思います。それでは献杯したします。献杯。
葬儀での喪主の挨拶例文

葬儀で行われる喪主の挨拶は、参列者への感謝、故人の最期の様子や思い出、遺族の思いを伝える大切な役目です。
故人と喪主の関係性も挨拶の内容に影響するため、基本の例文を押さえた上で少し変化をつけた方が良いでしょう。
ここでは、基本的な喪主の挨拶例文とともに、亡くなった人の立場別に押さえるポイントを解説していきます。
基本の例文
最初に、基本的な喪主の挨拶例文を紹介します。
先に解説したとおり、喪主の挨拶は次の構成するとわかりやすくなります。
- 感謝の気持ち
- 故人の最期の様子
- 故人の人柄
- 遺族の思い
- お礼の言葉
構成をもとにした基本例文は次のようになるで、挨拶文がまとまらない場合は参考にしてみてください。
①本日はお忙しい中、亡き〇〇(続柄・故人の名前)の葬儀にご参列を賜りまして、誠にありがとうございます。こんなにたくさんの方々に見守られての旅立ちに、故人も喜んでいることと思います。
②故人は生前から健康に気を使って生活をしておりましたが、数年前の健康診断で病気が見つかり、以来通院しながら日々の生活を送っておりました。昨年末に病状が悪化して入院をしておりましたが、闘病の末○月○日○時○分、家族に見守られて安らかに息を引き取りました。
③故人は楽しいことや面白いことが大好きで、家族が少しでも暗い顔をしているとすぐに冗談を言ったり、面白い画像を見せてくれたりしていました。真剣に悩んでいる時にはちょっと困ることもありましたが、故人の明るい人柄が家族をたくさん笑顔にしてくれました。
④そんな故人を見送ることは、明るい灯火を失うようでとても寂しいです。でも故人が残してくれた楽しい思い出は、いつでも私たち家族の胸を暖かく照らしてくれます。
⑤明るく楽しいことが大好きだった故人が心配しないよう、家族で力を合わせて頑張っていきます。本日は葬儀にご参列を賜りまして、誠にありがとうございました。
親が亡くなった場合
親が亡くなった場合の喪主は、その子供たちになります。
親が亡くなった際の挨拶文は、基本の例文をもとに作成してみましょう。
高齢の親が天寿をまっとうした時には、「2.故人の最期の様子」として次のような例文を付け加えても良いでしょう。
故人は98歳という天寿をまっとうし、大往生いたしました。
命を最期まで生き抜くという大切な学びを家族に教えてくれました。
ひ孫の代まで全員集まり、安らかに眠りにつくことができました。
配偶者(夫・妻)が亡くなった場合
配偶者が亡くなった場合には、基本的にその夫や妻が喪主になります。
ただし、ご夫婦ともに高齢で喪主の挨拶をすることが難しい場合には、その子供が喪主の代理で挨拶しても問題ありません。
亡くなった夫や妻がまだ50代以下で働き盛りだったり、子どもが未成年で子育てが終わっていなかったりするケースの場合は、「4.遺族の思い」の部分で以下のような例文を入れてみても良いでしょう。
よく二人で将来のことを語り合っていましたが、余りにも早いお別れに心が追いつかず、まだ信じられない気持ちです。
幼い子どもを残して旅立たなければならない夫(妻)の気持ちを思うと、彼(彼女)の分まで子どもを幸せにしたいという思いで溢れます。
彼(彼女)と家庭を築き子どもにも恵まれて、本当に幸せでした。彼(彼女)は、私たち家族に大切な思い出をたくさん残してくれました。
本当に言葉が詰まってしまった時には、「ただ残念で仕方ありません」という短い言葉でも大丈夫です。
その時に思い浮かんだ気持ちを、素直に喪主の挨拶に込めてみましょう。
子供(息子・娘)が亡くなった場合
愛する子供に先立たれてしまった場合、喪主を務める親の気持ちは言葉にできないほど苦しいものです。
真面目な性格の人ほど「失礼のないように」と気を張ってしまいますが、参列者の方はその悲しみをちゃんと理解してくれています。
基本となる構成のうち、「1.感謝の気持ち」と「5.お礼の言葉」だけは必ず伝えるように心がけ、2、3、4の項目に関しては、話せる範囲で言葉を綴ってみましょう。
どうしても難しいという場合は、ご親戚の中で近しい人にお願いして喪主の挨拶の原稿を代読してもっても良いでしょう。
突然死の場合
家族とのお別れの中でもとくに大きなショックを受けるのは、不慮の事故や災害、事件などが原因で亡くなったケースです。
事故や事件だと警察での調査内容も絡んでくるため、故人の最期の様子をなかなか伝えることができません。
そのような場合には、喪主の挨拶の最初と最後だけはきちんと行い、残された家族の正直な気持ちが伝わる文章を綴ってみましょう。
どうしても無理な場合には決して無理をせず、喪主の挨拶の文章を代読してもらうようにしましょう。
家族葬儀の場合
近年多くの人に注目を集めている家族葬でも、喪主の挨拶を行うことがあります。
家族葬に集まるのはごく親しい人か親族の人たちのみなので、あまり堅い言葉で喪主の挨拶をしなくても大丈夫です。
ただし、参列者の中には「なぜ家族葬を?」という疑問を持つ人もいます。
そのため、「1.感謝の気持ち」か「4.遺族の思い」の項目内で、次のような例文を入れて説明しておきましょう。
故人は生前から「お別れの時には親しい人たちだけでひっそりと見送られたい」と申しておりましたので、その遺志を尊重した形でお見送りすることとなりました。本当に親しい人たちだけに囲まれて見送られることを、故人も心より喜んでいることでしょう。
法事・法要での喪主の挨拶例文

喪主の挨拶は、お通夜や葬儀のときだけではありません。
葬儀の後に行われる法要や回忌ごとの法事などでも、喪主が挨拶をするケースもあります。
ここでは、法事や法要での喪主の挨拶例文を紹介します。
初七日法要の場合
初七日の法要は、本来命日の日を含めて七日目に行われる法要なのですが、現在は葬儀の日に繰り上げて法要することも少なくありません。
初七日の法要では精進料理によるお食事の席を設けますが、その前に喪主の挨拶が行われます。
故人を見送った後に行われる最初の法要となりますので、ある程度の礼節を持って喪主の挨拶をするようにしましょう。
初七日法要の挨拶例文には、次のようなものがあります。
本日は、亡き〇〇(続柄・故人の名前)の初七日法要にお集まり頂き、誠にありがとうございます。おかげ様で無事に初七日を迎え、法要を済ませられましたことに心より感謝いたします。大切な人を亡くした悲しみはまだ深く心にありますが、皆様の暖かな思いやりに触れて落ち着きを取り戻してまいりました。ささやかではございますがお食事をご用意いたしましたので、ぜひ皆様から故人の思い出話をお聞かせ頂けたらと思います。本当にありがとうございました。
四十九日の場合
四十九日の法要は、故人が仏様の元に着き家族が忌明けを迎える日です。
したがって、法要で用意する料理にもお寿司や魚料理などが並び、無事に忌明けを迎えたことに感謝をします。
四十九日の法要には出席する親戚も多いので、会が始まる前には喪主の挨拶として次のような言葉で参列者に感謝の意を伝えるようにしましょう。
本日はお忙しい中、亡き〇〇の四十九日法要にお集まり頂き、誠にありがとうございます。皆様の暖かいお力添えを頂き、無事に四十九日を迎えることができました。ささやかではございますがお食事をご用意いたしましたので、故人の思い出を語り合いながら召し上がっていただければと思います。本日は本当にありがとうございました。
五十日祭の場合
五十日祭は神道における儀式で、仏道の四十九日を同じ意味合いを持ちます。
神道では故人が亡くなってから十日ごとに霊祭(れいさい)と呼ばれる供養が行われ、五十日目に神として祀られるようになります。
五十日祭とは故人が神となる区切りの儀式で、四十九日と同様に儀式とお食事の席が設けられます。
お食事の前には喪主の挨拶がありますが、例文は四十九日と変わりません。
ただし、四十九日法要が五十日祭に変わりますので、喪主の挨拶をする際には間違えないようにしてください。
新盆の場合
新盆は、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆です。
初めてのお盆のときには多くの人が集まって法要を行い、食事の席を設けて思い出を語り合うことも少なくありません。
法要をどこで行うかによっても喪主が挨拶する場面が変わってきますが、多くの場合はお食事前に喪主が挨拶をします。
基本的な例文は四十九日と変わりませんが、新盆でお参り下さった方へのお礼と感謝の気持ちだけはしっかりと伝えるようにしましょう。
本日は、亡き〇〇(続柄・故人の名前)の新盆にたくさんの方にお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。まだふとした瞬間に故人を思い出すこともございますが、悲しい気持ちよりも楽しかった思い出を多く心に浮かべるようになりました。どうぞお食事を召し上がりながら、お盆で帰ってきているであろう故人の思い出を語り合って頂けたらと思います。
一周忌の場合
一周忌は、故人が亡くなって一年目の命日に行われる一つの区切りです。
大切な人を亡くした家族の生活も落ち着き、また新たな気持ちで故人と向き合える機会でもあります。
一周忌までは人のご縁を大切にする人も少なくありませんので、故人と縁のある人にお声掛けしてお食事の席を設け、故人を偲ぶような喪主の挨拶をしてみましょう。
早いもので、〇〇(続柄・故人の名前)が亡くなってから一年が経ちました。故人を見送った時には悲しさばかりが募っていましたが、皆様のお陰で毎日を懸命に過ごせるようになりました。本当にありがとうございます。一周忌ということでお食事の席を設けさせていただきましたので、故人を偲びながらお話ができたらと思います。
三回忌の場合
三回忌は故人の二年目の本命日に行われる法要で、ご家族や本当に近しい親族、知り合いの人たちと過ごすケースが増えてきます。
顔見知りが多く本当に気心がしれた人たちばかりで三回忌を行う際は、喪主の挨拶もお礼と献杯の音頭だけで問題ありません。
故人が社会的地位に立つ人だったり集まる人が多かったりする場合は、ある程度の広さの会場を設けて喪主の挨拶もきちんと行うようにしましょう。
本日は、お忙しい中亡き〇〇(続柄・故人の名前)の三回忌にお集まり頂きましてありがとうございます。月日が経ってもこうしてたくさんの方に集まって頂けて、故人も喜んでいることと思います。ささやかではございますがお食事をご用意いたしましたので、故人の懐かしい思い出を語り合って頂けたらと思います。
七回忌の場合
七回忌は故人の六年目の命日に行われる法要で、お声掛けしても身内や本当に親しい人しか集まらないことも少なくありません。
気心の知れた人ばかりで七回忌を行う際には、喪主の挨拶も簡略化して問題ないでしょう。
もし故人を慕う人が多い場合にはある程度の会場を設けてお食事の用意をし、喪主として挨拶をしながら故人の思い出話をしてみましょう。
早いもので、〇〇(続柄・故人の名前)が亡くなってから七回忌の法要を迎えることとなりました。時間とともに悲しみも癒されてきましたが、6年という歳月が経ってもこんなに多くの人が故人を慕って集まって下さったことに、改めてお礼申し上げます。ささやかではございますがお食事の用意をいたしましたので、召し上がりながら故人の思い出話をお聞かせ下さい。
喪主の挨拶のマナー・注意点・コツ

最初に、喪主の挨拶をする上でのマナーや注意点、話す際のコツについてお伝えしていきます。
弔事はいわゆる「不幸な出来事」になるので、使う言葉や話し方にも気を配らなければなりません。
ではどのようなポイントを押さえれば良いのか、その内容について詳しく解説していきます。
重ね言葉は禁句とされている
弔事の集まりでは、「不幸が重なることがないように」という意味で重ね言葉が禁句とされています。
重ね言葉とは同じ言葉を二回続けている言葉のことで、具体的な例としては次のような表現が該当します。
- 重ね重ね(かさねがさね)
- くれぐれ
- しばしば
- まだまだ
- 追々(おいおい)
- 返す返す(かえすがえす)
- ますます
このような言葉は「忌み言葉」と呼ばれ、「繰り返すことを意味する言葉(再び・再度)」や「生死に直結するような言葉(急死・死亡など)」も弔事の場では相応しくありません。
ここでご紹介しているのは代表的な重ね言葉ですが、これら以外にも忌み言葉と取られる表現はたくさんあります。
喪主の挨拶を考える際に、少しでも疑問に感じたら必ずチェックするようにしてください。
ゆっくりとした口調で話す
喪主の挨拶をする際には、ゆっくりとした口調で話すようにします。
緊張するあまり早口になってしまうと、せっかくの言葉が参列した人たちにうまく伝わらなかったり、言葉を噛んで話せなくなってしまったりすることも少なくありません。
また、早口のスピーチはともすれば事務的にも取られてしまうため、喪主の挨拶の後に親戚の人から苦言を述べられたり、その場の雰囲気が少し緩んでしまったりすることもあります。
大切なことは、挨拶の言葉を一つひとつ丁寧に伝えることです。
喪主の挨拶をする時には、意識して普段よりもゆっくりとした口調で話したり、文章との間を空けて全体的にスローペースになるようにしたりしましょう。
落ち着いた声で話す
喪主の挨拶は悲しみの中で行われるので、普段通りの声よりももっと落ち着いた声を意識することが大切です。
例えば、もし普段の声が高めのようなら意識して低めの声にしてみたり、普段から声が大き目の人は少しボリュームを落としたりして話すと良いでしょう。
緊張するとどうしても声が上擦ってしまいがちですが、ゆっくり話すようにすれば自然と声のトーンは落ち着きます。
自分の声のトーンや話し方に少し不安がある場合には、お通夜や葬儀が始まる前に少し親族の前で話してみてアドバイスをもらうようにしましょう。
2分ほどを目安にする
喪主の挨拶は長くても3分以内、できれば2分ほどの収めることが理想的です。
喪主の挨拶はお通夜の最後や通夜振舞いの始まりと終わり、出棺前といった儀式の節目で行われるため、あまりに長すぎると参列者を待たせてしまったり、せっかくのご挨拶が耳に入らなくなったりしてしまいます。
かといって喪主の挨拶が短すぎるとあっという間に終わってしまうので、参列者の人に喪主のお礼の気持ちが伝わり難かったりしめやかに行われる儀式にそぐわない可能性もあったります。
たとえ用意した原稿が短かったとしても、ゆっくり読んだり文章の間を十分取ったりするようにするだけで、2分ほどの長さになります。
目安としては原稿用紙1枚から1枚半、400文字から500文字で挨拶を考えると良いでしょう。
暗記せずカンペを読み上げても良い
喪主の挨拶をする際には、あらかじめ用意したカンペ原稿を読み上げる形でも問題ありません。
喪主の挨拶をする人の中には「暗記をしなければならない」と思い込む人もいるのですが、大切なことは気持ちを伝えることです。
無理に暗記をせずカンペを読み上げるようにしましょう。
もし、ある程度挨拶を覚えていたとしても、カンペの原稿は手に持っておくと安心です。
喪主の挨拶は人前で行われるので、緊張するあまり伝えるべき言葉が飛んでしまうことは少なくありません。
カンペが手元にあると万が一忘れてしまった時にも問題なく喪主の挨拶ができますので、暗記をすることにこだわらず喪主の挨拶を努めるようにしましょう。
代理を立てても良い
喪主は故人の一番身近な家族であるため、忙しくして体調を崩してしまったり、心情的にどうしても人前で話すことが難しかったりすることがあります。
そのような場合には、喪主本人ではなく他の遺族を代理として立てても大丈夫です。
たとえば、高齢の父親が亡くなりその妻である母親が喪主というケースの場合、喪主の挨拶は本来なら高齢の母親が努めることになります。
この時、もし母親が「人前で話すことができない」「葬儀に出席するだけでも手一杯」ということであれば、その子供が代理として喪主の挨拶をしても良いのです。
絶対に喪主が参列者にご挨拶をしなければならないわけではありません。
状況を見て、遺族で話し合い臨機応変に対応するようにしましょう。
まとめ
法事や法要の喪主の挨拶について、亡くなった人との続柄や場面ごとに詳しく解説しました。
表現の違いはありますが、基本となることは「参列者に対する感謝の気持ち」と「亡くなった人への家族の思いを伝えること」が大切です。
喪主の挨拶は難しいと感じるかも知れませんが、「気持ちを伝えること」という基本さえ守れば、必ず参列者に遺族の思いが届きます。
今回のお伝えしたことを参考にして、自分の気持ちが伝わる言葉を選びながらポイントを押さえた喪主の挨拶を行なってください。