毎年訪れるお彼岸を、みなさんはどのようにお過ごしでしょうか?
仏壇にお供え物をしてお墓参りを行う方も多いと思いますが、「お彼岸の意味や正しい過ごし方は?」と聞かれれば、良くわからない方がほとんどです。
そこで、今回はお彼岸の意味を説明しながら、「過ごし方」「注意点」「お供え物」について解説します。
また、併せて2024年のお彼岸の期間がいつからいつまでなのかについても説明しますので、今年のお彼岸期間を一目で確認できます。
目次
お彼岸とは

お彼岸とは、春と秋に訪れる仏教行事で、「春分の日」と「秋分の日」を中心にその前後3日間を含めた合計7日間が彼岸期間です。
このお彼岸の期間はそれぞれ次の名称で呼ばれ、その中でもお彼岸の中心となる「中日」は、お彼岸期間の中でも特に重要と考えられています。
- 彼岸の初日:彼岸の入り
- 彼岸の真ん中にあたる春分の日と秋分の日:中日
- 彼岸の最終日:彼岸の明け
なお、お彼岸はインドの礼拝用言語であるサンスクリット語で、極楽浄土を表すことばです。
この極楽浄土は西の方角にあるとされ、春分の日と秋分の日は太陽が真西に沈むことから、この彼岸の地へとつながりやすいと考えられてきました。
このような宗教観から、この期間中は家族でお墓参りを行ったり、先祖供養を行う彼岸会(ひがんえ)という法要に参加したりするなどして過ごすことが一般的です。
法律上の定義
先ほどの解説のとおり、彼岸期間の中日にあたる春分の日と秋分の日は「国民の休日に関する法律」の中で、次のような主旨の下に国民の祝日と定められています。
- 春分の日:自然を称え生物をいつくしむ祝日
- 秋分の日:祖先を敬い亡くなった方を偲ぶ祝日
この法律上の定義からもわかるように、お彼岸は「自然」「動植物」「ご先祖様の魂」などに対して、感謝と敬意の心を再確認するための期間です。
普段あまり考えることが少ないこのような気持ちですが、お彼岸期間中は周囲の環境やご先祖様を意識することで、ご自身が一人で生きているわけではないことに気がつくことでしょう。
お彼岸とお盆の違い
お彼岸と同じく先祖供養を行う時期にはお盆がありますが、この2つの宗教行事は教義において次の違があります。
- お彼岸:あの世とこの世が繋がるがご先祖様がこの世に帰ってくることはない
- お盆:あの世からこの世にご先祖様が帰ってくる
このような違いがあるお彼岸とお盆ですが、この違いから供養方法も次のように異なります。
- お彼岸:この世にいる遺族が墓参りを行うことで先祖の魂を供養する
- お盆:この世に帰ってきた先祖の魂を自宅で供養する
2024年(令和6年)のお彼岸の期間はいつからいつまで?

ここまでは、お彼岸の成り立ちやその定義について解説してきました。
続いて、2024年(令和6年)のお彼岸の時期について説明しましょう。
お彼岸に実家に帰省する計画がある方や、親族が集まり法事を計画している方は、こちらの内容を役立ててください。
2024年(令和6年)の春彼岸期間
春彼岸は、春分の日を中心にその前後3日間がお彼岸の期間です。
2024年の春分の日は3月20日の水曜日となるため、春彼岸の期間は2024年3月17日(日)から2024年3月23日(土)までがお彼岸期間となります。
- 彼岸の入り:3月17日の日曜日
- 中日(春分の日):3月20日の水曜日
- 彼岸明け:3月23日の土曜日
2024年(令和6年)の秋彼岸期間
秋彼岸は、秋分の日を中心にその前後3日間がお彼岸の期間です。
2024年の秋分の日は9月22日の日曜日となるため、秋彼岸の期間は2024年9月19日(木)から2024年9月25日(水)までがお彼岸期間となります。
- 彼岸の入り:9月19日の木曜日
- 中日(秋分の日):9月22日の日曜日
- 彼岸明け:9月25日の水曜日
お彼岸に行うこと

お彼岸というとお墓参りを連想する方が多いですが、この期間に行うことはそれだけではありません。
ここでは、お墓参りを行うタイミングを含めて、お彼岸期間中に行うべき事柄について解説します。
- お墓参り
- お彼岸法要
- 六波羅蜜(ろくはらみつ)修行
- お墓の今後を話し合う
お墓参り
前述のとおり、お彼岸は多くの方がお墓参りを行います。
家族や親戚が連れ立ってお墓参りを行いますが、この時期のお墓は混雑することが一般的です。
特に、祝日にあたる中日は多くの方がお墓参りを行うため、ご先祖様に静かな環境で感謝の気持ちを伝えたい方は、中日は避けた方が良いでしょう。
お墓参りを行うタイミング
お彼岸の期間は7日間あるため、いつお墓参りを行うべきかそのタイミングについて迷っている方も多いようです。
このお墓参りを行うタイミングは、期間中であればいつでも良いという考えが一般的です。
ただし、時間は午後よりも午前中が推奨され、できる限り一日の予定の最初にお墓参りを行うべきと考えられています。
なお、夕方以降の暗くなった時間帯のお墓参りは、足元に危険があるためできる限り避けた方が良いでしょう。
お彼岸法要
お彼岸期間中は、多くの寺院で「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれる法要を通して故人の合同供養を行います。
檀家やお墓の所有者の多くは、この法要に参加することでご先祖様を手厚く供養します。
なお、寺院によっては僧侶が檀家の家を回って供養する場合もありますので、直接寺院へ確認した方が良いでしょう。
お彼岸法要のお布施相場
寺院が開催する彼岸会に参加するには、他の法要と同じくお布施が必要です。
この際のお布施相場は3,000円から1万で、他の法要と比較するとやや低めとなっています。
六波羅蜜(ろくはらみつ)修行
六波羅蜜とは、冒頭で解説したインドの礼拝用言語であるサンスクリット語の「パーラーミーター」を音写したことばで、これは日本語では「至彼岸」と訳されます。
この至彼岸とは大乗仏教における悟りの境地を表し、この境地に達するためにあるのが、次の六波羅蜜の6つの修行です。
- 布施(ふせ)波羅蜜:見返りをもとめず他人のためにおしみなく善行を施す
- 持戒(じかい)波羅蜜:戒律を守り身をつつしみ他人に迷惑をかけない
- 忍辱(にんにく)波羅蜜:身におこる災いを受け入れて耐えしのぶ
- 精進(しょうじん)波羅蜜:誠心誠意努力し続ける
- 禅定(ぜんじょう)波羅蜜:常に静かな心を保ち動揺しない
- 智慧(ちえ)波羅蜜:怒りや愚痴にとらわれず真理を正しく見極める
古来より、仏門に席を置く僧侶は悟りの境地に近づくために、あの世とこの世が近づくお彼岸にこの修行を行います。
現代に生きる私たちがこの修行を行うことは稀ですが、お彼岸本来の意味を知ることで、豊かな人生を過ごすためのきっかけとなることは確かです。
お墓の今後を話し合う
お彼岸は、遠くに離れて暮らす家族が故郷に帰省する数少ない機会です。
普段集まることができない家族が集まった際には、今後のお墓のあり方やご先祖様の供養方法などを話し合ってみてはいかがでしょうか?
未来を見据えた話し合いを行うことで、ご自身よりも下の世代の方が無理なく先祖供養を行う環境が生まれ、一族の拠り所となるお墓を末永く守っていくことができるでしょう。
お彼岸期間の注意点は?してはいけないことは?

ご先祖様に感謝の気持ちを伝え、普段よりも手厚く供養するためのお彼岸ですが、この期間中には気を付けなければならない事柄もあります。
ここでは、お彼岸の注意点を解説しながら、この期間に行ってはいけないとされる行事についてお伝えします。
- 供養は四十九日法要を迎えてから行う
- 大きな集会は控える
- お見舞いは縁起が悪いとする向きもある
供養は四十九日法要を迎えてから行う
お彼岸は、命日から数えて49日が経過し、四十九日法要を行ってから初めて訪れるお彼岸が「初彼岸」です。
そのため、命日の直後の彼岸では故人の供養を行うことはありません。
亡くなった方の時期によっては、初彼岸が翌年となることも珍しくないため注意が必要です。
大きな集会は控える
お彼岸期間は喪中のように「身を慎む」期間ではないため、慶事を行うことも参加することに問題はありません。
しかし、この時期はお墓参りを慣習にしている方もいるため、大きな集会を開催する場合は日程に対する配慮が必要と考えましょう。
お見舞いは縁起が悪いとする向きもある
彼岸は、あの世とこの世の結びつきが強まることから、縁起の悪い期間と考えることもできます。
そのため、お見舞は避けた方が良いとする向きもあります。
この考えは相手との関係性や地域の慣習によっても異なりますが、相手が目上の方である場合は特に気をつけた方が良いでしょう。
お彼岸のお供え物

お墓参りを行うお彼岸には、お供え物を持参する習慣がありますが、この際にはどんなお供え物を用意すれば良いのでしょうか?
ここでは、お墓参りの際に墓前に供えるお供え物の定番の品を紹介します。
- 秋彼岸の定番は彼岸花
- 食べ物の定番はおはぎ・ぼたもち
秋彼岸の定番は彼岸花
お彼岸期間だからといって、お墓に供える仏花に特別な決まりごとはありませんが、秋彼岸ではこの時期に咲く「彼岸花」がお供え物の定番です。
なお、春彼岸では菊やユリなどの仏花がお供え物の定番ですが、これ以外では故人が生前に好んだ花を供える方も多くいます。
食べ物の定番はおはぎ・ぼたもち
食べ物としてのお供え物の定番は、春彼岸であれば「ぼたもち」、秋彼岸であれば「おはぎ」です。
ぼたもちとおはぎは同じ和菓子ですが、実は春に咲く牡丹の花と、秋に咲く萩の花にちなんで名前が付けられています。
秋は小豆の収穫時期であることから、小豆の皮が柔らかいために粒あんでおはぎを作り、春まで保存された小豆は皮が硬いことからこしあんでぼたもちが作られてきました。
現在は良質な小豆が年間を通して入手できることから、季節によってぼたもちとおはぎを作り分けする必要はありません。
しかし、以前の食料の保存事情が影響して、現在でもお供え物の定番は季節によってこのように異なります。
お彼岸の墓参りに行けない場合の対応方法

お彼岸は実家に帰省して先祖供養を行いたいものですが、仕事の都合や家庭の事情などで、全ての方がお彼岸にお墓参りを行うことができるわけではありません。
このような場合は、彼岸があるとされる西の方角に手を合わせて、ご先祖様に感謝の気持ちを伝えましょう。
また、お墓がある実家へお供え物を贈るなどをすれば家族や親族も喜んでくれます。
お供え物として贈る品は3,000円から5,000円程度で、日持ちのするお菓子や飲み物などが一般的です。
宗派別のお彼岸行事

先ほど解説したとおり、お彼岸期間中は全国的に「彼岸会」を行うことが一般的ですが、この法要は宗派によって次のように異なります。
真言宗:大師会(だいしえ)
真言宗の寺院では春彼岸期間である3月21日に、真言宗の開祖である弘法大師空海を讃える「大師会」を開催します。
弘法大師空海を信仰する方々は、この時期お住まいの地域の真言宗の寺院へ集まり、この法要に参加するのが習わしです。
浄土宗:日想観(にっそうかん)
日想観とは浄土宗に伝わる瞑想法です。
浄土宗の教義では念仏と同様に瞑想が重んじられ、大阪の四天王寺では春分の日と秋分の日に夕方から日想観が行われています。
まとめ

お彼岸は、ご先祖様や故人に想いを馳せ手厚く供養を行う大事な機会です。
また、春彼岸は冬の寒さが和らぎ秋彼岸は夏の暑さから解放される季節でもあるため、年間で最も過ごしやすくお墓参りを行いやすい季節でもあります。
普段あまりお墓と縁のない方でも、今年のお彼岸は家族や親族を連れ立ってご先祖様のお墓に手を合わせ、普段の感謝の気持ちを墓前に語りかけてみてはいかがでしょうか。