教育資金の一括贈与の特例とは?手続き・利用する際の注意点

生前贈与
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

子や孫の教育のために、自分の資産から贈与してあげたいと考える方は少なくないかもしれません。そんなときにネックになるのが、贈与税です。
贈与税の基礎控除額は110万円で、それを超えると、贈与税が課せられます。子供の入学金や留学費など、額の大きい資金を援助すると、贈与税がかかってしまうのではと不安になる方もいるでしょう。
しかし、贈与税には、その使途や条件によって、贈与税がかからないように特例制度が設けられているものがあり、教育資金については、教育資金の一括贈与の特例というものが存在します。
他にも、

などがあります。
本項では、教育資金の一括贈与の特例について解説します。

1.教育資金の贈与税について

教育資金の一括贈与の特例の話をする前に、1章ではまず「教育資金は基本的に贈与税がかからない」というお話をさせて頂きます。
「贈与税がかからないなら、特例なんて必要ないのでは?」と思われた方がいるかもしれません。
順を追って説明すれば、なぜ税金がかからないのに、特例が設けられているのか理解できます。まずは順番に確認していきましょう。

教育資金はそもそも税金がかからない?

人から現金や不動産などの財産を受け取ったとき、その額が110万円を超えるときには、超えた額に応じて贈与税が課せられます。
ただし、個人からの財産の贈与であっても、贈与税がかからない場合がいくつか定められています。そのひとつが、教育資金に充てる金銭です。
具体的には、父母や祖父母、兄弟姉妹や夫婦などの扶養義務者※1 が、教育資金に充てるために、通常必要だと認められるものに関しては非課税とされています。
教育費用を親や祖父母が支払った時に、贈与税がかかるとなれば、教育を受けることが子どもにとって大きな負担になってしまうという考え方から、その分は非課税とすると決められているのです。
上記と同じ理由で、生活費についても基本的に贈与税が課税されることはありません。
ここでいわれている「教育資金」には
● 学校に支払う入学金や授業料
● 学用品にかかる費用
● 塾や英会話、スイミングスクールなどの習い事
● 自動車学校などの費用
留学で外国学校に支払う費用や、航空機代
などが含まれます。
「留学」に関しては、学校の寮に住む場合は教育資金の中に含まれますが、ホームステイ代は含まれないなど、細かな条件が決められています。
※扶養義務者に当たるのは、曾祖父母、祖父母、父母、夫婦、兄弟姉妹です。また、父母がいるから祖父母は扶養義務者にならないということはありません。

「直接充てられる」という事実が重要

贈与税がかからないのは、その金銭が教育資金に直接充てられる場合のみです。
それらを預金したり、あるいは他の用途に使っている場合は、当然ながらこの制度は適用されず、額によっては贈与税が課せられます。
ですから、もし入学金などで110万円を超える教育資金を祖父母などから受け取る場合は注意しなければならないことがあります。
こうしたケースでは、祖父母が直接学校等に納入するのではなく、父母の口座に振り込んで、実際の納入は父母がするということが多いでしょう。
しかし、この場合、祖父母から受け取ったお金が、教育資金として孫に贈与されたものなのか、父母(祖父母から見て子)に贈与されたものなのかはわかりません。
後者の場合、祖父母から贈与されたお金が教育資金に使われたのか、預金やその他の用途に使われたのかは、厳密にいうと判断できませんし、教育に使われたとしても、直接ではなく、間接的に充当されたということになります。
仮に「親への贈与」と判断された場合は、当然ですが教育資金ではなくなるので、贈与税がかかってしまいます
このように判断されることは少ないですが、不安が残るという場合は、祖父母など贈与する人が直接学校などに納入するのが一番良いです。
ただし、学校によってはそれが難しいこともあります。
そんなときには、少し手間ですが、教育資金専用の口座を作り、そこに振り込むという方法も良いかもしれません。
親が日常生活で使用している口座とは別に作ることで「子供のための教育資金」であることを主張できるからです。

「都度」支払われる必要がある

上記のような点に注意すれば、基本的には教育資金に贈与税が課税されることはないと考えてよいのですが、ひとつだけ大きな条件があります。
それは、その資金が「必要な都度」支払われる場合のみ、贈与税がかからないということです。
例えば、将来の教育資金にと考えて「まとまったお金」を渡したり、毎月の教育資金を積み立てておいたりといったことはできません。
支払いが必要になったタイミングで、必要な額を贈与した場合だけ、贈与税が免除されます。
しかしそれでは、孫の将来のためにと思っても、そのときがくるまで何もできないことになってしまいます。
それを解消するために生まれたのが、本項の主題でもある教育資金の一括贈与税の特例です。

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2.教育資金の一括贈与の特例について

さて、2章では本題である教育資金の一括贈与の特例について説明します。
教育資金の一括贈与の特例は、平成25年度の税制改正によって生まれた特例です。
この特例では「30歳未満の子や孫(直系卑属)に対して、教育資金に充てる目的で贈与する金銭に関して、1500万円までが非課税」になります。
つまり、教育資金は必要な時に必要な分だけ贈与していれば贈与税は基本的にかかりませんが、この特例を利用すれば、一括贈与した場合でも、1500万円まで非課税にできる、という制度という訳です。
「教育資金に充てる目的」とは、具体的には、
入学金
授業料
保育費
施設設備費
学用品費
修学旅行費
給食費
などが挙げられます。

専用口座を開設する必要がある

この特例を受けるには、まず、銀行、信託銀行、証券会社といった金融機関で専用口座を開設する必要があります。
そして、教育資金非課税申請書を、口座を開設した金融機関経由で、税務署に提出します。
提出期限は、専用口座に信託がされる日、預金や貯金の預け入れをする日、または、有価証券を購入する日までとなっています。

学校等以外の場合は500万円まで

この特例は1,500万円までは非課税と説明しましたが、学校等以外に支払う分については、500万円までと定められています。
ここでいう「学校等」とは、学校法で定められた、
● 幼稚園
● 保育所
● 認定こども園
● 小・中学校、高等学校
● 大学(院)
● 専修学校
● 各種学校
● 一定の外国の教育施設
のことを指します。
これ以外の、たとえば留学や、塾やスイミングスクールなどの習い事、自動車学校などに関する費用については、合計で500万円までという上限が設定されているのです。

特例が発生する条件

教育資金の領収書を銀行に提出する必要がある

少し面倒なのですが、専用口座のお金を使った場合、それを教育資金に充てたという証拠として、領収書を金融機関に提出しなければなりません。
また領収書の中に、教育資金以外のものも含まれる場合には、線を引くなどして区別できるようにしておきましょう。
提出期限は支払方法によって2つに分けられています。
まず、先に手元のお金で支払いをしてから、その後に専用口座から払い出す方法をとった場合、この場合は、領収書の支払年月日から1年を経過する日までが期限となります。
これ以外の方法をとった場合には、領収書の支払年の翌年の3月15日までが提出期限となります。
支払いの仕方は口座開設時に選択するので、よく確認しておきましょう。

30歳になるまでに使い切る必要がある

受贈者(子や孫)が30歳になった場合、口座に残高があっても、この特例は自動的に打ち切られます。
残ったお金を、贈与者である祖父母などに戻すことはできず、受贈者がそのまま贈与を受けることになります。
もし、その時点での口座残高が110万円を超える場合には、その額に応じた税率で、贈与税が課せられることになるのでご注意下さい。
この場合、受贈者は贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日の間に申請をして、贈与税を納めなければなりません。
但し、残ったお金は単なる贈与財産になるため、教育資金以外の目的でも使うことができますし、領収書などの提出も不要になります。

祖父母の合計金額で計算される

条件というよりは注意点となりますが、特例で認められる1500万円までの非課税とは「1人の人が受け取る合計の金額」と理解しておきましょう。
たとえば、父方の祖父から1500万円、母方の祖父から1500万円受け取った場合、各々から贈与された額は1500万円以内です。
しかし、受け取った合計額は3000万円と、1500万円を超えてしまいます。
この場合、超過した1500万円分について、贈与税が課せられてしまいます。
教育資金の一括贈与の特例は、あくまでも「1人の人が受け取る合計の金額」が1500万円なのです。
教育資金を支払ってくれるという祖父母が複数人いる場合には、互いにコミュニケーションをとり、調整しておく必要があります。

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3.特例を利用する上で、注意すべき点

子どもや孫の将来のため、一度に大きな額を非課税で贈与できるという点で優れてる特例ですが、いくつか気をつけておきたいことがあります。
3章では特例を利用する上での注意すべき点について解説いたします。
2章で解説した条件と重なる部分もありますが、一つ一つ確認していきましょう。

使い切れないほどの資金を贈与しないか

繰り返しになりますが、教育資金の一括贈与の特例は、贈与を受けた本人が30歳を迎えると、自動的に終了してしまいます。
そして、残った資金はそのまま(贈与税の課税対象として)贈与されることになるのです。
特例が終了した時点での専用口座の残高が、贈与税の基礎控除額である110万円を超えている場合、受贈者は贈与税を支払わなくてはなりません。
贈与税が残高を上回ることはありませんから、多く残り過ぎてしまったとしても、そこから支払えばいいということにはなりますが、教育資金以外の用途で専用口座のお金を使いこんでしまっていたといったときには、贈与税の支払いが困難になる恐れがあります。
それを見越して、というのは難しい話ですが、そうしたケースもあるということを頭に入れておきましょう。

一括贈与をする必要があるかどうか

この特例を使う意味は「一括贈与」できる点にあります。
1章でも説明しましたが、必要な時に、必要なだけ贈与する分には、特例を利用しなくても教育資金と認められれば非課税となるからです。
また、特例を利用すると、毎年領収書をそろえたり、30歳までに使い切らなけらばならなかったりと、さまざまな制約がついてきます。
一度に大きな額を贈与する必要が本当にあるのかどうか、しっかりと考えた上で、メリットの大きい方を選択すると良いでしょう。

贈与しすぎて生活破綻しないか

大きな額を贈与できる制度ですから、一回の金銭的な負担は大きくなります。
当然のことですが、自分たち(贈与者)の生活が破綻してしまうほど贈与してしまっては意味がありません。
また、先は短いからと考えて老後の生活資金を削ってまで贈与するというのも非常に危険です。
あと数年と思っていても、それ以上に元気に生きられることももちろんあります。
教育資金贈与の平均は、600~700万円です。
そうした数値も参考に、無理のないプランで贈与額を決めましょう。

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まとめ

教育資金の一括贈与の特例は、「一括贈与」という点でメリットがあります。
が、3章で述べたように、本当に一度に多額の贈与をする必要があるのか、特例によって発生するメリットとデメリットを天秤にかけながら判断することが重要かなと思われます。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。