【2020】負担付贈与とは?かかる税金・解除方法・メリット&デメリット

負担付贈与 その他
この記事を監修した専門家は、

相手に無償で財産を贈与する一般的な贈与とは異なり、「負担付贈与」では贈与をするときに一定の負担を相手に求めます。

介護を依頼したい場合や、事業を後継者に承継する際に使えるのが負担付贈与です。

この記事では、負担付贈与の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。

負担付贈与でポイントになる税金の計算方法も紹介するので、贈与する人・贈与される人それぞれにかかる税金についても正しく理解するようにしましょう。

負担付贈与とは

疑問を投げかける男性

「贈与」という単語は聞いたことがあっても、「負担付贈与」という言葉は聞き慣れない人もいるはずです。

まずは、負担付贈与の定義や似た名称の用語との違いなど、負担付贈与とは一体どういった贈与なのか確認しましょう。

贈与契約の一種

名称に「贈与」という単語が入っていることからわかるように、負担付贈与は贈与の一種です。

何らかの財産を相手に渡す点は一般的な贈与と変わりません。

ただし、一般的な贈与のように相手に無償で財産を渡すわけではなく、負担付贈与では相手に一定の負担を求めます。

負担にあたる内容を相手が履行する代わりに財産を渡すのが負担付贈与です。

たとえば、次のようなケースが負担付贈与にあたります。

  • 「自分の老後の介護をしてくれたら相手に自分の財産を渡す」という内容で相手と贈与契約を結ぶ場合
  • 経営者が事業を後継者に承継する際、会社というプラスの財産だけでなく銀行からの借入金の返済義務も引き継ぐ場合

つまり、介護や借金返済義務という負担付で贈与するのが負担付贈与です。

「条件付贈与」や「負担付遺贈」とは異なる

「負担付贈与」と名称が似ているものとして、「条件付贈与」と「負担付遺贈」の2つがあります。

ただ、この2つは負担付贈与とは意味が異なるためまったく別の用語です。

条件付贈与

「条件付贈与」は、たとえば「試験に合格してこの資格を取得したら〇〇万円あげる」といったように、条件を満たしたときに贈与を行うものです。

負担付贈与における負担は、贈与を受ける側が履行しなければならない義務の意味合いが強く、それに対して条件付贈与の場合はあくまで条件に過ぎません。

条件が満たされなければ贈与が行われないだけです。

負担付遺贈

「負担付遺贈」は、遺言書によって相手に財産を渡す「遺贈」という方法を活用する際に、相手に一定の負担を求める方法です。

相手に財産を渡す点や一定の負担を求める点は、負担付贈与と同じで変わりません。

ただし、遺贈はあくまで遺言書によって自分の死後に財産を渡す方法なので、生前に財産を贈与したい場合には使えない点が負担付贈与とは異なります。

また、遺贈は財産を渡す人の意思だけで遺言書に記載でき、遺贈を受ける側が拒否することもできますが、負担付贈与では両者が事前に合意しているので拒否や撤回は簡単ではありません。

負担付死因贈与は負担付贈与の一種

「負担付死因贈与」という贈与もあり、これは負担付贈与の一種になります。

まず、死因贈与は財産を渡す側が亡くなったときに贈与する方法です。

たとえば、「私が死んだら〇〇万円をあなたにあげます」といった内容で、あらかじめ生前に死因贈与契約を結んでおきます。

そして、この死因贈与契約の内容が負担付贈与である場合が負担付死因贈与です。

「私が死ぬまでの間に介護をしてくれたら、私が死んだときに〇〇万円をあなたにあげます」といった形で贈与契約を結ぶのが負担付死因贈与です。

負担付贈与の成立要件

書類に記載する人

負担付贈与は贈与の一種なので、成立する要件は一般的な贈与と同じです。

そして、贈与は贈与契約という契約の一種なので、成立するための要件が法律で決まっています。

負担付贈与を含めた贈与契約がどうやったら成立するのか、成立要件について解説していきましょう。

贈与契約は口頭でも成立するが負担付贈与契約書を作成した方が良い

贈与をする側である「贈与者」、贈与を受ける側である「受贈者」、この両者が合意すれば贈与が成立します。

法的には口頭で確認しただけでも贈与が成立することになっているため、贈与の内容を書面などの形で残す必要は必ずしもありません。

ただし、口約束では贈与の内容について認識相違が生じたり、後々にトラブルになる場合があります。

そのため、負担付贈与も含めて、贈与をする際には贈与契約書を作成して贈与者・受贈者それぞれで契約書を保管することが一般的です。

負担付贈与をする場合には、負担付贈与契約書をしっかり作るようにしましょう。

負担付贈与契約書の雛形

たとえば、自分の身の回りの世話や介護を依頼するために負担付贈与契約書を作成する場合、次のような形で作成します。

負担付贈与契約書

贈与契約書では、「誰が誰に対して何をあげるのか」を明確に記載することが非常に重要です。

上記の契約書のように現金であれば特に問題は生じませんが、土地を贈与するような場合は、土地が特定できるように明確に記載します。

たとえば、単に「土地をあなたにあげます」と記載しただけでは、どこにある土地なのかがわかりません。

そのため、登記事項証明書の内容を転記する形で地番など詳細な情報を贈与契約書に記載します。

そして、署名は自筆で押印は実印で行い、負担付贈与契約書を2通作成して贈与者・受贈者それぞれで1通ずつ保管するようにしてください。

負担付贈与で「受贈者」にかかる税金

受贈者にかかる税金

財産を贈与された人、つまり受贈者には贈与税がかかる場合があります。

この点は、一般的な贈与でも負担付贈与でも変わりません。

ただし、贈与税を計算するときの基準になる財産の価格評価の方法が、負担付贈与と一般的な贈与では異なります。

そのため、負担付贈与では税金の計算方法もポイントの一つです。

まずは、「受贈者」にかかる税金について計算方法を確認しましょう。

受贈者に贈与税がかかる場合がある

贈与を受けた受贈者にかかる税金が「贈与税」です。

贈与された財産の金額を基準にして、税額を計算して納税します。

 

ただし、贈与を受けたすべてのケースで贈与税がかかるわけではありません。

財産価格から基礎控除額110万円を引いた上で税率をかけて税額を算出するため、贈与税がかかるのは贈与された財産の金額が基礎控除額を超える場合です。

贈与税の計算方法

一般的な贈与では、次の計算式で贈与税を計算します。

  • 一般的な贈与における贈与税額 = (贈与財産の価格 - 基礎控除額110万円) × 税率 - 控除額

ただし、負担付贈与では負担にあたる部分も税額計算で考慮されるため、次のように計算します。

  • 負担付贈与における贈与税額 = (贈与財産の価格 - 借金などの債務額 - 基礎控除額110万円) × 税率 - 控除額

たとえば、自宅を贈与する際に、住宅ローンの返済も合わせて相手に任せて負担付贈与をした場合は、自宅の価格からローン返済額を引いて贈与税を計算します。

ただ、債務額として差し引けるのは金銭に換算できるものだけです。

そのため、たとえば「自分の老後の介護をしてくれたら相手に自分の財産を渡す」といった負担付贈与では、介護という負担は金銭に換算ができないため引くことはできません。

贈与財産が不動産の場合は時価で計算する

贈与税の計算式の中に出てくる「贈与財産の価格」として何の金額を使うのか、贈与税の計算ではこの点が問題になります。

まず、一般的なの贈与であれば、不動産を贈与された場合に贈与税の計算で使う価格は「相続税評価額」です。

 

しかし、負担付贈与ではこの点が異なります。

負担付贈与をした場合、不動産の価格として贈与税の計算で使うのは「その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額」、つまり時価です。

たとえば、時価3,000万円の家をローン残高1,500万円とともに贈与された場合は、贈与税は次のように計算できます(2種類ある贈与税の税率のうち、以下では特例税率を適用するケースとして計算します)。この例では父母祖父母から20歳以上の子や孫への贈与とします。

  • 贈与税額 = (3,000万円 - 1,500万円 - 基礎控除額110万円) × 税率40% - 控除額190万円 = 366万円

贈与財産が不動産以外の場合は「相続税評価額」で計算する

負担付贈与で贈与される財産が不動産以外の場合は、「相続税評価額」を使って贈与税を計算します。

負担付贈与では、贈与された財産が不動産かそれ以外かで財産の評価方法が変わるので、間違えないようにしましょう。

贈与された資産を売却した場合にかかる税金と計算方法

負担付贈与で受け取った財産を売却した場合、気をつけなければならないのが所得税の計算です。

所得税は取得財産の価格をもとに税額を計算しますが、「贈与で取得した財産の価格」の考え方が一般的なの贈与と負担付贈与では異なります。

 

まず、一般的な贈与では、贈与した人が購入したときの価格が贈与された人にも引き継がれるため、所得税の計算で使うのは、贈与した人が当初購入した時の価格です。

贈与を受けた際に受贈者が贈与者に払った金額ではありません。

 

これに対して、負担付贈与では贈与を受けた際に受贈者が負担した金額を使って所得税を計算します。

贈与した人が購入したときの価格が贈与された人にも引き継がれるわけではありません。

負担付贈与で「贈与者」にかかる税金

負担付贈与で贈与者にかかる税金

負担付贈与では、財産を贈与した「贈与者」に税金がかかることがあります。

ただ、財産を贈与した上に税金まで取られると聞くと、違和感を覚える人もいるかもしれません。

ここでは、負担付贈与で贈与者に税金がかかる理由や計算方法について紹介します。

贈与者に所得税・住民税がかかる場合がある

たとえば、贈与者Aが受贈者Bに対して、ローン残高2,500万円のマンション2,000万円を負担付贈与した場合を考えてみましょう。

この負担付贈与では、AがBに渡した資産として借金のほうが多く、差額にあたる500万円分の債務の支払いをAは免れています。

負担付贈与としての贈与者はAですが、実質的には逆にBがAに返済資金として500万円を渡していることと変わりません。

そのため、差額の500万円をAが受け取ったケースと同等と見なして、Aには所得税と住民税がかかります。

 

このように、不動産の取得費をローン残高が上回る形で負担付贈与を行うと、贈与者に所得税・住民税がかかる場合があるので注意が必要です。

贈与した側に所得税や住民税がかかる場合は、申告手続きを忘れずに行ってください。

負担付贈与における所得税・住民税の計算方法

借金などの負担額が贈与財産の価格取得費を上回る場合には、その差額に所得税・住民税の税率を掛けて税額を計算します。

税率は所得金額や財産の種類によって異なり、たとえば不動産で長期譲渡所得に該当する場合の税率は、所得税15%、住民税5%です。

負担付贈与のメリット

負担付贈与のメリット

負担付贈与を活用できる場面はいくつかありますが、たとえば次のような点が負担付贈与のメリットとして挙げられます。

負担付贈与のメリット
  • 介護をしてくれる人に確実に財産を渡せる
  • 生前に財産を贈与すれば相続対策になる

メリット①:介護をしてくれる人に確実に財産を渡せる

自分の介護をしてくれて特にお世話になった人に、確実に自分の財産を渡したい場合には負担付贈与が役立ちます。

介護をしてくれたら自分の死後に財産を贈与する旨を定めた負担付死因贈与契約書を生前に作っておけば、自分が死んだ後でも確実に財産を相手に渡せるからです。

 

また、自分が死ぬまでの間の介護を誰かにお願いしたい場合でも、単に介護を依頼しただけでは相手が応じてくれないことも考えられます。

このような場合にも活用できるのが負担付贈与です。

介護という負担付で財産を渡す負担付贈与契約を結ぶことを相手に提案すれば、実質的な報酬にあたる財産を確実にもらえることで相手が介護に応じてくれる可能性が高まります。

 

さらに、負担付贈与の場合は、負担にあたる内容が履行されると贈与契約の撤回が原則できなくなる点もポイントです。

介護という負担を履行すると、贈与契約が破棄されるリスクが基本的になくなります。

そのため、介護をする側にとっては契約を破棄されて財産をもらえなくなる心配をする必要がないため安心です。

メリット②:生前に財産を贈与すれば相続対策になる

たとえば、経営者が事業を後継者に引き継ぐ場合、会社と事業資金の借入金などの債務をまとめて後継者に承継する方法として負担付贈与が活用できます。

自分の死後に相続で事業を引き継ぐ方法もありますが、相続人の間で争いが生じるなど事業承継がスムーズに進むとは限りません。

自分が生きているうちに、事業を引き継がせたい後継者に対して負担付贈与によって承継しておけば安心です。

また、生前に財産を贈与しておけば、相続が起きたときに争いが起きずに済むため相続対策にもなります。

負担付贈与のデメリット

負担付贈与のデメリット

負担付贈与にはメリットがある一方で、残念ながらデメリットもあるので注意が必要です。

たとえば、次のようなデメリットが負担付贈与にはあります。

負担付贈与のデメリット
    • 贈与財産が不動産の場合は税負担が大きくなる
    • 相手の同意がなければ贈与が成立しない

デメリット①:贈与財産が不動産の場合は税負担が大きくなる

先ほど解説したように、負担付贈与で贈与する財産が不動産の場合、贈与税の計算で使うのは相続税評価額ではなく時価です。

基本的に時価は相続税評価額よりも高いため、贈与税の金額が大きくなってしまいます。

負担にあたる債務額を贈与財産の価格から差し引けば贈与税はそのぶん低く抑えられますが、時価で計算するために意外と贈与税が高くなる点には注意が必要です。

 

また、相続によって不動産を取得する場合は不動産取得税が非課税となりますが、負担付贈与によって生前に不動産を受け取ると不動産取得税がかかる点もデメリットになります。

そして、負担付贈与の負担にあたる債務額などが大きい場合には、贈与した側に所得税や住民税がかかることがある点もデメリットです。

デメリット②:相手の同意がなければ贈与が成立しない

そもそも、贈与は贈与する側と贈与を受ける側の両方が合意して成立します。

そのため、贈与する側が負担付贈与を希望していたとしても、相手が同意してくれなければ成立しません。

たとえば、負担付贈与の形を取って親族の誰かに介護を依頼しようとしても、親族の誰も応じてくれない可能性もあります。

贈与者と受贈者になる人の間で最低限コミュニケーションが取れていてお互いに理解があるなど、贈与契約が合意できるだけの下地があることが前提として必要です。

 

なお、負担付で何らかの財産を渡す方法としては、負担付贈与以外に「負担付遺贈」もあります。

遺贈の場合は相手の同意は必要なく財産を渡す側の意思だけで遺言書にその旨を記載できるため、負担付贈与のように相手の同意が得られず遺言書に記載できないといったことはありません。

ただし、自分の死後に遺言書の内容を確認した相手が遺贈を拒否できる点には注意が必要です。

確実に財産を渡すのであれば、負担付遺贈よりも負担付贈与をした方が良いことになります。

負担付贈与契約は解除できる?

負担付贈与契約は解除できる?

贈与契約を結んだ後になってから契約を解除したいと思った場合、簡単にできるのでしょうか?

贈与が成立する要件についてはすでに解説しましたが、成立した後に解除できる要件についても正しく理解しておくことが大切です。

 

そもそも、贈与は契約という立派な法律行為であり、契約が成立するための要件だけでなく契約を解除できる要件についても法律で定められています。

そして、一般的な贈与契約と負担付贈与契約では解除できる要件が異なるため、負担付贈与を行う場合はこの違いも押さえておくようにしましょう。

贈与契約の解除の可否は口頭と書面で異なる

贈与者と受贈者が契約解除に合意した場合は、当然契約を解除できます。

しかし、気をつけなければならないことは、両者が契約解除に合意したわけではなく、贈与者と受贈者のどちらかが一方的に解除したい場合です。

 

まず、贈与契約書などを作成していないケース、つまり書面によらない贈与は、各当事者がいつでも解除できます。

ただし、すでに履行が終わった部分については解除できません。

 

一方で、書面による贈与の場合は、当事者の一方的な意思だけでは解除できないことになっています。

そのため、履行が終わっている部分だけでなく、履行がまだ終わっていない部分についても書面による贈与では一方が解除の意思表示をしても解除できません。

負担付贈与では負担が履行されていると解除できない

贈与契約では、すでに履行されている部分の解除はできず、この点が負担付贈与で大きなポイントになります。

負担付贈与では負担にあたる介護や借金返済などが早い段階で履行されていることが多く、すで履行されていると契約の解除はできません。

 

介護や借金返済などの負担にあたる部分が履行され始めた後は、贈与者または受贈者が一方的に契約を解除できなくなる点には注意が必要です。

例えば、自分の介護を依頼するために負担付贈与契約を結び、実際に介護を受け始めてから「やはり負担付贈与契約はなしにしたい」と思っても、受贈者である介護者の同意がないと解除できません。

まとめ

財産を贈与する際に、相手に一定の負担を求める形の贈与が負担付贈与です。

負担付贈与は、自分の介護をお願いする代わりに財産の贈与を約束するような場合に活用できます。

贈与そのものは口頭でも成立しますが、事後的なトラブルを避けるためにも負担付贈与契約書を作成するようにしましょう。

贈与者・受贈者それぞれにかかる税金の種類や計算方法を正しく理解して、申告や納税の手続きを漏れなく行うようにしてください。

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