故人の葬儀を終えた後、遺族は故人に関する事務処理や相続の手続きを行います。
その際、遺族と故人の関係性を示すため、戸籍謄本を用意しなければなりません。
戸籍謄本は、誰がどこで生まれたか、誰の子供か、現在どこに住んでいるかなどの情報が記載されており、故人の事務処理や相続に欠かせない書類です。
今回は、戸籍謄本の基本知識と取り方、戸籍謄本を取る際の注意点を詳しく解説しましょう。
戸籍謄本とは

戸籍とは、簡単にいうと、夫婦とその子供全員の身分を公的に証明する書類です。
例えば、夫婦に未婚の子供が3人いる場合、夫・妻・子供3人で計5人分の情報が記載されています。
結婚した子供は元の戸籍から離れ、結婚相手と新しい戸籍を作らなければなりません。
つまり、戸籍は一度記載されたら終わりというものではなく、結婚・離婚などの変化に応じて変化するものなのです。
したがって、故人の資産に大きく関わってくる事務処理や相続手続きでは、故人とのつながりを正式に証明する書類として、戸籍謄本の提出を求められることが少なくありません。
相続に関係する戸籍謄本には、次のような種類があります。
戸籍謄本の種類 | 概要 |
---|---|
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 婚姻関係・親子関係を記録・証明する書類 |
改正原戸籍謄本 | 戸籍法の制定・改正前の戸籍謄本を写した書類 |
除籍謄本 | 戸籍に在籍する人が誰もいなくなったことを証明する書類 [/tableRow] |
相続では、血縁関係者を調べる際に、どの戸籍謄本が必要になるかわかりません。
故人と自分の関係性を公的に示し、故人に関係する手続きをスムーズにするため、適切な戸籍謄本を用意しましょう。
戸籍抄本との違い
戸籍謄本とよく間違えられるものに、戸籍抄本(こせきしょうほん)があります。
戸籍抄本は、一言でいうと「戸籍謄本から一部分を抜き出した書類」です。
例えば、夫・妻・子供2人の戸籍があったとき、戸籍謄本では家族全員の情報が記載されています。
これに対し、戸籍抄本は「子供1人」「夫婦2人」というように、一部分だけを証明するものなのです。
戸籍抄本に課せられる主な目的は、身分を明らかにすることと日本人であることを証明することなので、故人との家族関係を証明できません。
したがって、故人の事務処理や相続手続きでは、必ず戸籍謄本を用意しましょう。
戸籍謄本が必要なのはどんな時?

故人との家族関係を証明できる戸籍謄本ですが、実際にはどのような場面で必要になるのでしょうか?
ここでは、戸籍謄本が必要なケースについてお伝えしましょう。
- 相続手続きの時
- 年金手続きの時
- 保険金を請求する時
- 公正証書遺言書を作成する時
相続手続きの時
相続とは、故人の遺産を受け継ぐ行為です。
基本的には、故人と血縁関係にある人や、遺言書で指定された人が相続人となり受け継ぎます。
この際、故人との繋がりを公的に示すために戸籍謄本が必要です。
年金手続きの時
故人が亡くなったことで遺族年金等を申請する場合は、戸籍謄本で身分と受給権利を証明します。
「遺族基礎年金」「寡婦年金」「遺族厚生年金」等を申請する場合は、故人との関係を明らかにした上で、申請する権利があることを示さなければなりません。
この際に必要なのが戸籍謄本です。
戸籍謄本のうち、どのような書類が必要なのかわからない場合は、事前に社会保険事務所に問い合わせてみてください。
保険金を請求する時
故人が被保険者となっている保険金を請求するときは、戸籍謄本で故人との関係性を証明して手続きを進めます。
契約している保険会社によって必要な戸籍謄本は異なりますが、多くの場合は故人が亡くなっていることと受け取る人との関係性を証明しなければなりません。
どんな書類が必要になるかは、契約状況や各保険会社の規定で異なります。
まずは保険会社へ連絡して準備する書類を確認してください。
公正証書遺言書を作成する時
公正証書遺言書とは、公証役場で公的に認められた、法的拘束力のある遺言書のことです。
公証人が証明する遺言書なので、遺言者は相続人の身分や家族関係について、戸籍謄本で証明しなければなりません。
さらに、指定する相続人が広範囲になる場合は、婚姻関係・親子関係がわかる戸籍全部事項証明書だけではなく、改正原戸籍謄本や除籍謄本が必要なこともあります。
自分で手続きを行うのが難しかったり、用意する戸籍謄本で悩んだりする場合は、行政書士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
戸籍謄本の取り方

戸籍謄本には、直接窓口で申請したり遠方から郵送で受け取ったり、さまざまな取り方があります。
ここでは、戸籍謄本の取り方をそれぞれの方法に分け、詳しくお伝えしましょう。
- 本籍地の役場窓口で取得する
- 郵送で取得する
- コンビニで取得する
本籍地の役場窓口で取得する
戸籍謄本は、本籍地の市町村役場で管理されています。
したがって、窓口での取得を希望する場合は本籍地の役場まで出向き、窓口で申請・受け取りをしましょう。
自分で窓口申請することが難しい場合は、同じ戸籍に記載されている家族・親族であれば代理申請できます。
それ以外の人が代理申請する場合は、委任状と身分証明書を用意して申請・取得しましょう。
郵送で取得する
遠方に住んでおり、本籍地に出向くことも代理人を立てることもできない場合は、郵送で取得することもできます。
手続きの手順は次のとおりです。
- 各市町村のホームページで戸籍交付申請書をダウンロードする。
- 必要事項を記入・捺印する。
- 請求者(実際に取り寄せる人)の本人確認書類を用意する。できれば運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなどが望ましい。
- 手数料を定額小為替で用意する。
- 自分宛の住所・指名・送料分の切手を貼った返信用封筒を準備する。
- 必要書類に不備がないかを確認し、すべてを同封して送る。
郵送による取得方法は、各市町村役場のホームページで確認できます。
手続きに不備があると、そのぶん時間がかかります。
そのため、よくわからない場合は本籍地の役場窓口に電話して、不明点を明らかにしてから準備しましょう。
コンビニで取得する
窓口に出向く時間がなく、できれば急いで戸籍謄本を取りたいという方は、コンビニで取得すると良いでしょう。
本籍地がコンビニ交付に対応しており、マイナンバーカードを持っている場合、遠方からでも戸籍謄本を申請・受け取ることができます。
ただし、すべてのコンビニで取得できるわけではなく、さらに本籍地がコンビニ交付に対応してなければ取得はできません。
本籍地の窓口がコンビニ交付に対応しているかを確かめ、マイナンバーカードを用意してから申請しましょう。
戸籍謄本の取得にかかる費用

戸籍謄本を取る際には、枚数に合わせた手数料が必要です。
窓口取得の場合は手数料だけですが、それ以外の方法で取得する場合は別の費用もかかります。
ここでは、戸籍謄本を取得する際の費用について、申請方法別に詳しく解説しましょう。
- 窓口での取得費用:1通450円
- 郵送での取得費用:1通450円+郵送料
- コンビニでの取得費用:1通300円〜400円
窓口での取得費用:1通450円
本籍地の窓口で直接申請・取得する費用は、1通につき450円です。
ただし、これは戸籍全部事項証明書、もしくは戸籍個人事項証明書にかかる費用で、改正原戸籍謄本の場合は1通750円掛かります。
必要な戸籍謄本の種類と部数を事前に調べておき、そのぶんの料金を用意しましょう。
郵送での取得費用:1通450円+郵送料
戸籍謄本を郵送で取得する場合、手数料は1通450円ですが、別途郵送料が必要です。
郵送料も、自分から申請書類を出すときと、返信用の切手の分を合わせて計算しなければなりません。
例えば、自分から送る費用が350円だとすると、返信分も合わせて700円かかります。
郵送での取得には必ず返信用封筒が必要なので、過不足がないよう切手を準備しましょう。
コンビニでの取得費用:1通300円〜400円
戸籍謄本をコンビニで取得する場合、必要な費用は1通300円〜400円です。
実は、コンビニ取得費用は窓口よりも安いですが、どの市町村で取得するかによって費用に差が出ます。
例えば、福岡県福岡市の場合は50円が割引されますが、大阪府東大阪市では100円、富山県射水市では150円が割引されるのです。
事前にはっきりとした費用が知りたい場合は、対象となる市町村のコンビニ交付料金を確認してください。
戸籍謄本取得で必要なもの

戸籍謄本は、公的に身分を証明できる重要な書類なので、取得申請するときに準備が必要です。
ここでは、戸籍謄本を取得する際に必要なものをお伝えしましょう。
- 顔写真付きの身分証明書
- 認印
- 委任状
顔写真付きの身分証明書
戸籍謄本の取得を申請する際は、顔写真付きの身分証明書が必要です。
「運転免許証」「マイナンバーカード」「パスポート」などを用意して、申請者の身分が証明できるようにしましょう。
顔写真がついていても、社員証や資格証明書では対応してもらえませんので、必ず公的な顔写真付きの証明書を用意してください。
どうしても顔写真付きの証明書が用意できない場合は、窓口でそれに変わる身分証明書について相談しましょう。
認印
認印は、戸籍謄本取得を申請するための書類で必要です。
欠けがない認印を用意し、必要箇所に捺印して申請書を提出しましょう。
郵送申請の場合は、申請書の捺印を忘れていないか必ず確認してください。
委任状
委任状は、代理人に取得をお願いする際に必要な書類です。
委任状の形式は各市町村異なりますが、主に次のような内容を記載します。
- 代理人の住所・氏名
- 戸籍謄本を何通取得したいか
- 取得権限を委任するという趣旨
- 委任者(頼んだ人)の住所・氏名
- 捺印
委任状は、各市町村のホームページからダウンロードできます。
代理人は、委任状の他に自身の身分証明書も用意して申請しましょう。
戸籍謄本の取り方でよくある疑問

戸籍謄本は、婚姻や相続など特別なケースで扱うことが多いので、いざ取得しようとすると取り方に迷う人も多く見られます。
ここでは、戸籍謄本の取り方でよくある疑問とその答えをお伝えします。
取得する際の参考にしてください。
戸籍謄本を取得できる人は?
戸籍謄本を取得できるのは、基本的に次の条件を満たしている人です。
- 戸籍謄本に記載されている本人
- 配偶者
- 両親
- 祖父母
- 子供
- 孫
ただし、例外として上記に該当する人がいない場合は、次のような人も取得できます。
- 本人の兄弟・姉妹
- 本人の叔父・叔母
- 本人の従兄弟
それ以外の人は、本人からの委任状がないと代理申請できませんので、申請資格があるかどうかよく確認しましょう。
判断がつかない場合は、各市町村役場の窓口や行政書士・弁護士などの専門家に相談してください。
戸籍謄本の有効期限は?
戸籍謄本の有効期限は、提出先によって異なります。
例えば、金融機関への提出では3ヶ月〜6ヶ月、法務局や税務署だと有効期限を設けていないケースもあるのです。
つまり、戸籍謄本の有効期限を定めているのは提出先なので、法的に決まりはありません。
多くの場合、「〇ヶ月以内に取得した戸籍謄本を提出」といった形で提出先から有効期限が伝えられますので、それに従って用意しましょう。
戸籍謄本はどのコンビニでも取得できる?
戸籍謄本のコンビニ交付は、どこでも行われているわけではありません。
コンビニ交付にはマルチコピー機と呼ばれる機械が必要ですが、地域によってはマルチコピー機を置いていないこともあります。
戸籍謄本をコンビニで取得する場合は、あらかじめ交付可能なコンビニを調べておきましょう。
戸籍謄本を取る際の注意点

戸籍謄本を取る際は、スムーズに取得するために気をつけなければならないことがあります。
どのような点に注意するべきなのか、具体的な例をお伝えしましょう。
- 相続人をあらかじめ把握しておく
- 疑問・質問がある時は本籍地の役所窓口へ連絡する
- 手続きが難しい場合は専門家に相談する
相続人をあらかじめ把握しておく
相続手続きでは、故人と相続人の関係を証明するために戸籍謄本が必要です。
したがって、相続人がそれぞれに戸籍謄本を取らなければなりません。
しかし、相続人は必ずしも直系とは限らないので、遺言書などを確認して相続人を把握していないと、戸籍謄本の準備ができないのです。
相続人はあらかじめ把握しておき、それぞれに戸籍謄本を用意して相続手続きを行いましょう。
疑問・質問がある時は本籍地の役所窓口へ連絡する
戸籍謄本の取り方は、どこの市町村でもほぼ同じです。
ただし、申請書の形式やコンビニ交付の有・手数料の割引率は、それぞれの市町村で小さな違いがあります。
戸籍謄本を取る際、何か問題があったり疑問・質問を尋ねたりしたいときは、必ず本籍地の各役所窓口へ連絡しましょう。
手続きが難しい場合は専門家に相談する
戸籍謄本は、手順を間違えなければ誰でも取得できます。
ただし、戸籍を遡らなければならなかったり、複数人分の戸籍謄本が必要になったりする場合、一人で申請をすることは難しいでしょう。
手続きが難しい場合は、行政書士や弁護士といった専門家に相談し、できる範囲で手続きを行ってください。
まとめ

戸籍謄本は、故人の事務処理や相続手続きに欠かせません。
取り方はさまざまですが、必要な戸籍謄本の種類がわかれば、個人でも問題なく取得できます。
申請方法や手続きに必要なものをよく確認し、スムーズに戸籍謄本を申請・取得しましょう。