遺贈(イゾウ)とは?親族以外の人に資産を相続する方法。

生前対策
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1.遺贈について

遺贈とは

遺贈とは、遺言によって財産を「誰かに贈る」こと、または「贈ると示すこと」をいいます。法定相続人はもちろん、それ以外のたとえば孫、友人、などにも行うことができます。

”単純な相続”の場合、基本的に遺産の分割は法定相続通りに行います。しかし、被相続人が法定相続人以外の人に、財産を渡したいということもあるでしょう。

そのような場合に、遺贈という形で遺言書に残しておくことができるのです。遺贈で財産を受け取る人のことを「受遺者(ジュイシャ)」と呼びます。

遺贈はあくまで被相続人による一方的な意思表示です。従って、受遺者はそれを受け取るかどうか自分で決めることができます。

条件付きの遺贈

遺贈には、単に財産を贈るもの以外に、条件をつけて贈るものがあります。更に条件付きの遺贈は、以下の2種類に分けられます。

負担付き遺贈

一定の負担を課し、それを条件に財産を与えるものです。

例:「私の死後、妻と同居し面倒を見ることを条件に、自宅の土地建物を長男に与える」

跡継ぎ遺贈

受遺者が亡くなったあと、その財産を誰が継ぐかまで指定する方法です。

例:「この指輪は長女のAに。Aの死後は、孫のBに譲る」

遺贈と法定相続の違い

では、法定相続と遺贈の違いはなんでしょうか。

法定相続は被相続人の意志とは関係なく、民法に定められた方法に則って財産分与が行われるものです。相続できるのは配偶者や子といった法定相続人のみで、遺産の分け方も、法定相続分という原則が決まっています。

一方、遺贈は遺言書によって行います。遺贈を受けられるのは法定相続人に限らず、また、遺産の具体的な分け方も被相続人が示すことができます。仮に遺言書に書かれているのが法定相続人のみの場合は、相続人全員の同意で、遺言書の内容を無視することもできます。

ただし、それ以外の人物が遺言書に記載されており、受遺者となっている場合は、相続人はその人を無視することはできません。

遺贈と死因贈与の違い

遺贈と同じように、法定相続以外で財産を贈与する制度に、死因贈与というものがあります。

これは「私が死んだら土地を息子に譲る」のように「亡くなることを条件として、財産を贈与する契約をしておく」ものです。

遺贈と死因贈与の違いは以下の通りです。

● 遺贈:被相続人の一方的な意思表示
● 死因贈与:生前に両者の同意あり

先ほど遺贈では、受遺者は財産を受け取るかどうか自分で決めることができると申しましたが、死因贈与は基本的に両者の同意のもと行われるので、受け取らない場合は、生前に被相続人からのお願いを承諾してはいけません。

また、遺贈は満15歳であれば親権者の同意なしに単独ですることができますが、死因贈与は生前で契約を結ぶ事になるので満20歳にならないとできません。

法定相続人以外が遺贈を受ける場合

遺贈は、法定相続人以外に、相続財産を受け渡す事ができますが、以下のような点に注意することが必要です。

● 遺留分はない
● 誰かが相続放棄をしても受け取る財産は変わらない
● 相続税は、税率が2割加算される
● 受遺者が先に亡くなった場合権利は消滅する。(代襲相続のように権利を子に引き継ぐことはできない)
● 不動産について登記をしなければ第三者に権利を主張できない(法定相続人の場合、登記なしで主張できる)
● 遺贈は法定相続とは別ものなので、代襲相続や遺留分などの制度はありません。

さらに、相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除がありますが、法定相続人でない人が遺贈を受ける場合、遺産の受取人は増えますが、法定相続人にはなり得ないため、基礎控除の額は変わりません。

つまり、法定相続人は、遺贈で資産を受け取る法定相続人以外の人の数も考慮して基礎控除を計算してると、大変な目にあいます。

2.包括遺贈と特定遺贈について

遺贈についての基本的な説明や、他の遺産分割方法と区別できたところで、2章では、遺贈の種類について確認していきましょう。

遺贈には包括遺贈特定遺贈という2つの種類があります。

それぞれメリットとデメリットを見ていきましょう。

包括遺贈とは

包括遺贈とは、財産を特定せず、その全て、もしくは一定の割合を遺贈する方法で、更に2種類に分けられます。

  1. 全部包括遺贈:遺産の全てをひとりに遺贈する
  2. 割合包括遺贈:全ての遺産のうち、一定の割合を遺贈する

例えば「私の財産の全てを妻に譲る」というのは全部包括遺贈、「全財産のうち、3分の2を長男に」というのが割合包括遺贈となります。

包括遺贈のメリット

「資産価値の上昇や下降があっても、平等に分けられる」

たとえば、不動産の場合、遺言書を書いた時と相続発生後では、時価が変わる可能性があります。「不動産Aは長男に、不動産Bは次男に」としていた場合、Aの価格が暴落し、Bは高値がついたということになる事もあります。包括遺贈で「全ての財産の3分の1を長男と次男にそれぞれ与える」としておけば、不動産価格の変化に関わらず、相続発生後、同じだけの財産を与えることができます。つまり、価値が変わりやすい財産を持っていたり、遺産の価値を正確に把握できなかったりする場合は、包括遺贈が向いています。

包括遺贈のデメリット

「債務(借金など)も引き継ぐ必要がある」

「財産のすべて」には、プラスの財産だけでなく負債も含まれため、たとえば、プラスの財産が3000万円、負債が900万円あるとします。包括遺贈で「財産のすべての3分の1をAに贈る」としていた場合、Aさんは1000万円の財産と、300万円の負債を同時に引き継ぐことになります。

 

また、これはメリット、デメリット両方の側面を持っていますが、包括遺贈では財産内容を指定していないため、その内訳は相続人や受遺者に任されることになります。

ある程度自由に分割の方法を決めることができる反面、分け方を巡って揉め事に発展する可能性もあります。

特定遺贈とは

特定遺贈は、財産を特定し、遺贈する方法です。「不動産Aを長男に渡す」といった形で、何を誰に渡すかを示します。基本的には、包括遺贈と特定遺贈ではメリット、デメリットが逆転します。

特定遺贈のメリット

「負債を引き継ぐ可能性は低い」

財産を特定しているため、負債を引き継ぐ可能性が低いです。またどの資産を誰に分けるかが決まっているため、相続人が話し合う手間を削減できます。具体的な内容まで決めると言う点にいて、包括相続と比べて、より被相続人の意思が反映できる方法といえます。

特定遺贈のデメリットについて

「資産価値の上昇や下降があると、不公平が生じることがある」

包括遺贈のメリットで説明したように、遺言書を書いた時と相続発生後では、時価が変わる可能性があります。例えば「不動産Aは長男に、不動産Bは次男に」としていた場合に、Aの価格が暴落しても、Aは特定遺贈によって、価格が下がった不動産Aを遺贈することになります。「財産を平等に分割したい」という時には、価額が変動するような遺産を特定遺贈で分けるのは、向いていないといえます。

3.遺贈の放棄について

遺贈についての基本知識、種類について確認できました。

では次に遺贈を放棄する場合について説明します。

遺贈の放棄をする目的

繰り返しになりますが、遺贈は被相続人の一方的な意思表示であり、受遺者は放棄する権利を持っています。

放棄の目的としては、次のようなものが考えられます。

● 他の相続人との関係を考えて放棄
● 債務を受け取ることを避ける
● 負担付き遺贈や跡継ぎ遺贈の条件に同意できない

上記のように、特に法定相続人以外の人が大きな財産を遺贈された場合などは、親族との争いを避けるために放棄するケースも見られます。

また、遺贈によって他の相続人よりも多くの債務を背負うことになる場合も、遺贈を放棄することが考えられます。

遺贈の放棄をする方法

包括遺贈の場合

家庭裁判所で、放棄の申し立てを行います。また包括遺贈では、遺贈があったと知った時から3ヶ月という熟慮期間が設けられているため、放棄する場合は、この期間内に申し立てを行う必要があります。

特定遺贈の場合

遺言執行者などの遺贈義務者に対して意思表明を行います。意思表明は一般的には内容証明郵便によって行います。また特定遺贈の場合、家庭裁判所への申し立ては不要で、法的な期限も定められていません。しかし、遺産分割の内容がいつまでも決まらないと言うことを防ぐために、利害関係者同士で期間を定めて、受遺者はその期間内に遺贈の放棄、承認をするように求められます。期間を過ぎても回答がなかった場合は、承認したということになります。

遺贈の放棄の撤回

遺贈を一度放棄してしまったら、それを撤回することはできません。承認した場合でも同じです。これは、後から撤回することによって遺産の分割に支障が生じることを避けるためです。

ただし、脅迫や詐欺行為などによって、自分の意思とは別に放棄させられたことが証明できれば撤回は可能とされています。この場合の期限は、追認可能な時点から6ヶ月、承認や放棄をした時点から10年の期限が定められています。

もしこれに該当するケースで撤回をしたい場合は、弁護士などの専門家に相談することになるでしょう。

遺贈の放棄をしても相続分は受け取ることができる

法定相続人が受遺者の場合には、遺贈を放棄しても相続分は受け取ることができます。遺贈によってなんらかの不利益を被るようなときなどには、遺贈だけを放棄するという選択肢もあるのです。

また、法定相続分を放棄して遺贈だけを受け取ることも、法律では認められています。ただし、遺贈でプラスの財産のみ受け取り、相続放棄などによってマイナスの財産は受け取らないといったケースでは債権者に対する「信義則違反」となり、認められない可能性が高くなります。

※社会で権利行使や義務の履行をするとき、お互いに相手に誠実に行動しなければならないという原則

まとめ

遺贈は、故人の遺志をはっきりと知ることができる反面、法定相続人以外に財産を受ける人が出てきたり、相続人の中でも受け取る財産に差が出たりと、戸惑いを生むこともあるでしょう。

被相続人となる人は、遺言書に遺贈の根拠などもきちんと示しておくこと、そして相続人となる人は、被相続人となる人の遺贈の意思を生前に確認しておくことが大切です。

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