お通夜や葬儀に参列する際には、香典袋を準備します。
この香典袋にはさまざまなデザインや水引があるため、何を基準に選べば良いのか迷ってしまう方も多いものです。
そこで、ここでは香典袋の種類を解説しながら、併せて「表書きの書き方」「水引の選び方」「上包みの選び方」などをお伝えします。
目次
香典袋の種類とは

葬儀や法事などの忌事に参列する際には、故人への弔意を表し遺族への金銭的な援助として香典を持参しますが、この香典は香典袋に包むのがマナーです。
しかし、この香典袋にはたくさんの種類や書き方があるため、最適な香典袋の選択は弔問客にとって悩みの種となることも少なくありません。
そこで、ここでは香典袋を選ぶ際のポイントを説明しながら、近年増加傾向にある香典不要の葬儀について解説します。
香典袋を選ぶ際のポイント
香典袋にはさまざまな種類がありますが、その使い分けは次の条件で異なります。
訃報や法事の案内を受け取った段階で、これらを正確に把握することが最適な香典袋を選択するためのポイントです。
- 参列する儀式の宗教・宗派
- 香典金額の多寡
儀式の宗教・宗派
香典袋に記載する表書きは、その儀式がどのような宗教・宗派で行われたのかによって記載内容が異なります。
宗教・宗派によっては教義上適さない表書きがあるため、参列者はこの点についての理解が不可欠です。
香典金額の過多
香典袋は包む金額の多寡によっても使い分ける必要があります。
金額が多ければ豪華な香典袋、金額が少なければ簡素な香典袋を使用するのがルールです。
香典不要の葬儀について
以前は葬儀や法事には香典は不可欠と考えられてきましたが、現在では少し事情が異なります。
これは、葬儀規模の縮小や宗教観の変化から、葬儀を主催する側の遺族が香典を辞退することがあるためです。
特に、家族葬や直葬式など参列者の数を限定して行う葬儀では香典不要となるケースが見られます。
香典を辞退する場合は必ず葬儀案内にその旨が記載されていますので、参列者はこの点について確実に確認しておきましょう。
香典袋の表書きの書き方

香典を入れる袋は、どの宗教においても「香典袋」と呼ばれますが、香典袋の表面の中央に記載する表書きは、宗教・宗派別に使い分けるのがマナーです。
間違った表書きの香典袋は、それだけで遺族に対して礼を欠いた行為と捉えられてしまいます。
参列者は葬儀がどの宗教で行われるのかを確認し、その様式に沿った表書きを記載しなければなりません。
仏式葬儀の場合
ほとんどの仏教宗派では、亡くなった方は四十九日法要を経て成仏すると考えられています。
そのため、四十九日法要以前に必要な香典の表書きは「御霊前」、それ以降の表書きを「御仏前」とすることが一般的です。
なお、仏教には多くの宗派が存在しそれぞれに教義が若干異なりますが、次の表書きは浄土真宗を除くすべての宗派で使用可能です。
- 御香料
- 御香典
- 御霊前(四十九日法要以前)
浄土真宗の表書き
仏教の中でも、浄土真宗だけは亡くなった方が「霊」になるとは考えられていないため、表書きに「御霊前」を用いることはありません。
浄土真宗の葬儀や法要に参列する際には、表書きはすべて「御仏前」と記載しましょう。
神式葬儀の場合
神式葬儀に参列する際にも香典は必要ですが、その際の香典袋には次のような表書きを用います。
- 榊料御(おんさかきりょう)
- 御玉串料(おたまぐしりょう)
- 御霊前
御霊前は仏式葬儀でも使用可能な表書きですが、榊料御や御玉串料などは神式特有の表書きです。
この2つの表書きには共通して「お供え物」という意味があるため、神式葬儀に参列する方の多くはこの表書きを記載することが一般的です。
キリスト教式の場合
日本におけるキリスト教の葬儀では香典を持参することが一般的ですが、この宗教には「カトリック派」と「プロテスタント派」の2つの大きな宗派があり、それぞれに教義が異なります。
このような事情から表書きは宗派によって次のように使い分けることがマナーですが、「御花料」という表書きのみはどちらの宗派でも使用可能です。
カトリック派の表書き
- 御花料
- 御ミサ料
- 御霊前
プロテスタント派の表書き
- 御花料
- 献花料
- 忌慰料
宗教がわからない場合
ここまで解説してきたとおりに、どのような宗教・宗派においても使用できる表書きはありません。
そのため、宗教・宗派がわからない葬儀に参列する場合は「御霊前」と「御仏前」の2種類の香典袋を持参し、葬儀会場で宗教・宗派を確認した後に香典を入れ替えるなどの対応をおすすめします。
香典袋の上包みの選び方

香典袋の上包みにはさまざまなデザインがありますが、このデザインは使用する葬儀・法要の宗教様式によって、次のように使い分ける必要があります。
仏教の場合
仏式での葬儀・法要に使用する上包みは、無地もしくは蓮の花がデザインされたものを使用します。
なお、無地の上包みはどのような場合でも購入可能なため、忌事において一番多く使用されている上包みです。
神道の場合
神式での葬儀・法要で使用する上包みは、無地のものを使用します。
仏式のように蓮の花がデザインされたものはNGとなるため注意が必要です。
キリスト教の場合
キリスト教式での葬儀・法要に使用する上包みは、十字架やユリの花がデザインされたものを使用します。
仏教や神道のように無地の上包みは使用可能ですが、蓮の花がデザインされた上包みはマナー違反となるため使用は控えましょう。
香典袋にかける水引の意味・選び方

先ほど解説したように、香典袋に記載する表書きは宗教・宗派によって異なるという特徴がありますが、ここで紹介する水引についても同様です。
ここでは、この水引を香典袋に掛ける意味を解説しながら、宗教別の水引の選び方を解説します。
水引の意味
香典袋に水引を掛ける意味は、魔除けや未開封などの意味が込められています。
また、忌事の際に使用する水引には「二度と悲しいことが繰り返すことがないように」との願いから、固く結ばれた「結び切り」の水引を用いることがルールです。
なお、水引には次のように香典金額によって色を使い分けるというルールがあります。
香典金額と水引に乖離があれば明らかなマナー違反となってしまうため、香典を包む際には金額にあった水引を使用するよう心がけましょう。
水引の選び方
香典金額別の水引の選び方は次のとおりです。
- 5,000円以下を包む場合:水引が印刷された香典袋
- 5,000円から3万円を包む場合:黒白の水引
- 3万円から10万円を包む場合:双銀の水引
- 10万円以上を包む場合:高級和紙を使用した大判サイズの香典袋に双銀の水引
香典袋の種類別対応表

ここでは、これまで解説してきた「表書き」「水引の種類」「上包みのデザイン」を、宗教・宗派別に対応表として記載しています。
香典袋の選び方に迷った際には、こちらの表をご活用ください。
宗教・宗派 | 表書きの種類 | 水引の種類 | 上包みのデザイン |
---|---|---|---|
仏教 |
| 黒白の結び切り |
|
仏教(浄土真宗) | 御仏前 | 黒白の結び切り |
|
神道 |
| 双銀・双白の結び切り | 無地 |
キリスト教(カトリック派) |
| 水引は使用しない |
|
キリスト教(プロテスタント派) |
| 水引は使用しない |
|
香典袋にまつわるマナー・注意点

葬儀や法事を弔問する参列者は、その葬儀様式に沿った香典袋を準備しなければなりませんが、遺族への配慮とお悔みの気持ちを表すためには次のようなマナーも求められます。
ここでは、香典を持参する際のマナー・注意点を解説します。
- 香典袋の書き方の注意点
- 香典袋へのお金の入れ方の注意点
- 香典袋を運ぶ際の注意点
香典袋の書き方の注意点
香典袋に記載する内容は表書きだけではなく、「氏名」「住所」「金額」も記載します。
それぞれの記載する場所は次のとおりです。
- 氏名:香典袋の表面中央、表書きの下側に水引を挟んでフルネームで記載
- 住所:中袋がある香典袋の場合は中袋の裏面の左端、中袋がない香典袋の場合は外袋の裏面の左端に記載
- 金額:中袋がある香典袋では中袋の表面中央、中袋がない香典袋では外袋の裏面左端に記載
金額を書く際の注意点
香典袋に記載する金額は、大字と呼ばれる旧字体の漢数字を使用しなければなりません。
この大字は一般的な漢数字に比べて画数が多く複雑なため、香典金額の改ざんを防ぐために使用します。
書き物についての注意点
香典袋に記載するための書き物は、毛筆もしくは筆ペンを使用するのがマナーです。
また、この際に使用する墨は故人が亡くなってからの期間によって次のように使い分ける必要があります。
- 四十九日法要以前の儀式は薄墨を使用
- 四十九日法要以降の儀式では濃い墨を使用
香典袋へのお金の入れ方の注意点
香典袋に入れるお金は、すべての向きを揃えて次のように入れなければなりません。
- 紙幣の肖像画が記載されている側を裏向きにする
- さらに肖像画を下向きにして香典袋に入れる
このように、紙幣の肖像画を伏せることで故人へのお悔みや悲しみの気持ちを表します。
使用するお金の注意点
香典として使用するお金は、旧札を用いるのがマナーです。
突然のことで手元に新札しかない場合は、紙幣に折り目をつけることで旧札として使用することができます。
香典袋を運ぶ際の注意点
葬儀や法要に出向く際の香典は、丁寧に袱紗(ふくさ)に包んで持ち運ぶのが作法です。
裸で香典袋を持ちながら葬儀会場に向かう行為は、その香典を受け取る遺族とっては非常に不快に映るため、絶対に避けなければなりません。
香典袋を丁寧に扱うことで、はじめて遺族に対するお悔みの気持ちも伝わると心得ましょう。
まとめ

香典袋にはさまざまな種類があり、それぞれの宗派・宗派別に記載する内容も異なるため、覚えなければならないマナーは多岐にわたります。
しかし、遺族に対して礼節をもってお悔みの気持ちを伝えるためには、香典袋の書き方を含む葬儀マナーの理解は葬儀や法要を弔問する者の務めです。
訃報連絡は突然訪れるため、いざという時に慌てないためにも香典袋の準備やマナーの確認は、普段から行っておいた方が良いでしょう。