ご遺体は火葬された後は遺骨となり、さまざまな方法で納骨されますが、この際の費用や納骨方法をご存知でしょうか?
現在では、これまでの納骨方法に加えて、故人の意思や遺族の状況によりたくさんの納骨方法があり、それぞれ費用が異なります。
そこで、ここでは納骨に必要な費用を内訳ごとに説明しながら、「お墓以外の納骨方法」「費用相場」「納骨式の手順」などについて解説します。
納骨とは

納骨費用に触れる前に、納骨とはどのような行為なのかを解説しましょう。
納骨とは、故人の遺骨をお墓に収める行為です。
遺骨は遺族立会いのもと納骨式と呼ばれる儀式を通して納骨され、この際には専門業者がお墓を開き僧侶の読経が行われます。
納骨を行う場書・時期
納骨をする場所は、墓地、埋葬等に関する法律という法律の中で「墓地以外の土地に埋葬してはならない」と定められていますが、埋葬時期についての定めはありません。
そのため、故人との別れが辛くなかなか埋葬に踏み切れない方の中には、遺骨を自宅に保管して供養する方もいます。
しかし、基本的には忌中明けの四十九日法要の際に納骨する方が多く、一周忌法要を行うまでにはほとんどの方が遺骨をお墓に納めているのが現状です。
なお、四十九日を過ぎた後の納骨は次の時期に行うのが一般的です。
- 百箇日(ひゃっかにち)法要
- 一周忌
- 三周忌
納骨に必要な費用の内訳

一般的な納骨方法は、先祖代々引き継がれたお墓への納骨ですが、この際には納骨以外にも費用がかかります。
ここでは、お墓に納骨する際の費用を内訳ごとに解説します。
- 墓誌への彫刻費用
- 納骨の作業費用
- お供え物の購入費用
- 卒塔婆費用
- 僧侶へのお布施
- お車代と御膳料
墓誌への彫刻費用
新しくお墓に収められる方の命日と戒名は墓誌や墓石に彫刻されますが、この彫刻作業は石材店が行います。
彫刻費用の費用相場は5万円が目安となります。
納骨の作業費用
実際に遺骨をお墓に納めるのは、お墓の下部にある「カロート」と呼ばれる箇所を開けて行います。
この作業は比較的簡単にできるため、ご自身で行う場合は費用は不要となりますが、石材店に依頼する場合の費用相場は5,000円からです。
なお、非常に古いお墓の場合はクレーンを使用しお墓を持ち上げて納骨しますが、その際の作業費用は高額となるため、石材店への事前見積もりが必要です。
お供え物の購入費用
納骨式では通常のお墓参りよりも豪華なお供え物を準備するため、お供え物の購入費用は5,000円から1万円が目安となります。
花一対と故人の好物などを準備すると良いでしょう。
卒塔婆費用
宗派によっては納骨式で卒塔婆(そとうば、ストゥーパ)を立てるため、卒塔婆費用が必要になる場合があります。
この卒塔婆とは、故人や先祖の追善供養として建てられる木の板で、通常は寺院に依頼して用意してもらい、費用相場は3,000円から5,000円です。
なお、浄土真宗は仏教であっても卒塔婆を使用しない宗派のため、浄土真宗式の納骨式では卒塔婆を購入する必要はありません。
僧侶へのお布施
納骨式では、僧侶から読経を頂くため、儀式には必ず僧侶が立ち会います。
そのため、納骨式には3万円から5万円のお布施が必要です。
お車代と御膳料
納骨式を行うお墓まで僧侶にお越しいただく場合は、お車代として5,000円から1万円、会食を辞退された場合は御膳料として5,000円から1万円をお布施とは別にお渡しします。
納骨式にかかる費用の相場

納骨式には僧侶へのお布施が必要ですが、納骨式の内容によってはこれ以外の費用も必要です。
ここでは、納骨式の内容別の費用相場と、法要会館の費用相場について解説します。
納骨式のみを行う場合
先ほどお伝えしたとおり、納骨式を行う際の費用相場は次のとおりです。
- 僧侶へのお布施:3万円~5万円
- お車代:5,000円~1万円
- 御膳料:5,000円~1万円
納骨式と年忌法要も同時に行う場合
納骨式は四十九日法要や一周忌法要などの年忌法要と同じ日に行うことも多く、2つの儀式を同時に行う場合は、納骨式のお布施+行う法要のお布施が必要です。
納骨式と年忌法要を同時に行う場合は、納骨式のお布施3万円から5万円に加えて、年忌法要に対するお布施の3万円から5万円を納めます。
法要会館を使用する場合
納骨式はお墓の前で行うことが一般的ですが、年忌法要は法要会館を使用して行うため、納骨式と年忌法要を同時に行う場合は法要会館を使用します。
この法要会館の使用料金は、3万円から5万円が相場です。
会食と引き出物の費用

納骨式を行った後に会食の場を設ける場合は、会食費用と引き出物の費用が必要です。
会食費用と引き出物費用は会食参加人数によって異なりますが、基本的には会食する方々から香典を頂くため、費用を相殺することができます。
なお、会食1名分の費用相場は5,000円から1万円、引き出物の費用相場は1家族あたり3,000円から5,000円です。
お墓以外の納骨方法と費用

現在もっとも多い納骨方法は、先祖代々受け継がれてきたお墓への納骨ですが、「核家族化」「お墓の購入費用」「管理費などの出費」を理由に、さまざまなな供養方法が利用されています。
ここでは、お墓以外の供養方法として、次の供養方法を費用相場とともに解説します。
納骨堂を利用する場合
納骨堂に遺骨を納骨する場合は、墓誌への彫刻や納骨にまつわる作業費用は必要ありません。
納骨堂の平均価格は60万円ですが、納骨堂の所在地によってこの値段は上下し、大都市や都心部の納骨堂ほど金額は高騰する傾向にあります。
また、夫婦の両名が一つの納骨堂に入る場合は「夫婦墓」となることから、納骨堂の費用に10万円から20万円が加算された金額が納骨費用となることが一般的です。
納骨堂とは
先ほど解説にあったこの納骨堂は、寺院や専門施設の室内に設けられた小さなお墓で、横一列に並んだ仏壇の中に骨壺が収めらるスタイルが一般的です。
土地価格の高騰などの事情から新しい墓地が作れない中で、この納骨堂は近年利用者が増加している供養方法として注目を集めています。
永代供養墓を利用する場合
永代供養墓を利用して納骨を行う場合は、納骨費用は必要なもののお墓の購入費用を抑えることができるため、納骨にまつわる全体の金額を大きく抑えることが可能です。
永代供養墓とは墓地の管理者がお墓を永代に渡って管理してくれる供養方法で、他の方と同じお墓に入る合葬であれば平均費用は30万円ほどです。
樹木葬を行う場合
大きな樹木の下に納骨する樹木葬では、納骨費用は必要なもののお墓自体を購入する必要がありません。
そのため、納骨にまつわる費用を抑えることが可能です。
樹木葬にかかる費用相場は50万円ほどですが、大都市からアクセスの良い墓所の場合は、この金額よりも高額になる傾向があります。
海洋葬を行う場合
海洋散骨とは遺骨を海に撒く供養方法で、故人が「死後は自然に還りたい」と希望する場合に行うことが一般的です。
この海洋散骨の費用相場は、遺族立会いのもとに行う場合は25万円、遺族が立ち会わない場合は7万円ほどです。
自然への帰依を願う散骨ですが、山や川への散骨は多くの制約があるため、海洋への散骨が最も多く行われています。
空中葬を行う場合
供養方法の中で最も珍しい方法の一つが空中葬で、この方法では大きなバルーンの中に遺灰を詰めて空に飛ばします。
空中葬の費用相場25万円ほどです。
お墓を持たない供養方法
先ほど紹介した空中葬や遺骨を海洋にまく海洋葬はお墓を持たない供養方法であるため、墓地・墓石を購入する必要も納骨式を行う必要もありません。
そのため、納骨を行う費用の総額は他の供養方法に比べて大きく抑えられるという特徴があります。
納骨式を行うまでの手順

納骨式を行うには、さまざまな準備が必要です。
ここでは、納骨式を行うまでの手順ごとに準備方法を解説します。
- 納骨式の日程を決める
- 戒名彫刻の相談をする
- 埋葬許可証を入手する
- 出席者へ連絡する
- 料理の手配をする
納骨式の日程を決める
僧侶の予定を押さえるため、納骨式の日程はできるだけ早い段階で決めるようにします。
納骨式を含めた法要は、参列者の都合がつきやすいという理由から土日に行われることが多いため、この日時に納骨式を行う場合は特に早めの連絡が必要です。
なお、彼岸やお盆などは寺院も忙しく個別の法事に対応できないことも多いため、これらの日に法事を行うのは避けた方が良いでしょう。
戒名彫刻の相談をする
墓誌への彫刻は石材店へ依頼し、納骨式までに完成させてもらいます。
ただし、石材店が忙しい場合や彫刻する文字量が多い場合などは、完成までに数週間かかるケースも少なくありません。
納骨式の日程が決まればただちに連絡し、余裕を持った作業をしてもらうよう心がけましょう。
なお、この墓石への彫刻を依頼する際には、納骨式で墓石を動かすことを伝えておけば、その後の作業もスムーズです。
埋葬許可証を入手する
納骨式には「埋葬許可証」が必要です。
これは死亡届を提出した際に市町村役場で発行される火葬許可証に、火葬場から印をつけてもらった書類を指しています。
なお、霊園に埋葬する際には墓地使用許可証と印鑑も合わせて必要となります。
出席者へ連絡する
埋葬に必要な書類がそろったら、納骨式を行う旨を出席者へ連絡し、法要の参加人数を確定させます。
近親者のみで納骨式を行う場合は電話連絡を行いますが、他の参列予定者には案内状を送付します。
なお、故人との縁が深く、葬儀でもお世話になった方に対しては、法要を行う旨を伝えておいた方が賢明です。
近親者のみで法要を行う場合でも、このような方に声がけを行うことで、後のトラブルを回避することができるでしょう。
料理の手配をする
納骨式終了後に会食を行う場合は、会食会場の予約を行います。
会食人数が確定していない場合も多いため、予約はおおよその人数で行い、納骨式の2週間前には人数を確定して会食会場に伝えましょう。
なお、会食を行わずにお弁当とお酒などを当日に渡す場合もありますが、予約の方法は会食時と同様です。
納骨式当日の流れとお金がかかるポイント

納骨式の中で行う儀式にはさまざまな作業が伴うため、費用ががそのたびに発生し、結果的に相場を上回る場合があります。
ここでは、納骨式当日の流れを解説しながら費用がかかるポイントを解説します。
- 法要会場に親族が集合する
- 法要場所にて四十九日法要を行う
- お墓に移動する
- お墓の前で納骨式を行う
- 会食会場に移動して会食を行う
- 引き出物を渡して解散する
法要会場に親族が集合する
納骨式と年忌法要を同時に行う場合は、親族は法要会館に集まります。
法要会館側でマイクロバスなどを出してくれる場合がほとんどですが、会館側でこれらの移動手段を提供してくれない場合は、移動費は個人での負担となります。
法要場所にて四十九日法要を行う
先ほどお伝えしたように、法要会館の使用料金は3万円から5万円が相場ですが、お寺を利用する場合は僧侶へ納めるお布施に寺院の使用料を加えて渡すことがマナーです。
この際の寺院使用料金は、寺院やお住いの地域の風習によっても異なるため、地域の風習に詳しい方や直接寺院に問い合わせることをおすすめします。
なお、法要費用を抑えたい方は、法要をご自宅で行うのも一案です。
お墓に移動する
年忌法要が終わると、お墓に移動して納骨式を行います。
この際にはマイクロバスでの移動が一般的ですが、法要会館側がマイクロバスを所有していない場合は自費での移動となります。
お墓の前で納骨式を行う
納骨式を行う際には、供物とお花をお供えします。
お供えの費用相場は5000円から1万円で、普段のお供え物より豪華な内容にするのが慣習です。
いつもより豪華なお花一対と、故人の生前の好物などを用意すれば問題はないでしょう。
会食会場に移動して会食を行う
納骨式後に会食を行う場合、会食会場まで移動する必要がありますが、この移動時に会館側がマイクロバスを出してくれることがあります。
これは、あらかじめプランに組み込まれているものなので、法要を行う施主は法要会館側に確認し、あらかじめ参列者へ周知しておきましょう。
会食費用は1人5,000円ほどが相場ですが、最近では1人3,000円の食事に、別料金で酒類を含む飲み物を個別に注文するスタイルが増えています。
引き出物を渡して解散する
会食が終われば引き出物を渡して納骨式は終了です。
この際の引き出物の相場は、一家族あたり5,000円が相場です。
まとめ

これまで行われてきた一般的な納骨では、「墓所」「墓石」「お布施」といったさまざまな費用が必要でしたが、現在では供養方法を選択することで納骨費用を抑えることが可能です。
終活が一般的になり、ご自身の供養方法をご自身で決めることも珍しくはありません。
供養方法をどのような形で行うのかを事前に決めておければ、残された家族の負担の多くを解消することができるでしょう。