一周忌の法要は、故人が亡くなって初めて迎える本命日になるため、比較的多くの人が集まり故人を偲ぶ機会です。
そのため、一周忌では流れの節目で喪主が挨拶を行いますが、どのような挨拶をすれば良いか悩む人は少なくありません。
今回は、一周忌の法要で行われる挨拶のタイミングと挨拶例文を、喪主と参列者の二つのケースに分けて詳しく紹介ていきます。
目次
一周忌で喪主が挨拶するタイミングと例文

一周忌では、僧侶による法要のあとに食事をするのが一般的な流れなので、喪主が挨拶する回数も多くなります。
この章では、一周忌で喪主が挨拶するタイミングと、具体的な挨拶例文を時系列に沿ってご紹介しましょう。
法要前
一周忌で喪主が最初に行うのは、法要前の挨拶です。
一周忌法要に集まった皆さんに対し挨拶をするのですが、足を運んでいただいたことへのお礼と、法要の始まりを知らせる言葉だけを伝え、短めに挨拶をしましょう。
具体的な例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、故○○(故人の名前・続柄)の一周忌法要にご参列を賜り、誠にありがとうございます。ただいまより、故○○(故人の名前・続柄)の一周忌法要を始めさせていただきます。本日の法要は、○○寺住職、○○様にお願いいたしました。それでは○○様、よろしくお願いいたします。
一周忌の正式な挨拶では、故人を戒名で紹介するのが礼儀とされていますが、現在では生前の名前で呼ぶケースが増えてきていますので、呼びやすい方で挨拶すると良いでしょう。
挨拶の最後で僧侶を紹介するときは、必ず僧侶の方を向いて挨拶するようにしてください。
法要後
一周忌の法要は、最後に喪主が挨拶をして終了となります。
このとき、法要後に食事の席を用意しているのであれば、その案内も兼ねた挨拶をしましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
皆様のおかげで、、無事に故○○(故人の名前・続柄)の一周忌法要を終えることができました。多くの人にお集まりいただけて、故○○もきっと喜んでいることと思います。故人に代わり、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。法要はこれにて終了となりますが、ささやかながらお食事をご用意いたしましたので、お時間がございます方はぜひお召し上がりください。本日はありがとうございました。
食事前
一周忌法要のお食事前にも、喪主から挨拶を行います。
法要後のお食事では、喪主の挨拶のあとに献杯が行われるため、献杯する人を紹介する形で文章をつなげると良いでしょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、故○○(故人の名前・続柄)の一周忌法要にご参列を賜り、本当にありがとうございました。皆様のおかげで一周忌法要も滞りなく済ませることができ、ホッといたしました。粗宴ながらお食事の席をご用意いたしましたので、ぜひ故人の思い出話などを聞かせていただけたらと思います。それでは、はじめに○○様(献杯をする人の名前)より献杯の発声をお願いいたします。
食事後
法要の食事は、1時間から2時間が目安です。
お食事の進み具合や頃合いを見計らい、ほどよいタイミングでお開きのご挨拶をしましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、多くの方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございました。懐かしい昔話が聞けて、故人も喜んでいると思います。これにてお開きとさせていただきますが、今後とも暖かいご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。お足元にお気をつけてお帰り下さい。
【立場別】喪主による一周忌の挨拶例文

一周忌の喪主による挨拶は、喪主が故人どどのような続柄であったかによっても異なります。
この章では、喪主の挨拶を立場別に分け、具体的な挨拶例文を紹介していきましょう。
喪主が妻の場合
故人の妻が喪主の場合、一周忌には夫に縁がある人が多く集まります。
とくに、夫が若くして亡くなったときには、残された妻やその子供を心配する人も少なくありません。
したがって、短い挨拶の間に少し現在の状況を付け加え、集まった方々が安心するような内容にしましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、亡き夫○○の一周忌法要にご参列を賜りまして、誠にありがとうございます。早いもので1年が経ちましたが、夫が亡くなったあと家族みんなで力をあわせ、ようやく心が落ち着いてきたところです。それでは、ただいまより亡き夫○○の一周忌法要を始めさせていただきます。
喪主が夫の場合
故人の夫が喪主の場合、亡くなった妻の親族や交友関係のある人が多く集まります。
夫が妻の関係者と深く関わる機会が少なかったとしても、共有できる思い出話を少し語るとお互いの関係が近くなるため、挨拶に少しだけ亡くなった妻に関するエピソードを入れてみましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、亡き妻○○の一周忌法要にご参列を賜り、誠にありがとうございます。早いもので妻が亡くなってから1年が経ちましたが、裁縫が得意だった妻の手作りクッションやベッドカバーを見ると、今でも見守ってくれているような、暖かな気持ちになります。それでは、ただいまより亡き妻○○の一周忌法要を始めさせていただきます。
喪主が子供の場合
故人の子供が喪主を行う場合、一周忌法要には親と同じ年齢の方が多く集まります。
顔見知りの人もいると思いますが、敬意を払ったご挨拶を心掛けてください。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
本日はお忙しい中、亡き父(母)○○の一周忌法要にご参列を賜りまして、誠にありがとうございます。父(母)を見送って1年が経ちましたが、これほど多くの方々にお集まりいただき、恐縮すると共にご縁の深さと大切さを感じます。それでは、ただいまより亡き父(母)○○の一周忌法要を始めさせていただきます。
一周忌でお布施を渡す時のタイミングと挨拶

一周忌の法要では、檀家であるお寺の寺院にお願いして、僧侶の読経と説話をいただきます。
このときにお渡しするのがお布施ですが、僧侶にお布施をお渡しするタイミングと挨拶が難しいと感じる人も少なくありません。
では、一周忌のお布施はどのようなタイミングで渡せば良いのか、挨拶の例文と一緒に紹介していきます。
僧侶が食事しない場合:帰る時
僧侶が法要後のお食事をしない場合、法要が済んでお帰りになるときを目安にお布施を渡します。
お布施は法要のお勤めに対するものなので、それとは別にお車代とお膳料を個別に用意し、お布施と一緒に渡すようにしましょう。
僧侶が食事する場合:食事後
僧侶が法要後のお食事をする場合、食事がお開きになったあと帰るタイミングで渡すようにします。
この場合は、お食事を召し上がっているのでお膳料は必要なく、お布施とお車代を一緒に渡してください。
僧侶が食事をするときは、一番近い席に喪主が座ってお世話をしますので、スムーズに渡せるようあらかじめ手元に準備しておくとよいでしょう。
挨拶例文
僧侶に対するご挨拶では、一周忌法要を行なっていただいた感謝の気持ちを伝えます。
短くてもよいのでお礼の気持ちを込めて、しっかりとご挨拶をしましょう。
お布施をお渡しするときの挨拶例文は、次のとおりです。
本日は、心のこもった一周忌法要をお勤めくださり、誠にありがとうございました。些細ではございますが、どうぞこちらをお納めください。今後ともよろしくお願いいたします。
一周忌の食事で献杯する時の挨拶

一周忌の食事では、喪主の挨拶のあとに献杯が行われます。
献杯の発声をする人も、グラスを捧げる前にご挨拶をしなければなりませんので、これから紹介する挨拶例文を参考にしてみてください。
挨拶例文
献杯の挨拶では、献杯をする人の名前・故人との関係を述べてから献杯の発声をします。
喪主が献杯をする場合は、お食事前の挨拶後に献杯の準備を促し、みなさんがグラスを持ったところで「それではご唱和をお願いいたします、献杯」と声を掛けましょう。
喪主以外の人が献杯をする場合は、次の例文を参考にして献杯のご挨拶をしてください。
献杯を務めさせていただきます、○○と申します。私は故人の古くからの友人で、幼い頃から一緒に遊び、成長してきた仲間でした。今日は昔のように故人の思い出を語り合い、皆様と一緒に故人を偲びたいと思います。それではご唱和お願いいたします、献杯。
挨拶は喪主でなくても良い
献杯の挨拶は、必ずしも喪主である必要はありません。
とくに喪主が女性の場合、大勢の前で発声することがあまりないため、献杯は故人と近しいお付き合いのある男性に頼むと良いでしょう。
親族の中で場を仕切る人が上手な人がいるのであれば、その人に献杯の挨拶をお願いし食事が和やかに進む雰囲気を作ってもらいましょう。
一周忌に参列する時の挨拶例文

一周忌に参列する人も、遺族への挨拶やご仏前を渡すときにはどのように声を掛けるか悩みますよね。
葬儀ではないものの、一周忌は弔事あるためできるだけ相応しい挨拶をしていきたいものです。
では、一周忌に参列する人はどのような挨拶が適切なのか、シーン別に分けて詳しく解説していきましょう。
遺族への挨拶
一周忌の法要では、会場に着いたらまず最初にご遺族へ挨拶します。
遺族は、大切な一周忌を前にとても忙しくしていますので、言葉を短めにして挨拶をしましょう。
具体的な挨拶例文は次のとおりです。
- 本日は、一周忌の法要に参列させていただきありがとうございます。
- 本日は、一周忌の法要にお招きいただきありがとうございます。
- 本日は、お招きをいただきありがとうございます。あらためてご冥福をお祈り申し上げます。
ご仏前を渡す時の挨拶
一周忌のご仏前や、法要の規模や会場によっても渡し方とタイミングが異なります。
もし法要が故人の自宅で行われる場合は、まず遺族に挨拶をしたあと仏壇の前に行き、仏前にお供えしてからお参りしましょう。
法要の規模が大きいと、受付台を設けていることがあります。
受付代がある場合はそちらに挨拶し、ご仏前を渡してから遺族に挨拶をしましょう。
ご仏前を渡すときの挨拶例文は、次のとおりです。
- どうぞご仏前にお供えください。
- 気持ちばかりですが、どうぞお納めください。
- 心ばかりのものですが、どうぞお供えください。
食事を辞退するときの挨拶
一周忌の法要には参加できても、都合がつかずどうしても自体せざるを得ないときもありますよね。
法要後の食事は、かなり早くから遺族が準備するため、予定がわかった段階で辞退を伝えるようにしましょう。
もし急用で辞退する場合も、必ず遺族に直接伝えて、申し訳ないという気持ちを伝えるようにして下さい。
食事を辞退するときの挨拶例文は、次のとおりです。
- 誠に申し訳ございませんが、お食事は辞退させていただきます。どうぞ皆様によろしくお伝え下さい。
- 都合によりお食事に参加できず、申し訳ございません。またあらためてご挨拶させていただきます。
- お食事にも参加したいのですが、都合がつかず申し訳ございません。また後日ご挨拶させていただきます。
帰る時の挨拶
法要やお食事のあとに帰るときは、必ず遺族に声を掛けてから帰宅するようにします。
参列者が一斉に帰るので、挨拶は短めにして遺族に迷惑が掛からないようにしましょう。
帰るときの挨拶例文は次のとおりです。
- 本日はありがとうございました。またお参りに寄らせていただきます。
- 本日は法要に参列させていただきありがとうございました。
- 本日はありがとうございました。故人の思い出話ができて嬉しかったです。
一周忌に参列しない時の挨拶例文

一周忌は、故人が亡くなって初めて迎える回忌法要なので、案内を受けたらできるだけ参加したいものです。
しかし、都合によりどうしても参列できない場合は、遺族に失礼のないようお断りをしなければなりません。
では、一周忌法要の参列を辞退するとき、どのような挨拶なら失礼にならないのか、具体的な例を挙げて紹介していきます。
電話で辞退する時の挨拶
一周忌法要の辞退を電話で挨拶するときは、遺族の中でも喪主、もしくは喪主に一番近しい人に電話して辞退を伝えるようにしましょう。
特に、故人の親戚関係にあたる人は、手紙やメールよりも電話で辞退する方が良いです。
早朝や夜遅い時間を避け、一周忌法要に参列できない分しっかりお悔やみの気持ちを伝えましょう。
一周忌法要の辞退挨拶を、電話でするときの挨拶例文は次のとおりです。
この度は、一周忌法要のご連絡をいただきありがとうございます。ぜひ参列させていただきたかったのですが、どうしても都合がつかないので今回は欠席いたします。一周忌法要には参列できませんが、日をあらためて仏前にお参りさせて下さい。
手紙で辞退する時の挨拶
一周忌法要の辞退を手紙で伝えるときは、ある程度形式に沿った内容で挨拶をします。
具体的な手紙の構成は次のとおりです。
- 一周忌法要のお招きに対する感謝の気持ち
- 一周忌法要に参列できない理由とお詫び
- 故人との思い出話とご冥福を祈る言葉
- 遺族を労わる気持ち
- 締めの言葉
この流れで手紙を書くと、短くても整った内容になります。
手紙による挨拶例文は次のようになりますので、参考にしてみてください。
この度は、故人の一周忌法要にお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。
ぜひ参列したかったのですが、その日は長期出張中でどうしても都合がつかないため、一周忌法要は欠席させていただきます。
思えば故人は大変仕事熱心で、私もよく仕事の悩みを聞いてもらい、ときには暖かい手助けをして下さっていました。そんな故人の大切な法要に参列できないのは心苦しいですが、本命日には故人のご冥福を祈り、手を合わせたいと思います。
故人が亡くなって以降、ご遺族の方々におかれましては大変な1年であったと思います。どうか皆様が健康に過ごされますよう、心よりお祈り申し上げます。
お時間の都合がつきましたら、また日をあらためて仏前にお参りさせていただきたく存じます。書面でのご挨拶になりましたことをお詫びして、筆を置かせていただきます。合掌。
一周忌で挨拶する時のマナー・注意点

一周忌は正式な法要なので、挨拶するときにも守るべきマナーや注意点があります。
では、具体的にどのようなことに気をつけなければならないのか、一周忌で挨拶するときのマナー・注意点についてお伝えしていきます。
- 忌み言葉を使わない
- 法要に関係ない話題は慎む
- 故人の悪い噂や悪評は話題にしない
- 途中退席する場合は一言告げてから帰る
- 辞退する場合は弔電やご仏前を送る
マナー・注意点①:忌み言葉を使わない
忌み言葉とは、弔事に相応しくない表現や重ね言葉のことをです。
忌み言葉は「不幸を呼ぶ」と考えられてしまうため、できるだけ使わないよう意識して挨拶しましょう。
忌み言葉の具体例は次のとおりです。
- くれぐれ・おいおい・かさねがさねなど、繰り返される言葉
- 迷う・浮かばれないなどの後ろ向きな言葉
- 死ぬ・死亡といった直接的な言葉
マナー・注意点②:法要に関係ない話題は慎む
一周忌の法要は、故人の冥福を祈って集まり過ごす場所です。
したがって、法要に関係のない噂話は笑い話などはマナー違反となり、遺族だけではなく参列者にも失礼な行為になります。
一周忌方法に参列したときは、法要に関係ない話は慎むようにしましょう。
マナー・注意点③:故人の悪い噂や悪評は話題にしない
たとえ故人に関係している話であっても、一周忌法要の場で故人の悪い噂や悪評を話してはなりません。
そもそも噂話には信憑性もありませんし、心から故人を慕って集まっている参列者にも失礼です。
法要は故人を弔う場所であることを肝に銘じ、故人の悪い噂や悪評は話題にしないようにしましょう。
マナー・注意点④:途中退席する場合は一言告げてから帰る
一周忌の法要やその後の食事会に参列するとき、どうしても途中退席する場合は、遺族かその関係者に一言告げてから帰りましょう。
一周忌の法要は、多くの場合遺族からのご案内で参列するものですから、参列者が突然いなくなるのは遺族に失礼です。
退席するタイミングにも気をつけて、流れの節目をよく考慮してから遺族に声を掛けるようにし、必ず一言告げてから退席しましょう。
マナー・注意点⑤:辞退する場合は弔電やご仏前を送る
一周忌の法要を辞退した場合は、弔電やご仏前を送ってお悔やみの気持ちを伝えましょう。
もし後日故人宅にお伺いする場合でも、先に弔電だけでも送る方が失礼になりません。
辞退の連絡をしたらできるだけ早い段階で弔電やご仏前を送り、せめて仏前に備えていただけるよう手配してください。
まとめ

一周忌という大切な節目の法要では、多くの人が故人を偲ぶために集まります。
マナーや注意点をよく確認し、誰に対するご挨拶でも失礼のない言葉遣いをして、つつがなく一周忌法要が済ませられるよう心掛けましょう。