内縁の妻とはどんな意味?定義は?認められる条件・メリット・デメリットと相続の方法

内縁の妻手続き

パートナーと籍を入れない「内縁関係の夫婦」では、「自分が死亡した際には財産を相続させてあげられるのだろうか?」という疑問がつきまといます。

ここでは、このような疑問をお持ちの方に対して「内縁関係の定義」「内縁者が相続を受け取る方法」「内縁の妻となるメリット・デメリット」などを中心に、「内縁の妻の権利や相続方法」について解説します。

まずは、法律における内縁関係がどのように扱われるのかを理解して、ご自身とパートナーが希望する相続が実現できる環境を整えましょう。

目次

内縁の妻とは

彼氏彼女

パートナーとの間で婚姻の意思に基づき婚姻届けを提出すると、法律上婚姻関係が成立し女性は「妻」となります。

これに対して、婚姻の意思を持ち同居しながらも、婚姻届けを提出せずにいる状態の女性は「内縁の妻」となります。

このように、婚姻届けの提出の有無により妻と内縁の妻は分かれるのです。

「内縁」とはどういう意味?

それでは「内縁」とは法律上どのような意味を持つのでしょうか?

内縁とは、先ほどお伝えしたように「婚姻届の提出はないが社会生活上夫婦同然の実態がある」男女関係を指しています。

そのため、内縁の妻という存在は法律的には婚姻に準ずるものとして保護されています。

しかし、すべての権利において保護されているわけではなく、婚姻届けを提出した法婚姻と比較すると認められていない権利も数多くあることが現状です。

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【一覧表】法婚姻の妻と内縁の妻の違い

婚姻届けを提出した妻と、内縁の妻では様々な面での違いがあります。

解説内容を分かりやすく整理するためにも、ここではこの違いについて一覧表で表記します。

内容 内縁の妻
姓の変更 変更する 変更しない
親族との関係 婚姻関係が築ける 婚姻関係は築けない
出産した子供 嫡出子となる 非嫡出子となる
子供の親権 離婚協議により可否がわかれる 原則取ることができる
被相続人の財産相続 相続できる 相続人がいない場合は分与請求ができる
社会保険の扶養 夫の扶養に入れる 内縁の夫の扶養に入れる
遺族年金の受給 できる 一定要件を満たせば可能
慰謝料 請求できる 請求できる
財産分与 婚姻中の共有財産は可能 内縁関係中の共有財産は可能
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内縁関係の定義

広辞苑

ここでは、内縁関係が法律上どのように定義されているのかを解説します。

内縁関係の定義は、次に解説する4つに分類することができます。

内縁関係の定義
  • お互いが婚姻の意思を持っている
  • 事実婚を公的手続きに表明している
  • 共同生活をしている
  • 子供を認知している

お互いが婚姻の意思を持っている

パートナーと婚姻する意思を持っていることが必要です。

単に恋人と一緒に暮らすという認識しかなければ、それは「同棲」となり内縁関係とは言えません。

法的に婚姻の意思を持ち内縁関係であると評価されるには、次のような客観的事実が必要です。

必要な客観的事実
  • 2人が婚姻の意思をもって夫婦共同生活を営んでいる
  • 婚約・結婚式を挙げ社会的に2人が夫婦として認められている
  • 双方の両親が夫婦だと認識している
  • 2人の間に子供がいる
  • 家計を同一に管理している

法的に内縁関係が認められる場合は、これらのどれか一つだけでなく、総合的に勘案して夫婦と認められるのかを判断します。

このように、内縁関係は「何らかのな事情で婚姻届けを提出していないが実態は夫婦である」と言えるかどうかが重要になるのです。

事実婚を公的手続きに表明している

公的な手続をすることで、内縁関係を表明することが可能です。

この場合の公的な手続きは次のとおりです。

公的な手続き
  • 住民票に「未婚の妻」もしくは「未届けの妻」と表記する
  • 社会保険に第3号被保険者として登録する
  • 私的契約書を作成して両者で調印することで事実婚を証明する

共同生活をしている

生計を共にして、夫婦として共同生活をしていることが必要です。

夫婦生活の実態がなければ、内縁関係とは認められません。

共同生活期間に関しては、ある程度の継続性を持った期間が必要とされますが、一般的には3年以上の期間があれば内縁関係と認められます。

子供を認知している

生活を共にして、子供を認知することで内縁関係であると評価されます。

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内縁の妻となるメリット

セットのコップ

ここでは、内縁の妻となるメリットを解説します。

内縁の妻はマイナスなイメージがあるかもしれません、

しかし、さきに触れたように法婚姻とほぼ同様の保護を受けているため、婚姻関係に縛られず多くのメリットを享受することができます。

メリット
  • 姓の変更が不要
  • 事実婚とほぼ同様の権利・義務がある
  • 親族のしがらみに縛られにくい
  • 別れても戸籍に履歴が残らない
  • 対等な立場で生活できる

メリット①:姓の変更が不要

現在の日本では夫婦別姓は認められていないため、婚姻を機会に「クレジットカード」「キャッシュカード」「運転免許証」などの名義変更が必要です。

しかし、内縁の妻であれば姓の変更は不要なため名義変更をする必要はありません。

メリット②:事実婚とほぼ同様の権利・義務がある

内縁の妻にも、法婚姻とほぼ同等の権利が認められています。

この権利には次のようなものがあります。

認められている権利
    • 配偶者に対し生活費を請求する権利
    • 離婚した場合財産分与を請求する権利
    • 離婚した場合子供の養育費を請求する権利
    • 亡くなった相手の遺族年金を受給する権利

ここで気を付けなければならないのは、法婚姻であれば問題なく通用する権利であっても、内縁の妻はその内縁関係を証明するために一定の説明や書類の提出をしなければならないことす。

メリット③:親族のしがらみに縛られにくい

内縁の妻は戸籍に記載されることがありません。

そのため、家柄などを気にする家庭でも婚姻関係を結びやすいと考えられます。

メリット④:別れても戸籍に履歴が残らない

戸籍に記載されることがないため、パートナーと別れることになっても「離婚」の履歴が残ることはありません。

そのため、次の相手と結婚する場合は戸籍上「初婚」となります。

メリット⑤:対等な立場で生活できる

内縁の妻は「妻が男性の家に入る」形式を取ることもなく、男性側の姓を名乗ることもありません。

このような婚姻関係は、対等な立場を作りやすいと言えるでしょう。

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内縁の妻となるデメリット

不仲の男女

続いては、内縁の妻となるデメリットを解説します。

内縁の妻にはもちろんデメリットも存在します。

税金関係・相続関係では法律で保護される部分が少ないため、法婚姻と比較するとデメリットが際立ちます。

内縁の妻となる方にはこのデメリットを初めから理解し、ご自身で何らかの対応策を準備する必要があるのです。

デメリット
  • 保険・税金関係の控除が受けられない
  • 相続権がない・相続税控除が受けられない
  • 子供が生まれた時の手続きが多い
  • 夫婦関係を証明しにくい
  • 慰謝料請求のハードルが高い

デメリット①:保険・税金関係の控除が受けられない

内縁の妻がパートナーの健康保険の扶養に入るには、内縁関係を証明する資料が必要になり、法婚姻より手間がかかります。

また、次の控除が利用できないため税負担額は高額となります。

利用できない控除
  • 配偶者控除
  • 相続税控除
  • 医療費控除

デメリット②:相続権がない・相続税控除が受けられない

内縁の妻は、相続権がないのでパートナー名義の不動産・預貯金を引き継ぐことはできません。

これら遺産を相続するには、遺言書が必要になります。

たとえ遺言書を作成して相続を受けることができても、さきに触れたように相続税控除がありません。

そのため、法婚姻と比較すると税の負担額は高額となります。

デメリット③:子供が生まれた時の手続きが多い

内縁の妻は、子供が生まれた際にはパートナーの「認知」が必要となり、この認知がなされなければ子供とパートナーは法律上他人になってしまいます。

このとき子供の戸籍は妻の戸籍に入ることになり、子供が成長した際には父親との姓の違いから、不便が起こることも予想されます。

 

たとえ認知をしていても、子供は摘出子(婚姻関係のある夫婦から生まれた子供)となることはないため、妻の戸籍に入り母親が親権者となります。

父親の戸籍に子供を入れて同じ姓にするには、家庭裁判所に子供の氏名変更許可を申し立て、親権者を父親に変更する養子縁組を行わなければなりません。

デメリット④:夫婦関係を証明しにくい

法婚姻の場合は、戸籍謄本があれば夫婦関係を証明することが可能です。

しかし、内縁の妻は戸籍謄本に記載事項がなく、戸籍謄本で夫婦関係を証明することができません。

内縁の妻が夫婦関係を証明するには、つぎのような資料が必要です。

内縁関係証明に必要な書類
  • 内縁関係が記載された住民票
  • 生命保険の証書
  • 写真・日記
  • 親族の証言

デメリット⑤:慰謝料請求のハードルが高い

内縁の妻であっても、パートナーと離婚する際には慰謝料を請求することが可能です。

しかし、この場合ははじめに内縁関係を証明しその後慰謝料を請求できる事由を立証する必要があり、法律婚に比べて手続きも複雑になります。

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内縁者が相続を受ける方法

公正証書

さきに触れたように、内縁関係においては相続権がありません。

長期間の同居の事実があり夫婦として疑いようがない状況にあったとしても、相続権は権利として認められてはいません。

どうすることもできないのです。

しかし、次に解説する方法なら内縁関係であっても、パートナーの遺産を相続することが可能になります。

内縁者が相続を受ける方法
  • 生前贈与を行う
  • 遺言書を作成しておく
  • 特別縁故者として財産を受領する

方法①:生前贈与を行う

パートナーが健在のうちに遺産の贈与を受ける「生前贈与」なら、たとえ法的な権利が無い内縁関係者であっても、相続を受けることが可能です。

方法②:遺言書を作成しておく

パートナーが生前のうちに遺言書を作成して、その遺言書の中に「財産の一部を内縁関係者に贈与する」と明確な記載がある場合は、その遺言書に沿った財産の継承が可能となります。

方法③:特別縁故者として財産を受領する

死亡した方に配偶者がいない場合は、特別な手続きを一切していない恋人のような方であっても、内縁関係と同様の権利を有する「特別縁故者」となれる場合があります。

とは言え、恋人の場合では遺言以外で自身の財産を相続させるのは難しいのが現状です。

この場合は、多少の贈与税を払っても「生前贈与」という形を取り、数年に渡って財産を相続する方法が一般的です。

特別縁故者となるには

特別縁故者となるには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

そのため、家庭裁判所がこれを認めなければ特別縁故者とはなることはできません。

亡くなった方に相続人が一人もいない場合、その方の身の回りの世話をした方が特別縁故者となります。

しかし、この場合の相続人が一人もいない状態とは、法定相続人全員が相続放棄をした場合に限られるのです。

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内縁であっても解消時には慰謝料が発生するケース

先に解説したとおり、内縁関係であってもその関係を解消する際には、慰謝料が発生するケースがあります。

慰謝料が発生するケースは、パートナーに次の行為があった場合です。

慰謝料が発生するケース
  • 相手に不貞行為があった場合
  • 一方的に事実婚の解消があった場合
  • 事実婚の相手が一方的に別居した場合

ケース①:相手に不貞行為があった場合

パートナーに不貞行為(肉体関係を伴う不倫)が発生し、夫婦関係を解消せざるを得なくなったな場合には、内縁の妻であってもその行為を行ったパートナーやその不倫相手に対して、「不倫慰謝料」を請求することが可能です。

ケース②:一方的に事実婚の解消があった場合

内縁関係は、相手が嫌いになったなどの簡単な理由でその関係を解消することはできません。

このように、正当な理由なく内縁関係を解消された場合は、慰謝料を請求することが可能です。

内縁関係を解消する正当な理由は、法婚姻と同様の「法廷離婚事由」に定められ、これ以外の離婚理由は正式な理由とはみなされないのです。

法廷離婚事由に定められた正式な離婚理由は次のとおりです。

正式な離婚理由
  • 相手に不貞行為があった場合
  • 相手が同居を拒否し生活費を渡さない場合
  • 相手の生死が3年以上わからない場合
  • 相手が強度の精神病にかかり回復の見込みがないと判断された場合
  • その他の婚姻を継続したい重大な事由がある場合

ケース③:事実婚の相手が一方的に別居した場合

パートナーが正当な理由なく突然家を飛び出してしまい、他の住居に生活拠点を移した場合も、「悪意の遺棄」として慰謝料を請求することが可能です。

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内縁解消時には法婚姻と同様の財産分与ができる

財産分与の手続き

慰謝料の請求と同様に、内縁関係であっても財産分与などの金銭請求は可能です。

ここでは、内縁の妻であっても金銭請求ができる具体的な項目を解説します。

財産分与

財産分与とは、夫婦共同財産を公平に分配する制度です。

内縁関係であっても、同居中にパートナーと共同で築いた財産は2分の1ずつ分割して再分配することが可能です。

教育費

内縁関係の夫婦に認知した未成年の子供がいる場合は、子供が成人するまで養育費が発生します。

夫婦の収入により養育費は異なりますが、平均額は月に4万円前後と言われています。

慰謝料

夫婦の一方に婚姻関係を破綻させた原因が認められれば、内縁関係であっても慰謝料が発生します。

慰謝料金額は原因によっても異なりますが、50万円から300万円が相場です。

年金分割

内縁関係であってもどちらかが死亡した際には、年金分割請求をすることは可能です。

ただし、一方が相手の扶養に入っていて「第3号被保険者」の場合では、年金分割は「3号分割」に限られ合意分割を行うことはできません。

婚姻費用

内縁関係であっても、同居中にパートナーが生活費を払ってくれない場合は、生活費である「婚姻費用」を請求することが可能です。

ただし、別居して離婚成立までの間にも婚姻費用が発生する法婚姻とは異なり、内縁関係では同居の解消をもって内縁関係の解消と評価される可能性がります。

このような場合では、婚姻費用の請求は困難となるでしょう。

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内縁関係を検討している方がするべきこと

遺言書

これから内縁の妻となることを検討しているならば、次のような準備は不可欠です。

ご自身とパートナーの関係性を法律上立証するために必要な作業と、相続時に不利益を被らないために必要な作業です。

そのため、パートナーの同意を得て必ず行うようにしてください。

内縁を証明する準備を行う

内縁の妻となるなら、その事実をいつでも証明できる状態にする必要があります。

これは、あらゆる手続において内縁関係を証明することが前提となり、これを証明できなければ公的な給付もパートナーへの請求も認められなくなる可能性があるためです。

証明資料を用意する方法は次のとおりです。

住民票の続柄を変更する

市区町村窓口にて、住民票の記載内容の変更を行います。

同一世帯の場合の記載方法は「同居人」となることが一般的ですが、これでは不十分です。

内縁関係を証明するには「未届けの妻」と記載してもらいましょう。

結婚式をあげる

結婚式をあげたり、新婚旅行に行くなどして婚姻関係にあるという事実を作ります。

その際には、日付の入った写真や式場の領収書などをもらい大切に保管しておきまましょう。

内縁の契約書を作成する

内縁関係にあるという契約書を作ることで、明確に内縁関係を証明することができます。

遺言書を作る

内縁関係にある夫婦では、お互いの財産を相続する権利がないためパートナーの死後、不動産や預貯金を相続することができないケースも珍しくありません。

このような不利益を防止するためには、お互いの遺産相続についての厳密な取り決めが必要です。

「自分たちはまだ若いからどちらかが亡くなるのはまだ先だ」と考えるのではなく、内縁関係になった場合はできるだけ早い段階で遺言書を作成して、不測の事態に備えることをおすすめします。

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まとめ

手を取り合う男女

法婚姻での妻であっても内縁の妻であっても、お互いがパートナーと認め合い、ひとつ屋根の下で生活を共にすることに変わりはありません。

しかし、内縁の妻には相続面での保護に不安が残ります。

この様な状態をできるだけ解消するためにも、内縁関係を証明する資料の作成や、遺産相続を担保する遺言書の作成は必須です。

ご自身とパートナーだけでは対応が不安と考えるなら、専門家の意見を活用することも念頭に、遺産相続についての準備を行うことをおすすめします。

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この記事を監修したのは、
マガジン 編集部
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