【2024】相続登記事例集|よくあるトラブル事例と解決方法を解説

相続登記事例不動産
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

相続登記とは、亡くなった人が持っていた不動産の名義を、相続人などの名義へと変える手続きです。相続登記は司法書士へ依頼することが多いものの、自分で行う場合もあります。

しかし、特に自分で相続登記する場合には、トラブル発生時の対応に注意しなければなりません。今回は、相続登記にまつわるよくあるトラブル事例と解決方法についてくわしく解説します。

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)が持っていた不動産を、相続人などの名義へと変える手続きです。土地や建物の情報や所有者の情報は、法務局に登録(登記)されています。

そして、土地や建物の名義人が亡くなったからといって、法務局側で勝手に名義を書き換えてくれるわけではありません。そこで、相続でその不動産を取得することになった人が、自ら法務局に申し出て、名義を書き換えてもらう必要があります。この手続きを、「相続登記」といいます。

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相続登記トラブル事例1:土地の名義が先代のまま

ここからは、相続登記にまつわるよくあるトラブル事例を見ていきましょう。1つ目のトラブル事例は、土地の名義が先代のままであるという事例です。

なお、このような相続のことを「数次相続」といい、解決までに時間がかかりやすいトラブルの一つです。

事例の概要

父である太郎氏が亡くなりました。

太郎氏の配偶者は既に亡くなっており、子どもは長男である一郎氏と二男である二郎氏の2人です。一郎氏と二郎氏との関係性は良好で、太郎氏と晩年まで同居をして身の回りの世話をしてきた一郎氏が自宅不動産を相続する前提で、話がまとまっています。

一郎氏は、さっそく法務局で相続登記をしようと考え、必要な書類を集め始めました。すると、すっかり太郎氏のものであると思っていた自宅土地建物が、30年以上も前に亡くなった祖父である正夫氏の名義であることが判明したのです。

一郎氏は生前の父から兄弟が何人かいると聞いていたものの、なかには疎遠となっている人もおり、連絡先もわかりません。

トラブル解決方法

このようなケースは、非常に多く見受けられます。原因は、祖父の相続の際にきちんと相続登記をしていなかったためです。

この場合に相続登記をするためには、祖父の遺言書が残っていたなど特殊な状況でない限り、祖父である正夫氏の相続人(正夫氏の子など。例で言えば、一郎氏の叔父や叔母)全員と連絡を取って、遺産分割協議をまとめなければなりません。

なお、元々祖父の相続人であった人が亡くなっている場合には、その相続人の相続人(例で言えば、一郎氏のいとこや亡くなった叔父の妻など)との協議が必要です。そのため、まずは正夫氏の戸籍謄本や除籍謄本から辿って、現在の相続権を持っている人(協議をしなければならない相手)が誰であるのかを調べる必要があります。

そのうえで、戸籍の附票(本籍地で取得できる、戸籍から住所を調べる書類)を取得して、相続権を持っている人の住所を調べましょう。

なお、自分で戸籍謄本などを調査することが難しい場合には、司法書士などの専門家に依頼をすることも可能です。住所がわかったら手紙を送るなどしてその相手と連絡を取り、遺産分割協議(遺産分けの話し合い)を行います。

一郎氏がその自宅土地建物を相続することに、正夫氏の相続権を持っている人が全員同意をして遺産分割協議書への署名捺印などに協力をしてくれれば、一郎氏は無事に相続登記をすることが可能です。

ただし、他の権利者も遺産を相続する権利を持っている以上、原則として法定相続分は渡す必要があるでしょう。

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相続登記トラブル事例2:権利書が行方不明

相続登記にまつわる2つ目のトラブル事例は、相続登記をしようとする不動産の権利書が見つからないという場合です。では、事例と解決方法について解説していきましょう。

事例の概要

父である太郎氏が亡くなりました。

太郎氏の相続人は、長男である一郎氏と二男である二郎氏の2人のみです。2人の関係性は良好で、太郎氏と晩年まで同居をして身の回りの世話をしてきた一郎氏が自宅不動産を相続する前提で、話がまとまっています。

一郎氏は、さっそく法務局で相続登記をしようと考え、書類を集め始めました。しかし、どれだけ探しても自宅不動産の権利書が見つかりません。

この場合、相続登記をすることはできないのでしょうか?

トラブル解決方法

結論をお伝えすれば、相続登記に、原則として権利書は必要ありません。そのため、仮に権利書を紛失してしまっていたとしても、相続登記には支障がないことがほとんどです。

ただし、相続登記で例外的に権利書が必要となる場合もあります。たとえば、太郎氏の戸籍上の氏名は「齋藤 太郎」であるところ登記上の氏名が「斉藤 太朗」などとなっているなど名前の表記が違う場合や、登記されている住所と太郎氏の最後の住所が異なっている場合などです。

しかし、この場合であっても、他の書類で登記上の名義人と被相続人とが同一人物であることを証明したり上申書を作成して添付したりすることなど、権利書がなくても登記できることが多いでしょう。

ただし、これらの通常は不要である書類が求められることになるため、自分で対応することは容易ではありません。この場合には、無理に自分で行わず、司法書士に依頼することを検討すると良いでしょう。

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相続登記トラブル事例3:相続人が行方不明

相続登記にまつわるよくあるトラブル事例の3つ目は、相続人の中に行方不明者がいる場合です。事例の概要と主な解決方法は、次のとおりです。

事例の概要

父である太郎氏が亡くなりました。太郎氏にはもともと長男の一郎氏と二男の二郎氏という2人の子どもがいたものの、二郎氏とは10年以上連絡が取れない状態です。

太郎氏の死亡を受けて、一郎氏は二郎氏が以前住んでいた賃貸アパートを訪ねてみました。

しかし、すでに解約されているようで、居場所が分かりません。

この場合には、二郎氏を無視して手続きを進めることができるのでしょうか?

トラブル解決方法

相続人の中に行方不明の人がいる場合であっても、その人を無視して手続きを進めることはできません。そのため、まずは二郎氏の居場所を探す必要があります。

二郎氏の居場所を探すには、戸籍謄本や除籍謄本などをたどって、現在の住民票上の住所地を調べることが先決です。住民票上の住所地に二郎氏がいて連絡が取れれば、そこから通常どおり遺産分割協議を進めましょう。

一方、たとえば住民票上の住所地がすでに解約された賃貸アパートとなっている場合などには、それ以上探しようがありません。この場合には、失踪宣告か、不在者財産管理人制度を検討します。

失踪宣告とは、所在が分からなくなってから原則として7年以上が経過した際に、裁判所に申し立てることにより、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。この場合には、すでに二郎氏は亡くなったこととなるため、二郎氏に子がいれば、子が代襲して相続人となります。

一方、不在者財産管理人制度とは、裁判所に申し立てることにより、不在者(二郎氏)の財産を代わりに管理する人(不在者財産管理人)を選任してもらう制度です。こちらを利用した場合には、選任された不在者財産管理人が、二郎氏の代わりに遺産分割協議に参加することとなります。

なお、不在者財産管理人は不在者の財産を守る役割を担うため、二郎氏に何も相続させないとの内容で遺産分割協議を成立させられる可能性は高くありません。

このあたりは個別事情によって異なりますので、あらかじめ司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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相続登記トラブル事例4:相続人の遺言書が見つからない

相続登記にまつわるトラブル事例の4つ目は、遺言書が見つからないというトラブルです。こちらも、事例と主な解決策を紹介します。

事例の概要

叔父である太郎氏が亡くなりました。太郎氏には子どもや配偶者がおらず、兄弟姉妹や甥姪が相続人です。

太郎氏の姪にあたる花子氏は太郎氏の近くに住んでいたということもあり、高齢になった太郎氏の世話を一手に引き受けてきました。

そんな花子氏に対して太郎氏は生前、「私の財産は決して多くはないけれど、世話になった花子にすべてもらって欲しいと思っている。ちゃんと遺言書を書いてあるから、安心して欲しい。」と話してくれたことがあります。

花子氏は遺産が欲しくて介護をしてきたわけではないため、そのときはどこに遺言書をしまったのかなど、くわしくは聞きませんでした。しかし、相続が起きてから遺言書を探したものの、一向に見つけることができません。

遺言書を探すには、どうすれば良いのでしょうか?

トラブル解決方法

被相続人が遺言書を作成したらしいものの見つけられないという場合には、次の方法で探すと良いでしょう。

自宅などを探す

遺言書の保管場所としてもっとも一般的なのは、ご自宅です。仏壇の引き出しや自宅の金庫、本棚の中など、考えられる場所を探してみましょう。

公証役場で確認する

被相続人が公正証書遺言で遺言書を作成していた場合には、被相続人の死後、利害関係者が遺言書の有無を調べることができます。

遺言書の有無を調べられる利害関係者とは、相続人や、その遺言書で財産をあげると書かれている受遺者などです。花子氏に遺産を渡す内容の遺言書を公正証書で作成していたのであれば、花子氏は最寄りの公証役場から、遺言書の有無を確認することができます。

なお、遺言書の有無を調べるためには、遺言者の死亡を証明する戸籍謄本や、遺言書の有無を調べたい人の本人確認書類などが必要です。どのような書類が必要となるのかは被相続人と検索をしたい人との関係性によって異なりますので、出向く予定の公証役場へあらかじめ確認すると良いでしょう。

法務局で確認する

令和2年(2020年)7月10日から、法務局での遺言書保管制度がスタートしました。これは、自分で作成した自筆証書遺言を、法務局で保管してもらう制度です。

遺言者である太郎氏の死後に花子氏が最寄りの法務局へ出向いて「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することで、太郎氏がこの制度を利用して遺言書を預けていたかどうかを確認することができます。

法務局で遺言書の有無を調べるためには、遺言者の死亡がわかる戸籍謄本や、請求に出向く人の住民票の写しなどの書類が必要です。遺言書保管事実証明書の交付請求は予約制となっていますので、予約をする際に、必要書類についても確認をしておくと良いでしょう。

付き合いのあった専門家に問い合わせる

太郎氏が専門家のサポートを受けて遺言書を作成していた場合には、遺言書のありかについて専門家が知っている可能性があります。そのため、弁護士や司法書士、行政書士などの名刺や資料などが残っていた場合には、その事務所へ問い合わせると良いでしょう。

銀行の貸金庫を調べる

太郎氏が銀行の貸金庫を契約していた場合、貸金庫の中で遺言書を保管している場合があります。ただし、貸金庫を開けるためには、原則として相続人全員の同意がなければなりません。

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まとめ

相続登記は、スムーズに進行できる場合ばかりではありません。ここで紹介した事例など、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。

トラブルが生じている相続登記を自分で行おうとすれば、通常以上に多大な手間と時間を要してしまうことでしょう。イレギュラーな事態が生じている相続登記は無理に自分で行わず、司法書士へ依頼することをおすすめします。

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2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。