初めて結婚式に呼ばれる若い世代の方は、「ふくさ」を知らない方も多いのではないでしょうか?
ふくさは、結婚式以外にも葬儀の場でも使用され、冠婚葬祭に欠かせないアイテムの一つです。
しかし、普段から使用する機会は少なく、選び方や使用方法に多くの作法があり、初めは戸惑ってしまうものです。
ここでは、そのふくさについて「種類」「使用方法」「作法」などをわかりやすく解説しています。
この機会にふくさの使い方をマスターして、公の場所でも恥をかかないマナーを身につけましょう。
ふくさとは

ふくさとは、ご祝儀袋や香典袋などの金封を包むために使用する四角い布のことです。
ふくさは漢字では「袱紗」と表記し、「袱」はものを包む「紗」には薄い布という意味があります。
ふくさを使用する目的は、金封の「汚れ」「損傷」「汚れ」を防ぎ、相手へ丁寧な気遣いをもって金銭を贈るためです。
まれに、金封をはだかで持ち歩く方がいますが、これは公の場ではマナー違反です。
冠婚葬祭の場で金封を贈る際には、このふくさを使用して、相手への敬意を持った行動を心がけましょう。
- 金封を包むために使用する四角い布
- 冠婚葬祭の場ではふくさを使用することがマナー
ふくさの種類

ふくさの種類は、形で分類することができます。
ここでは、一般的に販売されているふくさの種類を4種類に分類して、それぞれの特徴を解説します。
ふくさの種類は次のとおりです。
- 風呂敷タイプ
- 爪付きタイプ
- 台付きタイプ
- 金封タイプ
種類①:風呂敷タイプ

画像引用元:Amazon
風呂敷をひと回り小さくした大きさで、正方形をしたふくさです。
このタイプのふくさは、昔から使われているもっとも一般的なデザインだと言えるでしょう。
種類②:爪付きタイプ

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爪付きタイプのふくさは、風呂敷タイプのふくさに爪状のフックと留め具がついたふくさです。
金封をふくさに包んだ後に、フックをかけることで金封がふくさの中でずれ動くことなく、安心して会場まで持ち運ぶことができます。
また、手提げバックの中にふくさを入れて持ち運ぶ場合でも、ふくさの形状が崩れません。
種類③:台付きタイプ

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台付きタイプのふくさは、付属の硬い台の部分に金封を載せて包みます。
安定した台に乗せることで、持ち歩く際にも金封が曲がったり水引が崩れたりすることはありません。
台付きタイプのふくさは台部分に留め具が付いているものもあり、これは金封を固定するために使用します。
この留め具が付いている台付きふくさは通常の台付きふくさ以上に安定感があるため、長距離移動の際にもふくさの形状が崩れることはありません。
種類④:金封タイプ

画像引用元:Amazon
金封タイプのふくさは、その名の通り金封と同じく長方形の形をしており、袋状の部分に金封を納めかぶせ部分を伏せて使用します。
そのため、金銭タイプのふくさでは金封を包む必要ががりません。
ふくさの現代版とも言えるデザインと簡単な使用方法は、ふくさになじみがない方でも、安心して使用することができます。
ふくさの色・柄の選び方

ふくさは、使用する場面で使いわける必要があり、慶事用と弔事用では色・柄が異なります。
使用する場面でふくさの形状を問われることはありませんが、色・柄に関しては一般的な傾向やマナーがあり、注意が必要です。
ふくさの色は次のとおりです。
用途 | 色 |
---|---|
慶事用 |
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弔事用 |
|
慶事・弔事兼用 |
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ふくさの柄は次のとおりです。
用途 | 柄 |
---|---|
慶事用 |
「大胆な花柄」「幾何学模様」「ドット」「ストライプ」など比較的自由 |
弔事用 |
無地が推奨されるが「家紋のデザイン」のワンポイントは可 |
慶事用ふくさの色・柄の選び方
慶事用のふくさの色は、おめでたい印象を与える明るい色や、暖色系を主体とした「赤」「黄色」「金色」「オレンジ」「ピンク」です。
柄は「大胆な花柄」「幾何学模様」「ドット」「ストライプ」など、和風にこだわる必要もなく比較的自由です。
弔事用ふくさの色・柄の選び方
弔事用のふくさの色は、落ち着いた色合や、寒色系を主体とした「紺」「緑」「深緑」「うぐいす」「グレー」です。
柄は、基本的には無地が推奨されますが、家紋が入ったふくさは問題ありません。
紫色のふくさは慶事・弔事どちらも使用可
ふくさの色は、慶事・弔事で分けられていますが、紫色だけはどちらの場面でも使用できます。
そのため、初めてふくさを購入する方には、慶事・弔事のどちらにも使用可能な紫色のふくさはおすすめです。
【形状別】ふくさの包み方

先ほどお伝えしたように、ふくさには4種類のデザインがありますが、形状は2種類しかありません。
ここでは、この2種類の形状に分けて、ふくさの正式な包み方をわかりやすく解説していきます。
2種類の形状は次のとおりです。
- 正方形:「風呂敷タイプ」「台付きタイプ」「爪付きタイプ」
- 長方形:「金封タイプ」
包み方①:正方形(風呂敷・爪付き・台付きタイプ)のふくさの場合
正方形のふくさでは、次のような手順で金封を包みます。
- まずは正方形のふくさを広げて四隅を上下左右の位置に置きひし形を作る
- 用意した金封を中央より右に置きふくさの右の隅を持ち内側に折る
- 次は下側の端を持ち内側に折る
- 続いて上側の隅を持って内側に折る
- 最後に左の隅を折って余った部分で金封全体を包む
爪付きタイプのふくさでは最後に爪をかけて完成となります。
包み方②:長方形(金封タイプ)のふくさの場合
長方形のふくさでは、金封をふくさに入れるポケット型の形状のため、包む必要はありません。
しかし、慶事・弔事でふくさを開く方向が異なるため注意が必要です。(以下【状況別】ふくさの包み方で詳しく解説)
【状況別】ふくさの包み方
先ほどお伝えしたとおり、ふくさの包み方には正式な包み方がありますが、この包み方は使用する状況によって異なります。
ここでは、ふくさを使用する状況を慶事・弔事にわけそれぞれの包み方を解説します。
状況①:慶事での包み方
慶事でのふくさの包み方のポイントは、ふくさを右開き(左手で持って右手で開けられる)にすることです。
そのため、包み方は次のような手順です。
- ふくさを広げて四隅を上下左右の位置に置きひし形を作る
- 用意した金封を中央より少し左に置きふくさの左の隅を持ち内側に折る
- 上側の端を持ち下側に折る
- 下側の隅を持って上側に折る(慶事では天に向かうという意味から下側を上に折る)
- 右の隅を折って余った部分で金封全体を包んで完成する
金封タイプのふくさも同様に、右開きとなるようポケット部分を左側にして包みます。
状況②:弔事での包み方
弔事でのふくさふくさの包み方ポイントは、ふくさを左開き(右手で持って左手で開けられる)にすることです。
そのため、包み方は次のような手順です。
- ふくさを広げて四隅を上下左右の位置に置きひし形を作る
- 用意した金封を中央より少し右に置きふくさの右の隅を持ち内側に折る
- 下側の端を持ち上側に折る
- 上側の隅を持って下側に折る(弔事では地に向かうという意味から上側を下に折る)
- 左の隅を折って余った部分で金封全体を包んで完成する
金封タイプのふくさも同様に、左開きとなるようポケット部分を右側にして包みます。
【状況別】ふくさの作法
丁寧な気遣いを持って金銭を贈るために使用するふくさは、その渡し方にも作法ががります。
ここでは、ふくさの渡し方の作法とその手順を3つの状況別に解説します。
状況①:先方宅にふくさを持参する場合
ふくさを先方のご自宅に持参する際は、次の手順を踏むことが作法です。
- 訪問したい日取りを事前に先方と打ち合わせ、前日に再度確認した上で訪問する
- 玄関で軽い挨拶を交わす
- 部屋へ通された後に正式な挨拶を交わす
- 挨拶が済んだらお盆に金封のせふくさをかけて渡す
状況②:会場にふくさを持参する場合
ふくさを会場に持参する際には、次の手順を踏むことが作法です。
- 会場の受付の方に挨拶を述べる
- 受付の方の目の前でふくさから金封を取り出す
- 受付の方に両手で金封を差し出す(金封の下部分を受付の方に向ける)
状況③:一般的なふくさに包んで持参する場合
台付きタイプのふくさでは次の手順が作法です。
- 先方の目の前でふくさを開く
- ふくさから外した台の上に金封をのせる(金封の下部分を先方に向ける)
- 台を滑らすように金封を差し出す
台は裏表で色が異なり、慶事・弔事で使い分けられるようになっています。
慶事では赤色、弔事では緑色となっていますので、状況に応じた色を表面にします。
この台の色を間違えてしまうと、先方に対して大変失礼にあたるため、再度の確認を心掛けて下さい。
台付きタイプ以外のふくさを使用する場合も、作法の手順は同じです。
ただし、台付きタイプ以外のふくさでは、金封をのせる台がありません。
台の代わりにふくさを折りたたみ、金封と同じくらいの大きさにして、その上に金封を乗せて差し出すことがマナーです。
【種類別】葬儀におけるふくさの渡し方

葬儀でのふくさの渡し方は、ふくさに包まれた香典を受付で取り出し渡すことが基本です。
しかし、渡し方の基本は同じですが、ふくさの構造の違いから若干手順が異なる部分があります。
ここでは、ふくさの種類別の渡し方と手順について解説します。
種類①:正式なふくさの渡し方
正式なふくさの渡し方の手順は次のとおりです。
- 挨拶をしながら一礼をする
- 右手の手の平にふくさをのせ、左手でふくさを開いて香典袋をとりだす
- 受付に文字が向くように時計回りに向きを変える
- ふくさをたたみ受付の台におきその上に香典をおく
- ふくさを台にして両手で香典を差し出す
種類②:台付きタイプのふくさの渡し方
台付きタイプのふくさでは、正式なふくさの渡し方とほぼ同じです。
ふくさの台を利用して渡しても良いですし、ふくさをたたんで台の代わりとする方もいます。
台付きタイプのふくさの渡し方の手順は次のとおりです。
- 挨拶をしながら一礼をする
- 右手の手の平にふくさをのせ、左手でふくさを開いて香典袋をとりだす
- 受付に文字が向くように時計回りに向きを変える
- ふくさの台、もしくはふくさを台の代わりにして両手で香典を差し出す
種類③:金封タイプふくさの渡し方
金封タイプのふくさの渡し方は、ふくさを台の代わりにするのが一般的です。
金封タイプのふくさの渡し方の手順は次のとおりです。
- 挨拶をしながら一礼をする
- 香典袋を取り出して、相手から見て文字が読める向きになるように、反時計回りに回す
- 金封ふくさに香典をのせ両手で香典を差し出す
ふくさがない場合の対処方法

ここまでは、冠婚葬祭にはふくさは欠かせないと説明してきましたが、急な弔事などでどうしてもふくさを探すことができない、もしくはふくさを買う時間がないなどの状況も予想されます。
ここでは、このようにふくさが用意できない場合の対処方法を解説します。
ハンカチで代用する
ふくさがない場合は、ハンカチを使ってふくさの代用品とすることも可能です。
ただし、代用品だからといって、どんなハンカチでも良いわけではありません。
使用状況に応じた色・柄を意識して、周囲の雰囲気を壊さない配慮が必要です。
風呂敷で代用する
手元に風呂敷がある場合は、これを利用することもできます。
ただし、一般的な大きさの風呂敷は大きすぎるため、ふくさの代用品としては不向きでしょう。
ひと回りからふた回り小さく、状況に応じた色・柄の風呂敷であれば使用することも可能です。
身内のみの葬儀ではふくさなしでも許される場合もある
近年増えている家族葬など、比較的少人数の親族のみで行われる葬儀では、ふくさがなくても許される場合が多いのが現状です。
ただし、多くの参列者が弔問する葬儀ではそうはいきません。
ハンカチ・風呂敷などで代用してでも、礼儀を重んじた行動が求められます。
まとめ

ふくさは、渡し方や包み方に細かな作法・マナーがあるため、覚えることは意外とたくさんあります。
特に、昔ながらの伝統を重んじる地域や格式の高い慶事・弔事では、ふくさのマナーは重要です。
慶事であれば、予定された日におこなうため準備も可能ですが、弔事はそうもいきません。
この機会にふくさについての基本知識を身につけ、どのような冠婚葬祭の場でも余裕を持って行動できるよう心がけましょう。