故人を見送る葬儀の流れは、ご臨終から「お通夜」「告別式」「火葬」とやるべきことがたくさんあるため、大切な人を亡くしたばかりの家族にとって精神的な負担になることは少なくありません。
悲しむ間もなく動かなければならない状態はとても辛いものですが、葬儀の流れをある程度把握しておくと見通しが立てられるため、落ち着いて行動できるようになります。
そこで、今回のは葬儀の流れを順番に紹介しながら、やるべきことや注意点を詳しくまとめました。
葬儀の流れに不安を感じる方や、葬儀の手順を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
葬儀の全体的な流れ

最初に、葬儀の全体的な流れを簡単に紹介します。
葬儀というと、主に「お通夜」や「告別式」を思い浮かべますが、実は葬儀の流れは故人がご臨終を迎えた瞬間からすでに始まっています。
- 故人が亡くなった場所からどのようにご遺体を移送するか
- 安置の場所はどこにするか
- お通夜・告別式・火葬の日程を決める
など、細部に渡って短時間に決めなければなりません。
葬儀の流れを把握するときは、次のような5つの項目に分けて考えると理解しやすくなります。
- 臨終から安置
- 葬儀社との相談
- 納棺からお通夜
- 告別式から出棺
- 火葬からお骨拾い
このように細かく項目を分けて考えると、次にやるべきこと・決めるべきことが見えるので、「今何をするべきか」で迷うことがありません。
では、それぞれの項目では何を行うべきなのか、以降の章で詳しく紹介しましょう。
葬儀の流れ①:臨終から安置

葬儀の流れで最初に行われるのが、ご臨終後の手続きからご遺体の安置までです。
「葬儀の流れ①」では、家族が行う最初の手続きからご遺体の安置までを一つの流れにして詳しく紹介します。
- 医師による死亡確認・エンゼルケア
- 葬儀社へ連絡
- 遺体を移送して安置
1.医師による死亡確認・エンゼルケア
故人の死は、医師による死亡確認によって初めて法的に認められます。
死亡を確認した医師から発行されるのが「死亡診断書」もしくは「死亡検案書」ですが、このどちらかがないと火葬許可が下りないため故人を火葬できません。
医師による故人の死亡確認がされたら死亡診断書や死亡検案書が作成されますので、忘れないように受け取ってください。
死亡確認された遺体は、綺麗に清拭されて「エンゼルケア」を受けます。
エンゼルケアとは、遺体を限りなく生前に近い姿へするための処置のことで、事故や手術などの傷も綺麗にして帰宅の準備を整えます。
死亡診断書もエンゼルケアも病院にお任せすることになりますので、家族はその間に次の段取りを考えましょう。
2.葬儀社へ連絡
死亡診断書の作成とエンゼルケアを行なっている間に、葬儀社へ連絡して遺体の移送を依頼します。
すでに決まっている葬儀社があるなら臨終後に連絡し、移送用の車を依頼しましょう。
もし葬儀社が決まっていない場合でも、病院から何社か紹介してもらったり、インターネットで検索して24時間受付の窓口に連絡することもできます。
病院の住所と病院名、移送先の住所をあらかじめメモしておき、間違いなく伝えられるようにしておきましょう。
3.遺体を移送して安置
葬儀社から移送用の車が来たら、故人の遺体を乗せて移送し安置場所へ向かいます。
移送用の車には付き添いの人が1人か2人しか乗れませんので、ご臨終に立ち会った家族・親族内で事前に話し合い移動手段も考えておきましょう。
移送された遺体は葬儀社の人によって部屋へ運ばれ、ドライアイスなどで遺体を保持する処置が行われて安置されます。
必要なものはその都度葬儀社の人から指示をもらえますので、慌てずに準備をしてください。
葬儀の流れ②:葬儀社との相談

故人の遺体を安置したあと、葬儀社と今後の葬儀について詳しい相談を行います。
実は、葬儀の流れの中では、遺体安置後の相談が大変重要です。
「葬儀の流れ②」では、主な相談内容について詳しく紹介しましょう。
- 火葬の予約
- 告別式の日時を決める
- お通夜の日時を決める
- 僧侶へ連絡する
- 祭壇・供花・仏具などを選ぶ
- 通夜振舞いの形式を決める
1.火葬の予約
最初に行われるのが、火葬の予約日の相談です。
都心部になると火葬の予定が詰まっていることも多く、自分が予約したいと思った日時が空いてないというケースも多いのです。
葬儀社は最寄りの火葬場の予約状況を把握しており、家族の希望日時と予約状況をすり合わせて予定を立てていきます。
葬儀社からの提案日時と希望する日時をすり合わせながら、火葬の予約日時を決めていきましょう。
2.告別式の日時を決める
火葬は告別式のあとに行われることがほとんどなので、火葬の日時が決まったら告別式の日時もスムーズに決まります。
例えば、火葬の予約時間が13時なら告別式は10時から、火葬の予約時間が14時なら告別式は11時からという感じです。
家族葬などの小規模な告別式ではもう少し時間に余裕がありますが、基本になるのは火葬の予約時間です。
そこを目安に決めていきましょう。
3.お通夜の日時を決める
告別式の日時が決まったら、最後にお通夜の日時を決めて行きます。
お通夜は告別式の前夜に行われるため日にちはすぐに決まりますが、決めるべきメインになるのがお通夜の開始時間です。
お通夜は早くても夕方以降に行われるので、平日は仕事が終わってから駆けつける人のことも考え、18時か19時を目安にすると良いでしょう。
あまり遅くなると通夜振舞いの時間まで遅くなるので、翌日の告別式の時間帯とすり合わせで考えてください。
4.僧侶へ連絡する
お通夜と告別式で僧侶の法要を行う場合は、檀家になっているお寺に連絡して僧侶の予定を尋ねるようにします。
特に、お盆やお彼岸の時期は檀家周りで忙しいため、予定した時間からずれる可能性も出てきます。
葬儀社によっては法要だけを行う僧侶を紹介してもらえますが、予約時間を気にして檀家となっているお寺の僧侶を呼ばないのはあまり良い方法ではありません。
お世話になっているお寺がある場合はまずそちらへ連絡し、時間を調整してお通夜・告別式の時間の最終決定をしましょう。
5.祭壇・供花・仏具などを選ぶ
お通夜・告別式・火葬の日時が決定したら、斎場の祭壇や供花、仏具などを選びます。
かなり多くの項目を選ばなければならないため家族は大変ですが、どのようなものがわからないときには葬儀社の人に尋ね、一つひとつをしっかり決めていきましょう。
家族が選ばなければならない項目は、主に次のとおりです。
- 斎場の規模
- 枕飾り
- 棺
- 祭壇
- 祭壇周りの供物や水引き幕
- 死装束
- 骨壺
- 供花
- 供物
- ろうそくや線香
- 会葬礼状
- 会葬礼品
6.通夜振舞いの形式を決める
葬儀に必要な仏具を決めたら、最後に通夜振舞いについて話し合います。
通夜振舞いは大きく分けると大皿料理と1人一席を設けるタイプの2種類があり、30名以上になるとお皿料理で通夜振舞いを行うケースが多いです。
お通夜に多くの人が集まることがわかっている場合は大皿料理、家族葬などの小規模で行う場合は仕出し弁当を頼むなど、参列者の人数によって通夜振舞いの形式を決めましょう。
多くの葬儀社ではパンフレットなどで人数と料理を確認できますので、わからないときは葬儀社の人と相談してください。
葬儀の流れ③:納棺からお通夜

葬儀社との細かい相談が決まったら、家族は故人を見送るためのさまざまな儀式を行っていきます。
「葬儀の流れ③」では、納棺からお通夜までを一つの流れととらえ、家族がやるべきことを詳しく紹介します。
- 遺体を納棺する
- 棺を斎場に安置
- 家族・親族で打ち合わせ
- お通夜の法要
- 通夜振舞い
1.遺体を納棺する
お通夜の開始時間の2時間前に、故人の遺体を棺に納める納棺の儀を行います。
納棺の儀では故人の体を清める湯灌(ゆかん)、死装束の着付け、死化粧などをほどこし、故人の最期の旅支度を整えます。
旅支度が済んだ故人を棺に納め、副葬品を入れたら納棺の儀は終了です。
納棺は故人と触れ合いながらゆっくりお別れができる大切な時間なので、時間に余裕を持って過ごすようにしましょう。
2.棺を斎場に安置
納棺が済んだら、故人を納めた棺をお通夜・告別式が行われる斎場へ移送して安置します。
故人の安置場所が斎場内ならあまり問題ありませんが、もし故人の安置場所が自宅だった場合は斎場までの移動時間も考え、家族・親族はお通夜の1時間前には斎場へ着くようにしましょう。
3.家族・親族で打ち合わせ
故人の家族と親族は、お通夜の1時間前に一度集まりお通夜の段取りと役割を打ち合わせします。
受付・案内係・お世話役など多くの役割がありますので、状況に合わせて手伝える部分を確認していきましょう。
この段階で、花輪や供物・弔電を頂いている場合は、葬儀社の人から連絡を受けることもあります。
喪主は花輪や供物・弔電を確認したあと、司会の人と打ち合わせて名前を読み上げてもらうなどの打ち合わせをしてください。
4.お通夜の法要
開始時間になったら僧侶が入場し、お通夜の法要が始まります。
一般参列者は開始時間の30分前には斎場に到着し、受付を済ませて静かに斎場へ入りましょう。
法要の規模にもよりますが、お通夜の儀式自体の所要時間は約1時間です。
お通夜の法要後に通夜振舞いがある場合は、ご挨拶のときに通夜振舞いへの案内をして参列者を促してください。
5.通夜振舞い
お通夜の法要後に行われる通夜振舞いでは、故人のを偲んで思い出話を語りながらお食事をいただきます。
通夜振舞いの形式によっても所要時間に違いがありますが、翌日には告別式があるため約2時間ほどが目安です。
ただし、地域によっては深夜遅くまで通夜振舞いを行うこともあります。
葬儀社や周囲の人とよく相談してから流れを把握するようにしましょう。
葬儀の流れ④:告別式から出棺

お通夜から一夜明けると、故人の告別式と出棺です。
「葬儀の流れ④」では、告別式から出棺までを一つの流れととらえ、やるべきことを詳しく紹介します。
- 家族・親族で打ち合わせ
- 告別式
- 出棺
- 火葬場へ移動
1.家族・親族で打ち合わせ
告別式の日は、故人の家族・親族は開始時間の1時間前に集合し、告別式の役割分担と出棺時の移動手段を確認します。
特に、出棺に関しては、告別式が始まったあとでは細かく打ち合わせができません。
事前によく確認してスムーズに動けるよう話し合ってください。
また、季節によっては雨や雪などで通行が乱れ、本来通るはずの道が通れないというアクシデントもあります。
道路状況と念のための迂回路も調べておくと良いでしょう。
2.告別式
告別式の5分前には故人の家族・親族も着席し、開始時間に僧侶が入場して告別式が行われます。
葬儀の規模によっても所要時間は異なりますが、法要・弔電の紹介、喪主からの挨拶なども含めて約2時間が目安です。
もし弔電が多くて紹介し切れなかったり、紹介すると時間がかかって出棺が遅れが予想されるときは、事前に司会の人にお願いしてお名前だけを読み上げてもらうなどの配慮をお願いしておきましょう。
3.出棺
告別式が終わったら、そのまま出棺の儀式に入ります。
出棺で行われるのは「花入れ」と呼ばれる儀式で、会場に飾られていた供花を参列者一人ひとりに手渡し、棺に手向けて故人と最期のお別れをします。
花入れを終えた参列者は案内にしたがって会場を出て、指定された場所でお見送りの準備をしましょう。
参列者の花入れが済んだら、棺の蓋を閉じて出棺です。
待機している霊柩車に棺を乗せ、喪主から最後のご挨拶をしたあと、喪主ともう一人の家族か霊柩車へ乗り込み火葬場へ向けて出棺します。
4.火葬場へ移動
霊柩車で移動する喪主と家族以外は、レンタルしたバスや自家用車で火葬場へ移動します。
火葬場への道がわからないときは、告別式前の打ち合わせて道を尋ねておきましょう。
地域の人しか知らない抜け道などもありますが、土地勘のない人が運転する場合は抜け道が返って遠回りになることもあります。
土地勘がない人に運転をお願いするときは、わかりやすい目印や大きな道をメインにして道順を教えるようにしてください。
葬儀の流れ⑤:火葬からお骨拾い

葬儀の流れの最後が、火葬からお骨拾いです。
「葬儀の流れ⑤」では火葬からお骨拾いを一つの流れととらえ、火葬場の到着後から帰宅するまでの動きを紹介しましょう。
- 遺体の火葬
- 約1時間半待機
- お骨拾い
- 火葬料を払って終了
1.遺体を火葬する
火葬場に到着すると、火葬場の人が棺を運ぶ台車と一緒に待機しています。
霊柩車から棺を台車へ移動させ、火葬場の人の案内にしたがって進みましょう。
火葬炉の前に到着したら、故人と本当に最期のお別れになります。
火葬炉へ続く扉のなかに棺が入り、扉が閉まっているのを確認したら火葬場の人から指示が出ますので、それにしたがって喪主の人がスイッチを押しましょう。
2.約1時間半待機
火葬時間の目安は約1時間半ほどですが、故人の年齢や体格などによっても多少の違いがあります。
火葬場の人にたずねると大体の目安時間を教えてもらえるので、もし帰宅する電車や道路状況に不安があるときには尋ねてみましょう。
火葬が終わるまでは控え室で待つことになりますが、この時間に繰り上げ法要でお食事を準備するケースもあります。
火葬の待ち時間に繰り上げ法要を行う場合は、葬儀社へその旨を伝えて仕出し弁当の手配や会場の準備を行うようにしてください。
お骨が焼き上がる20分ほど前になると、火葬場の人からお声が掛かります。
お声が掛かったら貸し出された湯飲みや急須、火葬場の備品を綺麗にしていつでも部屋を出られる準備をしましょう。
3.お骨拾い
お骨が焼き上がったら、ご遺骨を納骨するための納骨室に案内されます。
お骨拾いには順番がありますので、火葬場の人の指示にしたがって納骨しましょう。
足の骨から順番に骨壺へ納めていき、最期に喉仏と頭蓋骨を治めたらお骨拾いが終了です。
お骨拾いの目安時間は20分ほどですが、ご遺骨を全部骨壺に収める場合はもう少し時間がかかります。
遠方からの参列でどうしても最後まで残れないときは、喪主の人に挨拶をして失礼にならないよう退室しましょう。
4.火葬料を払って終了
骨壺を袋に納めて受け取ったら、火葬の儀式がすべて終了します。
最後に受付へ出向き火葬料を払って、お礼を述べてから帰宅しましょう。
葬儀の流れはこれでおしまいになりますが、斎場にはお通夜で泊まり込んだ荷物がそのままになっていますので、故人の家族は一度斎場へ戻り荷物を受け取るようにしてください。
葬儀の流れを決めるときの注意点

葬儀の流れを決めるときに落ち着いて行動するためには、注意をしなければならないことがあります。
ではどのようなことに気をつければ良いのか、葬儀の流れを決めるときの注意点を紹介します。
注意点①:わからないことはすぐに尋ねる
葬儀では聞き慣れない言葉で説明を受けることも多く、何のことかわからないまま返事をしてしまうというケースがよく起こります。
葬儀の流れを決める上でわからないことをそのままにしておくと、思ったような葬儀にならなかったり、後悔することも少なくありません。
葬儀社の人は家族の心情を理解しているので、わからないことを聞かれても丁寧に説明してくれます。
焦ってわからないことをそのままにせず、少しでも疑問があるときにはすぐに葬儀社の人に尋ねるようにしましょう。
注意点②:周囲と相談して決める
喪主となった人の中には、「自分がしっかりしないと」と思うあまり周りが見えず、一人でなんでも抱え込んでしまう人もいます。
ただでさえ故人の死による精神的負担が大きいのに、葬儀の流れをすべて自分だけで決めようと頑張ってしまうと、後から不都合が出てきたりアクシデントがあったときに対応できません。
喪主だからといって責任を一人で背負わず、周囲の人と相談して少しでも気持ちに余裕が出るよう心がけましょう。
注意点③:意見や希望をはっきり伝える
葬儀の流れを決めるとき、わからないからといって葬儀社の提案のままに話を進めてしまうと、葬儀後に「こうして欲しかった」という後悔を抱えることもあります。
特に、家族葬などの小規模な葬儀の場合、意見や希望がはっきり伝えられず後悔したというケースも実際に起こっています。
葬儀の流れを決めるのは、葬儀社ではなく故人の家族・親族です。
葬儀に関して具体的な意見や希望があるのなら、葬儀社にはっきり伝えて希望どおりに動いてもらえるよう依頼しましょう。
まとめ

葬儀の流れを決めるときに多くの人が悩むのは、2日から3日という短い間にとても多くの事柄を決めなければならないからです。
短い期間にやるべきことがたくさんある葬儀の流れですが、一度流れに沿ってやるべきことを区切ると考えがまとまり理解しやすくなります。
葬儀の流れを考えるときには一度に全部を決めようとせず、「まずはここまで」という区切りをつけて取り組むようにしてみましょう。