お通夜に会葬してくれる方は、故人と関係性が近い方が多く、遺族代表である喪主は参列者に対して多くの気遣いが必要です。
中でも、参列者に対しての挨拶は「喪主挨拶」「参列者への挨拶」「精進落とし時の挨拶」と何度もあるため、初めて喪主を務める方は、この挨拶に頭を悩ませることになるでしょう。
そこで、ここではお通夜に行う挨拶の仕方を説明しながら、「注意点」「失敗しないポイント」「具体的な文例」などを解説します。
文例は状況ごとに分類するので、こちらをテンプレートとして活用していただければ、誰でも簡単に喪主挨拶を作成することが可能です。
必要な際にはぜひ参考にしてください。
目次
通夜と葬儀・告別式の挨拶の違い

臨終からの流れは、初めにお通夜を行い、その翌日に葬儀・告別式を行うことが一般的です。
昔は、初日のお通夜と二日目の葬儀・告別式のどちらにも参列する方が多かったのですが、現在ではどちらか一方にしか参列しない方も増えています。
このような事情から、挨拶の内容は基本的に同じでも構わないとされています。
しかし、これでは通夜と葬儀・告別式のどちらにも参列する方にまったく同じ話を聞かせることになってしまいます。
そのため、お通夜の挨拶には故人とのエピソードを交えるなど、アレンジを加えた方が良い挨拶になるでしょう。
通夜挨拶の内容
通夜で行う挨拶は、次の内容と順序が一般的です。
- 弔問客へのお礼
- 生前と病気中の厚誼に対するお礼
- 故人のエピソード紹介
- 通夜振る舞いの案内
- 葬儀・告別式の案内
葬儀・告別式の挨拶の内容
葬儀・告別式で行う挨拶は、次の内容と順序が一般的です。
- 自己紹介
- 弔問客へのお礼
- 故人の最後の様子
- 生前の厚誼へのお礼
- 今後の指導のお願い
- 結びのお礼の言葉
お通夜の喪主挨拶の目的

お通夜の中で最も重要な喪主挨拶は、次に挙げる2つの目的で行います。
- 参列者への感謝の気持ちを伝える
- 葬儀・告別式の場所・時間・通夜振る舞いの詳細を伝える
参列者への感謝の気持ちを伝える
喪主挨拶で一番重要な目的は、参列者が故人のために会葬してくれたことに対するお礼と、これまでお世話になったことへの感謝の気持ちを伝えることです。
挨拶の中で感謝の気持ちを述べ、今後も変わらぬお付き合いをいただくようにお願いします。
葬儀・告別式の場所・時間・通夜振る舞いの詳細を伝える
喪主挨拶の2番目の目的は、葬儀・告別式と通夜振る舞いに関する連絡事項を伝えることです。
この連絡時候の内容は次のとおりです。
- 葬儀・告別式の時間
- 葬儀・告別式の場所
- 通夜振る舞いの有無
- 通夜振る舞いの会場と開始時間
- 送迎バス・送迎タクシーがある場合は集合場所 など
これらの情報は訃報の中でも記載していますが、お通夜の挨拶でも改めて伝えるのがマナーです。
お通夜で挨拶する際の注意点

お通夜の挨拶にはさまざまマナーが存在しますが、特に喪主挨拶はその内容はもちろんのこと、言葉の選び方や話す時間の調整など沢山の注意点があります。
喪主として参列者へ挨拶する際の注意点は次のとおりです。
- 忌言葉・重ね言葉を使わない
- 簡潔にまとめ3分以内を意識する
忌言葉・重ね言葉を使わない
喪主の挨拶では、忌み言葉と呼ばれる次の言葉を使ってはなりません。
- 重ね言葉
- 生死に関する直接的な言葉
- 不吉なことを連想する言葉
なお、この忌み言葉は喪主の挨拶だけでなく葬儀全体を通して使ってはならない言葉です。
仏式葬儀での忌み言葉一覧
仏式葬儀での忌み言葉とは表中のような言葉です。
日常的な言葉も、葬儀の場では忌み言葉に含まれるため使用することはできません。
忌み言葉の種類 | 使用してはならない言葉 | 使用してはならない理由 |
---|---|---|
重ね言葉 |
|
不幸事が重なることを連想させるため |
生死に関する直接的な表現 |
|
故人の死を直接連想させるため |
不吉なことを連想する言葉 |
|
故人の死に間接的につながる言葉のため |
神式・キリスト教式葬儀の忌み言葉
神道やキリスト教では次の言葉も忌み言葉となります。
- 成仏してください
- 往生
- 冥福
- 供養 など
なお、仏教であっても浄土真宗は「霊前」や「冥福」などの言葉を使うことがありませんので、注意が必要です。
簡潔にまとめ3分以内を意識する
喪主の挨拶はどんなに長くても、3分以内に終わらせなければなりません。
ただし、あまりにも短い挨拶は参列者に対して失礼と捉えられるため、1分以上は必要です。
「短すぎず、長すぎず」を意識して落ちつた口調で話しましょう。
なお、お通夜の喪主挨拶は参列者へ感謝の気持ちを伝えることを一番の目的としているため、メモを見ながら挨拶をしても構いません。
メモを持たずに挨拶をすると、内容が飛んでしまい、何を話したらいいのかわからなくなった場合に、式の進行を妨げる可能性もあります。
挨拶に自信がある方でも、不測の事態に備えてメモを準備しておくことをおすすめします。
喪主が行う通夜挨拶の内容と順番は次のとおりです。
- 自己紹介:故人とご自身の関係性について説明する
- 弔問へのお礼:参列者へ感謝の意を伝える
- 生前のお礼:故人への生前の厚意に対する感謝の気持ちをを伝える
- 故人のエピソード:故人の生前の人柄が分かる出来事を紹介する
- 今後について:家族への力添えをお願いする
- 通夜振る舞いの案内:お通夜終了時の通夜振る舞い開催の有無と詳細を伝える
- 葬儀・告別式の案内:翌日に行う葬儀・告別式の詳細を伝える
お通夜での挨拶を失敗しないためのポイント
会葬初日のお通夜は、大切な方を亡くしたショックから気持の整理がつきづらいものですが、その中にあっても喪主は弔問客へ挨拶を行わなければなりません。
悲しみの中でも立派な挨拶ができるよう、ここではお通夜での挨拶を失敗しないためのポイントを解説します。
- 通夜の流れを把握する
- メモを利用する
- 経験者に文章を確認してもらう
ポイント①:通夜の流れを把握する
お通夜の中で行う挨拶はたくさんの種類があるため、喪主は全体の流れを把握してその場に応じた適切な挨拶をしなくてはなりません。
初めて喪主を務める方は喪主挨拶ばかりに気を取られがちですが、状況に即した挨拶ができなければ、結果的に参列者に対して配慮が欠けてしまいます。
お通夜全体の流れを理解して、状況を把握した上で挨拶を行うように心がけましょう。
お通夜の流れは次のとおりです。
喪主はこの流れを理解して、現在は何をしているのか、次は何を行うのかを把握しておきましょう。
- 当日受付
- 僧侶入場
- 通夜開始
- 僧侶による読経
- 焼香開始
- 僧侶による法話開始
- 僧侶退場
- 喪主挨拶
- 通夜振る舞い
- 棺守り
ポイント②:メモを利用する
先ほどお伝えしたように、お通夜の喪主挨拶はメモを見ながらの挨拶でも問題はありません。
お通夜での挨拶は、その後の通夜振る舞いや翌日の葬儀・告別式に関する告知も行うため、内容を伝え間違えてしまえば参列者に迷惑をかけてしまいます。
メモを活用し、間違いのない情報伝達を行いましょう。
ポイント③:経験者に文章を確認してもらう
身近な方で以前喪主を務めた方や葬儀経験が豊富な方がいる場合は、その方に喪主挨拶の文章を確認してもらうことをおすすめします。
そのような方に文書を確認してもらえば、ご自身では気付かない言い間違いや、微妙な言葉遣いを指摘してもらえるかもしれません。
なお、挨拶の内容や発生に不安を感じている方は、実際に作成した文章を声に出して練習することをおすすめします。
声に出すことで文章のぎこちない部分がわかり、緊張もほぐれるでしょう。
弔問客への挨拶の文例

お通夜に参列してくださった弔問客に対して、喪主は感謝の気持ちを込めた挨拶を行います。
ここでは、故人と参列者の関係性別に喪主が行う挨拶の文例を紹介します。
仕事関係者への挨拶の文例
故人の会社関係者への挨拶は、仕事上のエピソードを盛りこむのがポイントですが、あまり具体的な内容には触れず差し障りのない表現を心がけましょう。
お忙しいところお悔やみをいただき、まことに恐れ入ります。
生前にはお見舞いをくださいましたことを感謝申し上げます。主人は、退院して職場に復帰することを本当に心待ちにしておりましたので、それがかなわなかったのが残念でなりません。
まことに簡単ではございますが、お礼のご挨拶とさせていただきます。
別室にささやかな酒肴を用意しましたので、時間の許す限りご歓談ください。本日はありがとうございました。
友人・知人への挨拶の文例
友人・知人に対する挨拶は、故人のエピソードを少し多めに盛り込んでも良いでしょう。
お忙しいところお悔やみいただきまして、まことにありがとうございます。
さっそくご弔問くださいまして、故人もさぞよろこんでいることと思います。また、生前にはお見舞いをいただきましたこと、あわせてお礼申し上げます。
病が回復したら、皆様とお酒を酌み交わすことを楽しみにしておりました故人でしたので、容態が急変しそれが叶わなかったことが残念でなりません。別室にささやかな酒肴を用意いたしましたので、ごゆっくりお召し上がりください。
本日はありがとうございました。
親族への挨拶の文例
親族への挨拶は状況を把握してる場合が多いため、挨拶を省略して報告から入っても良いでしょう。
90歳という年齢まで意識もはっきりし、大きな病を患うこともない故人でした。
まさに天寿をまっとうした人生であったことは、私たち家族としては何よりの慰めです。
その時がくることは覚悟していましたが、眠るように安らかな最期だったのは、残された者への気遣いだったのかと感じ入っております。
親族の皆様、これからもお力添えをお願いいたします。
お通夜の喪主の挨拶の文例

先ほどお伝えしたとおり、喪主の挨拶には次の内容を盛り込みます。
- 弔問客へのお礼
- 生前と病気中の厚誼に対するお礼
- 故人のエピソード紹介
- 通夜振る舞いの案内
- 葬儀・告別式の案内
これらの内容を盛り込みながらも手短な言葉を選び、参列者への感謝の気持ちが伝わる挨拶を行いましょう。
お通夜終了時の挨拶の文例①
本日はお忙しい中を父のためにお越しいただきました上に、ご丁寧にお供物まで頂戴いたしまして、誠ににありがとうございました。
こうして、皆様方にお集まりいただきましたことを、亡き父もさぞかし喜んでいることと存じます。
また、父の入院中にはご親切なお見舞いをいただきましたことを故人に成り代わりまして、御礼申し上げます。
まだまだ長生きして欲しかったというお思いはありますが、最近まで趣味の園芸や日曜大工などを楽しみ、幸せな生涯だったと存じております。
在りし日の父のことなどをお聞か願えればと、別室にささやかなお食事などをご用意しております。
お時間が許せば、ぜひお召し上がりいただきたく存じます。
なお、明日の葬儀は午後10時からこの斎場で執り行いますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、誠にありがとうございました。
お通夜終了時の挨拶の文例②
本日はお暑いなか、母○○のためにお越しいただきまことにありがとうございました。
くも膜下出血で倒れ意識が回復しないまま、○月○日○時○分に永眠しました。
これまでなんの病気もなく、90歳まで元気に過ごしていたことが、私たち家族にとってのせめてもの救いでございます。
皆様の生前のご厚誼と、療養中のお見舞いに厚く御礼申し上げます。
別室にささやかながら供養の席を用意いたしましたので、母の思い出話などをお聞かせいただければ幸いです。
本日はまことにありがとうございました。
なお、葬儀・告別式は明日の午後10時から○○セレモニーホールで執り行います。
ご都合がおつきになりましたら、最後のお見送りをしていただきたいと存じます。
通夜振る舞いに関する挨拶の文例

お通夜を行った後には通夜振る舞いを行うのが一般的ですが、その際には開始時と終了時に代表者が挨拶を行います。
ここでは、通夜振る舞いを行う際の挨拶の文例を紹介します。
開始の挨拶の文例
皆様、お忙しいところ父のために丁寧なお悔やみをいただき、本当にありがとうございます。
父もさぞ喜んでいることと存じます。
あの通り賑やかなことが大好きだった父のため、あまり暗くならずにご遠慮なくお過ごし頂きたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
終了時の挨拶文例
皆様、本日はまことにありがとうございました。
おかげをもちまして、滞りなく通夜を終えさせていただきました。
明日のお勤めに差し支えるといけませんので、たいへん勝手ではございますがこの辺で終了とさせていただきます。
なお、葬儀・告別式は明日正午よりこちらの斎場で行います。
お時間が許すようでしたら、ご会葬いただければ幸いでございます。
本日はありがとうございました。
お通夜の受付での挨拶

参列者としてお通夜を弔問する場合は、お悔やみの言葉を受付で述べることになりますが、この際の言葉はありきたりな言葉で手短に済ませるのがマナーです。
ここでは、お通夜の受付での挨拶の仕方を文例を交えて解説します。
受付に着いたらまずは記帳する
葬儀会場に到着したら、まずは受付で芳名帳に住所と名前を記帳します。
この記帳をうっかり忘れてしまうと、遺族は誰がお通夜に参列したのかがわからなくなり、香典返しなどの作業が困難になるため確実に行いましょう。
記帳を行った後は、受付の係の方に香典を渡します。
この際の香典の渡し方と手順は次のとおりです。
- 香典を袱紗(ふくさ)から取り出す
- 香典の表書きが相手から読めるように向きを変える
- 袱紗をたたみ香典を載せる
- お悔やみの言葉を述べながら袱紗ごと香典を差し出す
その場で会葬のお礼の品を渡された場合は、「恐れ入ります」と言って受け取りましょう。
一般的なお悔やみの言葉
お通夜で故人の死因や病状の変化などを聞くことはマナー違反です。
また、笑顔を見せる行為や子供を亡くした遺族に対して、ご自身の子供の話をするなどの会話も慎んだ方が良いでしょう。
悲しみの中にありながらも多忙を極める喪主に対しては、次で紹介するお悔やみの言葉を述べ、あまり立ち入った内容に踏み込んではいけません。
遺族にかける一般的なお悔やみの言葉は次のとおりです。
- この度はご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申し上げます
- この度は思いがけないことで、さぞお力を落としでございましょう。心からお悔やみ申し上げます
- このたびのご不幸、まことに残念でなりません。どうかお力落としなさいませんように など
葬儀会場受付でのお悔やみの言葉は次のとおりです。
- この度は思いもかけないことで、謹んでお悔やみ申し上げます
- この度は誠にご愁傷さまでございました。どうかご霊前にお供えください
- 本当に残念なことで心からお悔やみ申し上げます。お参りさせていただきます など
なお、参列者としてお悔やみを述べるときでも、忌み言葉の使用は厳禁です。
不安がある方は予めお悔やみの言葉を用意して、それ以外の声掛けはしない方が無難でしょう。
まとめ

お通夜で行う挨拶は何度もあるため、初めて喪主を務める方にとってはその負担は想像以上です。
しかし、話す内容は形式に従ったものになるため、基本の形が分かればそれ程難しいものではありません。
挨拶の内容に不安がある方は、本文中の文例を参考にご自身の思いを込めれば、間違いのない立派な挨拶を作成することができるでしょう。