法要の際によく耳にする言葉に「御膳料」がありますが、この意味をご存知ない方は多いことでしょう。
この御膳料は、おつとめ頂いた僧侶の対応によって要否が分かれますが、どちらであっても対処できるよう事前準備が必要な費用です。
そこでここでは、この御膳料とはどのような費用なのかを説明しながら、「相場」「包み方や書き方のマナー」「渡すタイミング」などについて詳しく解説していきます。
目次
御膳料とは

御膳料とはその文字が表す通り、「食事のお膳に代わって渡す」という意味を持つ言葉です。
ここでは御膳料について詳しく解説しながら、御膳料と共に法事の際に必要なお布施とお車代との違いについて解説します。
僧侶がお斎(おとき)を辞退した際に渡すのが御膳料
「葬儀」「四十九日法要」「年忌法要」など、宗教儀式や法要を行う際には僧侶を招き読経を頂きますが、これらが終われば「お斎」と呼ばれる会食の席を設けることが一般的です。
このお斎とは単なる会食の場ではなく、読経を頂いた僧侶や駆けつけてくれた参列者に感謝を伝えるための膳を囲む場であり、この膳を囲みながら故人を偲び供養する大切な宗教行事です。
しかし、僧侶が多忙な場合はこのお斎を辞退してすぐに次の葬儀や法要へ向かう状況は珍しくなく、その際にお膳に代わって渡すのが御膳料です。
近年ではお斎自体を省略して行う法要も多く、コロナ対策のため密を避ける意味でも法要後の会食は減少しています。
はじめからお斎を行わない場合でも、喪主は形式上僧侶へお斎への同席をお願いし、御膳料を手渡すのが一般的なやり取りです。
初めて僧侶へ法要を依頼する場合など、このようなやり取りに不安を感じている方は、事前にお斎を省略する旨を僧侶に伝えておきましょう。
なお、この御膳料を渡す際には「お布施」と「お車代」も同時に渡しますが、この2つの金封には御膳料とはまったく異なり次の意味があります。
お布施との違い
お布施は葬儀や法要の中で僧侶から頂く読経や法話に対して感謝の気持ちを表すために渡すもので、僧侶に対する報酬や対価ではありません。
そのため、お膳の代わりの対価として渡す御膳料とはまったく性質が異なります。
お車代との違い
お車代とは僧侶が葬儀や法要を行う会場まで、何らかの交通州手段を用いて足を運んでくれたことに対する交通費としての対価です。
そのため、菩提寺で葬儀や法要を行う場合は僧侶の移動が必要ないためお車代は不要となります。
御膳料もお車代も僧侶へ渡す対価ですが、その意味合いはまったく異なるのです。
御膳料の費用相場

僧侶が会食を辞退する際に必要となる御膳料ですが、この金額はいくら包むのが良いのでしょうか?
この御膳料は、法要の際の会食代金と言い換えることもできるため、食事の内容や会場の種類によって費用相場は次のように異なります。
- 自宅や仕出し店などを利用する一般的な会場の場合は5,000円から1万円
- 「レストラン」「料亭」「ホテル」など高級な会場の場合は1万円から2万円
料理は1人前の値段×人数分で予約することになるため、あらかじめ1人前の費用を把握しておけば、御膳料として包む金額もわかりやすいでしょう。
なお、葬儀や法要の際に必要となるお布施やお車代の費用相場は次のとおりです。
御膳料の費用相場とあわせてご確認頂ければ、費用全体の把握にもつながりますのでご覧ください。
お布施の費用相場
お布施は僧侶から頂く読経や法話に対する感謝の気持ちのため、実際の金額についての決まりはありません。
しかし、法要の種類によっておおよその目安となる相場がありますので、ここでは葬儀や法要の種類ごとのお布施相場を紹介します。
お布施相場の目安は次のとおりです。
法要の種類 | お布施の相場 |
---|---|
葬儀 | 20万円~50万円 |
初七日法要 | 3円~5万円 |
四十九日法要 | 3万円~5万円 |
初盆法要 | 3万円~5万円 |
彼岸法要 | 3万円~5万円 |
一周忌法要 | 3万円~5万円 |
3回忌以降の年忌法要 | 1万円~5万円 |
祥月命日法要 | 5,000円~1万円 |
月参り法要 | 3,000円~1万円 |
お車代の費用相場
僧侶がおつとめする寺院以外で葬儀や法要を営む際に必要なお車代ですが、この費用相場は5,000円から1万円です。
遠方の会場まで足を運んでもらう場合はその距離に応じたお車代が必要となり、宿泊を伴う場合は宿泊費も包むことがマナーです。
御膳料を包む封筒の選び方と注意点

御膳料はそのまま僧侶へ渡す訳ではなく、次のいずれかの袋に包んで渡すのがマナーです。
ここでは、この御膳料を包む袋の種類と袋ごとの注意点を解説します。
白無地封筒を使う場合
御膳料は、白無地封筒に包んでも問題はありません。
しかし、この封筒の中にはあらかじめ郵便番号を記載する枠が設けられているタイプがあるため、枠付きの白無地封筒は使用することができません。
また、中には二重構造になっている白無地封筒封筒も販売されているいますが、これは「不幸事が重なる」ことを想起させるため、葬儀の場では縁起が悪いと考えられています。
お車代を包む白無地封筒は、郵便番号欄がない一重の白無地封筒を使用しましょう。
不祝儀袋を使う場合
お車代は不祝儀袋に包むことも可能です。
なお、お車代には基本的に水引は用いないと考えられていますが、不祝儀袋を使用する際に限り双銀で結びきりの水引を用います。
この水引に関するマナーは地域によっても異なるため、葬儀業者の担当者やその地域の慣習に詳しい年長者へ確認することをおすすめします。
御膳料の書き方

御膳料を包む無地封筒や不祝儀袋には表面と裏書に記載しなければならない情報があり、この記載方法はマナーに従った書き方が必要です。
ここでは、御膳料を包む封筒に記載する内容とそのマナーを解説します。
表書きの書き方
御膳料の表面には、包んだお金の目録となる表書きと包んだ方の氏名を記載します。
この表書きは表面の上部中央に、その下には氏名もしくは○○家と記載することがマナーです。
表書きに関しては「御膳料」と記載するだけなので問題はありませんが、御膳料をお車代と一緒に渡す場合は重複を避ける意味で名前を記載しない場合もあります。
この2つの記載方法は、地域の慣習の違いであって宗教上の違いはないためどちらであっても間違いではありません。
地域の慣習に従うのであれば、葬儀に詳しい年長者やお付き合いのある寺院の僧侶へ確認してみましょう。
裏書の書き方
御膳料を包む封筒の裏面には住所と包んだ金額を記載します。
左半分の下部分へ住所を、その左側に金額を記載しますが、表面に氏名を記載しない場合は裏面の住所の左に氏名を記載します。
金額は旧字体の漢数字(大字)で記載
封筒に記載する金額は漢数字の大字(だいじ)を用います。
この大字とは、漢数字の「一」「二」「三」の代わりに用いる「壱」「弐」「参」なども旧字体の漢数字で、この文字は主に金額の改ざんを防ぐ目的で使用されています。
実際に記載する際には金額の頭に「金」の文字を添え、最後は「圓(えん)」をつけることがマナーです。
実際の大字を使用した金額の書き方は次のとおりです。
- 1万円の場合:金壱万圓
- 15万円の場合:金壱拾伍萬圓
- 30万円の場合:金参拾萬圓
使用する墨は濃い墨を使用
ここで紹介した封筒への記載内容は、毛筆を使用して濃い墨で書くのが正式なマナーです。
香典などの不祝儀は、「悲しみの涙で墨が薄まった」「墨を十分に擦る暇も惜しんで駆け付けた」という表現で薄墨を使用しますが、御膳料ではこのような表現は不要です。
あくまでも御膳料は僧侶がお斎を辞退した際の金銭のため、薄墨を使用する必要はありません。
筆ペンの使用も可
現在では毛筆の感覚でかける筆ペンもたくさんの種類が販売されています。
毛筆が苦手な方やそもそも筆や硯を持っていない方は、この筆ペンを使用してもマナー違反ではありませんので活用してください。
御膳料の入れ方の注意点

御膳料に使用する紙幣の種類や入れ方には作法に従った方法がありますが、中にはこの入れ方を香典マナーと混同している方がいます。
そこで、ここでは御膳料を入れる際のマナーや注意点を解説します。
- 紙幣は新札を使用する
- 紙幣の向きは揃える
紙幣は新札を使用する
御膳料として使用する紙幣は新札を使用します。
香典は不幸事を予想してお金を用意していたとの憶測を避けるため旧札の使用がマナーですが、御膳料はあらかじめ予定していた法要の一部のため、このような配慮は不要です。
一般常識と同様に新札を用いるのがマナーとなります。
紙幣の向きは揃える
御膳料として金銭を入れる際には、紙幣に印刷されている肖像画が表向きで、なおかつ上向きに入れるのがマナーです。
また、複雑の紙幣を入れる際には、すべての向きや裏表を揃えて入れましょう。
なお、この紙幣の入れ方はお布施やお車代でも同様ですが、香典とは逆の入れ方となるため注意が必要です。
御膳料を渡すタイミング

御膳料を僧侶へ渡すタイミングは、葬儀や法要が終わり僧侶が帰るときが一般的です。
お斎を催す際にはその準備を行ったり会場を移すことになりますが、その際に僧侶へ話しかけお斎への同席をお願いします。
この際に、僧侶の都合がつかなければお布施やお車代と共に御膳料を渡しましょう。
御膳料を渡す際のマナー・注意点

御膳料を僧侶へ渡す際には実際に僧侶と対面して渡すことになりますので、この際のマナーは特に重要です。
渡す際には手渡しは厳禁とされ、切手盆や袱紗を使用して渡します。
そこで、ここでは御膳料の渡し方の手順を切手盆や袱紗の使用方法とともに説明しながら、その際の注意点を解説します。
- 切手盆を使用する
- 袱紗を使用する
- 「御膳料」「お布施」「お車代」は別々に包む
切手盆を使用する
御膳料を渡す際には封筒をそのまま渡すのはマナー違反となり、切手盆を用意して切手盆ごと僧侶へ差し出すのが正式なマナーです。
この切手盆とは通常のお盆よりも小さめの長方形サイズのお盆で、ちょうど封筒が乗る大きさのお盆になります。
以前はどの家庭にもあった切手盆ですが、現在ではあまり見かけることが少なくなってきています。
インターネットや仏具店などで販売されているため、法要を自宅で営む際には用意しておいた方が良いでしょう。
切手盆を使用する際の手順
御膳料を切手盆で渡す手順は次のとおりです。
- 御膳料と書かれた表書きを自分に向けて切手盆の上に乗せる
- お盆の右上を右手で左下を左手で持つ
- 両手で切手盆を持って僧侶からみて表書きが正面に来るように右回りで回す
- 僧侶に感謝の言葉述べながら差し出す
なお、この切手盆の使用手順は地域や宗派によって若干異なる場合がありますが、基本となるのはここで紹介した手順となるため覚えておきましょう。
袱紗を使用する
切手盆がない場合は、袱紗を使用して御膳料を渡すことも可能です。
袱紗とは、もともと冠婚葬祭で金銭を包むために使用する四角い布のことで、現在では忌事や慶事で使用するのし袋を包むために使用されることが一般的です。
切手盆がない場合でも袱紗は持っていることが多いため、御膳料を渡す際には袱紗を使用するケースが多いでしょう。
袱紗を使用する際の手順
御膳料を袱紗にのせて渡す手順は次のとおりです。
- 封筒の表書きが自分の正面に来るように持つ
- 右手の手のひらに袱紗を乗せ左手で袱紗を開いて封筒を取り出す
- 僧侶から見て表書きが正面に来るように右回りに回す
- 袱紗を素早くたたみその上に封筒を乗せる
- 僧侶へ感謝の言葉を述べながら両手で袱紗を差し出す
「御膳料」「お布施」「お車代」は別々に包む
御膳料は法要後にお布施とお車代と同時に僧侶へ渡すことになりますが、これらは別々に包むのがマナーです。
最初に解説したとおり、お布施は僧侶に対する感謝の気持ちでお車代は僧侶に足を運んで頂いたことへの対価、御膳料はお膳に代わって渡す費用とそれぞれの意味はまったく異なります。
そのため、これらのどれかを一緒にして包むことはマナー違反となり、受け取った僧侶がそれぞれの金額を正確に把握するためにも別々に包まなければならないのです。
まとめ

御膳料はお布施やお車代と同じ場面で必要となることから、これらの金銭と同様に考えられていますが、実際にはお膳に代わって僧侶へ渡す金銭のため宗教上の教義とはあまり関係がありません。
それだけに、単に葬儀マナーとしてだけではなく一般常識が問われるため、今後も末永くお付き合いを行う僧侶が気持ち良く受け取ることができる常識的な対応が必要です。
法要を行う際にはとかくお布施についてのマナーを気にしてしまいますが、御膳料についても理解を深めておけば、つつがなく法要を行うことができるでしょう。