一周忌法要は、たくさんの弔問客を受け入れて行う節目の法要です。
そのため、儀式を主催する遺族は参列者に対して失礼がない内容で法要を進行しなければなりませんが、そのためには事前の準備が何よりも重要となります。
そこで、今回は一周忌法要を営むにあたって「遺族が準備しなければならないこと」「法要の流れ」「儀式の中で行う施主挨拶の文例」などについて解説します。
また、併せて法要参列者が気をつけるポイントも説明していますので、葬儀マナーに不安がある方はこちらもご確認ください。
目次
一周忌法要とは

一周忌法要とは、亡くなった方の命日から1年後に、故人を偲び死後の更なる安寧を祈るための追善供養として、遺族が主体となって行う法要です。
命日から1年という節目に行うため、他の法要よりも盛大に営まれることが多く、故人の友人・知人や生前お世話になった方など多くの弔問客を受け入れて行います。
なお、この一周忌法要の開催日は命日の翌年の同月同日に営むのが正式なルールですが、現在では生活様式の変化から日にちをずらして行うことも珍しくありません。
これは、命日からちょうど1年後の一周忌法要は平日開催となることが多く、参列希望者でも仕事の都合などで参加を見送るケースが多くなってしまうためです。
このような事情を考慮して、現在では命日の一週前の土日を利用して一周忌法要を営むケースが一般的です。
なお、一周忌法要はこのように前倒しで行うことは可能ですが、命日よりも後にずらして行うことはできません。
遺族はこの点を念頭に、法要日程を組むよう心がけましょう。
年忌法要とは
この一周忌法要のように、あらかじめ決められた年に行う法要は「年忌法要(ねんきほうよう)」と呼ばれ、一周忌法要が終わった後も営まれます。
年忌法要の回数は宗派や地域の慣習によって異なりますが、故人の死後3と7のつく年に行われ、三十三回忌法要をもって弔い上げ(年忌法要を終える最後の法要)となることが一般的です。
一周忌以外の年忌法要
一周忌法要以降の年忌法要は、次のように続きます。
中には五十回忌法要や百か日法要まで続く場合もありますが、これはかなり稀な例といえるでしょう。
- 三回忌法要
- 七回忌法要
- 十三回忌法要
- 十七回忌法要
- 二十三回忌法要
- 二十七回忌法要
- 三十三回忌法要
- 五十回忌法要
- 百回忌法要
【遺族側】一周忌法要の2ヶ月前から準備する項目

先ほど解説したように、一周忌法要はたくさんの弔問客を受け入れる特性上、他の法要と比較するとその規模は大きくなりがちです。
そのため、法要の開催準備を行う遺族には、ミスのない効率的な作業が求められます。
そこで、ここでは計画的に法要を開催するために、法要開催日の2ヶ月前から行う準備を解説します。
日程の決定
初めに行う準備は、法要開催日の決定です。
一周忌法要は故人の友人や生前お世話になった方も招くため、その方々の日程や移動に配慮して、平日に開催することはありません。
故人の命日よりも前倒しした、土曜日や日曜日が法要開催日となるよう日程を組む必要があるでしょう。
僧侶への連絡
法要の日程が決まれば、次は儀式の中で読経や法話を頂く僧侶へ連絡を行い、当日のお勤めを依頼する必要があります。
菩提寺がある場合は菩提寺の僧侶へ依頼しますが、菩提寺がない場合は普段からお世話になっている寺院や霊園の僧侶へ、または他の親族がお世話になった僧侶に依頼することが一般的です。
会場の確保
一周忌法要を営む会場は、次のように使い分けることが可能です。
- 小規模な法要であれば自宅
- 中規模な法要であれば寺院
- 大規模な法要であればセレモニーホールやホテル
会場を決める際のポイント
法要会場を決める際は、参列者の人数で決めることが一般的ですが、次の点についても考える必要があります。
- 食事をする会場からの距離が近いか
- お墓からの移動時間は長くならないか
- 会場がバリアフリーに対応しているか
法要に参加する方は高齢の方も多く、その方々の体調や負担を考慮した会場選びは重要です。
法要後に行う墓参りや会食までの移動時間の長さ、会場のバリアフリー設備については十分に検討する必要があるでしょう。
参列者の決定
法要会場が決まれば、法要に招待する参列者を決定します。
再三になりますが、一周忌法要は他の法要と比較して多くの弔問客を招いて行う大規模な法要です。
選定漏れがないよう、参列者の決定は一人で行うのではなく複数の遺族が話し合いながら行った方が良いでしょう。
声をかける範囲
一般的な法要は遺族を中心に行いますが、一周忌法要では遺族はもちろんのこと、故人の友人・知人や生前お世話になった方へも声をかけるべきでしょう。
また、生前の故人が社会的ステータスの高い方や大きな会社の要職にいた場合などは、職場関係者やその家族にも声をかけることもあります。
参列者への連絡・案内状の送付
一周忌法要の参列者が決まれば、葬儀後に行う会食や引出物の人数を把握する関係上、参列者の一人一人に連絡を取る必要があります。
小規模な法要では電話連絡を行っても負担はありませんが、一周忌法要のような大規模法要ではこの方法は非常に非効率です。
返信用はがきを同封した案内状を送付して、効率良く参列者を把握するよう努めましょう。
【遺族側】一周忌法要の2週間前までに準備する項目

開催日の2ヶ月前から行ってきた一周忌法要の準備ですが、開催日の2週間前からは次の準備に取り掛かります。
この時点で、一周忌法要の参列者の人数はほぼ確定しています。
そのため、葬儀後の会食や引出物の準備などは効率良く行うことができるでしょう。
- 日程の決定
- 僧侶への連絡
- 会場の確保
- 参列者の決定
- 参列者への連絡・案内状の送付
お斎(おとき)の準備
一周忌法要が終わった後は、「お斎(おとき)」と呼ばれる会食の場が設けられることが多く、遺族はこの会食内容の決定や会食場所の確保を行う必要があります。
会食内容は精進料理や和食が一般的で、会食場所は法要会場から近い料理店やホテルなどを利用します。
なお、会食会場がマイクロバスなどを所有している場合は、参列者の移動を考慮して送迎サービスを申し込んでおきましょう。
お布施の準備
一周忌法要で読経や法話を頂く僧侶には、お勤め頂いたお礼としてお布施をお渡しします。
この際のお布施は奉書紙に包むのが丁寧な作法ですが、市販されている白封筒に入れてお渡しすることも可能です。
なお、このように白封筒を利用する際には郵便番号が記載されている白封筒はマナー違反となるため、白無地封筒を利用しなければなりません。
事前にお布施の包み方のマナーを確認して、しっかりとした作法でお布施を準備しておきましょう。
お布施の相場
一周忌法要の際に僧侶へお渡しするお布施に明確な決まりはありませんが、相場は3万円~5万円ほどが一般的です。
この金額は四十九日法要などのお布施と同額となりますが、遺族と菩提寺との関係性によっては、さら多くの金額を包む場合もあるため注意が必要です。
以前の香典金額を知る方や、菩提寺と長年付き合いのある年長者がいる場合は、この方に意見を求めるのも一案でしょう。
お車代・御膳料の準備
僧侶への感謝の気持ちを表すためにお渡しする香典ですが、一周忌法要の状況によっては次の費用を僧侶へお渡しすることも少なくありません。
- お車代:菩提寺以外で法要を行い僧侶が何らかの移動手段を用いて法要会場まで足を運んだ際に必要な費用
- 御膳料:お斎など葬儀後の会食に僧侶が出席しない際に必要な費用
お車代・御膳料の相場
お車代と御膳料にはお布施と同様に明確な決まりはありませんが、次の金額が相場です。
- お車代:5,000円から1万円
- 御膳料:5,000円から1万円
引出物の準備
頂いた香典に対するお礼として、遺族側は引出物を準備します。
これまでの引出物の定番は、家内で消費できる「消えモノ」と呼ばれる次の品に人気がありましたが、現在ではカタログギフトを贈る方も増えています。
- 洗剤
- タオル
- お茶などの飲み物
- 個包装のお菓子や食品 など
【参列者側】一周忌法要に参列する際のマナー・注意点

ここまで、一周忌法要を主催する遺族側の準備事項やマナーを解説してきましたが、一周忌法要に招待される側の参列者には多くの準備は必要ありません。
ただし、参列の際には、次に紹介するマナーと、それに伴う注意点を意識した行動が求められます。
- お斎(おとき)の準備
- お布施の準備
- お車代・御膳料の準備
- 引出物の準備
一周忌法要の招待は基本的には断らない
一周忌法要へ招待された方は、基本的に参列を断ってはなりません。
よほどの事情がない限りは参列することがマナーと心得て、案内状に対してただちに返信を行いましょう。
参列時は香典や供物を持参
一周忌法要に参列する際には、香典を持参するのが務めです。
また、地域の慣習によっては香典に加えて供物を持参する場合もあり、この際には次の品を準備することが一般的です。
- 故人の好物(酒類も可)
- お菓子や果物
- 線香 など
香典相場
一周忌法要に持参する香典相場は、故人との関係性によって異なります。
一般的には故人との関係性が深く、ご自身の年齢や社会的立場が高い場合には、香典金額もそれに乗じて高額になる傾向にあります。
身内の一周忌法要では2万円から3万円、友人・知人の一周忌法要では5,000円から1万円が香典相場です。
参列時は喪服を着用
一周忌法要の参列者の服装は、以下に紹介する準喪服以上の服装が推奨されています。
中には、遺族を中心とした一周忌法要などに限って平服での参加が認められることもありますが、基本的には葬儀と同様の服装で臨むことが望ましいでしょう。
- ブラックなどのダークスーツ
- 白シャツ
- 黒ネクタイ
- 黒無地の靴下
- 光沢がない黒ベルト・金具がない黒革靴
- ブラックや濃紺などの「ワンピース」「アンサンブル」「スーツ」
- 黒系のトップス
- 黒色ストッキング
- 光沢がない黒色のパンプス
- 一連の真珠のネックレスと結婚指輪は着用可
- 未就学児は落ち着いた色味の服装
- 制服がない場合は黒色のズボンやスカートに白色シャツ
- 制服がある場合は制服
遺族への挨拶は必須
一周忌法要に参列した際には、遺族への挨拶は必須です。
法要開始時刻の30分前には会場に到着して、「本日はお招き頂きありがとうございます」などの言い回しで、施主や主だった遺族に感謝の挨拶を述べましょう。
一周忌法要の流れ

一周忌法要の流れはお住まいの地域によって若干異なりますが、一般的な一周忌法要は次の流れで行われます。
落ち着いた気持ちで故人を弔うためにも、法要全体の流れを把握しておきましょう。
- 開式の挨拶
- 僧侶の読経
- 焼香
- 僧侶の法話
- お墓参り
- 閉式の挨拶
- お斎
開式の挨拶
一周忌法要の冒頭では、施主が参列者へ向けた挨拶を行います。
挨拶の中ではお勤めを頂く僧侶の紹介と入場が行われ、これをもって一周忌法要の開式となります。
僧侶の読経
入場した僧侶は、祭壇の前に座り読経を行います。
焼香
僧侶の読経が行われている最中の遺族や参列者は焼香を行います。
基本的には、祭壇に向けて前方に座っている方が故人との関係性が深い方となるため、焼香順は前方から後方にかけて次の手順で行うのが作法です。
- 立ち上がる
- 焼香台の前に行く
- 焼香を行う
- 自身の席に戻る
僧侶の法話
読経と焼香が終えたら、僧侶からの法話を頂きます。
法話の内容は僧侶によって異なりますが、仏教の生死観についてのお話が一般的です。
お墓参り
お墓が近場にある場合は、一周忌法要の中でお墓参りを行います。
なお、一周忌法要と納骨を同日に行う場合はこのお墓参りのタイミングで納骨式を行います。
閉式の挨拶
施主が閉式の挨拶を行い一周忌法要は終了です。
挨拶の中でこの後に行うお斎の案内が行われるため、参列者はその案内に従い会食場所へと移動します。
お斎
お斎の会場へと移動した「遺族」「参列者」「僧侶」は、食事を行いながら故人を偲びます。
一般的にこのお斎は1時間から2時間ほどで、参列者はこのお斎の終了をもって解散となります。
一周忌法要の施主挨拶

先ほどの解説のとおり、一周忌法要は施主挨拶によって開式・閉式となるため、施主は参列者を前に最低でも2回の挨拶を行う必要があります。
ここでは、初めて法要の施主を務める方に向けて代表的な施主挨拶の文例を紹介します。
開式挨拶の文例
本日はお忙しい中、故○○(故人の名前・続柄)の一周忌法要にご参列を賜り、誠にありがとうございます。
ただいまより、故○○の一周忌法要を始めさせていただきます。
本日の法要は、○○寺住職、○○様にお勤めをお願いしております。
それでは○○様お願いいたします。
閉式挨拶の文例
皆様のおかげで無事に○○(戒名)の一周忌法要を終えることができ、故人も安心していることと思います。
法要はこれにて終了となりますが、ささやかながらお食事をご用意いたしました。
お時間の許す限りゆっくりとなさってください。
本日は誠にありがとうございました。
まとめ

一周忌法要は、故人の死後に行う年忌法要の中で最も重要な法要と考えられているため、それだけに準備する項目は多岐にわたります。
法要を運営する側の遺族は準備する項目を事前にリストアップして、それぞれ担当者と期限を定めることで、効率良く法要の準備が行うことが可能です。
また、一周忌法要に招待された方は参列者としての作法やマナーを把握し、しっかりとした準備で法要に参加するよう心がけましょう。