亡くなった方を供養する法事は、葬儀が終了した後も長い年月に渡って行われますが、この法事がいつまで続くのか疑問をお持ちの方も多いものです。
以前であれば、身近な親族や一族の年長者が法事の期間ややり方などを教えてくれましたが、核家族化が進む現代ではこのような機会はあまりありません。
そこでここでは、法事を行う期間を説明しながら「弔い上げのタイミング」「忌日・年忌法要の種類」「準備方法と手順」などについて解説します。
目次
法事を行う意味
法事は故人の冥福を祈る儀式ですが、僧侶が行う読経などの「法要」と、その後に行う会食を含めた儀式全体を「法事」と呼びます。
この法事は、故人の命日を基準にして日にち単位で区切られた忌日法要と、年単位で区切られた年忌法要があり、種類によって規模や参列者の人数が異なるなどの特徴があります。
本来は故人の魂が極楽浄土へ導かるよう祈りを捧げるために行う法事ですが、現在では親族が集まり親交を深める目的で行う風潮もあり、その意味合いが年々変化しているのが現状です。
年忌法要は何回忌まで行えば良い?
長年に渡って行われる年忌法要は、供養を終える「弔い上げ」によって終了し、それ以降は個別の法事を行うことはありません。
弔い上げを行う時期は宗教や宗派によっても異なりますが、一般的には三十三回忌か五十回忌を節目として弔い上げを行うことが多く、納骨先である寺院と相談して決めるケースも見受けられます。
なお、宗教・宗派別の弔い上げの時期は、以下の「【宗教・宗派別】弔い上げのタイミング」で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。
年忌法要の数え方
年忌法要の数え方は、故人が亡くなった同月同日である祥月命日を基準に数えるため、故人が亡くなった次の年の祥月命日が一周忌法要を行うタイミングです。
その後に行う三回忌以降の法要は「年忌法要数-1年」で数えられ、三回忌は2年目に行われることから、一周忌法要の翌年に三回忌法要が営まれます。
このような年忌法要の数え方は三回忌以降も同様であるため、七回忌法要は6年目、十三回忌法要は12年目と続いていきます。
いずれの法要も本来は祥月命日に法要を営むことが基本ですが、現在では遠方からの参列者へ配慮して、週末などの集まりやすい日時に行うことも珍しくありません。
ただし、この際には命日を過ぎて法要を行うことはできないため、祥月命日以外で予定を組む際には祥月命日よりも前の日時で予定を組まなければなりません。
【宗派・宗教別】年忌法要の特徴と弔い上げのタイミング
年忌法要は故人の追善供養の一種ですが、行う年数や弔い上げのタイミングは宗教・宗派によって異なります。
ここでは仏教を代表する6つの宗派と、私たちに馴染み深い神道とキリスト教の年忌法要の特徴と弔い上げのタイミングをご紹介します。
真言宗
真言宗では一周忌から十七回忌までを行い、その後は二十三回忌と二十七回忌を省略する代わりに二十五回忌を行います。
弔い上げは三十三回忌に行いますが、その後も「五十回忌」「百回忌」など、遠忌(えんき)と呼ばれる遠く歳月が経過した年忌法要を行うことが特徴です。
曹洞宗
曹洞宗では一周忌から二十五回忌までを行い、三十三回忌が弔い上げとなることが一般的です。
ただし、地域によっては二十五回忌を行わない代わりに二十三回忌と二十七回忌を行う場合もあり、弔い上げを行った後に五十回忌や百回忌を行うなど真言宗との類似点が多いことが特徴です。
臨済宗
臨済宗では一周忌から十七回忌までを行い、その後は二十三回忌を行う地域と二十五回忌を行う地域に分かれます。
三十三回忌をもって弔い上げを行いますが、その後の年忌法要は行わないことが一般的です。
日蓮宗
日蓮宗では一周忌から十七回忌までを行い、その後は二十三回忌や二十七回忌を行いますが、二十五回忌を行うことで二十三回忌と二十七回忌を省略する場合があります。
なお、日蓮宗には弔い上げという概念がありません。
本来は弔い上げを行うことはありませんが、法要を取り仕切る人物が亡くなった時点で最後の年忌法要とする場合もあります。
天台宗
天台宗では一周忌から十七回忌までを行い、その後は二十五回忌を行う代わりに二十三回忌と二十七回忌は省略するのが一般的です。
弔い上げは三十三回忌をもって行われます。
浄土真宗
浄土真宗では他の宗派とは法要の考えが異なり、故人の追善供養として年忌法要を行うことはありません。
これは、他の宗派が年忌法要を「故人が極楽浄土へ旅立つために行う追善供養」と考えることに対して、浄土真宗では「亡くなった方は直ぐに極楽浄土へ旅立てる」と考えるためです。
そのため、浄土真宗が行う年忌法要は親族が集まり故人を偲ぶ目的で営まれます。
年忌法要や弔い上げを行う時期に関しては、他の宗派と同じく一周忌から始まり三十三回忌まで行い、この三十三回忌をもって弔い上げが行われます。
神道における弔い上げのタイミング
神道には亡くなった方がその家や子孫を守ってくれる守り神になるという考えがあり、仏教における法事と同様に「霊祭」と呼ばれる宗教行事があります。
霊祭の中で遺族は、故人が無事に神様になって自分たちを守ってくれるよう、故人の死去から50日目に行う五十日祭や100日目に行う百日祭などを通して祈願します。
霊祭は、その後「一年祭」「三年祭」「五年祭」「十年祭」と続き、それ以降は10年ごとに「年式祭」が行われ、三十年祭を持って弔い上を行うことが一般的です。
キリスト教における弔い上げのタイミング
キリスト教の宗派であるカトリックとプロテスタントでは死に対する考えが異なりますが、総じて「死は神様のもとに召される祝福するべきこと」と考えられています。
そのため、本来のキリスト教では故人の死後に供養を行うという考えはありません。
しかし、日本においては普及の過程において仏教の慣習に合わせる形で「追悼ミサ」「記念集会」など、仏教の法要にあたる行事が行われるようになります。
この追悼ミサや記念集会は、教会や地域によって行う時期が異なりますが、概ね故人の死去から1年以内に行いそれ以降は行うことはあまりありません。
このような事情から、仏教や神道のように長年に渡って行う年忌法要という慣習はなく、弔い上げを行うこともないのです。
葬儀から一年以内の忌日法要の種類
故人の命日から数日単位で行う法要は「忌日法要(きにちほうよう)」と呼ばれ、次の種類があります。
ここでは、この忌日法要の種類ごとの特徴を解説します。
初七日法要
故人が亡くなってから7日目に行う初七日法要は、多くの参列者を招いて盛大に行われる忌日法要です。
僧侶の読経や焼香を行い、その後は会食の場を設けるのが一般的ですが、現在では葬儀とあわせて初七日法要を行う「繰り上げ法要」を行う方が多くなっています。
二七日法要から五七日法要
故人が亡くなり14日目から42日目までには次の法要が営まれます。
- 二七日法要(ふたなぬかほうよう)
- 三七日法要(さんなぬかほうよう)
- 四七日法要(よんなぬかほうよう)
- 五七日法要(いつなぬかほうよう)
- 六七日法要(むなぬかほうよう)
この期間の法要については現在では省略されることも多く、行った場合でも僧侶の読経や焼香については省かれ、遺族のみで行うことが一般的です。
四十九日法要
故人が亡くなってから49日目に行う四十九日法要は、多くの参列者を招いて盛大に行われる忌日法要で、僧侶の読経と参列者の焼香が行われその後に会食を設けることが一般的です。
なお、この四十九日法要では本位牌を仏壇に納め、これまで使用してきた白木の位牌を菩提寺に納める作業を行います。
また、すでにお墓がある方は、この四十九日法要後に遺骨をお墓に納める納骨式を行う方が大半です。
百か日法要
故人が亡くなってから100日目に行う百か日法要は、僧侶の読経や焼香を省略して遺族のみで営むことが一般的です。
この百か日法要は、故人を失った悲しみから遺族が解放される日と考えられていますが、現在ではこの法要自体を行わないケースも増えています。
葬儀から1年以降の年忌法要の種類
故人の命日から年単位で数えて行う法要は「年忌法要(ねんきほうよう)」と呼ばれ、次の種類があります。
ここでは、この年忌法要の種類ごとの特徴を解説します。
一周忌法要
故人が亡くなってから一年目の命日に行う一周忌法要は、「寺院や葬儀会場での法要」「お墓参り」「会食」を行い、参列者には引き出物を渡す慣習があります。
なお、四十九日法要で納骨を行なかなった方は、この一周忌法要を目途に行うことが一般的です。
三回忌法要
三回忌法要は故人が亡くなってから満2年の命日に行う年忌法要です。
3回忌法要は3年目の命日と勘違いする方がいますが、「年忌法要の数え方」で解説したように、法要は「年忌法要数-1年」で営まれます。
誤解がないよう、この点については十分に注意しましょう。
なお、三回忌法要では「法要」「お墓参り」「会食」を行うことが一般的です。
七回忌法要から二十七回忌法要
三回忌以降の法要は次のように「3」と「7」のつく年数を目途に行います。
- 七回忌
- 十三回忌
- 十七回忌
- 二十三回忌
- 二十七回忌
七回忌以降の法要では、三回忌法要と同様に「法要」「墓参り」「会食」を行いますが、近年ではこの期間の法要を簡素化して行う傾向にあります。
これは遺族の高齢化や核家族化が原因と考えられ、中には十三回忌以降の法要を省略するなど場合もあり、今後もこの簡素化の傾向は進むと考えられています。
三十三回忌法要
故人の命日から数えて32年目に行うのが三十三回忌法要です。
三十三回忌では二十七回忌まで簡素化して法要を行ってきた遺族も、一周忌法要のように参列者を招いて盛大に法要を行うことが多く、この法要をもって弔い上げとすることが一般的です。
ただし、三十三回忌ともなると故人を知っている方も少なくなることから、他の法要と同時に行う場合もあります。
五十回忌・百回忌法要
故人が亡くなってから満49年目の命日が五十回忌、満99年目の命日に行うのが百回忌法要です。
この法要は浄土真宗が盛んな地域では現在でも行われていますが、他の宗派ではそれほど一般的ではありません。
法事を行う際の準備事項と手順
法要は長い年月をかけて行うため、喪主はその都度準備を行わなければなりませんが、法要の種類によって準備する内容や手順に違いはありません。
ここでは、法事を行うにあたっての準備事項とその手順を解説します。
- 僧侶へ依頼する
- 会場を予約する
- 「お膳」「供花」「返礼品」を手配する
- 案内状を手配・送付する
僧侶へ依頼する
法事を行う際には僧侶の読経が不可欠となるため、開催日時の2ヶ月前を目安に依頼を行います。
なお、次の期間に関しては僧侶の予定が立て込む場合がありますで、早めに依頼した方が良いでしょう。
- 年末年始期間
- お盆期間
- 春彼岸期間
- 秋彼岸期間
会場を予約する
法事の予定日に僧侶を依頼することができれば、次はその日時に法事会場を予約します。
法事を自宅で行う場合には、もちろんこの会場予約は必要ありませんが、法事会場を予約する場合は次の点に注意が必要です。
- 法事会場で食事はできるのか:法事会場で食事ができれば法要後の会食で移動の必要がありません
- 法事会場は寺院から遠くはないか:あまりにも遠い会場は僧侶の移動負担が増えるためおすすめできません
- 会場は椅子席か:高齢の参列者に配慮するなら会場は椅子席の方が喜ばれます
なお、法事会場は僧侶への依頼と同様に「年末年始」「お盆」「春・秋彼岸」の時期は非常に混み合うため、早めの予約が必要です。
「お膳」「供花」「返礼品」を手配する
返礼品や会食の内容については早めに確定し、供花に関しては誰が出すのかの確認を含めて注文しておきましょう。
ただし、参列者の人数は確定するのが法事の直前という状況も少なくありません。
そのため、お膳や返礼品の数はある程度含みを持たせて予約し、確定後速やかに連絡を行います。
なお、この返礼品や会食のお膳の種類などは、地域による風習が色濃く反映される作法でもあります。
風習やしきたりを意識して、寺院や業者の指示に従って準備を進めた方が良いでしょう。
案内状を手配・送付する
大勢の参列者を招く法事では、普段それほどお付き合いのない方へ案内状を送付して法事を行う旨を伝えます。
最近では、返礼品の業者や会場側が、案内状の作成から発送までを行ってくれる専門業者と提携していることも多いです。
そのため、このサービスを利用すれば手間なく案内状を送ることができるでしょう。
まとめ
法事は故人が極楽浄土へ旅立った後も続く追善供養のため、遺族はいつまでこの供養を行うべきなのかと考えてしまいがちです。
しかし、最も大切なことは故人がどのようにして欲しいのかを考え、その考えを基に遺族の考えを明確にすることです。
もちろん、この考えは宗教や宗派の教えに沿ったものでなくてはなりませんが、すべてを教義通りに行うことができるとは限りません。
法事を行うことができない期間や縮小しなければならない事情などがあれば、お世話になっている寺院に正直に相談することで、柔軟な対応で解決策を導いてくれるでしょう。