お通夜や葬儀・告別式に参列する際には、葬儀費用の足しになるよう香典を持参することが参列者の務めです。
では、故人の命日から1年後に行われる一周忌法要に参列する際にも、同じく香典を持参しなければならないのでしょうか?
ここでは、このような疑問に対し、一周忌法要に参列する際の香典の要否を解説します。
また、併せて「香典金額の決め方」「故人との関係性別相場費用」「香典袋に関するマナー」なども紹介しますので、一周忌法要時の香典マナーをより深く理解してください。
一周忌には香典を持参する

これまで法要に参列したことがない方の中には、「葬儀から1年以上経過している一周忌には香典が必要ないのでは?」と考える方もいるようです。
しかし、結論からお伝えすると、一周忌を含むすべての法要では香典を持参するのが昔からの習わしです。
ここでは、なぜ法要に香典が必要なのかを理解するため、香典や一周忌について解説します。
香典とは
本来の香典は、故人の仏前に供えるお香や仏花などを贈るのがマナーとされてきました。
しかし、現在では葬儀費用などの突然の出費に対して、遺族や参列者が金銭を持ち寄ることが香典と理解されています。
これは、香典本来の「亡くなった方への弔慰」という意味合い以上に、お互いの葬儀費用を出し合う「相互扶助」的役割が強くなっているためです。
このような価値観の変化から、葬儀や法要に参加するすべての方は、金銭的援助としての意味合いで香典を贈ることがマナーとなっているのです
一周忌とは
一周忌とは故人が亡くなってから1年が経過した時期に営む法要で、多くの弔問客を招いて盛大に行う傾向にあります。
これは、この宗教儀式が次のような理由から遺族にとって特別な意味があるためです。
- 故人の最初の命日となるため
- 日常生活にさまざまな制約が課せられる喪中期間が終わるため
- 故人への供養がひと段落するため
なお、この時期まで納骨を済ませていない遺族はこの一周忌と同日に納骨式を行うこともあり、その場合は一周忌を更に盛大に営む傾向にあります。
一周忌と一回忌は異なる儀式
一周忌とよく似たことばに「一回忌」がありますが、この2つは漢字も似ていることから、その意味が混同されることがあります。
2つのことばにはそれぞれ次のような意味があり、まったく異なるため注意が必要です。
- 一周忌:故人が亡くなってから1年目の命日
- 一回忌:故人の命日
香典金額を決める3つの要素

このように、葬儀に限らず法要の際にも必ず必要な香典ですが、その金額については一律ではありません。
そのため、葬儀や法要に参加した経験が少ない方の多くは、「香典の中身はいくら包むべきなのか?」という疑問を感じてしまうものです。
実は香典には目安となる金額があり、この金額は次に解説する3つの要素で決められています。
- 故人とご自身の関係性
- ご自身の年齢
- 法要後の会食の有無
故人とご自身の関係性
香典は亡くなった方との関係性が近いほど、多くの金額を包むという特徴があります。
そのため、ご自身のご両親(義理の両親を含む)が亡くなった場合や、兄弟・姉妹(義理の兄弟・姉妹を含む)が亡くなった場合は高額な香典が必要です。
また、親密な関係性だった友人・知人が亡くなった際には、相場より若干高めの香典を包むなどの配慮を示します。
ご自身の年齢
香典は、年齢によっても相場が変わります。
そのため、社会人になったばかりの20代では相場は低く、30代以降からは多くの香典を包むのが習わしです。
特に経済的にも余裕があるとみなされる50代以降の年長者は、遺族を金銭的にサポートする意味合いから、若い世代よりも多くの香典を包む傾向にあります。
法要後の会食の有無
一周忌が終わると、通常は僧侶や弔問客を招いて会食を行いますが、香典はこの会食の有無によっても相場が変わります。
会食を行う際の香典は、香典に食事代として5,000円から1万円ほどを上乗せして包むのが習わしです。
会食の有無は法要の案内状に記載されていますので、香典を包む際にはこの点を確認しておきましょう。
相場がわからない時は葬儀会社へ相談するのも有効
ご自身と縁のない一周忌に参列する場合は、その地域の香典相場がわからないという状況も少なくありません。
このような状況下では、ご自身の経験則だけで香典金額を決めてしまうのは危険です。
香典相場がわからない場合は、葬儀会場へ相談して金額を聞いてみることをおすすめします。
【関係性別】一周忌法要の香典の金額相場

香典金額を考える際には、まずは亡くなった方とご自身との関係性を把握し、その相場の中でご自身の年齢や会食の有無を加味して金額を決める必要があります。
ここでは、亡くなった方との関係性別に具体的な香典相場を解説します。
親が亡くなった場合
親が亡くなった場合は、ご自身との関係性が最も深いことから多くの香典を包みます。
この際の相場は1万円から5万円ですが、ご自身が社会的地位の高い場合や、ある程度の年齢の場合は10万円を超える香典を包むことも珍しくありません。
なお、親が亡くなった際に子が葬儀の喪主を務めることがありますが、その場合の香典は不要です。
兄弟・姉妹が亡くなった場合
亡くなった方がご自身の兄弟・姉妹の場合、香典金額の相場は比較的高く1万円から5万円です。
祖父母が亡くなった場合
亡くなった方が祖父母の場合は、香典金額の相場は比較的低く5,000円から3万円です。
親戚が亡くなった場合
亡くなった方が親戚の場合は、その方との関係性により香典相場は異なります。
近い親戚であれば5,000円から3万円、遠い親戚であれば5,000円から1万円が香典相場です。
友人・知人が亡くなった場合
亡くなった方が友人・知人の場合は、その方との生前の関係性によって香典相場は異なります。
一般的な関係であれば3,000円から1万円が相場となり、古くからの付き合いや家族同士の付き合いが場合は、遺族を金銭的にサポートする意味合いから1万円以上を包む場合もあります。
一周忌法要の香典相場一覧
ここでは、先ほど解説した故人とご自身との関係性をもとに、年齢を加味した一周忌法要の香典相場を一覧としてまとめています。
一周忌の香典金額に迷った際には、次の一覧を活用してみてください。
ご自身との関係性 | 20代の香典相場 | 30代の香典相場 | 40代・50代の香典相場 |
---|---|---|---|
親 | 3万円〜5万円 | 3万円〜5万円 | 3万円〜10万円 |
兄弟・姉妹 | 1万円〜3万円 | 1万円〜5万円 | 3万円〜5万円 |
祖父母 | 1万円 | 1万円〜3万円 | 3万円〜5万円 |
親戚 | 5,000円〜1万円 | 5,000円〜1万円 | 5,000円〜3万円 |
知人・友人 | 3,000円〜5,000円 | 5,000円〜1万円 | 1万円程度 |
一周忌法要に使用する香典袋の注意点

一周忌の際に持参する香典は、香典袋に包んで渡すのはもちろんのこと、次のようなマナーが求められるため注意が必要です。
ここでは、香典袋に関するさまざまなマナーを具体的に解説していきます。
- 香典袋の種類は包む金額により使い分ける
- 筆は濃い墨を使用する
- 運ぶ際には袱紗を使用する
- 郵送する際には現金書留を利用する
香典袋の種類は包む金額により使い分ける
香典袋は包む金額により、次のように袋の種類を使い分ける必要があります。
- 5万円から10万円の香典を包む場合:大判サイズで双銀の水引を用いた香典袋
- 3万円から5万円の香典を包む場合:双銀の水引を用いた香典袋
- 1万円から3万円を包む場合:黒白の水引を用いた香典袋
- 3,000円から5,000円を包む場合:水引が印刷された簡易的な香典袋
香典袋には花がプリントされたものが販売されていますが、この花の種類は宗教ごとに異なります。
仏教であれば蓮の花、キリスト教であればユリの花が代表的な花となりますので、デザインによって香典袋を使い分けましょう。
筆は濃い墨を使用する
香典袋に記載する書き物は筆もしくは筆ペンを用いますが、この際に使用する墨は一般的な濃い墨を使用します。
お通夜や葬儀では遺族に対して悲しみを表すため薄墨を使用しますが、故人が亡くなってから1年が経過した一周忌ではそのような配慮は不要のため、通常の濃い墨を使うのが習わしです。
運ぶ際には袱紗を使用する
香典を持ち運ぶ際には袱紗に包むのがマナーです。
くれぐれも香典袋を直接手に持ったり、上着の内ポケットに入れて持ち運んだりするようなことは避けましょう。
郵送する際には現金書留を利用する
一周忌に参列できない場合は香典を郵送で送ることも可能です。
ただし、この際には現金書留を利用して郵便局から送らなければなりません。
また、現金書留には故人に対するお悔みの気持ちと、一周忌に参列できなかったことへのお詫びの手紙を添えることがマナーです。
一周忌法要に使用するお金(紙幣)の注意点

一周忌に持参する香典には、使用する紙幣に関する細かい作法が存在するため注意が必要です。
実際に使用する紙幣についての注意点は次のとおりです。
新札の使用は避ける
香典に使用する紙幣は、新札を避けてある程度の使用感がある紙幣を包むのがマナーとされています。
ただし、これは地域よって慣習が異なり、中には新札であっても構わないとする地域もあるのが事実です。
一昔前では、法要の際の香典は旧札を使用するのが一般的でしたが、現在では新札でも旧札でもどちらでも構わないと考える方が増えています。
とはいえ、その土地の慣習がわからない場合は新札を避けて旧札を使用する方が無難でしょう。
向きを揃えて香典袋へ入れる
香典袋に入れる紙幣の向きは、すべて揃えて入れるのがマナーです。
また、この際の紙幣の入れ方はこれまでの葬儀や法要とは異なり、紙幣にプリントされている人物画を表側にしなければなりません。
これは、一周忌では故人は既に仏様になっていることから、遺族に対して悲しみを表す配慮が不要となるためです。
縁起の悪い数字は避ける
先ほど紹介したように、さまざまな要素で香典相場は異なりますが、宗教上縁起が悪いとされる「4」や「9」の数字を含む金額を包むことはありません。
また、偶数などの割り切れる数字は「縁が切れる」ことを想起させるため、使用する紙幣の枚数は奇数にすることが作法とされています。
このような考え方から、2万円を包む場合は1万円札1枚と5千円札2枚を使用するなどの工夫が必要です。
香典袋の書き方

香典を包む香典袋には、「記載する内容」「書き方」「書く場所」に至るまで厳密なマナーが存在するため、香典を持参する際にはこの点についての理解は必須です。
最後に、香典袋の書き方について解説していきましょう。
外袋の書き方
香典袋の表面の中央には、目録としての意味を持つ表書きを記載します。
この表書きは宗教・宗派によって書き方が異なるため、参列者は弔問先である葬儀や法要がどのような宗教様式で行われるのかを確認し、その様式に沿った表書きを記載しなければなりません。
また、仏教の浄土真宗を除くほとんどの宗派では故人が亡くなってから四十九日法要以前の表書きを「御霊前」、それ以降の表書きを「御仏前」と記載するため注意が必要です。
宗教・宗派別の表書は次の一覧の中で解説していますのでご覧ください。
宗教 | 表書き |
---|---|
仏教 |
浄土真宗に限り表書きは「御仏前」のみを使用する |
神道 |
|
キリスト教 |
カトリック派
プロテスタント派
|
表書きの水引を挟んで下部分には、ご自身の氏名を記載します。
特に同じ苗字の方が多く集まる一周忌では、苗字のみを記載して名前を省略する書き方は、思わぬトラブルに発展してしまう可能性があります。
誰がいくら包んだのかが正確に施主に伝わるよう、名前はフルネームで記載するのがマナーです。
中袋の書き方
香典袋には二重になっているものがあり、紙幣を入れる袋は中袋と呼ばれ表側の外袋とは区別されています。
中袋があるタイプの香典袋では、中袋の表側に香典金額を記載し裏側に住所と名前を記載します。
金額の書き方
香典金額を記載する際に使用する文字は、大字と呼ばれる漢数字の旧字体を用いて記載するのがルールです。
ただし、香典袋の中にはあらかじめ金額を記載する欄が設けられているものもあり、稀にこの金額記載欄が横書きの場合があります。
この場合は、算用数字を用いて横書きで記載しても構わないとされています。
まとめ

故人が亡くなってからはじめての命日に行う一周忌は、節目の法要とて大規模な法要を営む傾向にあります。
このように、規模が大きな法要に参列する際の参列者は、一般的規模で行う法要以上に葬儀マナーの遵守が求められます。
参列者は香典を持参するのはもちろんのこと、香典に関するマナーやその他の作法を理解した上で一周忌に臨み、故人を偲び思いやる気持ちを遺族に伝えるよう心がけましょう。