身内に不幸事があった際に出す喪中はがきは、私たちが日常的に使用する書式とはまったく異なるため、ほとんどの方が書き方に不安を感じているのではないでしょうか?
そこで今回は、この喪中はがきを不安なく作成できるよう、「状況別の文例」「構成」「マナー・注意点」などについて解説します。
喪中はがきはマナーに沿った書き方をしなければ先方に失礼な印象を与えてしまいますが、ここで紹介する構成や文例を活用して頂ければ、マナーに即した文章を作成することができるでしょう。
これから喪中はがきを準備するという方は、ぜひこの記事をお役立てください。
目次
喪中はがきとは

喪中はがきとは、身内に不幸があった方が年賀状をやり取りしている方へ喪に服しているため新年の挨拶ができないことを知らせるための手紙で、別名「年賀欠礼状」とも呼ばれます。
また、誰が亡くなったのかを知らせる役割もあるため、特に身内だけで葬儀を行った方にとっては「訃報連絡」としての役割もある手紙です。
喪中とする範囲
喪中はがきは、次のようにご自身から数えて2親等までの方が亡くなった際に出すことがかつてのマナーでした。
- 配偶者
- 父母
- 義父母
- 子
- 兄弟姉妹
- 義兄弟姉妹
しかし、現在はこの2親等以内であっても「祖父母」「義理の祖父母」「義理の兄弟姉妹」に関しては、同居していない場合は必要ないとする考えもあります。
この点に関しては、地域の慣習や家族の意向を踏まえた柔軟な対応が必要といえるでしょう。
喪中はがきと寒中見舞の違い
喪中はがきとよく似たものに、「寒中見舞い」があります。
寒中見舞いは、近況報告や喪中を知らずに年賀状を出した方に対して、喪中報告を行うための手紙です。
そのため、喪中を知らずに年賀状を出した方は、寒中見舞いの中でお悔やみとお詫びを伝えることで、非礼を解消することができます。
一方で、喪中はがきは年賀状で行う新年の挨拶を欠礼する旨を伝えるための手紙なので、根本的にその意味が異なります。
ちなみに、寒中見舞いは関東なら1月7日、関西では1月15日から2月4日の立春までに送付することがマナーです。
喪中はがきの構成は6段階

喪中はがきは忌事に関わる手紙のため、その内容は葬儀マナーと同じくルールが定められ、書くべき内容が構成ごとに定められています。
ここでは、喪中はがきに書くべき6つの構成とその内容を解説します。
- 年賀欠礼の挨拶
- 故人の情報
- 先方への感謝の言葉
- 結びの言葉
- 日付
- 差出人
年賀欠礼の挨拶
喪中はがきの冒頭分では、新年の挨拶を欠礼する旨を挨拶文として記載します。
喪中はがきでは祝い言葉を使用することはができないため「年賀」は使用できませんが、年始や年頭といった言葉は使用が可能です。
なお、冒頭文は季節や時候の挨拶は不要であるため、本文から書き始めても構いません。
故人の情報
2つ目は、「誰が」「いつ」「何歳で」亡くなったのかを差出人の続柄と共に記載します。
故人の名前はフルネームで、年齢は数え年で記載することが一般的ですが、故人の年齢を享年表記で記載する場合は「享年○○」と記載するため年齢の後の「歳」は不要です。
先方への感謝の言葉
3つ目は、故人に代わり生前お世話になったことへのお礼と感謝の言葉を述べます。
内容はシンプルに、「生前に賜りましたご厚情に心からお礼申し上げます」などの言い回しが一般的です。
結びの言葉
4つ目は、本文を締めくくる結びの言葉を記載します。
「皆様に良い年が訪れますようお祈り申し上げます」「明年も変わらぬご交誼のほどよろしくお願い申し上げます」など、相手の健勝や変わらない付き合いをお願いする内容で本文を結びます。
日付
5つ目は、喪中はがきを差し出した日付を年号と月のみで記載します。
なお、日にちを記載する必要はありません。
差出人
最後は、差出人の「名前」「住所」「電話番号」を記載します。
差出人の名前はここで紹介するように裏面の最後に記述することもできますが、はがきの表面に書くことも可能です。
差出人の名前は、世帯主の名前や夫婦連盟のどちらであっても構いません。
【状況別】喪中はがきの文例
ここからは、喪中はがきの文例を故人の状況別に紹介します。
一般的な喪中はがきの文例
喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます 本年中に賜りました
ご厚情に深謝いたしますとともに 明年も変わらぬご厚誼のほどお願い申し上げます
皆様が健やかなる新年をお迎えになられますことを心よりお祈り申し上げます
令和○○年○○月
病気療養中に亡くなった場合の文例
喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます
かねてより病気療養中の父○○が本年○月に○○歳にて永眠致しました
ここに生前のご厚情に深謝いたしますとともに
ご通知が遅れましたことをお詫び申し上げます
なお時節柄ご自愛のほどお祈り申し上げます
令和○○年○○月
複数人が亡くなった場合の文例
喪中につき年末年始のご挨拶を慎んでご遠慮申し上げます
本年○月 父○○が○○歳にて
本年○月 母○○が○○歳にて永眠いたしました
生前のご厚誼を深く感謝申し上げますと共に
明年も変わらぬご交誼を賜りますよう謹んでお願い申し上げます
令和○○年○○月
大往生だった場合の文例
喪中につき年末年始のご挨拶ご遠慮申し上げます
本年○月に ○(祖母) ○○が○○歳にて大往生を遂げました
本年中に賜りましたご厚情に深謝いたしますとともに
明年も変わらぬご交誼のほど謹んでお願い申し上げます
皆様にとりまして良き年が訪れますようお祈り申し上げます
急逝した場合の文例
喪中につき年始のご挨拶をご遠慮させていただきます
本年○月に母○○が急逝いたしました
生前に賜りましたご厚情に深謝いたしますとともに
みなさまに良き年が訪れますようお祈りいたします
令和○○年○○月
社葬で葬儀を行った場合の文例
喪中につき年始のご挨拶をご遠慮させていただきます
本年○月に弊社○○、元代表取締役 ○○○○が永眠いたしました
本年中はひとかたならぬお引き立てを賜りまして衷心より感謝申し上げます
明年も変わらぬご交誼のほどよろしくお願い申し上げます
令和○○年○○月
喪中はがきに関する注意点

喪中はがきは、年賀欠礼状という性質から、これから解説する「手紙を出す時期」と「出す範囲」に注意が必要です。
喪中はがきを出す時期
喪中はがきに関する慣習が確立する以前は、はがきは年内に届けば問題はないとされていましたが、現在では喪中はがきを受け取った側も年賀状を出さないことが慣習として認知されています。
このような事情から、喪中はがきを出す時期は先方の年賀状の準備に配慮して、11月下旬から遅くとも12月上旬までには投函することがマナーです。
喪中はがきを出す範囲
喪中はがきを出す範囲は次の方が対象です。
- 毎年年賀状をやり取りしている方
- 故人が生前にお世話になった方
- 通夜や葬儀・告別式に参列してくれた方
近しい親族でも喪中はがきを出す場合もありますが、はがきはあくまでも年賀欠礼を知らせるための手紙なので、亡くなったことをすでに知っている親族に対しては省略する場合もあります。
このように、喪中はがきを出す範囲にはおおよその決まりがあるものの、その判断は親族に委ねられています。
そのため、故人と面識のない方や故人の存在を知らない方にははがきを出さないことも少なくありません。
あまり形式にとらわれず、故人の意志を尊重して送る相手を決めても良いでしょう。
喪中はがきを作成する際のマナー

喪中はがきは忌事に関わる内容を手紙にしたためて届けるため、文章の書き方には特有のマナーがあります。
ここでは、喪中はがきの書き方に関するマナーを解説しながら、あわせて使用する筆や推奨されるはがきのデザインについて紹介します。
- 前文の前略は省略する
- 句読点・行頭の一字下げは不要
- 祝い事に関する報告は不要
- はがき・切手は喪中用を使用する
- 薄墨を使用する
- フォントは基本的に明朝体・行書体を使用する
前文の前略は省略する
喪中はがきではm「拝啓」や時候の挨拶などの前文は不要です。
これは忌事に関する手紙の全てに共通するマナーで、死亡通知や会葬礼状でも前文を用いることはありません。
なお、前文は頭語と結合でできているため「敬具」などの結語も不要です。
句読点・行頭の一字下げは不要
句読点は文章を読みやすくするためのもので、これが普及したのは明治時代からと、意外にも最近です。
そのため、儀礼的内容を記載する喪中はがきでは、相手への敬意払う意味でも句読店や行頭の一字下げは行いません。
祝い事に関する報告は不要
喪中はがきの文面では、祝い事に関する報告は控えるのがマナーです。
そのため、本文中に一言添えたい場合は、故人との思い出に関する内容に触れ、どうしても近況報告が必要な場合は、寒中見舞いとして伝えるという方法が一般的です。
はがき・切手は喪中用を使用する
喪中はがきとして使用するはがきは、喪中用の官製はがきかインクジェット紙を利用し、華美なデザインは避ける傾向にあります。
なお、私製はがきに切手を貼って出す場合は、忌事用の63円普通切手花文様が定番です。
薄墨を使用する
喪中はがきの文章を記載する書き物は、薄墨を使用するのがマナーです。
薄墨は悲しみを表現するために用いる葬儀マナーで、「突然の出来事に墨を十分にすることができなかった」「涙で墨が滲んでしまった」などの意味が込められています。
パソコンを使用する場合でも、濃淡を調整することで薄墨と同じく文字の濃さを控えめにすることが可能です。
なお、薄墨の使用は本文だけにとどめ、宛名は通常の濃い墨を使用します。
フォントは基本的に明朝体・行書体を使用する
パソコンで喪中はがきを作成する際には使用するフォントも重要です。
この際のフォントは癖の強い文字や現代的な書体は避けるため、一般的な明朝体や行書体が最適です。
なお、文字のレイアウトは縦書きが基本です。
まとめ

喪中はがきは忌事に関する内容を儀礼的に伝えるための手紙です。
それだけに、文章内の文言にはあまり馴染みのない言葉もありますが、文章構成や記述内容は予め決められているため、作成自体は難しくはありません。
文例をそのまま活用頂ければマナー違反とはなりませんが、作法に従いご自身の言葉を一言添えることができれば、受け取る側にとっても印象深い喪中はがきとなるでしょう。