家庭の事情や故人の遺志により、一般葬よりもシンプルな形式のお葬式を選ぶケースが近年増えています。
シンプルなお葬式ではお通夜・告別式・僧侶による法要がないため、費用が押さえられるだけではなく、家族や親族だけで暖かく故人を見送れるというメリットが魅力です。
今回は、シンプルなお葬式の種類や費用、葬儀社を選ぶときの注意点などを詳しく解説していきます。
シンプルなお葬式の種類と費用

シンプルなお葬式にはさまざまな種類があり、その内容によって費用にも違いがあります。
シンプルなお葬式だからどれも同じだろうと思って契約してしまうと、思ったような内容ではなかったり、思わぬ費用が掛かったりなどの問題が起こることも少なくありません。
では、シンプルなお葬式にはどのような種類があるのかについて、費用と内容をあわせてご紹介していきます。
種類①:直葬
直葬とは、お通夜や告別式がなく火葬だけを行うお葬式です。
故人が亡くなってから24時間安置したあと、最後のお別れをして火葬する形式で、家庭の事情や経済的な問題で選ぶケースが少なくありません。
また、故人が遠方で亡くなりご遺体の搬送が難しい場合にも、いったん直葬で火葬しご遺骨にしてから故郷へ連れ帰るということもあります。
祭壇や仏壇・供花(くげ)などもなく本当にシンプルな内容のお葬式です。
費用の目安
直葬に掛かる費用の目安は、平均すると12万円前後、火葬だけを行う場合はもう少し金額が下がることもあります。
費用はあくまで目安です。
費用の詳細を知りたいときには必ず葬儀社に見積もりを出してもらい、オプションやサービスの内容も確認してみてください。
種類②:一日葬
一日葬とは、お通夜を行わず告別式と火葬だけを行うお葬式です。
一般的な葬儀では、お通夜と告別式・火葬の二日間は必ず必要になります。
そのため、お通夜がないだけでもかなりシンプルになるほか、少しでも家族が休める時間を取れることが魅力です。
さらに、葬儀内容もある程度自分たちで決められるため、一般葬のように多くのプランに悩む必要がありません。
ただし、理想としては15人ほどが目安となるため、それ以上の人数でお葬式を考えている場合には事前に葬儀社と相談するようにしましょう。
費用目安
一日葬に掛かる費用の目安は、無宗教の場合が約25万円、何らかの宗教に合わせて行う場合には約30万円です。
基本となっているプランには供花や仏壇・仏具などが含まれていないこともあるので、事前に葬儀社に見積もりを出してもらい詳細を確認してみましょう。
種類③:自宅葬
自宅葬とは、ご遺体の安置から出棺までをすべて自宅で行うお葬式です。
昔ながらのお葬式を思い浮かべてもらうとわかりやすいでしょう。
自宅葬によるお葬式は、小さめの祭壇に家族が思い出の品物を飾ったり、故人の好きだった歌を流したりととても暖かでシンプルなお葬式となっています。
自宅でのお葬式は家族が動く場面も多いですが、住み慣れた場所で本当に親しい人たちだけで見送ることができるので、昔ながらの暖かいお葬式をシンプルに行いたいという方に人気です。
費用目安
自宅葬に掛かる費用の目安は、参列者が20人ほどなら約50万円、少し人数が増えても約60万円です。
お葬式の内容自体は一般葬とほぼ変わりませんが、部屋に合わせてしつらえる祭壇の大きさや供花の量を調整したり、場所的な問題で会食せずにお茶とお菓子だけで済ませることもできるので、結果的にシンプルなお葬式になるのです。
もし費用を押さえつつお通夜や告別式はきちんと行いたいという人は、一度葬儀社に自宅葬の相談をしてみると良いでしょう。
種類④:家族葬
家族葬は、シンプルなお葬式の中でも特に注目を集めている形式です。
家族葬は最大でも参列者が30人という小規模なお葬式になるため、一般的なお葬式を行いつつ費用を抑えられるほか、本当に親しい人たちで暖かく送り出せるというメリットがあります。
最近では、家族の要望に合わせて細部までプランニングできる葬儀社もあり、シンプルなお葬式でも故人を偲ぶ気持ちを表したいという人におすすめです。
費用目安
家族葬に掛かる費用の目安は、約50万円から100万円前後と幅広くなっています。
家族葬は10人以内から最大では30人を超えることもあり、故人の人脈によっては50人になることも少なくありません。
参列者が多くなるとどうしてもそのぶん費用が高くなるため、参列者の人数をあらかじめ調整したり、費用を抑えてシンプルなお葬式になるよう葬儀社とよく相談してみましょう。
シンプルなお葬式にするメリット

一般的なお葬式では、決め事や段取りなどが多いため、故人の家族がとても忙しく心身ともに疲れてしまうことは少なくありません。
一般葬よりもシンプルな形式でできるお葬式は、送り出す家族にとってさまざまなメリットがあります。
では、シンプルなお葬式のメリットとはどのようなものなのか、具体的な例を交えて詳しく解説します。
メリット①:経済的な負担が少ない
シンプルなお葬式で一番に挙げられるメリットは、経済的な負担が少ないことです。
実は一般葬の全国平均は安くても180万円前後、高ければ200万円を超えてしまうので、葬儀費用に悩む家族の少なくありません。
シンプルなお葬式は最低でも20万円前後、高くても100万を超えない程度の金額で行えるため、突然の不幸で準備ができなかったり経済的に余裕がなくても故人を見送ることができます。
メリット②:親しい人だけでゆっくりお別れできる
一般葬では多くの人が参列するため、故人の家族はその対応に追われてしまいます。
お葬式の段取りはもとより、参列者へのご挨拶やお食事の用意などで、家族がゆっくりと故人に向き合える時間が少ないのです。
シンプルなお葬式では、故人と一番近しい関係であった家族がゆっくりとお別れできるよう、余裕を持ったプランを立てることができます。
お葬式は故人と触れ合える最期の時間ですから、家族との絆を大切にしたい人には重要なメリットです。
メリット③:形式にとらわれないお葬式ができる
日本で行われる一般葬のほとんどは、宗教的な部分や故人の社会的つながりなどを考えて、ある程度形式が決まっています。
しかし、お葬式で大切なのは故人を見送る心であり、故人が喜んでくれるお葬式にしたいと願う家族も少なくありません。
シンプルなお葬式では、無宗教ならば宗教的儀式をせず故人の思い出を語る時間を設けたり、故人の好きな音楽を掛けてみんなで送り出すなど、形式にとらわれないお葬式を行うことができます。
故人を偲んで悔いのないお別れができることも、シンプルなお葬式のメリットと言えるでしょう。
シンプルなお葬式にするデメリット

シンプルなお葬式は家族にとってたくさんのメリットがありますが、一般葬を行わないぶん考慮しなければならないデメリットもあります。
ではシンプルなお葬式のデメリットとはどのようなものなのか、具体的な例を挙げて詳しく紹介します。
デメリット①:思ったよりも物足りなく感じる
シンプルなお葬式だとわかっていても、自分の理想と離れていたため物足りなく感じるという人もいます。
故人の遺志や経済的理由でシンプルなお葬式を選ぶ人もいるのですが、儀式の内容に納得していないとこういった感想を持つことも少なくありません。
シンプルなお葬式を「小さな一般葬」と勘違いすることもありますが、シンプルなお葬式とは「必要な儀式だけを行うお葬式」ということをしっかり理解しておきましょう。
デメリット②:後から対応に追われる可能性
シンプルなお葬式は小規模で行われるため、一般の参列者が参加できないことからお葬式後に弔問を受けることがあります。
お通夜やお葬式に参列しなかった人は、できるだけ早く弔問に訪れることがマナーとされているため、お葬式後でホッとする間もなく対応に追われる可能性があるのです。
実際にシンプルなお葬式を行った人の中には、弔問の対応に追われてしまい「こんなことなら一般葬にしておけば良かった」と後悔する人もいます。
故人の社会的地位や人脈によっては予想以上に参列を望む人もいますので、事前にある程度の人数を予測してからシンプルなお葬式でも大丈夫か判断するようにしましょう。
デメリット③:理解を得られない可能性
シンプルなお葬式は近年急激に需要が伸びてきた形式なので、どうしても受け入れられないという人も少なくありません。
たとえば、亡くなった夫が生前にシンプルなお葬式の準備をしていても、いざ妻や家族がそのとおりに動こうとすると親戚や周囲の人から非難を受けたり、最悪の場合親族間の付き合いが切れることもあるのです。
シンプルなお葬式は家族にとってメリットが多いですが、参列できない親族や周囲の人からは理解を得られないことがあります。
シンプルなお葬式を選ぶときにはこのようなケースも頭に入れた上で、本当に故人に相応しいかをもう一度確認してみましょう。
シンプルなお葬式にする場合の注意点

シンプルなお葬式を選ぶときには、後悔のないよう注意をしなければなりません。
ここでは、シンプルなお葬式をするときに気をつけるべきポイントについて詳しく紹介します。
注意点①:葬儀のイメージを具体的に持つ
シンプルなお葬式は形式にとらわれないため、一般葬のイメージをそのまま持っていると後悔することも少なくありません。
シンプルなお葬式を選ぶ上で重要なのは、「何を省いて何をやりたいか」という点をはっきりさせて具体的なイメージを持つことです。
具体的な例としては、次のようなイメージです。
- 宗教的な儀式は省いて自由にお参りしてもらい、出棺までの間に思い出話を語りたい。
- 会場に故人の所縁の品を展示して一つ一つ眺めてもらい、最期にその品々を棺に納めてもらいたい。
- 一日葬でお通夜はしないが告別式では檀家の僧侶に読経してもらい、親族の顔が立つように取り計らいたい。
このように具体的なイメージがあると、家族の中でも話がまとまりやすく葬儀社も理解できます。
できるだけ具体的にイメージを持つようにしましょう。
注意点②:事前に口コミや評価を確認する
シンプルなお葬式は、まだ行われる件数が少ない形式なので、ご近所の人や経験者に相談することがなかなかできません。
かといって、葬儀社のパンフレットだけでは情報が一方的になってしまうため、思わぬ落とし穴でトラブルになることもあります。
直接尋ねることはできませんが、インターネットの口コミや評価を見ると、実際にシンプルなお葬式を行った人の素直な感想を読むことができます。
事前に口コミや評価を確認してから葬儀社に連絡してみましょう。
注意点③:セット内容を把握しておく
シンプルなお葬式を行う葬儀社は目安となる費用を提示していますが、そのセット内容を確認しないと想定外の結果を招くことになります。
パンフレットに載っている写真はセット内容以外のオプション付きの場合が多く、実際のセットを見て怒る人も少なくありません。
シンプルなお葬式を葬儀社に相談するときには、提示されている費用のセット内容をきちんと説明してもらい、必要に応じてオプションを付けるなどの対応をしましょう。
注意点④:契約前に業者と意思疎通する
シンプルなお葬式では、契約前に家族と葬儀社の間で意思疎通しておくことが重要です。
実際にあったケースでは、葬儀社の司会を断ったせいで式自体に締まりがなくあやふやなうちに終わったり、遺品を展示するスペースが準備されておらず直前に慌てたというトラブルもあります。
シンプルなお葬式は形式が自由なぶん、お互いの意思疎通ができてないと思わぬトラブルを招きます。
具体的なイメージや的確な指示を出して意思疎通を図りましょう。
注意点⑤:時間があれば他社と相見積もりする
突然の不幸により難しい場合は別ですが、もし時間があるのなら葬儀社に複数連絡して相見積もりしてみましょう。
近年では受容の高まりからシンプルなお葬式を手掛ける葬儀社も増えてきており、各葬儀社によって費用にも差があります。
また、家族と相性が良い葬儀社の場合、こちらの意図を汲んだ対応もしてもらえます。
できれば数社に問い合わせて相見積もりをしましょう。
シンプルなお葬式に参列するときのマナー

シンプルなお葬式は形式にとらわれない自由さがありますが、故人を見送る大切な儀式なので相応のマナーが必要です。
では、シンプルなお葬式に参列するときはどのようなことに気をつけるべきなのか、注意点やマナーについて解説します。
マナー①:服装
シンプルなお葬式の場合「平服で」という案内がされます。
この場合の平服とは、普段着ではなく「準喪服」や「喪に服していることがわかる服装」です。
男性の場合は、黒やダークグレーのスーツに白のワイシャツで、黒のネクタイと黒の靴下を着用します。
女性の場合は、黒のワンピースやツーピース、黒のパンツスーツに白のシャツを着用し、胸元がはだけず露出が少ない服装にしましょう。
マナー②:髪型
髪型は男女ともに清潔感のある髪型に整え、髪の色があまりに明るいときには暗い色に染めましょう。
女性で髪の長い人は耳より下の位置でひとまとめにし、黒の髪ゴムで縛ったり結い上げて黒のピンでとめます。
また、髪の毛をとめる髪飾りは光らないものを用意し、黒のバレッタ程度に抑えるようにしましょう。
マナー③:靴・アクセサリー・バッグ
靴は、男女ともに金具がついていないもの、エナメル質でないものを選びましょう。
男性なら、光沢のない黒の革靴、女性なら光沢のないパンプスが理想です。
アクセサリーは基本的に外しますが、真珠のピアスやイヤリング、真珠の一連のネックレスならつけていても問題ありません。
バッグも光る金具がついていない黒のものを選び、喪に服していることを表すようにしましょう。
マナー④:香典
シンプルなお葬式だからといってお香典を用意しない人もいますが、何も言われていない、もしくはわからないのであれば用意をして参列することがマナーです。
家族から事前に香典辞退を申し入れられた場合は、香典を用意せず無理に渡さないようにしましょう。
受付で香典辞退の旨が書かれた看板があるときも、無理に渡さず持ち帰ることがエチケットです。
どうしても何かしたいというとき、故人に捧げるお花や供物などで対応しましょう。
まとめ

シンプルなお葬式の内容について、種類・費用・注意点を中心に詳しく解説しました。
シンプルなお葬式は、家族にとってメリットがある反面、よく注意をしないと周囲の人と揉めたり、葬儀社とトラブルになることがあります。
しかし、ポイントを押さえれば故人や家族にとって理想的なお葬式になります。
注意点をよく確認して準備を進めるようにしましょう。