故人の臨終から一年後に行う「一周忌法要」では親族や参列者へ法要開催を知らせるため案内状を送りますが、この書き方や記載内容はよほど葬儀や仏事に詳しい方でなければ正確にはわからないものです。
法事の案内状に記載する内容は非常に多く書き方にも特有のマナーがあるため、これらを知らないままに案内状を作ってしまえば、主催者は参列者に対して礼を欠いてしまいます。
そこで、今回は誰でも簡単に礼節を持ったわかりやすい案内状が書けるように、「記載内容」「マナー・注意点」「送り方」などを具体的な文例とともに解説します。
目次
一周忌案内状とは

では、はじめに一周忌案内状とはどのようなものなのかを説明します。
一周忌案内状は、「いつ」「どこで」「誰の」一周忌法要を行うのかを、「親族」「故人が生前お世話になった方」「故人の仕事関係者」などにお知らせするための案内状です。
この案内状は郵送で送られ、案内状を受け取った側は法要に参加するのか参加しないのかを、同封された返信はがきか往復はがきを使って法要主催者へお知らせします。
一周忌とはどんな法要?
一周忌とは「故人が亡くなってから一年後のタイミングで行われる法要」です。
この法要では、故人が生前お世話になった方を大勢招いて、「僧侶の読経」「参列者の焼香」「僧侶の法話」「参列者の会食」を行い故人を偲ぶことが通例です。
これは、仏教以外の宗教である神道・キリスト教においても同様で、故人が亡くなってから一年目に一周忌と同じ意味をもつ法要が大規模に行われます。
とはいえ、昔に比べると宗教観が大きく様変わりしている現在では、次のような「簡素化された一周忌」を行う場合もあります。
- 僧侶に読経を依頼するが親族は呼ばずに家族だけで集まる
- 僧侶に読経を依頼するがその後の会食は行わずにその場で解散する
- 僧侶を呼ばずに家族だけで集まり墓参りをする
- 僧侶を呼ばずに家族だけで食事を摂る
一周忌案内状に記載する内容

一周忌案内状に記載する内容は、「法要の内容」「法要を行う場所」「法事後の会食の有無」などに加えて、法事に続くスケジュール(お墓参りなど)なども正確に記載しておきましょう。
案内状に記載する内容は次のとおりです。
- 差出人と故人の関係・故人の氏名
- 頭語・結語
- 時候の挨拶
- 法事会場・法事日時
- 食事(お斎)について
- 施主(差出人)の住所・氏名・電話番号
- 宛名・宛先
- 返信依頼
記載内容①:差出人と故人の関係・故人の氏名
誰のための法要が行われるのかがわかるように、差出人である施主と故人の関係性・故人の氏名を明記します。
たとえば、亡くなった方がお父様の場合は「亡(父)○○(お父様の氏名)」のように記載します。
この書き方は、一周忌法要以外でも同じ書き方をするため、参列者にわかりやすくするために、何回忌の法要を行うのかも明記しましょう。
記載内容②:頭語・結語
忌事以外で受け取る案内状と同じく、拝啓・敬具などの「頭語・結語」を忘れずに明記します。
記載内容③:時候の挨拶
頭語に続いて、季節にあった時候の言葉を使った挨拶を明記します。
時候の言葉とは、「手紙の冒頭の頭語に続く季節を表す言葉」で、○○の折・○○の候・○○のみぎりのように記載することが一般的です(○○はその月の時候の言葉)。
月ごとに使われる時候の言葉は次のとおりです。
月別の時候の言葉一覧表
月 | 時候の言葉 |
---|---|
1月 | 初春・新春・小寒・迎春・大寒・酷寒・極寒・寒冷・厳冬・寒風 |
2月 | 立春・季冬・寒明・余寒・春寒・残寒・残雪・立春 |
3月 | 早春・浅春・春暖・春雪・・水ぬるむ・山笑う・菜種梅雨 |
4月 | 桜花・陽春・陽炎・暮春・花曇り・花冷え・春風駘蕩 |
5月 | 新緑・薫風・惜春・暮春・立夏・余花・軽夏・若葉 |
6月 | 初夏・向暑・梅雨・麦秋・黄梅・首夏・梅雨寒・薄暑 |
7月 | 盛夏・猛暑・猛暑・大暑・炎暑・酷暑・灼熱 |
8月 | 晩夏・立秋・残暑・残炎・新涼・秋暑・納涼 |
9月 | 初秋・新秋・新涼・白露・秋冷・仲秋 |
10月 | 秋涼・秋晴・夜長・紅葉・秋麗・初霜・秋雨 |
11月 | 晩秋・暮秋・深秋・深冷・落葉・向寒・霜寒 |
12月 | 婚姻中の共有財産は可能 |
記載内容④:法事会場・法事日時
法事会場・法事日時は一周忌法要へ参列する方にとっては、最も気になるポイントです。
誰もが会場の場所を理解できるよう地図を添付して、日時は大きく記載するなどのわかりやすい表記を心がけてください。
記載内容⑤:食事(お斎)について
法要が終わった後に食事の席(お斎)を設ける場合は、その旨を明記します。
特に、お斎の場所が法要会場から離れている場合は、お斎会場までのルートを含めて記載した方が安心です。
記載内容⑥:施主(差出人)の住所・氏名・電話番号
一般的に一周忌法要案内状の差出人は施主となります。
参列者と何らかの事情で連絡を取り合うこともありますので、施主の氏名・住所以外外にも電話番号を記載しておいた方が良いでしょう。
記載内容⑦:宛名・宛先
案内状の宛名・宛先は、お招きしたい方の氏名を書き「様」としますが、ご夫婦に出席をお願いする際には連名にします。
また、家族あての場合では世帯主様の横に「皆様」と添えても良いでしょう。
記載内容⑧:返信依頼
出欠の確認をとるため、返信先の「住所」「氏名」「電話番号」「返信期限」を明記します。
案内状が往復はがきでない場合は、返信用はがきを同封するのがマナーです。
一周忌案内状の文例

それでは、実際に一周忌法要の案内状の文例を見てみましょう。
次に紹介する文例は、仏式で行う一周忌法要の一般的な案内状です。
「謹啓 ○○(時候の言葉)の侯 皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
このたび亡父○○ の一周忌にあたり左記のとおり法要を営みたいと存じます
つきましては ご多忙中まことに恐縮ではございますが ご臨席賜りますようご案内申し上げます敬具
日時 令和〇〇年〇月〇日(〇曜日)午前〇〇時〇〇分より
場所 〇〇 (住所・電話)
※なお 法要後に供養の粗宴をご用意いたしております(場所・住所・電話・地図)令和○○年○月
(差出人) 氏名(住所・電話)
※お手数ではございますが〇月〇日までに返信にてご都合をお知らせ下さい。
仏式以外の一周忌案内状の文例

法要を仏式以外で行う場合でも、基本的には案内状に記載する内容は仏式と変わりません。
ここでは、神式・キリスト教式の案内状について文例とともに解説します。
神式での文例
神道では、故人が亡くなってから一年後に行う祭祀を「一年祭」と呼び、仏教の一周忌法要と同じく大規模に行います。
一年祭では神職による神事に続いて参列者が玉串奉奠を行い、その後「直会」と呼ばれる酒食の席が設けられます。
この一年祭の案内状は仏式とほぼ同じ記載内容ですが、冥福・法要などの仏教用語を使うことはありませんので注意が必要です。
神式の案内状の文例は次のとおりです。
謹啓 〇〇(時候の言葉)のころ 皆様にはお障りもなくお過ごしのこととお喜び申しあげます
早いもので この度 (亡父)○○(故人の氏名)の一年祭を迎えることとなりました
つきましては 左記の日時にて一年祭を執り行いたいと存じます
ご多用中のところ恐縮に存じますが ご臨席を賜りたくお願い申し上げます敬具
日時 令和〇〇年〇月〇日(〇曜日)午前〇〇時〇〇分より
場所 〇〇 (住所・電話)
※なお 霊祭後に粗宴をご用意いたしております(場所・住所・電話・地図)令和○○年○月
(差出人) 氏名(住所・電話)※お手数ではございますがご出席の有無を〇月〇日までご一報いただければ幸いです
キリスト式での文例
キリスト教でも仏教の法事・法要に相当する儀式はありますが、キリスト教の死生観では「死は悲しむものではない」とされるため、その意味合いは仏教とは異なります。
また、キリスト教の宗派(カトリック・プロテスタント)によっても、故人の死後一年後に行う命日の集いには違いがあるため注意が必要です。
カトリックでは、故人の死後一年後に行う集会を「追悼ミサ」と呼び、聖書朗読や祈禱を行います。
一方、プロテスタントは、故人の死後一年後に行う集会を「記念集会(昇天記念日)」と呼び、祭壇に十字架を飾り祈りを捧げます。
宗派により命日の集いのやり方は異なりますが、集会後に参列者が参加するお茶会を開くことが一般的で、案内状の内容はほとんど変わりはありません。
キリスト教式の案内状の文例は次のとおりです。
故〇〇が神様に召されてから はや1年が経とうとしています
故人を偲び お世話になりました皆様への感謝の意味を込めまして
〇月〇日〇時から 追悼ミサ(プロテスタントでは記念集会)を行うこととなりましたご多忙とは存じますが 是非ご来席いただきたく ご案内申しあげます
日時 令和〇〇年〇月〇日(〇曜日)午前〇〇時〇〇分より
場所 〇〇 (住所・電話)なお ささやかではございますが 追悼ミサ(プロテスタントでは記念集会)終了後 〇〇(場所)にてお茶会を予定しております
令和○○年○月
(差出人) 氏名(住所・電話)※お手数ではございますがご出席の有無を〇月〇日までご一報いただければ幸いです
身内だけで行う一周忌案内状の文例

一周忌は「故人の家族・親族」「生前の友人・知人」「仕事関係者」などを招いて、大規模に行うことが通例です。
しかし、親族が遠方にいる場合や関係性が薄い場合では、ごく限られた身内のみで一周忌法要を行う場合があります。
このようなケースでは、あらかじめ挨拶状を送っておくことが礼儀とされています。
親族への挨拶状の文例
親族への挨拶状の文例は次のとおりです。
謹啓
○○の侯 皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます
月日が経つのは早いもので まもなく亡父(○○)の一周忌となります本来であれば皆様にご臨席賜り 一周忌の法要を営むところでございますが 甚だ勝手ながらこのたびの法要につきましては家族のみで営みたいと存じます
誠に恐縮でございますが 私共家族の気持ちにご理解 ご了承頂ければ幸いでございます本日までの一年間 皆様から賜りましたご厚情に心から感謝申し上げます
また同時に改めてお詫びを申し上げます最後になりますが皆様のご健勝を御祈念致しまして書状にてお知らせいたします
敬具
令和○○年○月
(差出人) 氏名(住所・電話)
一周忌案内状のマナー・注意点
一周忌案内状には、文中のマナーや送る際の注意点があります。
マナー・注意点は次のとおりです。
文中に句読点は使用しない
案内状の文中には「、」「。」などの句読点は使用してはなりません。
これは一周忌法要の案内状に限らず、法事・法要の案内状全般のマナーです。
二重封筒は使用しない
案内状は白無地封筒に入れて投函するのが正式なマナーです。
この際には、「不幸が重なる」という意味合いから二重封筒で案内状を出すことはマナー違反とされています。
近年増加している往復についてはまったく問題はありません。
一周忌案内を往復はがきで送る際のマナー・注意点

先ほどお伝えしたとおり、近年では往復はがきで案内状を送る方が増えています。
往復はがきを使用する際には、次のことに注意するのがマナーです。
参加人数の確認欄を設ける
一周忌法要では食事の準備などもあるため、施主は参加人数の把握が必要です。
そのため、案内状には参加人数を確認する欄を設ける必要があります。
実際にはご家族で法要に参列する方もいるため、人数確認欄は「ご出席(○○名様)」という形が望ましいでしょう。
卒塔婆(そとば)の確認欄を設ける
卒塔婆とは、故人を供養するために用いる細長い板のことで、卒塔婆をつける行為は良い行いだと考えられています。
施主は卒塔婆をつける人数を把握して、人数分の卒塔婆を事前に用意しなければなりません。
そのため、卒塔婆をつけるのかどうかの確認欄を設ける必要があるのです。
【種類別】一周忌案内状の料金相場

一周忌案内状は郵便局や印刷業者へ依頼して作成しますが、案内状のタイプや印刷する枚数により料金は異なります。
郵便局で扱う案内状には次のタイプがあります。
- はがき
- シングルカード
- ダブルカード
- 返信はがき
印刷料金は1枚から20枚が同額で、21枚以降は枚数が10枚増えるごとに料金が加算され、文面の背後に絵柄を入れる案内状では基本料金が若干高くなります。
それでは、案内状の料金相場をはがきタイプ別に解説しましょう。
料金相場①:はがき別
はがきには「私製はがき」と「通常はがき」の2種類があり、料金はどちらも同じです。
印刷料金は1枚から20枚が2,350円で以降10枚ごとに料金は高くなり、191枚から200枚では7,350円となります。
絵柄入りのハガキはこれより若干高額になり、1枚から20枚が3,630円で191枚から200枚は1万0,910円となります。
料金相場②:カード別
郵便局で扱うカードには「シングルカード」と「ダブルカード」の2種類があり、印刷場所や料金が異なります。
シングルカード
シングルカード(はがきサイズ)と封筒の印刷です。
印刷料金は1枚から20枚は5450円、191枚から200枚では1万4,350円です。
絵柄入りのシングルカードの印刷料金は、1枚から20枚は5,850円、191枚から200枚では1万4,750円です。
ダブルカード
ダブルカード(はがき2枚分のサイズで2つ折り)と封筒の印刷になります。
印刷料金は1枚から20枚は7020円、191枚から200枚は1万9,120円です。
ダブルカードには絵柄入りのカードはありません。
料金相場③:返信はがきセット別
シングルカードとダブルカードには、返信はがきがセットになっているものもあり通常のはがきより割安になっています。
シングルカード返信はがきセットは1まいから20枚では6,450円、191枚から200枚では30,684円です。
ダブルカード返信はがきセットは1まいから20枚では7,420円、191枚から200枚では33,302円です。
一周忌案内状の送り方

一周忌案内状を送る際には、参列者と宗教上のしきたりに対する配慮が必要となります。
次の点に注意して発送作業を行います。
- 法事の1ヶ月前までに送る
- 封筒に入れて送る
- 往復はがきを使用する
法事の1ヶ月前までに送る
案内状は法要の1ヶ月前までに送ることがマナーです。
会食の準備などを考えると、法要日の2週間前までにははがきを送った方全員の出欠の確認が取れれば、スムーズに一周忌の準備ができるでしょう。
封筒に入れて送る
案内状は封筒に入れて発送しますが、先ほどお伝えしたとおり2重封筒は宗教上縁起が悪いと考えられています。
そのため、用いてはなりません。
往復はがきを使用する
往復はがきは封筒も不要で、返信面に確認事項が印刷できるため非常に便利です。
本来は封筒を使った発送が正式な発送方法ですが、往復はがきだからといって先方に失礼というわけではありません。
返信はがきを書く際のルール

返信はがきは、次にあげるルールに従って書かなければいけません。
- 「御」の文字は消す
- 欠席の際はお詫びの言葉を添える
- 早めの返信を心がける
ルール①:「御」の文字は消す
返信ハガキには「御住所・御芳名」と記載されていますが、ご自身の住所・名前を書く際には「御」の文字を二重線で消すことがルールです。
ルール②:欠席の際はお詫びの言葉を添える
出欠の確認では、「御出席・御欠席」と記載されている欄のどちらかに〇をつけます。
この際にも、「御」の文字を二重線で消しましょう。
また、欠席する際にはお詫びの言葉を添えるのが正しい返信方法です。
お詫びの文例
欠席のお詫びの言葉は、次のような簡単な内容でも十分に気持ちが伝わります。
この度は○○様の一周忌法要のご案内を頂き有り難うございます
誠に申し訳ありませんが 都合により出席することができません
大変申し訳ございません
ルール③:早めの返信を心がける
返信はがきには返信期日が記載されています。
施主は参列者の人数が決まらなければ、法要の規模を正確に決めることができません。
施主を気遣い、期日ぎりぎりではなくなるべく早めの返信を心がけてください。
一周忌案内状で平服を指定された場合の服装

一周忌法要は参列者の数や行う場所によっては、それほど形式にこだわらずに行う場合もあります。
このような場合では服装を平服に指定さることもあり、参列者は施主の意向に従って平服を着用して一周忌に参列しなければなりません。
ここでは、この平服とはどのような服装なのかを男女に分けて説明します。
男性の服装
男性の平服は次のとおりです。
- 白いワイシャツ
- ブラックスーツ・グレーや濃紺などのダークスーツ
- 黒無地のネクタイ
- デザイン性のない黒のベルト
- 黒無地の靴下
- 金具が付いていないシンプルなデザインの黒の革靴
女性の服装
女性の平服は次のとおりです。
- 黒・グレー・濃紺など地味な色のワンピース・アンサンブル・セットアップスーツ
- トップスもダークカラー(白などの明るい色はNG)
- アクセサリーは一連の真珠やオニキス(結婚指輪は可)
- バッグは光沢や飾りのないシンプルな黒の布製
- 黒の薄手のストッキング
- シンプルな黒のパンプス(ハイヒール不可)
まとめ

一周忌法要の案内状は、案内状を受け取った側が法要内容や場所についてわかりやすく書かれていることが最も重要です。
また、時候の言葉などは普段の生活とはかけ離れた言葉となるため、なかなか身近に感じることができませんが、使い方は至ってシンプルで使用箇所も少ないため難しいことはないでしょう。
しかし、記載内容事態に見落としや不備があれば、郵便で送った案内状の内容を確認するため電話対応することになり、施主も参列者も大きな負担を抱えてしまいます。
このようなことが起こらないためにも、案内状を投函する前には記載内容の確認作業を行うよう心掛けてください。