葬儀や法要に参列する際は、香典を持参するのが参列者としての務めですが、この香典のお金の入れ方にはさまざまなマナーがあることをご存知でしょうか?
ここでは、いざというときに慌てず香典を準備することができるよう、香典の入れ方を香典袋の種類ごとに説明しながら「お札の注意点」「金額別の香典袋と水引の種類」「香典相場」などについて解説します。
目次
【香典袋の種類別】香典の正式な入れ方

香典袋の種類には次の3つのタイプがあるため、「この香典袋にはこの入れ方であっているのだろうか?」と、マナーに不安を覚えてしまうことも少なくありません。
そこで、ここでは中袋タイプの香典袋へのお札の入れ方と中袋がないタイプの香典袋へのお札の入れ方を解説しながら、香典の包み方として最も格式が高い奉書紙でのお札の包み方も説明します。
中袋ありの香典袋への入れ方
市販されている香典袋のほとんどはこの中袋付きで、このタイプの香典袋ではまずお札を中袋に入れその中袋を外袋で包みます。
お札を入れる際は、中袋を表にした状態で裏向きにすることがマナーです。
これは、お札を裏向きに入れることで、故人へのお悔やみの気持ちを表すためです。
なお、この際のお札の上下は中袋の下側にお札の肖像画がくるように入れることが一般的ですが、地域によってはこの上下を逆にする場合もあるため注意が必要です。
中袋なしの香典袋への入れ方
中袋がない香典袋では、お札を直接香典袋に入れることになります。
お札の入れ方は中袋がない香典袋と同様ですが、このときもお札の上下の入れ方が地域によって異なります。
そのため、作法に不安がある場合は、親族の年長者などに慣習を確認した方が良いでしょう。
奉書紙への入れ方
奉書紙とは高級和紙にも使用される楮(こうぞ)を原料に作られる紙で、古来より大切な贈り物はこの奉書紙に包むことがマナーとされています。
そのため、香典の正式なマナーでは香典は奉書紙に包むものとされてきました。
この奉書紙にお札を入れる際には、包みの表側に対してお札の裏面がくるように入れ次の手順でお札を包みます。
- ザラザラした面を上にして奉書紙を置く
- お札の裏面(肖像画がない面)を表側にして奉書紙へ置く
- 端を「下側」「左側」「右側」の順番に折り曲げ最後に上側を下に向けて折る
- 奉書紙を縦長の状態で置く
- お札の裏面が外袋の表側にくるように中袋を置く
- 端を「右側」「左側」「下側」の順番に折り曲げ最後に上側を下に向けて折る
香典に使用するお札の注意点

香典に使用するお札のマナーは、入れ方だけではなく次に紹介するポイントについても注意が必要です。
ここでは、使用するお札の注意点を解説します。
- 不吉な枚数を避ける
- 縁起の良い枚数を意識する
- 新札は使用しない
- 向きをすべて揃える
- 上下をすべて揃える
不吉な枚数を避ける
葬儀の場では、数字の「4」は「死」を「9」は「苦しむ」を連想させる不吉なことばだと考えているため、使用することはありません。
そのため、香典としてお札を入れる際には金額にこの数字が含まれていないのか、またはお札の枚数がこの枚数にならないのかなどに注意する必要があります。
縁起の良い枚数を意識する
香典に使用するお札は、「1枚」「3枚」「10枚」が、縁起が良いと言われています。
現在ではこのような慣習を気にする方は少なくなってきてはいますが、お住いの地域によってはいまだにこの数字を意識することもあり、その場合は地域の作法に従う必要があるでしょう。
新札は使用しない
香典に使用するお札は新札を用いないのがマナーです。
これは、「不幸事があることを予想して新札を用意していたのではないか?」という疑念を遺族へ抱かせないための配慮で、そのため香典には旧札が用いられてきました。
最近ではこのような慣習を気にする方は少なくなりましたが、親族の中でも高齢の方は新札への抵抗感を持つ方は大勢いるため、このような方々に配慮して新札は用いない方が無難です。
ただし、いくら旧札といっても、あまりにもシワや汚れがついたお札は一般常識として使用は控えるべきでしょう。
どうしても新札しか手元になく旧札を準備する時間がない場合は、新札に折り目を付ければ旧札として使用することが可能です。
向きをすべて揃える
香典袋に複数枚のお札を入れる場合は、すべての向きを揃えることがマナーです。
香典袋を表にしたときにお札の裏面がくるように入れますが、これには「故人を亡くした悲しみから顔を伏せる」という意味合いを含んでいます。
上下をすべて揃える
向きが揃えられたお札は、その上下も揃っていなくてはなりません。
お札の肖像画を下向きに入れることで、香典袋を開けた遺族は直ぐにお札の金額が印刷された部分を確認することができます。
金額別の香典袋・水引の選び方

お札を包む香典袋は、その金額に見合った袋と水引を使用することがマナーです。
ここでは、香典金額ごとの香典袋と水引の種類を解説します。
5,000円以下を包む場合
香典金額が5,000円以下の場合は、コンビニなどで購入することができる水引がプリントされた略式の香典袋を使用します。
香典の中身がこの金額であるにもかかわらず、豪華な香典袋や水引を使用することは遺族に対して礼を欠く行為です。
香典袋と水引は、その金額に見合ったものでなくてはなりません。
1万円から3万円を包む場合
1万円~3万円を包む際の香典袋は、水引が印刷された略式の香典袋では逆に失礼です。
実際に黒白の水引がかかった水引金封タイプの香典袋を用いましょう。
なお、葬儀の際にはこの1万円から3万円という香典金額を包む場合が最も多く、それだけにこのタイプの香典袋と水引は使用頻度が高いという特徴があります。
3万円から5万円を包む場合
ご自身の身近な方が亡くなった場合では、この3万円から5万円を香典として包むことが多いです。
その際には、和紙で作られた少し大きめの香典袋に双銀の水引を用いることが一般的です。
5万円から10万円を包む場合
ご自身の年齢や社会的な地位が上がるにつれて香典の金額も上がるため、50代以上になると5万円から10万円の香典を包む機会が増します。
この際には、3万円から5万円を包む際と同様に、少し大きめの和紙でできた香典袋に双銀の水引を用いましょう。
10万円以上を包む場合
香典金額は10万円までとされているため、10万円以上の香典を包む機会は非常に稀です。
それでもこの金額を包む際には、奉書紙でできた大きな香典袋に双銀の水引をかけ、さらに短冊などの飾りが施された豪華な香典袋を使用します。
香典金額は故人との関係性によって決める

香典として包む金額に厳密な決まりがあるわけではありませんが、それでも常識的な金額相場は存在します。
この金額相場は故人との関係性によっても異なるため、香典を包む際にはご自身と故人との関係性を整理して、その範囲内で香典を用意することがマナーです。
関係性別の香典相場
故人との関係性別の香典相場は次のとおりです。
ただし、この金額は地域によっては異なる場合もあるため、金額に不安がある場合はその土地の葬儀に詳しい方などに相談することをおすすめします。
- 親が亡くなった場合:10万円
- 兄弟・姉妹が亡くなった場合:3万円
- 祖父母が亡くなった場合:1万円
- 親戚が亡くなった場合:1万円
- 友人・知人が亡くなった場合:5,000円
- 職場関係者が亡くなった場合:5,000円
- 取引先関係者が亡くなった場合:5,000円
参照データ:2016年一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会
香典袋の書き方

香典袋には、次の項目を決まった場所に記載することがマナーです。
- 表書き
- 外袋に記載する名前
- 香典金額
- 郵便番号
- 住所・氏名
ただし、この書き方は宗教・宗派や香典袋の種類によって異なるマナーがあります。
そこで、ここでは宗教・宗派別の表書きの書き方や、香典袋の種類別に香典袋の書き方を解説します。
表書きの書き方
香典の目録となる表書きは、香典袋の表面の水引を挟んで上部に記載します。
この表書きは、宗教や宗派によって異なる書き方をすることがマナーです。
また、この表書きには香典を出す人物の名前も含まれています。
名前は表書きの下(水引を挟んで下部)にフルネームで記載しましょう。
宗教・宗派別の表書きは次のとおりです。
- 仏教の表書き:「御霊前」「御仏前」「御香料」「御香典」
- 浄土真宗・真宗大谷派の表書き:「御仏前」
- 神道の表書き:「御玉串料」「御榊料」「御神前」
- キリスト教の表書き:カトリック派では「御霊前」「御ミサ料」「献花料」プロテスタント派では「弔慰金」「御花料」
中袋の書き方
中袋がある香典袋では、外袋に表書きを記載し、中袋の次の場所に「香典金額」「住所」「氏名」を書くことがマナーです。
- 中袋の表面の中央に香典金額を縦書きで記載する
- 中袋の裏面の左側に住所を縦書きで記載する
- 記載した住所の左側に氏名を記載する
なお、この際に住所のとなりに電話番号を記載する方もいますが、これは必ずしも必要ではありません。
それでも電話番号を記載する方は、住所と同じく縦書きで記載しましょう。
香典金額は大字(だいじ)を用いる
香典金額は漢数字の旧字体である「大字」を用いるという決まりごとがあります。
この大字は一般的な漢数字よりも画数が多く複雑な構造をしているため、香典の金額を改ざんすることが難しいという理由で用いられています。
使用する書き物について
香典袋に記載する際の書き物は、表書きに関しては故人と遺族に弔意を示すために薄墨を使用します。
ただし、中袋は読みやすさを重視するため、通常の濃い墨を使用しても構いません。
中袋がない香典袋への書き方
中袋がない香典袋では表面の水引を挟んで上部に表書きを記載し、「氏名」「住所」「香典金額」は次の場所に記載するのがマナーです。
- 氏名は香典袋表面の水引を挟んで下部に記載する
- 住所は外袋の裏面の左下に縦書きで記載する
- 香典金額は住所の左隣に縦書きで記載する
なお、番地などは一般的な漢数字を用いて記載するため、香典金額を記載する際に用いる大字を使用することはありません。
香典は袱紗(ふくさ)に包むのがマナー

香典は、袱紗(ふくさ)で包んで持ち歩くことがマナーです。
葬儀でも法要でも持参する香典は袱紗に包んで持ち歩き、袱紗から取り出すときの作法を含めて故人への弔意の示し方と考えましょう。
葬儀で使用できる袱紗の種類
袱紗は冠婚葬祭の場で使用するため、その種類は忌事用と慶事用に分かれます。
葬儀の場で慶事用の袱紗の使用はマナー違反となるため、香典を包む場合は、忌事用の「紫色」「紺色」「うぐいす色」「グレー」など、寒色系を基本色とした袱紗を使用しましょう。
袱紗で包む手順
袱紗で香典を包む手順は次の通りです。
- ひし形になるように袱紗を広げる
- 中央よりもやや右に香典袋を置く
- 「右」「下」「上」の順番で角をもって中心へ向かい折る
- 最後に左を中心に折れば完成
香典を渡すタイミング

香典にはお金の入れ方や表書きなどさまざまなマナーがありますが、これに加えて渡すタイミングも重要です。
ここでは、葬儀や法要の状況ごとの香典を渡すタイミングについて解説します。
葬儀で渡す場合
一般的な葬儀では、葬儀会場の入り口付近に受付が設置されているため、香典はその受付に渡すことになります。
この際、まずは芳名帳に記帳し、係員にお悔やみのことばとともに香典を差し出しましょう。
受付がない場合
家族葬などの小規模で行う葬儀では受付を設けないこともあります。
この場合の香典は、喪主へ手渡しすることになります。
直接香典を渡す場合は、葬儀会場を訪れた直後の喪主と挨拶を交わすタイミングで渡すのが望ましいでしょう。
法要で渡す場合
香典は法要が営まれた際にも持参します。
法要は葬儀とは異なり、親族を中心に比較的小規模で行うことが多いため、弔問時にただちに喪主へ手渡すことが一般的です。
地域によっては香典袋を祭壇に置くなどのマナーもあるため、この点については遺族への確認を行いましょう。
郵送で贈る場合
何らかの事情で通夜や葬儀に参列できなかった方は、郵送で香典を送ることも可能です。
香典は現金書留を利用して送り、この際には葬儀へ参列できなかったお詫びの手紙を同封します。
まとめ
香典に関するマナーや作法は、今回紹介したように多岐にわたるため、初めて葬儀に参列する方にとっては非常に難しく感じるものです。
しかし、これらのマナーのすべては大人として押さえておくべき一般常識と考えられているため、できるだけ早い段階で身につけておくべきでしょう。
故人を弔う気持ちがあっても、その作法がわからずに葬儀に参列してしまえば、遺族に対して重大なマナー違反をしてしまうかもしれません。
葬儀に参列する際には、香典に関するマナーを確認した上で葬儀会場へ向かいましょう。