先祖の魂がこの世に帰ってくると考えられているお盆は、仏教徒にとって最も大きな故人供養の時期ですが、その中でも特に手厚く故人を弔う「新盆」をご存知でしょうか?
この新盆は通常のお盆準備に加えて特別な用意が必要なため、初めてこの時期を迎える方は、何を準備してどのように過ごせば良いのかわからないものです。
そこで今回は、新盆の意味を説明しながら、「迎える際の準備」「期間中の流れ」「宗教・宗派による違い」などについて解説します。
目次
新盆とは?

新盆とは、故人の死去から49日の忌明けが経過した後に初めて迎えるお盆を指すことばです。
ここでは、この新盆を正しく理解するための事柄について詳しく解説していきます。
新盆の読み方は「にいぼん」「あらぼん」「しんぼん」
新盆の読み方は地域によっても異なり、長野県や千葉県では「しんぼん」、北関東地方では「あらぼん」などその土地特有の呼び名で呼ばれます。
しかし、中部地方と東日本のほとんどの地域ではで「にいぼん」が広く用いられているため、新盆の呼び名は全国的には「にいぼん」が一般的といえるでしょう。
新盆はいつ?時期や期間は?
先ほどの解説のとおり、故人の死去から49日が経過したお盆が新盆の時期ですが、これは全国的にお盆の時期が異なるという事情から、次のような違いがあります。
- 全国的な新盆時期:8月盆とも言われ8月13日から8月16日まで
- 東京や神奈川の一部の新盆時期:7月盆とも言われ7月13日から7月16日まで
- 沖縄や関西の一部の新盆時期:旧暦の7月13日から16日まで(新暦換算すると毎年日にちは変わる)
新盆と「初盆」「お盆」の違い
新盆とよく似たことばに「初盆(はつぼん)」があります。
初盆は関西地方特有の呼び名で、その意味は新盆と同じであるため、故人の死去から49日が経過した後の最初のお盆が初盆です。
なお、故人の死去から49日が経過していないお盆は初盆ではなく毎年訪れる通常のお盆となるため、次に紹介する新盆の準備は必要ありません。
新盆を迎える際の準備

故人の死去後、49日を過ぎて迎える新盆では普段のお盆よりも手厚く故人を供養するため多くの準備が必要です。
ここでは、この新盆の準備について具体的な内容を「盆飾り」「新盆法要」の2つに分けそれぞれ詳細に解説します。
ここで紹介する内容を確認しながら準備を進めれば、手際良く新盆を迎えることができるでしょう。
盆飾りの準備する
新盆の盆飾りは、次の飾りつけを行うのがマナーです。
詳しい作法に関しては地域の慣習によっても異なる場合があるため、ここでは一般的な飾りつけを例に個別に説明します。
盆提灯
通常のお盆では、絵柄がついた提灯を使用しますが、新盆では絵柄なしの白提灯を用意します。
これは、初めてこの世に帰ってくる故人の魂を「無垢で清浄な白色の灯り」でお迎えするための新盆ならでは慣習です。
なお、通常の盆提灯は基本的には2対で飾りますが、白提灯は1つしか飾らないことが一般的です。
精霊棚(しょうりょうだな)
精霊棚は、先祖の魂を迎え安らかに自宅で過ごして頂くために供える棚で、故人の好物やお花などを飾ります。
地域によっては「盆棚」とも呼ばれます。
この際に使用する棚は、通常のお盆で使用する棚よりも豪華な飾りつけが必要なことから、大きめのものを用意する必要がありますが、この作法には地域の慣習によっても異なります。
中には、通常のお盆と同じ棚を使いながらも飾りつけを変えることで精霊棚として使用するケースもあるため、この点については一族の年長者などに確認することをおすすめします。
精霊馬(しょうりょううま)・精霊牛(しょうりょううし)
お盆のお供え物の定番ともいえる精霊馬や精霊牛は、多くの方が見たことがあるでしょう。
精霊馬はきゅうりに楊枝を刺して馬に、精霊牛はナスに楊枝を刺して牛に見立てたもので、「馬に乗って早くこの世に来て牛に乗ってゆっくりとあの世へ戻って下さい」という願いが込められています。
お供え物
精霊馬や精霊牛以外にも、五供と呼ばれる次の5つのお供え物を用意します。
- お線香を指す「香」
- 精霊棚を飾る「供花」
- 綺麗な水を差す「浄水」
- 故人が食す「飲食」
- ろうそくに火を灯す「灯燭(とうしょく)」
なお、これらお供え物に関して作法に不安がある方は、仏具店などでセット販売やレンタルを利用することも可能です。
仏具店は地域の葬儀マナーにも精通しているため、新盆に最適なすべての飾りつけを準備してくれます。
松の木割
迎え火を焚く際には松の木割や麻幹(おがら)に火をつけるため、これらは事前に準備しておきましょう。
お盆前になるとスーパーやホームセンターなどでも販売しています。
新盆法要の準備をする
新盆と通常のお盆の最大の違いは、この新盆供養を行うのかどうかだといえます。
近年では僧侶を呼ばずに家族だけで新盆法要を行うケースもありますが、僧侶の読経の下に行う新盆法要が本来の法要のあり方です。
ここでは、新盆供養を行う際の準備として次の項目について解説します。
寺院・会葬者への連絡
新盆法要の開催が決定したら、直ちに僧侶へ連絡を取り、読経を依頼します。
お盆期間中の僧侶は非常に多忙のため、この連絡は何にも先がけて行い、僧侶の予定を確保しなければなりません。
その後に法要会葬者への連絡を行い、案内状にて「法要開催場所」「日時」「会食出席の有無」を周知します。
会葬場所は故人が帰ってくる自宅となることが一般的ですが、多くの会葬者を募る場合は葬儀会館やセレモニーホールなどで行う場合もあります。
なお、新盆法要の冒頭では法要の喪主は参列者に対して次の内容を含んだ挨拶を行うため、事前に原稿を用意しておきましょう。
- 法要に参列してくれたことへの感謝の気持ち
- 故人の生前のエピソード
- 故人の思い出話
- 遺族への変わらない支援
会食の手配
法要終了後は僧侶を交えて会食の場を持つ流れとなるため、参列者の数は以前に把握しておかなければなりません。
自宅もしくは法要会場から遠くない飲食店でお膳を囲むことが通例です。
お布施の用意
新盆では僧侶を招いて法要を行うため、事前にお布施の準備が必要です。
お布施相場は3万円から5万円が相場といわれ、その他菩提寺以外で法要を行う際にはお車代として5,000円から1万円、会食を僧侶が辞退した場合は御膳料として同じく5,000円から1万円を包みます。
返礼品の用意
法要に参列した方からは香典を頂くため、そのお返しである返礼品の準備を行います。
お返しの品は「消えモノ」と呼ばれる生活必需品や消耗品がこれまでの定番でしたが、現在では個人が好きな品を選べるカタログギフトを贈る方も増えています。
新盆でやることの流れ

初盆を迎えるにあって準備するものはおわかりいただけたでしょうが、この新盆はどのような流れの中で何をするものなのでしょうか?
ここでは、初盆を迎えた方がお盆期間中である8月13日から16日までの4日間で行うことを、その流れと共に解説します。
- 8月13日:迎え火
- 8月14日から15日:お墓参りと法要
- 8月15日・16日:送り火
8月13日:迎え火
お盆の初日となる13日の午前中は、仏壇から位牌を取り出し精霊棚に置くなど飾り付けとお供え物をして、午後はお墓の清掃を兼ねてお墓参りを行います。
夕方からは迎え火を焚き、盆提灯に火をともして故人の魂をお迎えします。
8月14日から15日:お墓参りと法要
14日から15日の間は、親族や家族が揃ってお墓参りを行いその後は新盆法要を行います。
なお、この期間の仏壇はご先祖様が帰って来ているという理由から、盆提灯の火を絶やさないのがマナーでした。
現在では、火災の危険性から就寝時には炎を消しても良いとされています。
ただし、仏壇に供えるお供え物とお水は毎日交換することも、お盆期間中のマナーです。
8月15日・16日:送り火
お盆期間の最終日に当たる15日・16日は、故人の魂があの世に帰っていく日のため夕方から送り火をしてお見送りを行いますが、それまではお供え物やお墓参を行うなどして過ごします。
なお、地域によってはこの送り火の際に盆提灯を火にくべて燃やしてしまうなど、その土地特有のマナーが存在します。
見慣れない作法があった場合は家族の年長者に従い、その土地のマナーを少しずつでも覚えていくよう努めましょう。
宗教・宗派による新盆の違い

新盆に関する考え方は神道と仏教では異なり、また同じ仏教であっても教義の違いや地域の慣習などから、次のような違いがあります。
- 神道:神道における新盆は新御霊祭や新盆祭と呼ばれ大まかな流れは仏教と変わりませんが、盆提灯を飾らない、神饌物(しんせんもの)と呼ばれるお供え物をするなどの違いがあります
- 真言宗:真言宗では仏壇の前の精霊棚に精進料理や沢山の野菜をお供えするという特徴があります
- 浄土真宗:浄土真宗では故人は仏様になるため、お盆に霊となって帰ってくることはないと考えられています。この教義が影響して新盆であっても迎え火や送り火を行うことはありません
新盆法要時の服装のマナー

新盆法要時の服装は、基本的には他の法要と同じく喪服を着用します。
これは、法要を主催する側も招かれる側も同様で、特に主催する側の遺族は参列者よりも軽い服にならないよう準喪服以上を着用する必要があります。
ただし、この新盆法要を家族だけで営む場などは、真夏の気温を考慮して平服を着用して行うケースも珍しくはありません。
この際の平服は、カジュアルすぎる印象を与えないためにも、次のような服装で臨みましょう。
- 男性の平服:黒色やグレーなどの落ち着いた色味のスーツ
- 女性の平服:ダークカラーの「スーツ」「ワンピース」「アンサンブル」
まとめ

新盆は故人が亡くなってから始めて自宅へ戻る大切な期間であるため、遺族は普段のお盆よりも手厚く供養を行い、盛大に故人の魂を迎え入れる準備を行います。
用意する物の多さや法要の準備など遺族が行う作業は多岐にわたるため、必要なものリストアップして家族が分担して行うなど効率的な作業を心掛けましょう。
始めて故人と過ごすお盆期間は、準備を十分に整えて家族の誰もが穏やかに過ごせるようにしたいものです。