自分の死後に残される遺産や家族の先行きについて不安があるとき、生前から「遺言書」を用意して家族間の争いが起こらないよう準備する人が増えています。
遺言書の作成は法的にも有効な手段ですが、故人が望む形に収まるかどうかは、そのときになってみないとわかりません。
実際に、遺言書の内容に不満を持って親族同士で争ったり、遺産の内容を把握しきれず手続きが進まないといったケースが起こっています。
このような場合に必要となるのが、「遺言執行者」です。
今回は、死後の代理人ともいうべき遺言執行者について、具体的な例を交えて詳しく解説していきます。
目次
遺言執行者とは?
最初に、遺言執行者にの概要から説明していきましょう。
遺言執行者とは、故人が残した遺言書の内容に忠実に従い、遺産の遺贈や法的手続きといった重要な役割を担う人です。
「遺言書があるのなら、相続で揉めることはないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、遺言書の内容によっては相続人となる親族が不満を持つことがあり、遺言書どおりの手続きが進まないことがあるのです。
このような場合、故人に代わって遺言書の内容どおりに進めていくのが遺言執行者です。
ここでは、遺言執行者を必要とする意味や理由、遺言執行者が持つ権限などについて解説していきます。
選任する意味・必要な理由
遺言執行者は、遺言書を作成したからといって必ずしも選ぶ必要はありません。
遺言執行者を選任するときとは、「遺言執行者を選んでおかないと、相続に関して揉めることがわかっているとき」です。
法律に関係することなので少しわかりにくいかもしれませんが、自分が推定相続人の一人だと仮定して考えると理解しやすくなります。
例えば、遺産として6,000万円の預貯金があったとき、相続人が子3人であれば、単純に3等分して2,000万円ずつを相続します。
しかし、遺言書で隠し子を認知することが記載されていた場合、相続人が増えるため相続する金額が減りますよね。
ましてや、これまで認知していなかった子供を認知するとなると、遺族感情としては到底受け入れにくいため、認知のための法的手続きなどを積極的に行おうと思う人はほとんどいません。
子供の認知はほんの一例で、相続に関して揉めたり手続きが滞るケースは意外に多いのです。
こうした状況をスムーズに解決し、遺言書どおりに進めるために必要となるのが遺言執行者です。
遺言執行者を受任した人は、依頼人である故人の遺志を最優先で実行し、法律にのっとって速やかに法的手続きを行います。
「自分の死後に起こるかもしれない問題を解決し、残した遺言書通りに自分に代わって動いてもらえる。」
これが、遺言執行者を選任する大きな理由です。
立場
遺言執行者は、故人の遺言書にしたがって手続きを進めなければなりませんが、法的には相続人を代表して手続きを進める立場です。
少し複雑ですが、「相続に関係する一切の法的手続きを代表して行う者」と認識するとわかりやすいのではないでしょうか。
相続に関する法的手続きには、相続人や遺贈を受ける受遺者全員の署名、捺印、必要書類をそろえることが多く、それぞれが用意されるのを待っているといつまでも手続きが進まない場合があります。
このような場合、遺言執行者がいれば相続人や受遺者を代表して手続きをすることができるため、手間が省けて相続人にとってメリットになるのです。
もちろん、基本は遺言書の内容に添った流れで進めていくため、「故人の代理人」という側面があります。
つまり、「故人の遺言書にしたがって相続人が行わなければならない手続きを、権限を持って代表で行える立場」が遺言執行者ということです。
権限
遺言執行者が持つ権限は、民法第1012条で次のように定められています。
- 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
- 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
さらに、民法第1013条では、次のように定められています。
- 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
遺言書を残した故人の遺産をすべて管理し、遺言にしたがった手続きや行動について一切の権利義務を持ち、他の相続人が遺言執行者の邪魔をすることは許されません。
民法上でも、どれだけ強い権限が遺言執行者に与えられているのかよくわかりますよね。
これだけ強い権限があるからこそ、遺言執行者を選任しておくことは大変有意義な選択肢なのです。
仕事
とても強い権限を持つ遺言執行者ですが、それだけに担う仕事と責任は多岐に渡ります。
具体的な内容は、次のような項目です。
- 相続人や受遺者の確認作業
- 相続人および受遺者への連絡
- 遺産管理
- 相続対象となる財産の目録作成
- 名義変更の作業
- その他の相続に関係する一切の法的手続き
これ以外にも、必要があれば相続人や受遺者の戸籍謄本を集めたり不動産売買の手続きを行うため、かなりの労力と時間がかかります。
故人の遺志を尊重しつつ相続人の代表となって手続きを行う遺言執行者ですが、より安心して仕事を任せるためにも、人材選びが重要な項目です。
遺言執行者が必要なケース
続いては、遺言執行者が必要なケースを解説していましょう。
先ほどお伝えしたとおり、相続人が少なかったり相続対象となる財産がさほど複雑でないかぎり、遺言執行者は必ずしも選任する必要はありません。
問題となるのは、複雑な状況や法的手続きが必要なケースです。
では、一体どのようなケースで遺言執行者が必要となるのか、具体的な例を挙げて解説していきますね。
- 相続人の廃除や取り消しがある場合
- 認知などの法的手続きがある場合
- 相続で揉めそうな場合
ケース①:相続人の廃除や取り消しがある場合
「廃除」とは、法律で定められた推定相続人から外すことを意味することばで、家庭裁判所に申し立てることで正式に認められます。
廃除された人は法律で定められた相続ができないため、もし何らかの事情でどうしても相続させたくない場合には、遺言書にその旨を残して遺言執行者を選任しておき、家庭裁判所への申し立てをお願いしなければなりません。
廃除の取り消しも同様で、一度廃除したものの、その後の様子をみて推定相続人に戻したいときには、家庭裁判所に廃除取り消しの申し立てをします。
廃除の申し立ては法律上の手続きとなるため、必要なときには遺言執行者を選任しておくと良いでしょう。
ケース②:認知などの法的手続きがある場合
婚姻外の相手との間に子供がおり、その子供を推定相続人にしたいけれど認知していない場合、遺言書に書き残して認知の手続きを遺言執行者に代行してもらいます。
認知された子は、正式に故人の子供と認められるため、推定相続人として遺産を相続することができます。
ただし、認知は法律上の手続きが必要なので、故人の代理人として遺言執行者が認知届を役所に提出しなければなりません。
なんらかの事情により自分で認知ができないときには、遺言執行者を選任しておき認知できるよう準備しましょう。
ケース③:相続で揉めそうな場合
ざっくりとした表現ですが、相続で揉めそうな場合にも遺言執行者を選任しておく方が無難です。
具体的な例としては、次のようなケースです。
- 先祖代々の土地を相続していたが名義がどうなっているのかわからない
- 相続人の中に行方不明者がいる
- 債権回収しなければならない相手がいる
- 相続対象となる遺産の中に特許などの知的財産がある
- 借金などの負の財産の処理が必要
遺産は、単純に相続できるものばかりではありません。
いざ相続しようと思ったら土地の名義が三代も前の人だったり、相続人の一人が行方不明のままなので名義変更がうまくいかないといったケースもあり得るのです。
自分の財産を確認したとき、複雑な事情や法的手続きが難しいと思うものがある場合は、専門知識のある人を遺言執行者に選任しておく方が良いでしょう。
遺言執行者の選任方法
自分の死後のことを安心して任せられる遺言執行者ですが、その選任には複数の方法があります。
それぞれの方法を紹介していくので、遺言執行者を選ぶときの参考にしてください。
- 遺言書で指定する
- 第三者に決めてもらう
- 家庭裁判所に決めてもらう
選任方法①:遺言書で指定する
遺言書に希望する人を指定して書き残す方法です。
「遺言の執行者として次の者を指名する」などの記述をした後、指定する人の氏名と住所を記載します。
遺言書で指定する遺言執行者は一人に限る必要はないため、断られたときのことを考えて第一志望から第三志望まで3名の人を記載したり、複数人を指定して役割を割り振ることもあります。
ただし、複数人を遺言執行者に指定すると、意見が分かれたり相談なしで手続きを進めてトラブルになる可能性が考えられます。
遺産の内容や、やって欲しい内容をよく考慮し、権限をどこまで行使できるかまで決めた方が良いでしょう。
選任方法②:第三者に決めてもらう
第三者に決めてもらう方法は、指名した人が拒否したり自分よりも先に亡くなったりするリスクを回避できるメリットがあります。
遺言書に「遺言執行者の選定を〇〇に一任する」などの記載をしておくと、そのときの状況によって、相続に関わっている人から選んだり、弁護士に依頼するといった選択肢が増えます。
亡くなるときの状況は誰にもわかりませんので、いざというときのために第三者による選定も視野に入れても良いかもしれません。
選任方法③:家庭裁判所に決めてもらう
遺言執行者が選定されていなかったり、指定された人がなんらかの理由で拒否や解任されて遺言執行者がいなくなった場合、家庭裁判所に申し立てして決めてもらうようにします。
申し立てができるのは
- 相続人
- 受遺者
- 故人への債権者
であり、家庭裁判所が指定した人が次の遺言執行者となります。
相続人同士で勝手に次の遺言執行者を決めることはできませんが、申し立ての際に候補者として相続人の名前を提出することは可能です。
最終的に判断するのは家庭裁判所ですが、話し合いをして候補者になれる人がいる場合は、家庭裁判所に提案してみましょう。
選任手続き
家庭裁判所での選任手続きには、次の書類が必要です。
- 遺言執行者選任申立書
- 故人の死亡が記載されている戸籍謄本
- 遺言書のコピー
- 相続人の戸籍謄本
- 債権者であることを証明できる書類
- 候補者を提案するときには候補者の住民票
これらの書類の他にも、収入印紙や切手などを準備しなければなりません。
申し立て先の家庭裁判所は、故人がなくなったときに住んでいた住所に一番近い家庭裁判所です。
必要な費用は裁判所によって異なるため、まずは一度連絡をして相談してみると良いでしょう。
遺言執行者になれる人の条件
遺言執行者は民法で定められている強い権限があるだけに、なれる人が限られているのではないかと思うかもしれませんね。
では、遺言執行者になれる人にはどんな条件があるのでしょうか?
ここでは、遺言執行者になれる人についてお伝えしていきます。
- 未成年者・破産者以外
- 相続人
- 専門家
条件①:未成年者・破産者以外
未成年者と破産したことがある人以外は、誰でも遺言執行者になることができます。
確かに、未成年者には遺言執行者の仕事を担うだけの能力は備わっていませんし、破産した人に遺産の管理を任せることは危険ですよね。
相続人の中に未成年者や破産者がいることはありますが、遺言執行者にはなれないため選定からは外すようにします。
条件②:相続人
「当事者なのに良いの?」と不思議に思う人も多いのですが、相続人も遺言執行者になることができます。
先ほどお伝えしたように、相続人であっても未成年者と破産者は遺言執行者になれませんが、それ以外の相続人は誰でも選定される可能性があるのです。
ただし、法的手続きが難しかったり時間的な余裕がない場合、選定されても断られるかもしれません。
相続人であれば安心できるという人もいますが、状況によっては対応できないためよく考慮してから選定しましょう。
条件③:専門家
相続問題に強い専門家は、遺言執行者として適当な人材です。
法律やお金に関することを仕事にしているため報酬が発生しますが、難しい問題を解決できるだけのノウハウがあるので、専門家に依頼する人は少なくありません。
遺言執行者として依頼される専門家の種類と料金は、それぞれ次のようになっています。
専門家 | 得意分野 | 料金 |
弁護士 | 権利関係や遺言書作成など遺言に関わるすべての分野 | 相続財産の総額の1%〜3%が目安。
40万円前後が多い。 |
司法書士 | 資産の登記や相続の手続き関係の分野 | 相続財産の1%が目安。
30万円前後が多い。 |
銀行 | 財産の目録作成や相続人の確定など遺言執行に必要な情報収集 | 相続財産の1%〜3%が目安。
100万円〜160万円前後が多い。 |
専門家に依頼した場合の料金は決まっているわけではなく、相続財産の総額や仕事の難易度、依頼した先によって金額は異なります。
事前相談を受け付けているところも多いため、一度現状を相談してみるのも良いでしょう。
遺言執行者を指定するメリット
遺言執行者を選定することは難しいですが、本当に信頼できる人に引き受けてもらえるとメリットがあります。
では、どういったメリットがあるのかについて解説していきますね。
- 死後を安心して任せられる
- 遺産を好き勝手にされない
メリット①:死後を安心して任せられる
遺言執行者は、亡くなった後も故人の代わりに手続きをし、不安な気持ちを取り除いてくれるパートナーです。
- 亡くなった後の家族のこと
- 親族同士のいざこざ
- 相続に関するトラブル
など、遺言書を残していても心配は尽きないものです。
信頼できる遺言執行者に依頼することで、自分が亡き後も安心して任せられます。
メリット②:遺産を好き勝手されない
遺産のトラブルによくあるケースが、勝手に土地を売買されたりお金を持ち出されるといったトラブルです。
特に、不動産や株といった資産がある場合、権利書を勝手に持ち出されて何も知らない第三者に売ってしまうと、資産を取り戻すことが困難になります。
自分の代わりに守ってくれる遺言執行者がいれば、このように資産を好き勝手にされず、正当な形で相続手続きを取ることができます。
遺言執行者を指定するデメリット
指定した人が快諾してくれれば強い味方となる遺言執行者ですが、指定された人によってはデメリットがあります。
どういったデメリットがあるのかについてもしっかりと押さえておきましょう。
- 断られる可能性がある
- 任務を遂行しない可能性がある
デメリット①:断られる可能性がある
遺言書で指定されている遺言執行者は、指定された段階ではまだ候補であり、決定しているわけではありません。
遺言執行者の仕事は多岐に渡るうえ難しい内容が多く、指定されても拒否される可能性があります。
残念なことですが、遺言執行者になる最終的な決定権は指定された人にあるため、無理強いすることはできません。
どうしてもという場合には、遺言書の作成前から打診して話し合いを重ねておく必要があります。
デメリット②:任務を遂行しない可能性がある
たとえ遺言執行者がその役目を引き受けたとしても、必ずしも任務を遂行してくれるとは限りません。
法的手続きや財産の相続は、相続人や受遺者にとって直接利害が発生する問題なので、早急な対応や連絡、報告が必要です。
しかし、難しい手続きや細やかな対応に慣れていない人が遺言執行者になると、面倒になったりいい加減な対応をして任務を遂行しない可能性があります。
遺言執行者は故人の死後に動き出すため、任務が始まってみなければ問題点はわかりません。
自分の目で確認できないという怖さも、遺言執行人者指名するデメリットと言えます。
遺言執行者をやめさせられる場合
遺言執行者の任務状況によっては、故人が指定した人でも相続人からの申し立てにより、遺言執行者を辞めさせられることがあります。
では、遺言執行者が解任させられるケースをお伝えしていきますね。
- 任務を怠った場合
- 正当な事由がある場合
ケース①:任務を怠った場合
相続人が遺言執行者の解任申し立てをする理由として多いのが、遺言執行者が行うべき任務を怠っているからです。
遺言執行者は、相続に関して次のような任務を細かく行う責務があります。
- 相続対象となる資産の確認と状況報告
- 資産の管理
- 相続人からの事務処理請求への対応
- 相続人を代表して行う法的手続きの処理
こうした任務を怠ってしまうと、相続人が遺言執行者に不審感を持ち、その結果として解任の申し立てをすることになります。
ケース②:正当な事由がある場合
遺言執行者を解任できる正当な理由とは、遺言執行者が任務を遂行できるだけの能力がないといったケースです。
遺言執行者の任務では重要や書類や多額の資産を扱うため、いい加減な仕事は許されません。
たとえ本人が真面目に務めているつもりでも、書類の不備や報告の遅れ、不適切な管理による資産の損害などがあれば、相続人側が不適格と判断して解任の申し立てをすることになります。
ちなみに、相続人と遺言執行者の間で意見が食い違ったり、単純に気に入らないなどといった理由は正当ではありません。
あくまでも能力的な問題として、遺言執行者には任務を遂行できないと判断されることがポイントです。
解任手続き
解任手続きは、家庭裁判所に申し立てすることで行われます。
解任要求をする相続人は、解任したいという要望とその理由を家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が現状を審査します。
解任要求の理由が正当であり、家庭裁判所が審査して遺言執行者を不適格と判断したら、裁判所から許可がりて遺言執行者を解任することができます。
遺言執行者を解任した後は、家庭裁判所が次の遺言執行者を選任することになります。
相続人が次の候補者を家庭裁判所に申請すれば、候補者も含めた検討がなされます。
遺言執行者を選ぶ際の注意点
最後に、遺言執行者を選ぶ気の注意点をお伝えします。
これまで解説してきたとおり、遺言執行者の仕事は法的手続きや財産の管理や相続人とのやり取りなど、大変多くの項目をこなさなければなりません。
相続対象となる財産の種類や総額、推定相続人の人数によっても仕事内容に違いが出るため、遺言執行者を選ぶ際は気をつけなければならないポイントがあります。
では、どのような点に注意をして遺言執行者を選定するのか、事前に行うべき項目や選ぶときのポイントをお伝えします。
- 相続対象となる財産を確認する
- 相続人を確認する
- 法的手続きに詳しい人を選ぶ
- 遺言書作成時から専門家に相談する
注意点①:相続対象となる財産を確認する
相続対象となる財産は、大きく分けると「利益がプラスになる財産」と「利益がマイナスになる財産」の2種類です。
利益がプラスになる財産とは、簡単にいうと相続することで利益が増える財産のことです。
土地や建物などの不動産やブランド品、有価証券、著作権や特許などの知的財産が該当します。
それに対し、利益がマイナスの財産は故人が残した負債です。
多額の負債を相続した場合は、故人から引き継ぐ形でお金を払わなければなりません。
当然、相続したいのはプラスになる財産ですが、相続対象となる財産は基本的にワンセットなので、プラスになる財産を相続するのであればマイナスの財産も相続しなければなりません。
つまり、プラスもマイナスも含めた「故人のすべての財産」を調べなければ、どのような手続きや問題があるのかわからないのです。
遺言書で選任され任務を請け負った遺言執行者は、これらすべての財産の手続きを行わなければなりません。
事前によく調査して必要な手続きなどをある程度予測しておき、その任務を遂行できる人を選定するようにしましょう。
注意点②:相続人を確認する
自分が亡くなった後に相続人が誰になるのか、あらかじめ確認しておくことも重要です。
単純な相続であれば、法律にのっとって自分の配偶者とその子供に遺産を分配すれば良いだけです。
しかし、法定相続人ではない人にも遺産を残したい場合、法的手続きや相続人同士の話し合いで苦労することがあります。
実際にあったケースでは、舅(しゅうと)の介護を行った長男の嫁に遺産を残すと遺言を残したけれど、実の子供や姑の反対を受けて争ったという例があります。
遺言書を作成する前に相続人を確認しておき、法定相続人でない人が含まれるときには法的手続きや相続問題に対処できる人を選んでおくようにしましょう。
注意点③:法的手続きに詳しい人を選ぶ
相続人同士の争いがなかったとしても、相続にともなう名義変更の手続きは大変面倒で難しいものです。
例えば、一つの土地を複数人で相続する場合は人数分の戸籍謄本や署名捺印が必要となります。
もし、土地を売ってお金にする場合にも、相続人全員の書類を用意しなければなりません。
相続人の中に未成年者が含まれている場合は法廷代理人が必要で、家庭裁判所に選定して指名してもらうのか任意で弁護士や司法書士に頼むのか、判断するのが難しいケースもあります。
このように、相続する財産や相続人の年齢によっては、法的手続きが難しくなることは少なくありません。
遺産となる財産や推定相続人を確認した上で、法的手続きが難しいと判断したときには法的手続きに強い人を選定するようにしましょう。
注意点④:遺言書作成時から専門家に相談する
相続に関する問題を予測しようと思っても、素人で問題点に気づけないことはよくあります。
自分で調べて遺言書を作成しても、ことばが足らなかったり言い回しが異なるだけで、法的拘束力がなくなるケースは少なくありません。
そのため、より完璧な遺言書を作成したいと思うときには、最初から弁護士などの専門家に相談することが大切です。
遺言書に盛り込みたい内容や遺言執行者の選任など、気になる部分を弁護士に相談することで、不安に思っていた部分が解消されて、理想的な遺言書を作成することができます。
遺言執行者がスムーズに任務を遂行するためには、法的に迷いのない内容の遺言書を作成しなければなりません。
遺言書を作成するときには専門家に相談し、遺言執行者が無理なく任務を遂行できるかどうか確認しながら内容を決めてみましょう。
まとめ
仕事内容や選び方など、「遺言執行者」に関するさまざまな情報について解説しました。
遺言執行者がいると安心できる反面、選任する側も相続について多くのことを学ばなければならないことがおわかりいただけたでしょう。
故人が残す遺言書や遺言執行者は、残された家族ができるだけ困らないようにと願う優しさの現れです。
準備をする上で難しいと感じる部分は、専門家に相談しながら、納得のいく遺言執行者を選ぶようにしましょう。