【解説】遺言書の「検認」とは?必要な場合・手続きの概要と流れ

遺言書の検認遺言
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

故人が生前に遺言書を作成していると、相続開始後に検認の手続きが必要になる場合があります。

検認の手続き自体に期限はありませんが、検認が終わらないと遺産相続の手続きが進みません。

遺言書の検認が必要な場合には、相続開始後すぐに検認の申立てを裁判所に行うことが大切です。

そこで、この記事では遺言書の検認の概要や検認が必要になるケースについて解説します。

検認の手続き方法も紹介するので、相続が開始して遺言書が見つかった方は参考にしてください。

遺言書の検認とは

遺言書の検認とは

検認とは、「遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するため」に行う手続きです。

まず、民法では、遺言書に関して以下のように規定されています。

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

つまり、遺言書の検認は、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人が行う手続きです。

 

なお、すべての遺言書で検認が必要になるわけではありません。

遺言書の検認が必要になるのは、この後に「遺言書の検認が必要な場合とは?」で紹介するケースに該当する場合だけです。

そして、民法では次のように規定されています。

封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

そのため、仮にご家族が亡くなった後にご自宅などで相続人が遺言書を発見した場合でも、遺言書が封印されている場合には、勝手に開封してはなりません。

検認の申立てを行った上で、検認期日に家庭裁判所に遺言書を持参して開封する必要があります。

検認を終えないと預貯金の解約や相続登記ができない

遺言書の検認が必要なケースでは、検認が終わっていないと遺産相続の手続きが進められません。

検認が終わったことを証明する検認済証明書を添付した状態で遺言書を提出しないと、相続登記や預貯金の解約手続きを受け付けてくれないからです。

そのため、相続が開始して遺言書の検認が必要になるケースでは、個別の相続手続きをする前にまずは検認の手続きを終える必要があります。

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遺言書の検認が必要な場合とは?

遺言書の検認が必要な場合とは?

遺言書には普通方式遺言と特別方式遺言の2種類があり、一般的に作成される普通方式遺言には、次の3種類があります。

普通方式遺言の種類
  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

相続が開始したときに見つかった遺言書の種類や保管方法によって、家庭裁判所で行う検認が必要かどうかは異なります。

検認が必要になるのは一体どのような場合なのか、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言それぞれについて解説しましょう。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、遺言の内容を手書き(自筆)で作成する遺言書です。

作成した自筆証書遺言は自宅で保管したり、信頼できる知人や弁護士などに預けて保管します。

また、2020年7月から法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まったことで、現在では自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。

そして、検認との関係では、自筆証書遺言が法務局で保管されている場合には必要ありません。

しかし、それ以外の方法で保管されている自筆証書遺言、たとえば故人の自宅で遺品整理をする中で自筆証書遺言が見つかったようなケースでは、検認の手続きが必要になります。

故人の生前に自筆証書遺言を託されていた保管者についても、相続開始後に検認が必要になるので、相続が開始したらすみやかに検認の手続きを行うようにしてください。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、公正証書という公文書の形で作成する遺言書です。

公証役場で遺言者が公証人に遺言内容を伝える形で公証人が遺言書を作成し、作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。

検認との関係では、相続が開始したときに残されている遺言書が公正証書遺言の場合には、検認の手続きは必要ありません。

そもそも、検認とは遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きであり、公正証書遺言の場合は公証役場で保管されていて偽造などのリスクがなく、検認を行って再度確認する必要がないからです。

秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言とは、遺言書の作成まで自分で行い、封印した状態の遺言書を公証役場に持参して公証人と2人以上の証人の前に提出して作成する遺言書です。

公証役場で手続きをしている点は公正証書遺言と同じですが、秘密証書遺言の場合は作成した遺言書は自宅などで保管します。

検認との関係では、相続が開始したときに残されている遺言書が秘密証書遺言の場合には、検認を受けなければなりません。

そのため、故人から秘密証書遺言を預かっていた保管者または相続開始後に秘密証書遺言を見つけた相続人は、すみやかに検認の手続きを行うようにしてください。

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遺言書の検認手続きの概要

遺言書の検認手続きの概要

続いて、検認の手続きは誰がどこで行うのか、また手続きの際にはどのような書類が必要で費用はいくらかかるのか、検認の手続きの概要をお伝えしましょう。

申立人

検認の手続きの申立てを行うのは、以下のいずれかに該当する人です。

申立先

検認の手続きは、遺言を作成した人の最後の住所地の家庭裁判所で行います。

相続人など検認の申立てを行う人の住所地の家庭裁判所ではありません。

なお、管轄の裁判所を調べたい場合には、以下の裁判所ホームページから検索できます。

必要書類

検認の申立てを行う際には、申立書と当事者目録を作成して提出する必要があります。

申立書と当事者目録の用紙は、以下の裁判所ホームページからダウンロードが可能です。

上記のサイトには申立書の記入例も掲載されているので、実際に申立てを行う人は確認してみると良いでしょう。

さらに、検認の申立ての際には、次の書類も必要になります。

共通して必要になる書類
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合

上記の「共通して必要になる書類」に加えて以下の書類が必要

  • 遺言者の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る)で死亡している人がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人が不存在の場合、遺言者の配偶者のみの場合、又は遺言者の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(甥姪)(第三順位相続人)の場合

上記の「共通して必要になる書類」に加えて以下の書類が必要

  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の兄弟姉妹に死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としての甥姪に死亡している人がいる場合、その甥又は姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

なお、審理のために必要な場合は、裁判所から追加で書類の提出を求められる場合があります。

費用

検認の手続き費用として、次の費用がかかります。

郵便切手は必要な金額が裁判所によって異なる場合があるので、申立てを行う家庭裁判所に事前に必ず確認してください。

なお、各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあるので、申立てをする場合には以下のサイトから確認してみると良いでしょう。

また、市区町村役場で戸籍謄本を発行してもらうときに発行費用がかかり、検認の手続きを弁護士などの専門家に依頼した場合には、別途報酬の支払いが必要になります。

期間

検認の手続きは、申立てをしてから手続きが完了するまで1ヶ月~2ヶ月ほどかかります。

検認の手続き自体には期限はありませんが、遺言書の手続きは早めに行うことが大切です。

たとえば、相続放棄は3ヶ月、相続税申告は10ヶ月が手続き期限となっており、検認が終わらなかったという理由でこれらの手続き期限は延長できません。

そのため、相続開始後に遺言書の検認が必要な場合には、必要書類を揃えて速やかに検認の申立てを行うようにしてください。

出席の要否

検認の申立てを行うと、検認を行う日(検認期日)がいつなのかを知らせる通知が届きます。

申立てをした人は検認期日に出席しなければいけませんが、その他の相続人の出席は任意なので欠席しても構いません。

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検認の手続きの流れ

検認の手続きの流れ

続いて、実際に遺言書の検認が必要な場合の手続きの流れを確認していきましょう。

遺言書の検認は次のような流れで手続きを進めます。

検認の手続きの流れ
  1. 必要書類を揃える
  2. 検認の申立てを行う
  3. 裁判所から検認期日の通知が届く
  4. 検認期日に裁判所で検認を行う
  5. 検認済証明書の発行を申請する

ステップ①:必要書類を揃える

さきほど紹介したように、検認の申立てをするときに申立書などの書類を提出する必要があります。

裁判所ホームページから用紙をダウンロードして申立書を作成し、市区町村役場で戸籍謄本を取得してください。

なお、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本を揃えたり、相続人全員の戸籍謄本を揃えるのは、戸籍収集に慣れていない人が自分でやると時間がかかることも少なくありません。

 

検認の手続きは、申立てをしてから手続きが完了するまでに1ヶ月~2ヶ月ほどかかりますが、申立てをする前の書類準備で時間がかかると、さらに時間がかかることになります。

そのため、戸籍謄本など検認の手続きに必要な書類の準備は、弁護士などの専門家に依頼してすべて任せてしまっても良いでしょう。

ステップ②:検認の申立てを行う

必要書類が揃ったら、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が検認の申立てを行います。

申立てを行う家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。

ステップ③:裁判所から検認期日の通知が届く

申立てを行ってから1ヶ月ほどすると、検認を行う日(検認期日)の通知が相続人全員に対して裁判所から届きます。

通知とともに出欠回答書が同封されているので、記入して裁判所に返送してください。

なお、申立てをした人は検認期日に裁判所に出向く必要がありますが、その他の相続人が検認期日に出席するかどうかは任意です。

ステップ④:検認期日に裁判所で検認を行う

検認期日当日になったら、申立人は裁判所に出向いて遺言書の検認を行います。

その際、遺言書・申立人の印鑑・そのほか担当者から指示されたものを持参してください。

裁判所では、持参した遺言書を提出して、出席した相続人などの立会のもと遺言書を開封して検認が行われます。

ステップ⑤:検認済証明書の発行を申請する

遺言書の検認が終わると検認調書が作成されます。

また、その後相続手続きをする場合には検認済証明書が必要になるので、検認済証明書の発行申請も行ってください。

発行には遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。

なお、検認期日に欠席した相続人に対しては、検認が終了した旨の通知が送られます。

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遺言書の検認に関するその他のポイント

遺言書の検認に関するその他のポイント

ここまで、遺言書の検認に関する基本的な事項や手続き方法について解説しました。

遺言書の検認に関しては、この他にも間違えやすい点や気を付けるべき事項があります。

実際に検認の手続きをする際には、以下で紹介するポイントも踏まえた上で遺言書の検認の手続きをするようにしてください。

ポイント
  • 遺言書の有効・無効を判断する手続きではない
  • 検認を受けないと罰則が科される

ポイント①:遺言書の有効・無効を判断する手続きではない

最初に紹介したように、検認とは遺言書の形状などを確認して偽造や変造を防ぐための手続きです。

そのため、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。

検認を終えたからと言って遺言書が絶対に有効になるわけではなく、この点を勘違いする人が少なくないため注意が必要です。

ポイント②:検認前に遺言書を勝手に開封すると罰則を科される

検認が必要な遺言書を保管している人や見つけた人は、検認の手続きを怠って裁判所に遺言書を提出せずに遺言を執行したり、封印されている遺言書を家庭裁判所外で勝手に開封してはなりません。

違反した場合には5万円以下の過料が科されます。

 

なお、仮に違反した場合でも、罰則が科されるだけで遺言書自体が無効になるわけではありません。

ただし、遺産相続の手続きを進めたり遺言書を勝手に開封したりすれば、遺言書を偽造したのではないかと疑われることにもなりかねません。

最悪の場合は相続欠格事由に該当して相続権を失うことにもなりかねないので、検認が必要な場合には勝手に開封や相続手続きをせず、まずは検認の申立てを裁判所に行うようにしてください。

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遺言書を作成する場合は検認が不要の公正証書遺言がおすすめ

公正証書遺言

相続が開始したときに検認の手続きが必要になると、手間も時間もかかり遺産を相続する人(相続人)の手続き負担が増えてしまいます。

そのため、遺産を残す人が遺言書を作成するときには、検認が不要で相続人の手続き負担が少ない公正証書遺言がおすすめです。

 

もちろん、遺言書を作成する側からすれば、公正証書遺言は自筆証書遺言や秘密証書遺言に比べて作成に手間がかかるので、この点をデメリットに感じる人はいるでしょう。

しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言は遺言者本人が遺言書を作成するので、相続開始後になってから形式不備などが見つかって遺言自体が無効になるリスクがあります。

また、遺言作成時点で遺言者に本当に遺言能力があったのか、認知症を発症していなかったのかなど、遺言の効力を巡って相続人の間で裁判に発展するケースもあるため注意が必要です。

 

それに対して、公正証書遺言であれば、公証人という法律の専門家が遺言書を作成するので、形式不備によって遺言書が無効になる心配は基本的にありません。

2人以上の証人が立ち会って作成するので、遺言者の意思能力についてもその場で確認できて後々に問題になるリスクを軽減できます。

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まとめ

相続開始後に故人の自宅などで自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合には、遺言書の形状などを確認する検認の手続きが必要になります。

家庭裁判所で行う遺言書の検認は、遺言書の偽造や変造を防止するための大切な手続きです。

なお、自筆証書遺言が法務局で保管されている場合や、生前に故人が作成した遺言が公正証書遺言の場合には、検認を行う必要はありません。

検認は裁判所に申立てをしてから手続きが完了するまで1ヶ月~2ヶ月ほどかかります。

手続き書類を揃えるのに時間がかかると、手続きを終えるまでにかかる期間はさらに長くなるので、遺言書の検認が必要な場合には、早めに書類を揃えて手続きを開始してください。

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この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。