【2024】公正証書遺言とは?効力・作成方法・流れと手数料等の費用・必要書類

公正証書遺言遺言
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言を指します。公正証書遺言はきちんとした遺言であるとのイメージがある一方で、作成するには実際にどうすれば良いのかといった点や、結局他の遺言と比べてどのようなメリットがあるのかといった点が良くわからないという人も少なくありません。

今回は、公正証書遺言のメリット・デメリットの他、作成するまでの流れや作成にかかる費用などについて詳しくお伝えします。

公正証書遺言とは

公正証書遺言

公正証書遺言とは、法律で定められた遺言の方式の一つです。法律で決められた遺言の方式には、通常時に用いるものとして「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類が存在します。

このうち、公正証書遺言は下記の要件のもとで作成をする遺言です。

公正証書遺言
  1. 証人2人以上の立会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる
  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと

こうした厳格な手順を踏んで作成するため、無効となりづらいなどのメリットがあります。

一方で、「自筆証書遺言」は全文を自書する必要があるものの、公証人などの関与や証人の立ち会いなどは求められず、より簡易な遺言の方式であるといえるでしょう。

また、「秘密証書遺言」は、自ら作成した遺言を、封をした状態で公証役場へ提出する方式の遺言ですが、あまりメリットが感じられないためか、ほとんど利用されていないのが現状です。

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公正証書遺言の効力

遺言書

公正証書遺言を作成するときには、法律で定められた一定の要件を満たす必要があります。この要件を満たさずに作成された公正証書遺言は無効です。公正証書遺言が無効になることは滅多にありませんが、以下では無効になるケースや有効期限など、公正証書遺言の効力について解説します。

無効になる場合

公正証書遺言は、2人以上の証人の立会のもとで遺言者が公証人に遺言内容を口述して作成します。この条件が守られず、あるいは条件に抵触するような状況で作成された公正証書遺言書は無効です。

遺言者の遺言能力がない場合

公正証書遺言を作成する遺言者は、しっかりとした判断能力があることが前提になります。認知症を発症しているなど判断能力が低下している状態で作成した遺言書は無効です。

遺言を作成した時点で遺言者本人に判断能力が無かったと裁判で認められると、公正証書遺言であっても無効になってしまいます。

証人が要件を満たす人でない場合

民法では、次の人は遺言の証人になれないと定められています。

公正証書遺言は、上記には該当せず証人になれる要件を満たす人が2人以上立ち会って作成されなければなりません。立ち会った証人2人のうち、1人または2人が上記に該当することが後で発覚すると、遺言書が無効になります。

証人は公証役場に依頼して紹介してもらうか自分で探して確保することになりますが、自分で探す場合には上記の要件に注意しましょう。

遺言内容が遺言者の真意でない場合

遺言者が親族に脅されて遺言書を作成した場合も当然無効になると考えて良いでしょう。遺言者本人の真意ではない内容で作成しても、その遺言書は無効です。

遺留分を侵害している場合

一定の相続人には、遺産を最低限相続できる権利として「遺留分」が法律で規定されています。遺留分とは、遺産を相続する人に保証された権利であり、財産を残す側の人が作成する遺言書によっても侵害できません。

遺留分を侵害するような内容で遺言書を書いてしまうと、遺留分を侵害された相続人が侵害された権利の請求(遺留分侵害額請求)を行ったり、相続トラブルの原因になったりすることもあります。遺言の内容を考える際には、相続人の遺留分を侵害していないか、十分に注意してください。

期間に制限はない

法律で定められている公正証書遺言の保存期間は20年です。しかし、「保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない」とも規定されています。

そのため、基本的に遺言者の存命中は公証役場で公正証書遺言が保管され続けるので、破棄されることはないと考えて良いでしょう。

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公正証書遺言のメリット

公正証書遺言には、どのようなメリットがあるでしょうか?ここでは、自筆証書遺言と比較した場合の主なメリットを4つに分けて紹介していきます。

メリット
  • 偽造や紛失の心配がない
  • 自書をする必要がない
  • 無効になる可能性が低い
  • 相続が起きた後の検認が不要

偽造や紛失の心配がない

公正証書遺言は、偽造や紛失の心配がない点が大きなメリットの一つといえます。偽造や紛失の心配がない理由は、公正証書遺言の原本が遺言を作成した公証役場で保管されるためです。遺言者には、原本をもとに作成された謄本や正本が交付されますが、この謄本や正本を紛失したり誰かに偽造されたりしても、再度公証役場から新たな謄本の交付を受けることができます。

一方で、自筆証書遺言を手元で保管した場合には、偽造されたり紛失したりしてしまうリスクが非常に高いといえるでしょう。

自書をする必要がない

公正証書遺言は、自書をする必要がない点もメリットの一つです。自筆証書遺言の場合、財産目録以外はすべて遺言者が自書する必要があり、手に力が入らない場合や手が不自由な場合であっても、代筆は一切認められません。

そもそも長い文章をまったく間違えずに自書することは、健康な人であっても簡単なことではないでしょう。書き損じた場合には訂正ができますが、その訂正方法も厳格であるため、訂正方法を誤れば遺言書が無効になってしまったり、意図しない内容で執行されてしまったりするリスクもあります。

一方で、公正証書遺言は公証人が文案を作成してくれますので、遺言者は自書する必要がありません。公正証書遺言は原則として署名のみはする必要があるものの、手が不自由などで難しい場合は、署名さえしなくても遺言を作成することができます。

無効になる可能性が低い

公正証書遺言は公証人が文案を作成してくれるため、無効になってしまうリスクはほとんどないことも、公正証書遺言の大きなメリットの一つといえるでしょう。自筆証書遺言の場合は、要件を満たせず無効になってしまったり、文章があいまいで手続きができなかったりするリスクが低くありません。

相続が起きた後の検認が不要

相続が起きた後、家庭裁判所での検認手続きを経なくても相続手続きが行える点も、公正証書遺言のメリットだといえます。検認とは、その時点での遺言書の状態や内容を明確にする目的で行う、遺言書の開封式のようなものです。

遺言書が自筆証書であり、法務局での保管制度を利用していないものであった場合には、まずこの検認を受けなければなりません。検認をするには、まず申し立てのために必要書類を集める必要があるうえ、申し立てから検認が行われる日までも日にちが空くことが一般的です。

検認が必要な遺言の場合、先に検認を終えなければ、不動産の名義変更などの相続手続きに遺言を使うことはできません。そのため、相続手続きを始めるまでに数ヶ月の遅れが生じてしまいます。

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公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言には、デメリットも存在します。公正証書遺言の主なデメリットは次の3点です。

デメリット
  • 費用がかかる
  • 作成するまでに時間がかかる
  • 公証人や証人に遺言内容を伝える必要がある

費用がかかる

公正証書遺言の最大のデメリットは、公証役場へ支払う手数料がかかる点です。手数料の計算方法については後述します。

作成するまでに時間がかかる

公正証書遺言は、公証役場へ突然出向いてその場で作成できるものではありません。必要書類を揃えたうえで事前に相談し、後日あらためて遺言書を作成するという流れが一般的です。そのため、急いで遺言を作成したいという場合には注意が必要です。

実際にどのくらい期間がかかるのかは、その公証役場の予約状況によって異なります。遺言を作成する予定の公証役場に確認することをおすすめします。

公証人や証人に遺言内容を伝える必要がある

公正証書遺言は、誰にも知られずに作成することができません。公証人と、2名の証人の面前で作成すべき旨が法律で定められているためです。

そのため、誰にも遺言の内容を知られたくない方にとってはデメリットだといえます。ただし、公証人には守秘義務があり、守秘義務のある専門家などに証人を依頼すれば、外部に情報を漏れることを防ぐことは可能です。

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公正証書遺言を作成するまでの流れ

公正証書を作成する際は、どのような流れとなるでしょうか?ここでは、作成のサポートを専門家へ依頼せず、自分で公証役場とやり取りをする場合の流れについて解説します。

公正証書遺言を作成するまでの流れ
  • 遺言の内容を検討する
  • 必要な書類を準備する
  • 証人2名を手配する
  • 公証役場に事前相談をする
  • 作成当日に公証役場へ出向く

遺言の内容を検討する

公正証書遺言を作成するには、まず自分で遺言の内容を検討します。公証人は、遺言の内容の相談には乗ってくれず、遺言内容についてのアドバイスをしてくれないことが一般的です。

あくまで、公証人は遺言者本人が決めた遺言の内容を法的な文書に落とし込んでくれるだけなので、内容の相談がしたい場合には専門家へサポートを依頼すると良いでしょう。

必要な書類を準備する

次に、必要な書類を準備します。公正証書で遺言を作成する場合の必要書類は、次のとおりです。

必要書類
  • 遺言の内容を書いた遺言書案又はメモ
  • 遺言者の印鑑登録証明書(公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであること)又は運転免許証、パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の身分証明書
  • 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本や除籍謄本
  • 遺贈をする相手の住民票
  • 遺言者の財産の資料(不動産は登記事項証明書や固定資産税課税通知書など、預貯金は通帳など)
  • 遺言者の財産の一覧表
  • 下記で検討する証人の住所・氏名・生年月日・職業を書いたメモ

ただし、必要書類は遺言の内容などによって異なります。まずは、ある程度を揃えて公証役場へ事前相談に行き、その後不足分があれば改めて提出に出向くと良いでしょう。

証人2名を手配する

必要書類の収集と同時進行で、2名の証人を検討し打診します。証人には特に資格などは必要ありませんが、下記の人は欠格要件に該当してしまうため、証人になることはできません。

  • 未成年者
  • 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

なお、適切な人が見つからない場合は、公証役場に紹介を依頼することも可能です。

公証役場に事前相談をする

遺言の内容が決まり、ある程度の資料がそろったら、公証役場へ事前相談に出向きます。遺言はどこの公証役場でも作成できるので、出向きやすい場所にある公証役場を選ぶと良いでしょう。

公証役場は予約が優先であるため、事前に電話などで予約をしてから出向くことをおすすめします。その際、持参すべき資料についても確認するようにしてください。

作成当日に公証役場へ出向く

事前相談を終えたら、作成日を予約し、予約の時間に公証役場へ出向きます。当日に必要となるものは原則として次のとおりですが、状況によって異なる場合があるため、事前に公証役場に確認しておきましょう。

  • 遺言者の実印
  • 遺言者の印鑑証明書
  • 公証役場へ支払う手数料分の現金

なお、入院中などで公証役場へ出向くことが難しい場合は、別途費用が掛かりますが、公証人に出張してもらい作成することも可能です。

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公正証書遺言を作成する当日の流れ

では、公正証書遺言の作成当日はどのような流れになるでしょうか?一般的な流れについて解説しましょう。

公正証書遺言を作成する当日の流れ
  • 公証人と証人の前で遺言書の内容を口授する
  • 口授した内容を元に公証人が遺言書を筆記する
  • 筆記した遺言書の内容を遺言者と証人が確認する
  • 遺言者と証人、公証人が署名捺印をする

公証人と証人の前で遺言書の内容を口授する

まず、公証人と証人へ遺言の内容を伝えます。遺言として残したい内容をきちんと話せるようにしておきましょう。

なお、通常は事前相談で内容を伝え、既に公証人の手元にはその遺言内容を筆記した案文が存在します。そのため、二度手間だと感じる人もいるかもしれませんが、遺言内容の口授は公正証書遺言を成立させるための要件の一つなので、きちんと口授してください。

口授した内容を元に公証人が遺言書を筆記する

次に、遺言者が口授した内容を公証人が書面に書き起こします。なお、実務上は既に事前相談の内容をもとに筆記が済んでいることが一般的です。

筆記した遺言書の内容を遺言者と証人が確認する

その後、公証人が筆記した内容に関して、公証人から読み聞かせを受けたり閲覧をしたりすることで、内容に問題がないか確認します。万が一筆記に誤りがあれば、その場で指摘のうえ修正してもらいます。

遺言者と証人、公証人が署名捺印をする

筆記された内容に問題がなければ、公正証書遺言の原本に遺言者と証人がそれぞれ署名と捺印をします。最後に、公証人も署名捺印を行い、これで遺言書の作成は完了です。作成した原本は公証役場で保管され、遺言者にはその原本をもとに作成された謄本や正本が交付されます。

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公正証書遺言の作成にかかる費用

最後に、公正証書で遺言を作るにはどのくらいの費用がかかるのかお伝えしましょう。公正証書遺言の作成にかかる費用は一律ではなく、遺言の内容により異なります。公証人の手数料は、手数料令という政令で定められており、次の通りです。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1,000万円以下 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 29,000円
5,000万円を超え1億円以下 43,000円
1億円を超え3億円以下 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
10億円を超える場合 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

この表は、財産総額を当てはめるのではなく、遺言書で財産を渡す相手ごとの渡す金額を当てはめて計算します。

たとえば、長男に4,000万円相当の財産を相続させ、二男に2,000万円相当の財産を渡す内容の遺言を作る場合には、長男分が表中の「3,000万円を超え5,000万円以下」に該当するため29,000円、二男分が表中の「1,000万円を超え3,000万円以下」に該当するため23,000円です。この29,000円+23,000円=52,000円が基本の手数料となります。

また、遺言加算という手数料も別途かかり、全体の財産が1億円以下の場合には、これに11,000円が加算されます。例の場合には、基本手数料52,000円+11,000=63,000円となるわけです。

この他、数千円程度の用紙代が加算されることもあります。これが公正証書遺言の作成にかかる費用です。

なお、遺言者が入院中で等で公証人の出張を受けて遺言書を作成する場合は、基本手数料が1.5倍となる他、公証人の日当と交通費が加算されます。公正証書遺言の手数料計算はやや複雑ですが、金額の心づもりをするためには計算の基本を理解しておくと良いでしょう。

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まとめ

公正証書遺言は、作成までの時間や費用はかかります。しかし、無効となるリスクは低く、相続開始後の手続きもスムーズであるため、財産を受け取る側にとっては安心できる方法だといえるでしょう。

後世に問題なく財産を遺すため、公正証書遺言の作成も検討してみてはいかがでしょうか?

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呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。