「被相続人」とはどういう意味?誰を指す?相続人との違いとは

被相続人法定相続
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

相続について考える上で重要なことの一つが、その言葉の意味やそれぞれの関係について正確に把握することです。
相続では、被相続人の親族関係にある多くの人がその法的効果法律効果の対象となります。
この記事では、相続の中心となる「被相続人」や「相続人」といった言葉の意味について解説し、その範囲や相続分について紹介します。

被相続人とは

女性を介護する人
そもそも相続とは、被相続人の死亡によりその財産や権利義務を相続人に承継させることです。
つまり、被相続人とは相続される人であり、死亡して財産を残す人のことを指します。

相続人との違い

一方で、相続人とは、相続する人、つまり被相続人の死亡により財産を受け継ぐ人のことを指します。
相続において、実際に相続することのできる法的な資格を持つ人のみが相続人です。

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相続人の範囲

親族表
相続においては、相続人の範囲を正確に理解することが非常に重要です。
その理由が遺産分割協議の有効性です。

相続人が複数人いる場合、遺産は分割して相続することになります。
遺言に指定がない場合には、分割の協議は「相続人全員が参加し、同意すること」が成立要件となります。
そのため、もし相続人の範囲を誤認して遺産分割協議を行なってしまった場合、その協議は無効となります。
相続を開始するにあたり、初めに相続人の範囲を確認するようにしてください。

遺言相続とは

相続は、次の2つに分けられます。

  • 被相続人の意思を記した遺言に基づいて行われる「遺言相続」
  • 民法の規定に基づいて行われる「法定相続」

遺言相続においては、遺留分を侵害するような内容である場合を除き、原則として遺言の内容に従って相続が行われます。
しかし、遺言がない場合や、遺言が無効であった場合などは民法の規定に基づいて法定相続が行われます。

法定相続人の種別と順位

法定相続が行われる場合、最も重要なのが相続人の種別と順位について理解することです。
相続人となるのは、被相続人との間に次の親族関係がある人です。

1.配偶者

配偶者は、常に相続人となります。
ここで言う配偶者とは、民法上の婚姻関係にあたる者であり、内縁の妻や婚約者などは含まれません。
また、配偶者がすでに死亡している場合は、血族相続人のみが相続人となります。

2.血族相続人

血族相続人には順位があります。
上位順位者がいる場合には、下位の順位者は相続人にはなりません。

第1順位者は被相続人の子です。
性別、実子、養子を問わず、すべて同順位です。
また、本来胎児には権利能力がないため、法律的な権利義務の対象とはなりません。
相続の場合、出生後に不利益とならないよう、生まれたものと見なすことで相続権が認められています。
ただし、生きて生まれることを前提としているため、死産の場合は相続の対象となりません。

第2順位者は被相続人の「直系尊属」です。
つまり、被相続人の父母や祖父母などのことです。
ただし、被相続人に対して親等の近い者が優先されます。
例えば、父母のどちらかが相続人となった場合、祖父母が相続人になることはありません。

第3順位者は被相続人の兄弟姉妹です。
兄弟姉妹が複数人いる場合は、すべて同じ順位です。

なお、相続の順位に関してはこちらで詳しく解説されているため、一度目を通しておくと良いでしょう。

代襲相続

相続には「代襲相続」という制度があります。
これは、被相続人が死亡する前に相続人と推定される者のうち、「被相続人の子」もしくは「被相続人の兄弟姉妹」が死亡・廃除・欠格のいずれかが原因で相続権を失った場合に、相続人が相続するはずだった相続分を承継することのできる制度です。
本来の相続人の代わりに相続する者を「代襲者」と言い、本来相続すると推定されていた者(推定相続人)を「被代襲者」と言います。

被代襲者が「被相続人の子」である場合、その直系卑属が代襲者となります。
つまり、被相続人にとって孫や曾孫にあたります。

被代襲者が「被相続人の兄弟姉妹」である場合、その子が代襲者となります。
つまり、被相続人にとって甥や姪にあたります。
この場合、甥や姪の直系卑属は代襲相続することはできないため、注意が必要です。

例えば、被相続人の子が相続の開始前に死亡していた場合、その人に子供(つまり被相続人の孫)がいれば代襲者となり、相続人の子が相続するはずだった財産を承継することができます。

なお、代襲相続について詳しく知りたい方はこちらを確認するようにしてください。

相続欠格と相続人の廃除

被相続人との関係において相続人と推定できる場合でも、必ず財産を相続できるわけではありません。
その理由に、相続欠格と相続人の廃除があります。

相続欠格

相続欠格とは、相続において不当な利益を得る目的で法を侵す行為をした場合に、相続権を失う制度です。
例えば、下記のような行為が挙げられます。
こういった行為に該当した場合、特に特別な手続きをする事なく相続権を失います。

相続欠格となる行為の例
  • 故意に被相続人や他の相続人を死亡させる
  • 被相続人が殺害された事を知っていて、告発や告訴をしない
  • 詐欺や強迫によって被相続人に遺言をさせる、もしくは撤回や取り消し、変更をさせる
  • 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿する

相続人の廃除

上記の相続欠格の要件を満たしていない場合にも、推定相続人が被相続人に対して、虐待・侮辱・著しい非行を行った場合、被相続人は家庭裁判所に対して相続人の廃除を請求することができます。
つまり、相続の開始前にあらかじめ相続人とならないように請求することができます。
家庭裁判所は、請求に基づいて関係各所に調査を行い、調停、もしくは審判により推定相続人の相続権を剥奪します。

また、相続人の廃除は遺言に記載する事で実施することもできます。
その場合、各種の手続きなどは遺言執行人が行うことになります。

相続人の不存在

相続の際に相続人がいない場合、その財産は法人とみなされし、家庭裁判所により相続財産の管理人が選任されます。
このようにすることで、管理人が相続人の捜索や、各債権者に対する清算手続きなどを行うことができるようになります。

また、「相続人がいない場合」とは戸籍上相続人がいない場合だけでなく、相続の放棄、欠格、廃除により相続人がいなくなった場合にも該当します。
しかし、相続人が行方不明である場合には、直ちに相続人がいない場合には該当しません。
この場合、相続人の捜索手続きを行い、6ヶ月以上の期間を持って公告します。相続人を探すためのいくつかの公告をします。
この期間内に相続人が現れた場合には、法人はなかったものとみなされますが、この期間が満了しても相続人が現れなかった場合や現れたが相続を放棄した場合に、相続人の不存在が確定します。

相続人の不存在が確定した場合、特別縁故者は公告期間満了後3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることにより相続財産を承継することができます。
特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他相続人と特別の縁故があった者」のことを言います。
相続財産の継承が認められるかどうかは家庭裁判所が申し立ての内容や客観的な証拠をもとに判断します。

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相続の対象となる財産

相続の対象となる財産
相続の際に対象となる財産は、一身専属権を除いて、被相続人が有していた財産上のすべての権利義務です。
一身専属権とは、その人個人に与えられた権利で、他の人が持ったり行使したりすることができない権利のことを指します。
著作者人格権や、医師免許などの資格、生活保護の受給権などがこれにあたります。
これらの一身専属権以外のすべての財産が相続の対象となります。

また、財産にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産もあり、その両方が相続の対象です。
プラスの財産を積極財産、マイナスの財産を消極財産と呼びます。
積極財産には、不動産や不動産上の権利、現金や有価証券、動産や貴金属などが含まれます。
消極財産には、借金や、滞納している税金などがあります。

相続分とは

相続人が複数いる場合、遺産を分割することになります。
相続分とは、遺産を分割する際に各相続人が受け取る割合のことです。

被相続人が遺言によって相続分をあらかじめ指定していた場合は、通常それに従います。
これを「指定相続分」と言います。
一方、遺言がない場合は法律の規定により定まります。
この基準となるのが法定相続分です。

法定相続分

法定相続分は、次のように定められています。

相続人 相続分
配偶者と子 配偶者 1/2 子 1/2
配偶者と直系尊属 配偶者 2/3 直系尊属 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4
配偶者のみ 配偶者1
子のみ 子1
直系尊属のみ 直系尊属1
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹1

例えば、被相続人の配偶者が1人、子が2人いた場合、相続財産が1,000万円であれば、配偶者は1/2の相続分で500万円相続し、子供達は1/2の相続分を2人で分けるため1人250万円ずつを相続することになります。
実際の遺産分割協議では、相続人全員の同意がある場合は、どのような割合で分割することも可能です。
しかし、法定相続分を理解することで基準となる割合を認識することが重要です。

指定相続分と遺留分

遺言相続では、被相続人の意思により自由にその財産の処遇や相続分を決定することが可能です。
自分自身の財産であるため当然の権利ですが、相続には被相続人の死亡により残される親族関係者たちの生活を保証するという性質もあります。
そのため、相続人は、相続財産のうちの一定の割合が最低限の相続分として法的に保証されています。
これを「遺留分」と呼びます。

遺留分の割合は次のように定められています。

相続人 総体的遺留分 個別的遺留分
配偶者と子 1/2 配偶者 1/4 子 1/4
配偶者と直系尊属 1/2 配偶者 1/3 直系尊属 1/6
配偶者のみ 1/2 配偶者 1/2
子のみ 1/2 子 1/2
直系尊属のみ 1/3 直系尊属 1/3

総体的遺留分とは、遺産全体に対する遺留分権利者全員に残すべき割合のことです。
また、個別的遺留分とは、各遺留分者の遺留分になります。
表に記載がないように、兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分侵害額請求

遺留分権利者がその遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求を行うことで、その侵害額に相当する金額の支払いを請求することができます。
遺留分侵害額請求は、下記の期間が経過するとその権利が消滅します。

  1. 相続の開始及び遺留分を侵害する贈与や遺贈があった事を知ったときから1年
  2. 相続の開始から10年

また、ここで注意が必要なのは、遺留分権利者は遺留分に対して相続する権利を持つことが保証されているだけであり、その権利を行使するかどうかは自由だということです。
遺言により遺留分が侵害されていても、相続人全員が同意していればその遺言は法的に有効となります。

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相続の承認と放棄

相続の承認と放棄
先ほどお伝えしたように、相続することになる財産にはプラスの財産だけでなく、
マイナスの財産も存在します。
そこで、相続財産を承継するかどうかを、相続人が選ぶことのできる制度があります。
相続財産を承継する場合、「単純承認」と「限定承認」という2つの方法から選択することができます。
もしくは、相続を放棄することも可能です。

単純承認

単純承認とは、被相続人の権利義務を全て承継することです。
相続した財産は、相続人の財産と同一のものとなります。

限定承認

限定承認とは、プラスの相続財産の限度内で債務を弁済する制度です。
そのため、相続財産と相続人の財産は独立して考えられ、被相続人の借金を返済して余った分は承継することが可能です。
借金を加味しても相続したい特別な財産がある場合などに有効な手段です。

相続放棄

相続放棄は、相続人が相続の効果自体を全面的に拒否することです。
相続放棄は、相続の開始後に家庭裁判所への申述を行います。
相続放棄を行った場合、そもそも相続人ではなかったものとして見なされます。
例えば、明らかに借金が多い場合などは相続による不利益を回避することができます。

なお、相続放棄についてはこちらで詳しく解説しています。
注意したい点が多くあるため、一度確認しておくことをおすすめします。

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まとめ

仲良しの家族
被相続人という言葉の定義とその意味について解説しました。
相続では、被相続人を中心とした相続人の範囲を理解し、その相続分について正確に認識することが重要です。
その上で財産のプラスとマイナスを考慮し、どのように財産を承継するかということを相続人自身が決めることができます。

しかし、相続では遺言という形で被相続人の意思を反映させることもできます。
相続が円滑に進むように、自分の環境ではどのような方式を選択すべきかをあらかじめ考えておくと良いでしょう。

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税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。