相続放棄に必要な書類は?相続放棄者により異なるため要注意

相続放棄の必要書類 相続放棄

財産を相続したくない場合に行う相続放棄では、さまざまな書類を準備する必要があります。

相続放棄をする人によって必要な書類は異なり、期限までにすべての書類をそろえなければなりません。

 

この記事では、相続放棄で必要な書類や相続放棄の有無を照会する際に必要な書類、相続放棄をする場合の注意点などについて解説します。

ご家族が亡くなって相続が開始した場合に役立つ知識ですので、ぜひ活用してください。

相続放棄の手続きで必要になる書類

相続放棄の書類

ご家族などが亡くなって相続が開始された場合、相続放棄を行うのは主に次のようなケースです。

  • 亡くなった方に借金があってマイナスの財産を相続したくない場合
  • 相続が争族になる可能性が高くてそもそも相続に関わりたくない場合

このように相続したくない場合には、相続放棄の手続きを行います。

 

手続きを行う場所は「亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。

家庭裁判所で提出する書類には、大きく分けて次の2種類があります。

  • 相続放棄をする人すべてに共通する必要書類
  • 誰が相続放棄をするのかによって異なる必要書類

相続放棄を検討する場合は、共通で必要になる書類を確認するとともに、ご自身が該当するケースの必要書類も確認して、必要書類を漏れなくそろえましょう。

共通で必要になる書類

誰が相続放棄の手続きをする場合でも共通して必要になる書類として、次のものが挙げられます。

  1. 相続放棄申述書
  2. 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  3. 相続放棄をする人の戸籍謄本
  4. 収入印紙
  5. 切手

1.相続放棄申述書

相続放棄申述書は、相続放棄をすることを裁判所に申請するための書類です。

氏名や住所などの被相続人と相続人に関する情報や、相続放棄をする理由などを記載します。

相続放棄をする人が20歳以上の場合と、20歳未満で親権者などの法定代理人が代わりに手続きをする場合で用紙が異なり、裁判所ホームページからダウンロードが可能です。

記入例も掲載されているため、参考にしてみてください。

 

なお、相続放棄申述書は、相続放棄をするにあたって重要な書類です。

書き方が分からず不安な場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

2.被相続人の住民票除票または戸籍附票

相続放棄の手続きでは、亡くなった被相続人の住民票除票または戸籍附票が必要です。

誰からの相続を放棄したいのかを確認するために必要な書類です。

相続放棄を行う家庭裁判所は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」なので、手続きを行う家庭裁判所を確認する意味でも必要な書類です。

 

なお、被相続人の住民票除票または戸籍附票は、被相続人の最後の本籍地の市区町村役場で発行しますが、出生~死亡まですべての戸籍等をそろえなければなりません。

ケースによっては、出生まで戸籍をたどらなければならず、転籍前の自治体の役所も含めて、多くの役所に問い合わせて取り寄せる必要が生じます。

 

慣れていない方が自分でやると、時間だけが掛かってしまうケースも少なくありません。

後述するように、相続放棄には期限が決まっているため早めの対応が必要です。

報酬を支払ってでも専門家に依頼した方が良いことも多いため、弁護士や司法書士、行政書士に依頼することも検討してみてください。

3.相続放棄をする人の戸籍謄本

相続放棄の手続きでは、相続放棄をする人自身の戸籍謄本も必要になります。

戸籍謄本はご自身の本籍地のある市区町村役場で取得でき、発行費用は数百円程度です。

4.収入印紙

相続放棄申述書を家庭裁判所に提出する際に、手数料として800円分の収入印紙の添付が必要です。

収入印紙は郵便局やコンビニで購入できますし、裁判所でも販売している場合があります。

5.切手

相続放棄の申請を行うと、家庭裁判所から照会書が送付されて質問に回答したり、手続きが完了した際に相続放棄申述受理通知書が送られてくるなど、何度か裁判所から郵送物が届きます。

これらの書類を郵送する際の切手についても、あらかじめ家庭裁判所での提出が必要です。

必要な金額や切手の枚数は、手続きを行う家庭裁判所に事前に確認するようにしてください。

相続放棄者ごとに異なる必要書類

誰が相続放棄の手続きをするのかによって異なる必要書類は、次の一覧表のとおりです。

上記の「共通で必要になる書類」に加えて、次の書類もそろえて提出することになります。

【相続放棄をする人】 【必要書類】
配偶者が相続放棄する場合
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
子や孫が相続放棄する場合
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
親が相続放棄する場合
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る)がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
兄弟姉妹が相続放棄する場合
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

そもそも、相続放棄の手続きができるのは、相続する権利を持っている人です。

 

相続する権利を持つ法定相続人として、配偶者・子・親・兄弟姉妹などが法律で規定されています。

配偶者は常に相続人になりますが、子・親・兄弟姉妹の間では法定相続人になれる順位が決まっており、誰でも相続人になるわけではありません。

 

相続人になれる法定順位は、子などの直系卑属が第一順位、親などの直系尊属が第二順位、兄弟姉妹などが第三順位で、上位の人がいない場合に次順位の人が相続人になる仕組みです。

子や兄弟姉妹が亡くなっている場合に孫や甥、姪が相続人になる代襲相続が起きるケースもあり、誰が相続人になるのかはケースごとに異なります。

家庭裁判所で提出する「相続人として相続する権利を持っていること=相続する権利を放棄できる人であること」を示す書類も、相続人によって異なるということです。

配偶者が相続放棄する場合

配偶者が相続放棄する場合、共通の必要書類に加えて次の書類が必要です。

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

子や孫が相続放棄する場合

子や孫などの第一順位の相続人が相続放棄する場合、共通の必要書類に加えて次の書類が必要です。

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

親が相続放棄する場合

親などの第二順位の相続人が相続放棄する場合、共通の必要書類に加えて次の書類が必要です。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る)がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

兄弟姉妹が相続放棄する場合

兄弟姉妹などの第三順位の相続人が相続放棄する場合、共通の必要書類に加えて次の書類が必要です。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続放棄の有無の照会手続きで必要になる書類

相続税の計算

相続人が相続放棄をしているかどうかは、他の相続人や利害関係者は照会することができます。

ある相続人が相続放棄をしていれば、相続関係が変化して他の人にも影響が出るからです。

 

照会の手続きは家庭裁判所で行いますが、相続人が照会する場合と利害関係者が照会する場合それぞれの必要書類は次のとおりです。

【相続人が照会する場合】 【利害関係者が照会する場合】
  • 照会申請書
  • 被相続人等目録
  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者と被相続人の発行から3か月以内の戸籍謄本
  • 照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)
  • 返信用封筒と返信用切手
  • 照会申請書
  • 被相続人等目録
  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者の資格を証明する書類
  • 利害関係の存在を証明する書面(コピー)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)
  • 返信用封筒と返信用切手

相続人が照会する場合

他の相続人が相続放棄しているかどうか相続人が照会する場合、「照会申請書」と「被相続人等目録」の提出が必要です。

どちらの書類も、裁判所ホームページからダウンロードできます。

さらに、上記2種類の書類に加えて次の添付書類も必要になります。

  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者と被相続人の発行から3ヶ月以内の戸籍謄本
  • 照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)
  • 返信用封筒と返信用切手

上記とは別に、さらに提出書類を求められることもあるため、必要書類については事前に家庭裁判所に確認するようにしてください。

提出した戸籍謄本だけでは照会者と被相続人との関係がわからない場合に、関係がわかる戸籍謄本や除籍謄本の提出を別途求められる場合などがあります。

利害関係者が照会する場合

利害関係者が照会を行う場合も、「照会申請書」と「被相続人等目録」の提出が必要です。

先ほど紹介した裁判所ホームページから用紙をダウンロードして作成してください。

 

さらに、上記2種類の書類に加えて次の添付書類も必要になります。

  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者の資格を証明する書類
  • 利害関係の存在を証明する書面(コピー)
  • 委任状(代理人に委任する場合のみ)
  • 返信用封筒と返信用切手

なお、「照会者の資格を証明する書類」とは、個人の場合は照会者個人の住民票、法人の場合は商業登記簿謄本または資格証明書です。

また、「利害関係の存在を証明する書面」とは、金銭消費貸借契約書・訴状・競売申立書・競売開始決定・債務名義等の各写し・担保権が記載された不動産登記簿謄本・その他債権の存在を証する書面などを指します。

 

上記とは別に、さらに提出書類を求められることもあります。

必要書類については、事前に家庭裁判所に確認するようにしてください。

相続放棄で必要な書類の提出方法

裁判所

相続放棄の手続きは「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で行います。

住所地を管轄する家庭裁判所は、次の裁判所ホームページで確認が可能です。

これまで紹介した必要書類を、家庭裁判所に直接持参または郵送によって提出しますが、提出方法についても念のため事前に家庭裁判所に確認しておきましょう。

 

郵送すれば裁判所に出向く手間は省けますが、書類に不備や漏れがあった場合のやり取りに時間がかかってしまいます。

後述するように、相続放棄の期間は3ヶ月以内なので、期限までにあまり時間がない場合には直接持参した方が良いでしょう。

相続放棄に関する注意点

ポイント

相続放棄をする場合、必要書類を漏れなくそろえてミスなく手続きを進めることが大切です。

ただし、相続放棄ができる期限が決まっているなど、相続放棄では他にも注意すべき点があります。

相続放棄を行う場合には、次で照会する点にも留意しながら手続きを進めるようにしてください。

注意点①:相続放棄できる期間は原則3ヶ月

相続放棄をできる期間は「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」です。

この期間を過ぎた場合には、財産を相続することを「承認」したものと見なされます。

 

仮に亡くなった方に借金があった場合には、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしないと、マイナスの財産を受け継ぐことになってしまうため注意が必要です。

相続放棄の手続きに必要な書類を準備するのに時間を要する場合もあるため、準備や手続きは早めに行うようにしてください。

 

ただし、相続財産の調査などが間に合わず、相続放棄をすべきかどうかを3ヶ月以内にどうしても判断できない場合もあるはずです。

このような場合に限り、家庭裁判所に申請することで3ヶ月間延長することができます。

相続放棄の期間の伸長の手続き

相続放棄の期間の伸長の手続きは、相続放棄の手続きを行う家庭裁判所、つまり「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で行います。

必要な書類は次のとおりです。

  • 家事審判申立書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 利害関係人からの申立ての場合には利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)
  • 伸長を求める相続人の戸籍謄本
  • 相続人ごとに「相続放棄者ごとに異なる必要書類」の項で記載した書類

家事審判申立書の用紙は以下の裁判所HPからダウンロードができます。

この他に、収入印紙や切手も必要になります。

注意点②:原則として撤回できない

相続放棄は一度受理されると、原則として撤回ができません。

相続放棄は相続関係に影響を与える重要な手続きであり、簡単に撤回を認めるべきではないからです。

相続放棄を行う場合には、よく検討してから手続きを行うようにしてください。

 

なお、相続放棄が家庭裁判所に受理された後の撤回は原則としてできませんが、受理される前に相続放棄の申立て自体を取り下げることは可能です。

相続放棄の手続きを開始してから受理されて完了するまで、通常1週間ほどかかります。

相続放棄の申述をした場合でも、手続き完了までの間に取り下げれば相続放棄をせずに済みます。

 

また、他の相続人や利害関係者などに脅迫されるなどして相続放棄を強要された場合などには相続放棄の撤回が認められることはありますが、これはあくまで稀なケースです。

相続放棄は原則として撤回できないものと考えた方が良いでしょう。

注意点③:相続財産を処分すると相続放棄ができなくなる

ある方が亡くなって相続が開始された場合、財産を相続する側は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択することになります。

  • 単純承認:財産をそのまま相続する
  • 限定承認:相続財産に含まれるプラスの財産を限度として借金などのマイナスの財産も相続する
  • 相続放棄:財産を相続しない

前述のとおり、相続放棄は3ヶ月以内にしかできません。

つまり、3ヶ月が経過すると、単純承認をしたことになります。

 

しかし、3ヶ月が経過していなくても、相続財産を処分すると「相続財産を自分の物にすること=相続すること」を認めたものとして、単純承認したことになるため注意が必要です。

相続財産を処分してしまうと、たとえ3ヶ月が経過していなくても相続放棄できなくなるため注意してください。

注意点④:他の相続人が相続放棄した場合

相続が開始した場合は、他の相続人が相続放棄をしていないかどうかにも注意が必要です。

たとえば、借金を抱えている方が亡くなり、その人に子と親がいる場合、相続人になるのは子なので親は相続人にはなりません。

 

親は借金を相続する心配がないように思えますが、子が相続放棄をした場合には話が異なります。

子が相続放棄をした場合は親が相続人になるため、親は相続放棄をしないと借金を相続してしまうことになるからです。

 

このように、他の相続人が相続放棄することで相続権が自分に移る可能性があるケースでは、特に気をつけなければなりません。

必要であれば「相続放棄の有無の照会手続きで必要になる書類」のところで紹介した内容にしたがい、他の相続人の相続放棄の有無を確認することをおすすめします。

まとめ

相続放棄の手続きをする際には、相続放棄申述書や戸籍謄本などさまざまな書類が必要です。

誰が相続放棄をするのかによっても必要書類は異なるため、「亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に問い合わせるなどして、必要書類は事前にしっかりと確認するようにしましょう。

 

そして、相続放棄をできる期間は「相続が開始されたことを知ったときから3ヶ月以内」です。

この期間を過ぎてしまうと、相続放棄はできなくなってしまうので注意してください。

 

スムーズに進めば1週間ほどで相続放棄の手続きは終わりますが、早めに準備をすることが大切です。

書類の記入方法などがよく分からない場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

一方で、相続放棄は家庭裁判所で受理されると、原則撤回ができないため慎重な検討が必要です。

相続放棄も含めた相続に関する手続きでは、正確な知識を身につけて必要な手続きを正しく行うことが大切です。

 

そうぞくドットコムで掲載している相続に関するさまざまな記事が役立ちます。

相続が開始したときに慌てないためにも、ぜひ活用してください。