【2021】相続時精算課税制度をわかりやすく解説!メリットよりもデメリットが多い?

生前対策
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相続時精算課税制度について聞いたことはあるでしょうか?

漠然と、「なんとなく贈与税が安くなるお得になる制度では?」と考えている人も多いかと思います。

しかし、相続税精算課税制度は、一概にお得な制度とは言えません。

なぜなら、相続時精算課税制度は、その名称のとおり「相続時」に「精算」して「課税」される制度であるためです。

相続時精算課税制度を使うことで、贈与税は一定額まで無税となるものの、その後相続が起きた際にはすべて相続税の対象として持ち戻されてしまいます。

ここでは、誤解も多い相続時精算課税制度について詳しく解説していきます。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、贈与を受けた財産の贈与税を軽減する代わりに、その財産を将来の相続税の対象とするという課税の特例制度です。

それでは、その中身について詳しく解説しましょう。

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度を利用した場合には、贈与財産が累計2,500万円まで非課税となるうえ、これを超えた分にかかる贈与税も一律20%という比較的低い税率となります。

贈与税は、贈与を受けた金額が多ければ多いほど税率も高くなるという累進課税の制度を取っており、最高税率は55%です。

ですので、これだけを見ればとてもお得な制度に感じられることでしょう。

しかし、相続時精算課税制度を使って贈与をした財産は、将来相続が発生した際にすべて持ち戻され、相続税の対象とされてしまいます。

そのため、単なる非課税制度とは異なりますので、利用の際にはこの点をよく理解したうえで十分注意することが必要です。

相続時精算課税制度を使うための要件

相続時精算課税制度を使うためには、いくつかの要件があります。

まずは、制度利用の要件を確認しておきましょう。

なお、相続時精算課税制度は、その対象者ごとに適用を選択できます。

例えば、父から長男への贈与は相続時精算課税制度を選択する一方で、母から長男への贈与は相続時精算課税制度を使わないことも可能です。

同様に、父から長男への贈与は相続時精算課税制度を選択する一方で、父から二男に対しての贈与には相続時精算課税制度を適用しないこともできます。

また、贈与の対象となる財産などに制限はありません。

土地や建物といった不動産や預貯金、非上場の株式などどういった財産であっても、他の要件さえ満たせば相続時精算課税制度の適用は可能です。

要件
  • 60歳以上の父母又は祖父母からの贈与であること
  • 贈与を受ける人が20歳以上であること
  • 相続時精算課税選択届出書等を提出すること

60歳以上の父母又は祖父母からの贈与であること

相続時精算課税制度には、贈与者の要件があります。

贈与者が60歳以上で、かつ贈与を受ける人の父母または祖父母であることがその要件です。

60歳未満の父母からの贈与や、叔父や叔母といった直系尊属以外の方から贈与には、相続時精算課税制度は適用できません。

贈与を受ける人が20歳以上であること

相続時精算課税制度には、贈与を受ける人の年齢にも要件があります。

贈与を受ける人が20歳以上であることが要件とされているため、受贈者が20歳未満の場合には相続時精算課税制度は利用できません。

相続時精算課税選択届出書等を提出すること

相続時精算課税制度を適用するには、「相続時精算課税選択届出書」や受贈者の戸籍謄本など一定の書類を、納税地の所轄税務署へ提出しなければなりません。

この提出期限は贈与税の申告期限と同様、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間とされています。

遅れてしまった場合には、もはやその年分の相続時精算課税制度の適用は認められないのが通常です。

相続時精算課税制度の利用を前提として多額の贈与をしたにも関わらず、この届出を忘れてしまうと高額な贈与税がかかってしまうこととなりますので、期限までに忘れずに届出するようにしてください。

「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」の関係性・非課税枠の違い

「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」の関係性・非課税枠の違い

相続時精算課税制度に対して、特に何ら届出などを行わない通常の贈与のことを「暦年贈与」といいます。

ここでは、相続時精算課税制度と暦年贈与の関係性や非課税枠の違いについて解説していきます。

相続時精算課税制度と暦年贈与との関係

まず知っておいて頂きたいのは、一度相続時精算課税制度を適用すると、もう二度と通常の贈与である暦年贈与には戻せないということです。

「大きな額の贈与を受ける今年だけ相続時精算課税制度を使い、来年からは暦年贈与へ戻そう」というようなことは認められていないのです。

ですから、相続時精算課税制度の適用を受けようとする際には、長期的な視点からよく吟味をする必要があります。

相続時精算課税選択届出書を提出してから後悔してしまうことのないよう、税理士などの専門家へ相談しながら、しっかりと検討するようにしてください。

なお、繰り返しにはなりますが、父から長男への贈与は相続時精算課税制度を選択する一方で、母から長男への贈与は暦年贈与のままとすることや、父から長男への贈与は相続時精算課税制度を選択する一方で、父から二男に対しての贈与は暦年贈与のままとすることは可能です。

あくまでも、贈与者と受贈者ごとに適用を選択できるものであることも知っておきましょう。

相続時精算課税制度と暦年贈与の非課税枠

では、相続時精算課税制度と暦年贈与の、贈与税の非課税枠はどのようになっているのでしょうか?

比較して確認していきましょう。

暦年贈与の非課税枠

暦年贈与の非課税枠は、贈与を受けた人1人につき、年110万円です。

贈与税は、贈与を受けた人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

ですから、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。

この110万円は「贈与を受けた人」が持っている枠であり、贈与者ごとに枠があるわけではないことにも注意してください。

例えば、ある年に父から100万円、母からも100万円の贈与を受けた場合には、90万円に対して贈与税がかかります。

  • 100万円+100万円-110万円=90万円

父からの贈与も母からの贈与も、それぞれ110万円以下だから非課税ということではありません。

相続時精算課税制度の非課税枠

一方で、相続時精算課税制度を使った場合、贈与税は累計2,500万円まで非課税となります。

こちらは1年間ではなく、累計であるという点に注意してください。

累計2,500万円を超えた場合には、その超えた額に対し、一律20%の贈与税が課されます。

なお、相続時精算課税制度を選択した場合には、以後はその贈与者から受けた贈与につき、年110万円の非課税枠は使えません。

例えば、相続時精算課税を選択した年から、毎年1,000万円の贈与を4年間受けた場合で考えてみましょう。

この場合には、次のようになります。

  • 1年目の1,000万円:1,000万円<2,500万円(非課税枠)なので、贈与税はかからない
  • 2年目の1,000万円:(1年目の1,000万円)+(2年目の1,000万円)=2,000万円<2,500万円(非課税枠)なので、贈与税はかからない
  • 3年目の1,000万円:(2年目までの2,000万円)+(3年目の1,000万円)=3,000万円>2,500万円(非課税枠)なので、3,000万円-2,500万円=500万円に対して20%で課税される
  • 4年目の1,000万円:既に前年分までで非課税枠の2,500万円を超えているので、1,000万円全額に対して20%で課税される

ただし、繰り返しお伝えしているように、贈与税は2,500万円まで非課税となる一方で、その全額が相続時に相続税の課税対象となることには注意が必要です。

相続時精算課税制度は活用した方が良い?

相続時精算課税制度は活用した方が良い?

それでは、相続時精算課税制度は活用したほうが良いのでしょうか?

結論を言えば、「生前贈与をして相続税を安くしたい」という理由であれば、相続時精算課税制度の利用はおすすめできません。

なぜなら、相続時精算課税制度はあくまでの相続時に精算して課税されてしまう制度であるためです。

相続税を減らすためにコツコツと生前贈与をしても、その贈与が相続時精算課税制度を使ったものであれば、相続税の計算上、贈与はなかったものとされてしまうのです。

では、相続時精算課税制度を使った場合にどうなるのか、贈与時点と相続時とに分けて解説します。

相続時精算課税制度で贈与税は安くなる

相続時精算課税制度を利用すると、贈与税は安く抑えられます。

累計で2,500万円の非課税枠があるほか、2,500万円を超えた分も一律20%という低い税率で課税されるためです。

例えば、父から20歳以上の子へ評価額4,000万円の不動産を一括贈与した場合で比較してみましょう。

相続時精算課税制度を使った場合の贈与税は、300万円です。

  1. 4,000万円-2,500万円=1,500万円
  2. 1,500万円×20%=300万円

一方で、この贈与が暦年課税であった場合の贈与税は、1,530万円にもなります。

なお、その年に他の贈与を受けていない前提の計算です。

  1. 4,000万円-110万円=3,890万円
  2. 3,890万円×50%-415万円=1,530万円

この例の場合、暦年贈与と相続時精算課税との税額の差は1,230万円にも上ります。

これは、大きな差だと言えるでしょう。

しかし、これだけ贈与税が安くなるるからといって、相続時精算課税制度を使おうと決めてしまうのは早計です。

その理由は、次で見る相続時の持ち戻しにあります。

相続時精算課税制度は相続時に持ち戻されてしまう

相続時精算課税制度は、単なる贈与税の非課税制度ではありません。

相続時精算課税の実態は、「贈与税ではなく、相続税で生前贈与ができる制度」なのです。

先ほど挙げた、父から20歳以上の子へ、評価額4,000万円の不動産を相続時精算課税制度を使って贈与した場合について、相続時にどうなるのか見ていきましょう。

相続時精算課税制度を使った後で相続が起きたらどうなるか

この父が亡くなった際には、父が亡くなった際に持っていた財産などに対して相続税がかかります。

しかし、相続税の計算をする際には、相続時精算課税制度を使って行った贈与はすべて足し戻して計算をすることになっているのです。

例えば、この父は元々、1億円相当の財産を持っていたとします。

このうち、評価額4,000万円相当の自宅不動産を、相続時精算課税制度を使って子へ生前贈与しました。

これによりかかった贈与税は、前述の通りの300万円です。

そうすると、その後財産の増減がなかったと仮定すれば、相続が起きた際に父の財産総額は6,000万円となっているはずです。

しかし、相続時精算課税制度を使った贈与をした場合には、この6,000万円に対してだけ相続税がかかるわけではありません。

相続税の計算上、相続時精算課税制度を使って贈与をした4,000万円も足し戻されてしまいます。

こうして生前贈与をしたはずの財産が足し戻された結果、1億円相当の財産に対して相続税がかかってしまうわけです。

贈与をしなかった場合と比べて、相続税の対象となる財産は一切減っていないことがおわかりいただけるでしょう。

なお、2,500万円を超えた分の贈与に対して生前に支払った300万円の贈与税は、相続税から差し引かれます。

ですから、税金が二重払いになるわけではありません。

相続時精算課税は相続税の節税には使えない

このように、相続時精算課税制度を使って贈与をした財産は相続税の計算の際に持ち戻されてしまいます。

つまり、相続時精算課税制度を使った贈与には、相続税を減らす効果は一切ないということなのです。

生前贈与をするにはいくつかの理由が考えられますが、中でも「財産を生前に渡すことで、相続税を減らすため」という理由での生前贈与は少なくありません。

この理由から生前贈与をするのであれば、相続時精算課税制度は選択しないほうが良いでしょう。

相続時精算課税制度を使った生前贈与には、相続税を安くする効果はありません。

それどころか、税金面のみでみれば、むしろ損をしてしまう可能性が高いとさえ言えるのです。

なぜなら、相続時精算課税制度を使うことにより、暦年贈与なら使えたはずの年110万円の非課税枠さえ使えなくなってしまうからです。

さらに、相続で土地を引き継いだ場合には、一定の要件をもとに土地の評価額が最大8割減できる小規模宅地等の特例制度がありますが、これも相続時精算課税制度を使った場合には利用できなくなってしまいます。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度のメリット

ここまでお読みいただいて、相続時精算課税制度の存在意義に疑問を持って人もいるのではないでしょうか?

しかし、相続税を下げる効果はないとはいえ、相続時精算課税制度にメリットがないわけではありません。

相続時精算課税制度のメリットとしては、主に贈与税より安くなりやすい相続税で生前贈与ができる点と、贈与後にその財産が値上がりしても贈与時点の価額で課税されるという2点が挙げられます。

どういうことなのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット
  • 贈与税より安くなりやすい相続税で生前贈与ができる
  • その後値上がりしても贈与時点の価額で課税される

贈与税より安くなりやすい相続税で生前贈与ができる

自分の目の黒いうちに子に渡しておきたい財産がある場合には、相続時精算課税の利用は効果的な選択肢となります。

例えば、会社を経営している人が、その会社の株式を後継者候補である息子へ贈与する場合をイメージしてみてください。

相続が起きたタイミングで株式を渡して良いのですが、承継のタイミングを考えた際に、生前に渡したいという場合もあるでしょう。

しかし、生前に株式を渡すとなると、通常かかる税金は贈与税です。

贈与税は一般的に相続税よりも高額になるケースが多いため、生前に株式を渡したくても問題となるわけです。

経営的には生前に渡したいと考えているものの、税金のせいで相続が起きるまで渡せないとなれば、これは本末転倒ですね。

このようなときに役に立つのが、相続時精算課税制度です。

相続時精算課税制度を使うことにより、高額な贈与税ではなく、相続税での生前贈与が可能となるためです。

このように、生前に渡しておきたい財産があるものの贈与税がハードルとなってしまうというケースでは、相続時精算課税制度は有用だといえるでしょう。

その後値上がりしても贈与時点の価額で課税される

贈与後に値上がりの確実性が見込まれる財産についても、相続時精算課税制度は有用といえます。

なぜなら、相続開始時点に持ち戻される価額は、相続が起きた時点での価額ではなく、贈与時点での価額とされているためです。

例えば、贈与時点では2,000万円である財産が、相続が起きた際には5,000万円となっているような場合を想定してみてください。

この場合、特に生前贈与などをしなければ、相続が起きた際、その時点での価額である5,000万円の評価で相続税が計算されます。

一方で、2,000万円の時点で相続時精算課税制度を使って贈与をしていた場合には、相続時に足し戻される金額は、その時点の価額である5,000万円ではなく、贈与時点の価額である2,000万円なのです。

これにより、差額分に相当する相続税が軽減できます。

とはいえ、現実的に言えば、値上がりが確実かどうかなど簡単に判断できるものではありません。

ですから、こちらはあくまでも副次的なメリットだと考えた方が良いでしょう。

なお、相続が起きた時点での価額が、贈与時点から下落してしまうことも考えられます。

その場合であっても贈与時点での価額で持ち戻されることになるため、場合によっては損をしてしまう可能性もあるということを知っておいてください。

まとめ

相続時精算課税制度は、単なる非課税制度ではありません。

そうではなく、自分の目の黒いうちの贈与が相続税でできる制度だということがおわかり頂けたのではないでしょうか?

相続時精算課税制度は、表面だけを見てしまうと理解することが難しい制度です。

きちんと制度を理解せず、安易に選択をすれば後悔してしまうことにもなりかねません。

制度の利用に際しては、税理士等の専門家にしっかりと相談の上、検討されることをおすすめします。

 

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