初めて告別式を弔問する方は、式の流れやマナーなどがわからず、葬儀会場で戸惑ってしまう場面も少なくありません。
また、これが原因となりご自身の意思に反して遺族へ不遜な態度を取ってしまい、葬儀主催者側から反感を買ってしまうこともあるかもしれません。
そこで、ここではこのようなことがないよう、告別式の流れを時間ごとに解説しながら、「参列者側のマナー」「火葬の流れ」「葬儀・告別式の準備事項」などを解説します。
目次
告別式とは

初めに、私たちが良く耳にする葬儀・告別式ということばについて説明します。
近年では、葬儀と告別式を同じ儀式と捉えてこの2つの総称を「お葬式」と呼ぶことが一般的ですが、本来この2つの儀式はまったく異なるものです。
ここでは、葬儀・告別式の本来の意味を解説しながら、変わりつつあるこの儀式の価値観について説明します。
葬儀と告別式は別の儀式
先ほど解説したとおり、現在は葬儀・告別式の一連の流れをお葬式として捉えられていますが、本来この2つの儀式には次のような意味合いがあります。
- 葬儀:僧侶から読経を頂き、遺族が故人の冥福を祈る宗教儀式
- 告別式:参列者がお焼香を行うことで故人との最後のお別れを行う儀式
以前は遺族や近親者が初めに葬儀を行い、その後に参列者を交えて告別式を行う流れが一般的でした。
しかし、現在ではお葬式の中でこの2つの儀式を同時に行い葬儀と告別式を区別することはありません。
正確には、開式から遺族のお焼香までが「葬儀」、一般参列者のお焼香から閉式までが「告別式」です。
変わりつつある告別式
葬儀のスタイルが多様化している現代では、それに伴って告別式の在り方にも変化が見られるようになりました。
具体的には、宗教色を排除した「お別れ会」や「故人を偲ぶ会」などを葬儀後に行うケースがこれに該当し、家族葬などの少人数で葬儀を営む際にはこの方法が取られることが多いようです。
家族葬では葬儀に参加する方は、家族や近親者などの一部の方に限られるため、故人が生前お世話になった方や友人・知人が故人を偲ぶ場がありません。
そのため、このような方を対象に告別式とは別のお別れ会や偲ぶ会を設ける傾向にあります。
葬儀・告別式の流れとかかる時間(11:00開式の場合の例)

それでは、ここからは、葬儀・告別式がどのように進んでいくのか、その流れを時間とともに解説します。
葬儀・告別式に出席したことがない方は、この流れがわかれば葬儀会場で不安を感じることも少なくなるでしょう。
- 10:30~:受付
- 10:45~:着席
- 11:00~:僧侶入場・開式
- 読経・引導
- 弔辞・弔電
- 読経・焼香
- 11:40~:僧侶退場・開式
- 11:45~出棺
10:30~:受付
11:00から葬儀・告別式を行う場合は、その30分前である10:30から受付が開始されることが一般的です。
前日の役割分担で受付担当になった方は10:00ごろから準備を始め、会計担当者は集計された香典と記帳が間違いなく喪主に渡るように事前準備を行います。
10:45~:着席
開式の15分前には、「喪主」「遺族」「参列者」は着席して僧侶の入場を待ちましょう。
なお、着席する場所は一般的には祭壇に向かって右側に遺族や親族が、左側に友人・知人や職場関係者が着席します。
11:00~:僧侶入場・開式
葬儀・告別式の開始時間になると、葬儀会社の担当者に呼び込まれた僧侶が斎場に入場し開式となります。
僧侶の入場時には、遺族や参列者は合掌し黙礼で迎えるのがマナーです。
読経・引導
葬儀・告別式の開式と同時に僧侶による読経が行われ、この読経の中で僧侶は故人に戒名が授け、遺族と参列者は故人の冥福をお祈りします。
なお、僧侶から戒名を頂くことを「引導」と呼び、これにより故人は浄土へ導かれます。
弔辞・弔電
葬儀会社の担当者が弔辞を述べる人物の紹介を行い、弔辞者は指定された場所で弔辞を読み上げ、その後弔辞を祭壇に供えます。
弔電は葬儀会社の担当者によって3通ほど読み上げられますが、その他の弔電は名前だけが読み上げられ、その後は祭壇に供えられます。
弔辞を依頼する人物
弔辞を依頼する人物は、遺族ではなく故人と特に親しかった方や職場の上司や同僚が行うことが一般的です。
なお、複数の方に弔辞を依頼する際には、弔辞の内容が偏らないように異なる立場の人物に依頼するよう心がけましょう。
読経・焼香
弔辞と弔電が読み上げられたタイミングで再び僧侶の読経が行われ、次の順番でお焼香が行われます。
- 喪主
- 遺族
- 親族
- 参列者
11:40~:僧侶退場・開式
お焼香が終わると僧侶は退場し、入場時と同じく合掌し黙礼でお見送りします。
葬儀会社の担当者が開式の辞を述べ葬儀・告別式が終了となりますが、この後は出棺が行われるため、参列者は指示に従って野外に待機し出棺を待ちましょう。
11:45~出棺
斎場の中で行う葬儀・告別式は僧侶の退場で開式となり、一般参列者は外に出て出棺を待ちますが、遺族は斎場にとどまり出棺の準備を行います。
出棺の流れについては次のとおりです。
お別れの儀
斎場にとどまった遺族や故人と特に親しかった方は、祭壇から降ろした棺を囲んで「お別れの儀」を行います。
お別れの儀では棺の中に花を敷き詰め、ご遺体を飾ります。
故人の思い出の品や写真などを棺に入れる場合は、このタイミングで行いましょう。
なお、最近では省略することも増えましたが、石で釘を打ち、棺を閉じる「釘打ち」を行う場合もあります。
棺の運搬
棺の扉を閉めたら、霊柩車へ棺の運搬を行います。
この際には遺族側の男性が6人程度で棺を運びますが、棺の中に収められている故人の足が先頭になるように運ぶ慣習があるため、注意が必要です。
棺の運搬を先頭に位牌を持った喪主と遺影を持った遺族が続き、野外に待機している参列者の前に並びます。
遺族代表の挨拶
参列者の前に並んだ遺族は、参列者に向けて位牌と遺影を向けて持ち、遺族代表として喪主が挨拶を行います。
なお、この際の挨拶は葬儀の喪主が務めることが一般的ですが、喪主は故人の妻が務め、挨拶は長男が務めるなどの場合もあります。
つまり、必ず喪主が挨拶を行わなければならないわけではありません。
挨拶の内容は、次の内容を含めて2分~3分程度の短い時間で終えることが鉄則です。
- ご自身と故人の関係性
- 会葬に対してのお礼の言葉
- 故人の人となりや死因・亡くなった際の状況など(死因と状況などは省略可)
- 故人が生前にお世話になったことへのお礼の言葉
- 遺族に対しての支援のお願い
出棺
代表者の挨拶が終わった後は、喪主と遺族は参列者に対して一礼して出棺を行います。
「親族」「遺族」「故人と特に親しかった友人・知人」は火葬場へ向かうためマイクロバスなどに乗車しますが、一般の参列者は出棺が終われば解散となります。
火葬の流れとかかる時間(12:00到着の場合)

「喪主」「遺族」「故人と特に親しかった方」は、葬儀・告別式後には霊柩車を先頭に火葬場へ向かい、火葬とお骨上げの儀式を行います。
ここでは、火葬場に到着してからお骨上げの儀式までの流れを時間ごとに解説します。
- 12:00~:火葬場到着・納めの儀
- 12:10~:火葬
- 13:30~:お骨上げ
12:00~:火葬場到着・納めの儀
火葬場に到着した際には、始めに市区町村役場から受け取った「火葬許可証」を提出します。
その後、火葬炉の前に移動して位牌と遺影を祭壇前に飾り「納めの儀」を行い、僧侶の読経の下次の順番でお焼香を行い合掌します。
- 喪主
- 遺族
- 親族
- 親しい友人・知人
12:10~:火葬
納めの儀が終われば、棺は火葬炉に運ばれ火葬が開始されます。
火葬時間は故人の年齢や体の大きさにもより異なりますが、一般的には1時間から2時間ほどかかるため、その間参加者は火葬場職員の誘導のもと、控室で待機します。
控室では飲み物や軽食などが用意してあるため、遺族は僧侶や参列者へこれらをすすめながら火葬終了後までの時間を過ごしましょう。
13:30~:お骨上げ
火葬後はある程度の冷却時間を経て終了となり、遺族は再び火葬炉の前に戻り「お骨上げの儀式」を行います。
お骨上げの儀式とは、遺骨を箸で拾い骨壺に納める儀式です。
お住いの地域や宗派によっても若干の違いはありますが、一般的にはまずは歯を骨壺に納め、その後足から頭にかけて順番に遺骨を拾い最後は故人と最も縁が深い人物が喉仏を納めます。
葬儀・告別式の事前準備

一般的にはお通夜の翌日に営まれる葬儀・告別式ですが、この際には次の事前準備が必要です。
ここでは、円滑な葬儀・告別式を行うための事前準備を解説します。
- 受付担当者の決定
- 席次・焼香順の決定
- 弔辞・弔電の読み上げ順の決定
- 喪主挨拶の決定
- 火葬場への同行者・移動手段の決定
- 僧侶へのお布施の準備
受付担当者の決定
葬儀・告別式では、斎場の入り口に受付を設けるため受付担当者を決める必要がありますが、この担当者はお通夜の受付を担当した人物が行うことが一般的です。
なお、受付担当者が行う業務は香典の管理や記帳の案内だけではなく、斎場の案内も含まれています。
そのため、お通夜と葬儀・告別式を別の斎場で行う場合など、トイレや喫煙所の位置などを事前に確認し参列者を誘導できる準備を行っておきましょう。
席次・焼香順の決定
先ほど解説したように、葬儀・告別式の席は祭壇に向かって右が親族、左側が一般の弔問客の席になります。
また、席順は上座下座があり通路側が上座となることから、世話役代表や葬儀委員長がいる場合はこれらの人物は通路側の席となります。
焼香に関しても同様に順番あり、故人と血縁関係が濃い順番で行うことがマナーです。
ただし、これらのマナーは地域や宗派によっても若干の相違があるため、遺族だけで決めるのは危険です。
葬儀社の担当者を中心に、その地域の葬儀事情に詳しい方からアドバイスを頂きながら準備を進める方が良いでしょう。
弔辞・弔電の読み上げ順の決定
弔辞・弔電を読む順番に関しては、決まりはないとする考え方もありますが、万が一のトラブルを考慮して年長者の弔辞・弔電から読んだ方が無難です。
この点についても地域の慣習や宗派による違いがあるため、葬儀会社の担当者と共に順番を決めた方が良いでしょう。
喪主挨拶の決定
喪主は出棺の際に参列者を前にして挨拶を行いますが、この際話す内容には次のような内容を含めるため、あらかじめ用意した原稿を読み上げた方が良いでしょう。
火葬場への同行者・移動手段の決定
火葬場へ同行する人物は遺族や親族が中心となりますが、これ以外にも故人と特に縁がある人物が同行する場合がるため、遺族はこの人物を事前に決めておく必要があります。
また、火葬場までの移動は葬儀会社が準備したマイクロバスで行うことが一般的ですが、マイクロバスを所有していない葬儀社の場合はタクシーや自家用車などの移動手段を準備する必要があります。
僧侶へのお布施の準備
葬儀・告別式が終わった段階で僧侶へお布施を渡そうと考えている場合は、事前に準備しておきましょう。
なお、お布施は必ずしも葬儀・告別式の終了時に渡すという決まりはありません。
「お通夜」「葬儀・告別式」「日を改めて寺院へ持参する」など、さまざまな状況で渡すことが可能です。
【遺族側】葬儀・告別式での注意点・マナー

葬儀全体の責任者である喪主や運営する側の遺族には、参列者の誰もが不満を感じない葬儀を行う責任があります。
そこで、ここでは参列者への配慮が行き届いた葬儀・告別式を行うための、遺族側が注意しなければならない注意点・マナーを解説します。
- 全体の流れの把握
- 喪主としての振る舞い・挨拶
全体の流れの把握
「葬儀・告別式の流れとかかる時間」の中で解説したように、儀式の内容は多岐に渡るため、運営者側である喪主や遺族はその内容とタイムスケジュールを把握して管理する必要があります。
葬儀・告別式全体の流れを把握することで次の行動に速やかに行うことができ、初めて葬儀会場を訪れる参列者に対しても、不便をかけることなく誘導することができます。
なお、葬儀・告別式の後に行う火葬は、火葬場を予約して使用するため開始時刻は厳密に守らなければなりません。
時間を管理することで、その後に行う儀式が遅れることもないでしょう。
喪主としての振る舞い・挨拶
葬儀・告別式の最後は出棺を行い、その際喪主は参列者を前にした挨拶を行います。
挨拶は故人が生前にお世話になったことへの感謝のことばと、これからも変わらない支援をお願いする内容となっているため、しっかりとした発声と簡潔な言い回しで葬儀を締めなければなりません。
この他、喪主は弔問客や僧侶に対して葬儀・告別式全体を通して多くの場面で挨拶を行います。
葬儀の中心人物として、正しいマナーと言葉遣いで弔問客へ対応するよう心がけましょう。
【参列者側】葬儀・告別式での注意点・マナー

葬儀・告別式を初めて弔問する方や葬儀経験が少ない方は、日常生活とはかけ離れた雰囲気に緊張してしまい、ついうっかり葬儀には相応しくない行動をとってしまうことがあります。
そこで、ここでは葬儀参列者側が葬儀・告別式で気を付けなければならない注意点・マナーを解説します。
- 香典のマナー
- 数珠のマナー
- 服装のマナー
- 出席できない際のマナー
香典のマナー
香典は、その金額に応じた香典袋を使用することがマナーです。
そのため、本来は結びきりの水引が付いた香典袋を使用しますが、5,000円以下の香典を包む場合は水引が印刷された香典袋を使用しても良いでしょう。
表書きは「御霊前」とし、持ち運びには袱紗(ふくさ)を使用します。
数珠のマナー
葬儀の宗派によっても数珠は異なりますが、弔問客として葬儀に参列する場合は、ご自身がお持ちの数珠を使用することも可能です。
数珠の持ち方も宗派によっても異なりますが、僧侶の読経時には左手にかけ、お焼香をする際に両手にかけて合掌するのが一般的なマナーであり、守っていれば問題はありません。
服装のマナー
葬儀・告別式を弔問する参列者の服装は、喪主側からの指定がない限り準喪服もしくは略式喪服を着用するのがマナーですが、その他の注意点もあります。
ここでは、基本的な服装と注意点を「男性」「女性」「子供」に分けて紹介します。
男性の服装
男性の服装は次のとおりです。
- 黒色または濃紺のダークスーツ
- 白色ワイシャツ
- 黒色ネクタイ
- 黒色靴下
- 光沢が無く金属がついていない革性の黒色の靴
結婚指輪以外の装飾品の使用などはできないため、大きめの時計やピンネクタイなどは着用することはできません。
女性の服装
女性の服装は次のとおりです。
- 黒色・濃紺・グレーのワンピースもしくはスーツ
- 黒色ストッキング
- 黒色で光沢が無く金属がついていない黒色のパンプス
結婚指輪以外の装飾品や貴金属は着用不可ですが、女性の場合は真珠の一連のネックレスは着用することができます。
肌の露出は避け化粧はナチュラルメイクを心掛け、葬儀の場に相応しくないネイルやマニキュアなどは控えましょう。
子供の服装
中学生や高校生であれば制服を着用しますが、小学生や未就学児の場合は次のような服装が理想です。
- ブレザーもしくは白色のシャツに紺色のセーターなど
- 紺色のズボンやスカート
- 白色の靴下
靴は黒色にはこだわりませんが、キャラクターがプリントされた靴は避けましょう。
派手な色の服装は控えできる限りシンプルな服装を心掛けてください。
出席できない際のマナー
葬儀・告別式に出席することができない場合は弔電やお悔みの手紙などを速やかに送りますが、この際の文中には葬儀に参列できない事情を記載します。
なお、この他弔意を示すためには葬儀会場へ供花を送るなどの方法もあります。
まとめ

葬儀・告別式を主催することは人生の中で頻繫に訪れるわけではありません。
それだけに儀式の流れや事前準備などが曖昧になってしまい、それが原因となって実際の葬儀に支障が出てしまうケースが見られます。
葬儀全体の流れや細やかなマナーまでを再確認しておけば、多くの弔問客を前にしても落ち着いた気持ちで葬儀にあたることができるため、故人との最後の別れに悔いを残すこともないでしょう。