仏教の宗教的慣習において、「命日」「お盆」「お彼岸」などは、先祖の霊を祀る特別な日とされていますが、特に命日に関しては一周忌や三周忌などの法要を行い、手厚く故人を供養するのが習わしです。
しかし、この命日の正確な意味やマナーを理解している方は、あまり多くはないのではないでしょうか?
そこでここでは、この命日の意味やマナーを説明しながら「種類」「注意点」「仏前へ供えるお供え物」などを解説します。
命日は、故人を偲ぶ気持ちが何よりも重要です。
命日についての正確なマナーや注意点を知ることができれば、落ち着いた気持ちで命日を迎え故人を供養することができるでしょう。
命日とは
一般的な命日とは故人が亡くなった月日をさし、別名「祥月命日(しょうげつめいにち)」と呼ばれます。
一方で、故人が亡くなった日のみを表す「月命日」と呼ばれる命日もあります。
この祥月命日と月命日には、遺族や関係者があつまり故人を弔うのが習わしです。
また、一定の年数が経過した祥月命日では年忌法要を行い大規模な供養が行われます。
命日にすること
故人が亡くなった日である命日は特別な日であることがわかりましたが、実際にこの日には何を行うのでしょうか?
ここでは、命日の過ごし方を「身内の命日」と「お世話になった方の命日」に分けて解説します。
身内の命日
身内の祥月命日や月命日を迎えた際には、仏壇に故人の好物の飲み物(お酒も可)や食べ物を供え線香をあげましょう。
この際の仏壇やお墓は、普段よりも念入りに掃除を行います。
なお、三周忌までは白色を中心とした派手ではない色の花を供えますが、身内の方の命日であれば故人が生前好きだった花を供えても良いとされています。
お世話になった方の命日
お世話になった方の祥月命日や月命日を迎えた際には、お供えや花を持参してその方の家の仏壇やお墓参りを行い故人を偲びましょう。
持参する花の種類は、先ほどお伝えしたように白を基調とした派手ではない花となるため、次の種類がおすすめです。
- 菊
- ユリ
- カーネーション
- デンファレ
- グラジオラス
- トルコキキョウ
なお、仏教では偶数を「割り切れる」という意味で、「故人の魂と現世の絆が切れてしまう」と考えられています。
「お供えのお菓子」「フルーツの盛り合わせ」「香典」などは、奇数の個数と金額にするようにしましょう。
命日の種類
冒頭でもお伝えしたとおり、命日には祥月命日と月命日の2種類があります。
ここでは、この命日についてそれぞれ解説します。
毎年訪れる祥月命日(しょうつきめいにち)
祥月命日は一周忌以降の故人が亡くなった日とされているため、毎年一回の特別な命日という位置付けとなることから、一定期間が経過した際には法要を行います。
一般的な祥月命日の法要は次のとおりです。
- 一周忌
- 三回忌
- 七回忌
- 十三回忌
- 十七回忌
- 二十三回忌
- 二十七回忌
- 三十三回忌
この法要では親族を中心に故人と縁がある方が招かれ、僧侶から読経をいただきお墓まりや会食をして故人を偲びます。
なお、この法要は回数を重ねるごとに参加者が少なくなり、最終的に身内だけで法要を行うようになります。
また、法要を行わない祥月命日に関しては、身内だけでお墓参りや仏壇の掃除をして過ごす場合がほとんどです。
毎月訪れる月命日
月命日は、故人が亡くなった日と同じ日のことです。
例えば、15日に故人が亡くなった場合は、毎月15日が月命日です。
この月命日は祥月命日と被ることはありませんので、祥月命日の月を除いた11ヶ月が月命日となります。
月命日は祥月命日のような大規模な法要を行うことはありませんが、親族のみで仏壇やお墓の清掃を行い、故人が好きだった食べ物などをお供えするなどして過ごします。
命日に行う法要の内容
ここまでは命日について解説してきましたが、この命日に行う法要とはどのような内容になっているのでしょうか?
ここでは、法要の起源や行い方を解説します。
法要とは
仏教では故人が亡くなって一定期間が経過した際には、故人の追善供養として年忌法要を行います。
行われる年忌法要は次のとおりです。
- 一周忌
- 三回忌
- 七回忌
- 十三回忌
- 十七回忌
- 二十三回忌
- 二十七回忌
- 三十三回忌
- 三十七回忌
- 四十三回忌
- 四十七回忌
- 五十回忌
- 百回忌
一般的には三十三回忌か五十回忌で弔い上げとなり、それ以降の法要を行うことはありません。
これは故人の死後三十三回忌を過ぎれば、どんな悪人であっても極楽浄土へ行くことができ、その時点で故人はご先祖様になると考えられているためです。
法要の起源
年忌法要の起源は仏教だけではなく、中国の儒教が大きく関与しています。
儒教では故人の死後合計10回の区切りに、冥界の王の審判を受ける「十王信仰」が普及しています。
この審判の際には、遺族による追善供養の功徳が死者に良い結果をもたらすと信じられていたため、追善供養としての法要が広まりました。
このように儒教の中で広まった法要という教えを起源とし、仏教にも法要が広まったと考えられています。
法要で行うこと
年忌法要は周忌によって行い方が異なります。
一周忌や三回忌などは親族を中心に故人と生前親しかった方が大勢参列し、一般的には法要後に会食を行います。
それ以降に行われる法要は、規模を縮小し親族のみで行われるようになります。
なお、法要の流れはどのような法要であっても次のようになります。
- 施主の挨拶
- 僧侶の読経
- 参列者の焼香
- 僧侶の法話
塔婆供養を行う
命日の法要では、遺族や参列者によって「塔婆供養(とうばくよう)」を行う場合があります。
この塔婆供養とは、追善供養としてほそ長い板をお墓の後ろに立て故人の冥福を祈る行為です。
なお、仏教の中でも浄土真宗だけは塔婆を立てることはありませんので注意が必要です。
命日の法要に参列する際の注意点
ここからは、施主や遺族側ではなく法要に呼ばれた際の参列者として気をつける注意点を解説します。
- 案内状への返信は速やかに行う
- 服装は一周忌までは略礼装・三回忌以降は平服が一般的
- 供物料は香典の半額が目安
- 会食では故人との思い出を話す
- 法要を欠席する際の連絡は速やかに行う
注意点①:案内状への返信は速やかに行う
施主側がその法要に何人参列者が集うのかがわからなければ、法要の詳細を決めることができません。
そのため、法要の案内が来た際には速やかに返事を出すのがマナーです。
なお、法要に出席する場合は返信ハガキを出した後に電話で挨拶するとより丁寧です。
注意点②:服装は一周忌までは略礼装・三回忌以降は平服が一般的
遺族側は一周忌まで正式な喪服を着用して法事に出席するのがマナーですが、参列者は告別式で着用した略礼服を着用します。
なお、三周忌以降の参列者は平服での参加となることが一般的です。
注意点③:供物料は香典の半額が目安
供物料の金額は故人との関係により異なりますが、香典の半分程度が目安となります。
水引は黒白または双銀の結び切りの不祝儀袋を使います。
表書きは四十九日以降は「御仏前」「御供物料」などが良いでしょう。
なお、水引は関西の一部の地域では黄白の水引を使う場合もありますので注意が必要です。
注意点④:会食では故人との思い出を話す
故人が亡くなって直後の会食とは異なり、祥月命日での会食は和やかな雰囲気となることが多いため、故人との生前の思い出話を楽しみましょう。
注意点⑤:法要を欠席する際の連絡は速やかに行う
欠席する際の連絡は、できるだけ速やかに行うのがマナーです。
お詫びの言葉を添え返信用ハガキを出し、電話でも一報を入れ法事を欠席することへのお詫びをします。
なお、供物料は法事に参列しない場合でも現金書留を利用して贈るのがマナーです。
法要当日よりも早く着くように手配しましょう。
仏教以外の命日の法要
ここまでは仏教における命日を解説してきましたが、この命日という考え方は仏教以外の宗教ではどのように考えられているのでしょうか?
ここでは、仏教以外の宗教として神道とキリスト教を例に命日について解説します。
神式の法要
神道における命日は霊祭と呼ばれます。
この霊祭は仏教における年忌法要と同じく、次のように一定期間ごとに行われます。
- 一年祭
- 二年祭
- 三年祭
- 五年祭
- 十年祭
十年祭の後は10年ごとに法要を行い、これは五十年祭まで続きます。
なお、五十年祭を過ぎた後は百年祭で弔い上げとなります。
霊祭の流れは次のとおりです。
- 清祓いの儀
- 祝詞(のりと)奏上
- 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
- 会食
キリスト教の法要
キリスト教の教義では魂は神のもとへ帰ると信じられているため、仏教のように故人の死後その死を改めて供養する追善供養を行うことはありません。
ただし、亡くなった方に思いを馳せる追悼儀式は存在し、これはカトリックでは「追悼ミサ」、プロテスタントでは「記念集会」呼ばれます。
没年月日は「昇天日」と呼ばれ、教会でミサ・集会を行い遺族の自宅にて祈りを捧げます。
なお、キリスト教では仏教のような年忌法要という概念はありません。
ただし、プロテスタントに限っては昇天日の「一年後」「三年後」「七年後」を節目の時期として、教会で記念集会を行います。
祥月命日の過ごし方
祥月命日は一年に一度の特別な日であるため、普段よりも丁寧な供養を行います。
一般的な祥月命日の過ごし方は次のとおりです。
お墓参りをする
故人の身内は法要が行われる前にお墓に出向き、お墓の清掃とお供えをしてお墓参りを行います。
仏壇に手を合わせる
お墓が遠方にあり足を運ぶことができない場合は、自宅にある仏壇を普段よりも念入りに清掃し、お供えをして手を合わせます。
焼香を行う
お墓や仏壇にお供えをした際には、焼香を行います。
塔婆供養を行う
遺族や故人の関係者の有志が塔婆供養を行う場合もあります。
塔婆供養とは故人の追善供養として板状の塔婆をお墓の後ろに立てる行為です。
なお、この塔婆供養は法要の際に必ず行わなければならないわけではありません。
法要を行う年もある
先ほどお伝えしたとおり、故人がなくなって一定期間が経過した際には法要を行い、僧侶の読経や参列者を交えた会食を行い故人を手厚く弔います。
月命日の過ごし方
月命日では、遺族が集り法要を行うことはありません。
また、月命日の過ごし方に関しては特に決まりがないことから、家庭により過ごし方が異なるのが現状です。
中には複数ある月命日に近い日を選び、その日を合同の月命日と定め一度に全員の月命日を行う家庭もあり、そのやり方は様々です。
月命日は毎日訪れるためそこまで手厚い供養を行うことはありませんが、故人の好物や生前に好んだ花などを供えて焼香するというのが一般的な流れです。
命日の仏壇へのお供え物
命日には仏壇にお供えをしますが、普段はお菓子や果物をお供えしている家庭であっても、命日には故人が生前好きだった食べ物やお酒をお供えして故人に思い出せる内容にします。
ただし、いくら故人が生前に好んでいたからと言っても、殺生となる肉や魚のお供えは仏教の教義上タブーとされています。
なお、お供えは食べ物以外にお花を供えるのもおすすめです。
花は長持ちするわけではないため普段から供える方は少ないですが、特別な日である命日には故人が好む花を供え仏壇を彩りよく飾りましょう。
命日にお供えする花を選ぶポイント
命日にお供えする花は故人が好んだ花を飾るのがベストですが、仏前ということもあり全ての花を飾れるわけではありません。
故人の好みを取り入れながら、仏花として定番の菊や白を基調とした花を飾るのがポイントです。
なお、故人が亡くなってから年数が経過している一周忌や三回忌などの法要では、お花の種類に気を付ける必要がなくなるため、比較的派手な色の花をお供えすることも可能です。
仏前に花を供える際の注意点
仏前に供える花は命日にかかわらず、常に手入れのされた美しい状態でなくてはならないため日々のチェックが必要です。
枯れかけた枝や花びらはこまめに取り除き、美しい状態をできるだけ長くとどめておけるよう心がけましょう。
こまめに水を取替え水に浸かっている茎や葉は取り除くなどの手間をかければ、花は美しさを保つことができます。
お供えに適さない花
なお、お供え物の花には「とげ」のある花や「つた」のある花を使用するのはマナー違反となります。
また、悪臭がある花や匂いが強い花もおすすめできません。
まとめ
命日に故人を弔う際には、「遺族や関係者としての過ごし方」「お供え物のマナー」「法要に参加した際のマナー」などを知っておくことが重要です。
なお、故人とそれほど深い仲ではない方は、三回忌以降の法要に参列することはありません。
このようにな方は命日をきっかけに故人に思いをはせ、仏壇に手を合わせるなどして故人の供養を行いましょう。