大切な方を亡くし悲しみにくれるときであっても、遺族は家族の死を周囲の方へ知らせる「訃報の連絡」を行わなければなりません。
しかし、人生の中でこの連絡を経験する機会は少なく、精神的に不安定な状態でこの行為を正確に行うことができる方はそう多くはないでしょう。
そこで、ここでは訃報の連絡方法を説明しながら、「伝える範囲」「連絡方法別の文例」「訃報を受けた際の対応方法」などについて解説します。
目次
訃報とは?

訃報とは、人がなくなった際に届くお知らせを指す言葉です。
昔は葬儀を自宅で行うことが一般的でしたが、現在では葬儀会館を借りて行うことが多いため、訃報を受けた直後に葬儀会場が決まっている状況は多くはありません。
そのため、通常は死去から速やかに行うことが推奨される訃報の連絡ですが、葬儀会場や葬儀日程が決定されてから行う場合もあり、この場合の訃報には葬儀内容の案内という役割もあります。
訃報の読みは「ふほう」
訃報は「ふほう」と読み、この漢字を構成するそれぞれの文字には次のような意味があります。
- 訃(ふ):人の死に関する知らせ・急いで言う
- 報(ほう):何らかの事実をお知らせすること・報告
このように、この訃報のそれぞれの文字には「死」を直接的に表す意味は含まれていません。
このことからもわかるように、訃報とは誰かが亡くなったことを表しているのではなく、亡くなった知らせを報じるという意味があるのです。
訃報とよく似た「悲報」との違い
訃報とよく似た言葉に悲報がありますが、この2つの言葉には次のような違いがあります。
- 訃報:人が亡くなったことを知らせるという意味で他の意味は存在しない
- 悲報:悲しい知らせという意味で、伝える内容は人が亡くなったことに限定されない
このように、悲報は使用範囲が非常に広い言葉であるため、訃報とはまったく意味が異なります。
この言葉を同じ意味に捉えてしまうと、葬儀の現場で遺族に対して失礼な言葉となってしまうこともあります。
2つの意味の違いは明確に理解しておきましょう。
訃報連絡を行うタイミング
家族や親戚など身内に行う訃報連絡は、遺体を安置した段階で行います。
この際は亡くなったことのみを伝え、葬儀の日程や葬儀会場などの詳細については、後日改めて行います。
家族や親戚以外に行う訃報連絡は葬儀会場や葬儀日程が決まり次第行い、この際には死亡したことに加えて、葬儀日程や葬儀場所を含めた連絡を行いましょう。
訃報連絡の内容
訃報連絡の中で伝える内容は次のとおりです。
- 亡くなった方の氏名
- 亡くなった日時と死因(簡潔に)
- 通夜と葬儀・告別式の日程(未定の場合は後日)
- 通夜と葬儀・告別式を行う場所(未定の場合は後日)
- 葬儀形態と宗派
- 喪主の氏名と連絡先
- 身内だけで葬儀を行う場合はその旨を伝える
亡くなった知らせ(訃報)の連絡を行う範囲と順番

訃報を連絡する際の範囲は、概ね3親等以内が基本となりますが、それ以外の人物に関しては次の順番で行います。
- 近親者・親族
- 寺院・葬儀会社
- 故人の友人・知人
- ご自身の会社関係者
- 各自治体の代表者
順番①:近親者・親族
初めに訃報を伝えるのは、3親等以内の近親者や家族です。
特に遠方にお住いの方に対しては、葬儀会場までの移動を考慮して早めの連絡を行います。
順番②:寺院・葬儀会社
近親者や親族への連絡が終わったら、寺院や葬儀会社のへの連絡を行います。
菩提寺がある場合は速やかに連絡し僧侶の予定を押さえ、希望する葬儀会社があれば連絡後に面談を行い、その場で葬儀日程や葬儀内容などの詳細を決定します。
順番➂:故人の友人・知人
故人の友人・知人など親族以外の人物に対する訃報連絡は、故人と特に親交があり遺族と顔なじみなどの場合を除いては、葬儀の詳細が決定してから行った方が良いでしょう。
なお、訃報連を行った故人の友人・知人には周囲の方に連絡を取って頂き、死去の知らせを伝えて頂けるよう依頼します。
順番④:ご自身の会社関係者
ご自身の会社に行う訃報連絡は、葬儀日程が決まってから行います。
その際には、ご自身の上司に連絡を入れ、忌引き休暇についての確認や手続きを行います。
順番⑤:各自治体の代表者
町内会長などの地域の代表者へは葬儀詳細が決まってから訃報連絡を行い、場合によっては葬儀のお手伝いなどの人員の確保を依頼します。
地域の方への連絡を依頼すれば、訃報は代表者から次第に周囲の方へ伝わっていくでしょう。
新聞に訃報を掲載する方法
連絡先がわからない方に対しては、新聞のお悔やみ欄へ記載して死去を知らせる方法があります。
掲載希望の際にはお住いの地域の新聞社へ連絡し、詳細を伝えれば無料掲載が可能です。
亡くなった知らせ(訃報)の連絡手段と文例

訃報の連絡手段は電話で行うことが基本ですが、メールやハガキなどでお伝えすることも可能です。
そこで、ここでは「電話」「メール」「ハガキ」で訃報をお伝えする方法を解説ながら、その際に参考にできる文例もを紹介します。
- 電話
- メール
- ハガキ
電話で連絡する
電話で訃報連絡を行う際には、要件を端的に伝えます。
この際の内容は、訃報のみを伝える場合と葬儀の詳細まで含めた連絡を行う場合の2種類があります。
いずれの内容に関しても、短い文章の中で必要事項を明確に伝えるよう心掛けましょう。
文例①:親族への連絡
〇〇(故人の氏名)の長女の○○です。
入院していた父の○○が〇月〇日の早朝に息を引き取りました。
なお、現在遺体は○○に安置しております。
通夜は〇〇斎場で、明日〇月〇日〇時から行い告別式は○月〇日〇時です。
〇〇式(宗教形式)で執り行う予定ですので何かあれば私の携帯にご連絡ください。
電話番号は○○です。
文例②:故人の友人・知人への連絡
突然のお電話申し訳ありません。
〇〇(故人の氏名)の息子長男の○○です。
以前より入院していた父の○○が、〇月〇日の未明に逝去しましたことをご通知申し上げます。
生前は大変お世話になりましたこと、心から感謝申し上げます。
文例➂:故人の会社関係者への連絡
いつもお世話になっております。
総務部○○の息子の○○です。
先日より入院していた父ですが、、〇月〇日〇に亡くなりました。
通夜は〇〇斎場で明日〇月〇日〇時から行い、告別式は○月〇日〇時の同会場で執り行います。
大変お手数をおかけいたしますが、関係部署のみなさまにお伝えいただければと思います。
何かございました際には、私の携帯にご連絡ください。
電話番号は○○です。
メールで連絡する
これまでの訃報は、電話もしくはハガキで伝えるのがマナーとされてきました。
しかし、現在では早く多くの方に連絡できるという理由から、メールを利用する方が増えています。
特に、仕事関係者への訃報連絡はメールで行うことが非常に多く、マナー的にも問題はないとされています。
ただし、このような慣習が一般化したのはごく最近です。
そのため、以前からの葬儀マナーを重要と考える方や故人がお世話になった方や目上の方には、従来どおり電話での訃報連絡を行い、メールは控えた方が良いでしょう。
メールの文例
【訃報】○○逝去のお知らせ
母〇〇(故人の氏名)が、かねてより病気療養中のところ令和○年○月○日、〇歳にて永眠いたしました。
ここに生前のご厚誼を深謝し謹んで通知申し上げます。
なお、通夜は令和○○年○○月○○日に自宅にて(住所○○)○○時より、葬儀は○○葬儀会場にて令和○○年○○月○○日○○時より〇〇式(宗教形式)で執り行う予定です。
喪主は私○○が努めますので、何かあれば私の携帯○○にご連絡ください。
ハガキで連絡する
ハガキで行う訃報連絡は死亡通知状とも呼ばれ、送る時期によって次のとおり目的が異なります。
- 葬儀前に送る場合:死去と葬儀の詳細を伝え故人が生前お世話になったことへのお礼を述べることが目的
- 葬儀後に送る場合:死去と葬儀が滞りなく終わったことの報告が目的
この2種類の訃報連絡は、葬儀に参列して欲しい方には葬儀前に、死去のみを伝えたい方には葬儀後に送るなどの使い分けが可能です。
ただし、遠方にお住いの方にはハガキで葬儀への参列を呼び掛けていては時間が間に合わないため、その場合は電話で訃報連絡を行う方法が一般的です。
はがきの文例
父 ○○○儀 天寿を全ういたし去る○月○日〇〇歳の生涯を閉じました。
本来なら早急にお知らせすべきところでございましたが、ご通知が遅れました事を深くお詫び申し上げます。
なお葬儀は○月○日親戚のみにて相済ませました。
ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます。
亡くなった知らせ(訃報)を受けた際の対応方法

ここまでは、遺族側の訃報連絡の方法を解説してきました。
では、訃報連絡を受けた側はどのような対応をすれば良いのでしょうか?
訃報を受けたが側の対応方法は次のとおりです。
- すぐに弔問する
- 電報を送る
すぐに弔問する
亡くなった方がご自身と近しい関係性の場合は、通夜や葬儀の準備のお手伝いを行うつもりで弔問に駆けつけます。
駆けつけた直後は、まず遺族にお悔やみの言葉と共に哀悼の意を伝え、故人との対面を果たしたら手伝いを申し入れましょう。
故人とそれ程親しくない場合や遠方にお住いの場合は、死去直後はあえて避けお通か葬儀に弔問を行います。
お悔みの言葉は故人の最後によって使い分ける
遺族に哀悼の意を伝えるため、お悔みの言葉は故人の最後によって使い分ける必要があります。
ここでは、いくつかのパターンを紹介します。
- 一般的なお悔やみの言葉:「この度は、誠にご愁傷さまでございます。心からお悔やみ申し上げます」
- 病気で亡くなった場合:「先日○○様にお目にかかったおりには、あれほどお元気でいらっしゃいましたのに、急にお亡くなりになられて、残念でなりません。謹んでお悔やみ申し上げます。」
- 突然亡くなった場合:「突然の出来事で、さぞかしお嘆きのことでしょう。お悔やみの申し上げようもございません」
- 故人にお世話になっていた場合:「○○様のご生前は大変お世話になりました。何のご恩返しもできないうちにお亡くなりになられ、誠に悔やまれてなりません。」
お悔みの言葉として不適切な言葉
お悔やみでは、次の言葉は使ってはいけません。
いずれも一般生活では頻繫に使う言葉であるため、ついうっかり使ってしまったとならないよう注意しましょう。
繰り返しを連想させる重ね言葉
- たびたび
- しばしば
- ふたたび
- くれぐれ など
生死を直接表現する言葉
- 亡くなる
- 死去
- 生きる
- 死 など など
安易な励ましの言葉
- 暗い顔しないで
- 頑張って
- 元気を出して
- きっと大丈夫 など
電報を送る
仕事の都合や遠方にお住まいで直ちに弔問を行えない場合は、取り急ぎ電報を送ります。
その後、日程に都合がついたら後日弔問を行うか、お悔やみの手紙を送り遺族に哀悼の意を表しましょう。
亡くなった知らせ(訃報)を電話でもらった際の応答文例

訃報連絡を電話で受けた際には、故人との関係性によって応答方法が異なります。
ここでは、次の関係性別の応答文例をご紹介します。
家族・親族の場合
お辛い中でご連絡いただきありがとうございます。
今後の日程が決まりましたら是非お知らせください。
すぐに伺いお手伝いさせて頂きます。
友人・知人の場合
ご愁傷様でございます。
突然のことで大変驚いております。
ご迷惑でなければお別れをしたいのですが、今後の日程などはお決まりでしょうか?
何かお手伝いできることがあれば遠慮なくお申し付けください。
会社関係者の場合
心からお悔やみ申し上げます。
お辛いところ大変申し訳ありませんが、今後の日程はお決まりでしょうか。
日程の日時決まりましたら今一度ご連絡いただければと思います。
亡くなった知らせ(訃報)をメールでもらった際の応答文例

訃報連絡に対して、メールで返信を行う行為は略式の作法です。
そのため、近しい間柄の方に限っては問題ありませんが、故人がお世話になった方や目上の方に対しては本来の作法である手紙でお悔みを表現しなければなりません。
訃報に対するメールでの対応文例は次のとおりです。
葬儀に参列できない場合の応答文例
この度はご尊父様のご逝去の報に接し謹んでお悔やみ申し上げます。
誠にご愁傷様でございました。
生前は大変お世話になりましたので、本当に寂しさが募ります。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
本来ならば直接お目にかかりお悔やみ申し上げたいところですが、略儀ながらメールにて失礼いたします。
会社名 住所
名前 連絡先
まとめ

悲しみの中で行う作業は心理的な余裕がないため、連絡ミスによって連絡が行き届かないケースがあります。
このような場合、故人の死後に立ち会えなかった方は遺族に対して不満を募らせるため、訃報連絡を行う際にはそのマナーは勿論のこと確実性が第一です。
近年では、終活などを通し故人が生前のうちから訃報リストを作成する方も多く、この場合遺族の負担は少なく訃報が行き届かない心配もありません。
また、訃報リストが作れない場合でも、いざという時に備えて訃報の範囲は周囲の方と共有することをおすすめします。