【詳細】再転相続とは?似た相続との違い・手続き・注意が必要なケース

再転相続と必要な手続き
再転相続と必要な手続き
法定相続
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

高齢化が進む日本では、今後立て続けに相続が発生して再転相続になるケースが増えることが予想されます。
相続の仕組みや手続きは複雑でわかりにくいと感じる人も多いと思いますが、通常の相続だけでなく仕組みがより複雑な「再転相続」も含めて理解しておかなければなりません。

この記事では、再転相続とはどのような相続なのか、手続き上のポイントを解説していきます。
家族が続けて亡くなり再転相続が生じた際の参考にしてください。

再転相続とは

再転相続とは?
被相続人(=相続財産を遺して亡くなった方)が亡くなって相続が発生すると、相続人(=財産上の地位を継承する人)は一定期間内に「相続する」か「放棄する」かを選択しなければなりません。
しかし、承認または放棄をするまでの間に相続人が亡くなってしまい、さらに次の相続が発生してしまうケースがあります。
このように、「再転相続」は財産を相続するか放棄するかを選択する権利が、次の相続人に再度移転することになる形の相続です。

例えば、祖父が亡くなって父が相続したものの、父もすぐに亡くなって子が相続するようなケースが代表的な事例です。
このような場合、子は父の死に伴う相続の承認・放棄だけでなく、祖父の死に伴う相続の承認・放棄も決めなければなりません。

再転相続では複数の相続が絡むため、仕組みや必要な手続きを理解できずに悩む人は多いのです。
手続き漏れを起こさないためには、まずは「手続きを行うべき期間」を確認しておくことが大切です。

複数の相続に伴う手続きを行う中で時間がかかるケースもありますし、決められた期間内に必要な手続きを行わないと負債を相続してしまうなど、思わぬ不利益を被ることにもなりかねません。
そのため、まずは再転相続の熟慮期間について解説していきます。

再転相続の熟慮期間

相続が発生すると、相続人は財産を相続するか放棄するかを決める必要があります。
いつまでも決めずに判断を保留していると、権利関係が確定せず他の人が不利益を被ることもあります。

そのため、民法第915条では承認または放棄をすべき期間として熟慮期間が次のとおり規定されており、熟慮期間内に相続の承認または放棄を行わなければなりません。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

例えば、9月5日に祖父が亡くなり、10月5日に父が亡くなって子に再転相続が発生した場合、子が承認または放棄をすべき熟慮期間の起算点は、9月5日ではなく10月5日です。
10月5日から3ヶ月以内に「祖父→父」の相続と、「父→子」の相続について、承認または放棄を行えば良いことになります。

再転相続の場合も、こちらの規定にしたがって「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に承認または放棄をすることになります。
ただし、「知った時」とは、複数の相続の中でも自分に相続権が生じた最後の相続が発生したことを知った時のことです。

「祖父→父」の相続の熟慮期間の起算点は9月5日になるのではないかと勘違いする方もいますが、父の死亡日より前である9月5日の祖父の死亡時点で、子は自分に相続権が生じることは予見できません。
再転相続の熟慮期間の起算点は、自身に相続権が移転することになった最後の相続の開始を知った時から3ヶ月以内であり、この期間内に再転相続に絡む複数の相続の承認または放棄を行います。

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再転相続と似た用語との違い

用語をチェックする女性
相続について調べていると、再転相続と似た用語に出会うはずです。
用語の意味を勘違いすると、必要な相続手続きを間違えて不利益を被りかねません。

そこで、再転相続と混同しやすい次の4つの用語について解説していきます。

  1. 代襲相続
  2. 同時死亡
  3. 数次相続
  4. 相次相続

1.代襲相続

再転相続と特に間違えやすいのが「代襲相続」です。
代襲相続は、文字どおり本来の相続人に代わって相続することを指します。
代わりに相続するという点では、再転相続も同じなので勘違いしやすい用語だと言えます。

代襲相続とは、本来の相続人が先に亡くなり、子が代わりに相続することです。
例えば、祖父・父・子の3者がいる場合、父が祖父より先に亡くなり、その後祖父が亡くなって、「祖父→子」に相続するようなケースです。

つまり、「再転相続」と「代襲相続」との違いは、関係人の死亡の順序です。
「再転相続」の形になるのは「祖父→父の順に亡くなった場合」ですが、「代襲相続」の形になるのは「父→祖父」の順に亡くなった場合です。

また、相続手続きの回数にも違いがあります。
「代襲相続」の場合、すでに父が亡くなり「父→子」の相続手続きは完了しています。
そのため、祖父の死亡により必要な相続手続きは「祖父→子」の相続の1回のみです。

一方で、相続が連続する「再転相続」の場合、「祖父→父」「父→子」の2回分の相続手続きをしなければなりません。

なお、「代襲相続」は本来の相続人が先に亡くなる場合だけでなく、相続欠格や相続人の廃除によっても生じます。
逆に、本来の相続人が相続放棄した場合や、再代襲の対象者の制限(相続人が兄弟姉妹の場合は甥・姪までは再代襲できるが、甥・姪の子以降は不可)により代襲相続権がないケースもあります。
相続権の移転・承継を前提とする「再転相続」とは異なり、「代襲相続」の場合はそもそも代襲相続権の有無を正しく判断するとろこから必要になります。

2.同時死亡

同時死亡とは、事故等で複数の人が亡くなった場合に亡くなった順番が不明であれば同時に死亡したものとして扱うことを指します。
航空機や船舶の事故、火災、交通事故などで家族の複数人が同時に死亡した場合、複数の相続が発生します。
そのため、「再転相続」に該当するのではないかと考える人もいると思います。

例えば、火災に巻き込まれて「祖父」と「父」が亡くなり「子」へ相続が開始するケースを考えてみましょう。
祖父が父よりも先に亡くなり、「祖父→父」「父→子」の相続関係が成立する場合があります。
また、父が祖父よりも先に亡くなり「父→子」「祖父→子」の相続関係が成立する場合も考えられます。

しかし、実際には事故や災害などで複数人が死亡した場合、死亡順を事後的に検証することは難しいです。
そのため、民法では第32条の2で「同時死亡の推定」が規定されており、次のように取り扱われます。

数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

つまり、死亡のタイミングが前後していることを示す明確な証拠がある場合などを除き、同時に死亡したものと推定されるため、両者の間で相続は成立しません。

上記の火災の例では、「同時死亡」の推定の規定が適用された場合、「祖父→父」の相続は成立しません。
そのため、「祖父→父」「父→子」という形で相続が発生する「再転相続」とは異なるのです。

3.数次相続

数次相続は、すでに相続を承認して遺産分割協議が行われている最中に相続人が亡くなり、新たな相続が開始されるケースのことです。
すでに相続の承認を行っている点が、「再転相続」と異なります。
数次相続は、相続人が相次いで亡くなり相続が連続して発生する点で「再転相続」と間違えやすい用語です。

例えば、祖父が亡くなって相続が開始され、「祖父→父」の相続を父が承認し、他の相続人と遺産分割協議や相続登記が完了する前に父が亡くなり「父→子」の相続が開始されるようなケースが「数次相続」に該当します。

「再転相続」のケースでは、「祖父→父」の相続を子が承認または放棄することを選択できます。
一方で、「数次相続」では「祖父→父」の相続を父本人がすでに承認しているため、子は放棄できません。
つまり、子は父に代わって遺産分割協議に参加しなければなりません。

4.相次相続

「相次相続」とは、文字どおり相次いで相続が生じるケースを指します。
近い期間に相続等が何度も生じたケースにおいては、相続税負担が大きくならないように、10年以内に次の相続が開始された場合には「相次相続控除」が適用されます。
「相次相続」は、この控除制度の対象になる相続です。

相次相続は、相続人が相次いで亡くなって相続が発生している点で「再転相続」や「数次相続」と似ています。
しかし、個々の相続手続きはすでに完了して独立しています。
そのため、「再転相続」のように前の相続の承認または放棄を選択したり、数次相続のように前の相続の遺産分割協議に参加することにはなりません。

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再転相続に伴う承認と放棄

再転相続
相続が開始された場合に取るべき選択肢は「承認」または「放棄」の2択です。
しかし、「再転相続」では連続する複数の相続の各々に対して承認または放棄を選ぶ必要があるのでいくつかの組み合せが考えられます。

例えば、「祖父」「父」「子」の3者がおり、再転相続が生じた場合を考えてみましょう。
「祖父→父」「父→子」の2つの相続について、子は承認または放棄を選択することなります。
そのため、次の4つの組み合わせが考えられます。

ケース 【一次相続】祖父→父 【二次相続】父→子 選択の可否
ケース① 承認 承認 可能
ケース② 承認 放棄 不可
ケース③ 放棄 承認 可能
ケース④ 放棄 放棄 可能

ここでポイントになるのは、父からの相続は放棄し、祖父の財産のみ相続することはできない点(ケース②)です。
このケース②が選択不可の理由も含め、4つのケースそれぞれについて解説していきます。

ケース①:一次相続・二次相続ともに「承認」

子が一次相続・二次相続ともに承認して相続したいケースは、祖父も父も相続財産がプラスで相続しても問題ないようなケースです。
相続の承認に関しては先ほどお伝えしたとおり、民法915条で次のように記載されています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

また、何ら手続きをせずに3ヶ月が経過した場合も、単純承認の扱いとなります。
そのため、限定承認や相続放棄とは異なり相続を承認する場合には特別な手続きは必要ありません。

ケース②:一次相続「承認」二次相続「放棄」

祖父の財産はプラスなので相続したいものの、父には借金があるため相続放棄をしたいようなケースです。
しかし、一次相続だけを承認して二次相続のみ放棄することはできません。

相続とは、そもそも財産が代々引き継がれていくことです。
父からの相続を放棄することは、祖父からの相続も含めてそれまでの相続のつながりすべてを放棄することに他なりません。
そのため、二次相続を放棄すれば一次相続についても放棄したことになるのです。

この点は、実際に「再転相続」になった場合に特に気をつけるべき点です。
例えば、父の財産がマイナスなのでとりあえず「父→子」の相続について放棄の手続きをしてしまい、その後に祖父の財産を調べてみたら巨額の資産があることがわかったケースを考えてみてるとわかりやすいでしょう。
すでに、「父→子」の相続について放棄の手続きをしているため、「祖父→父」の相続も放棄したことになり、撤回はできません。

もしも最初から祖父の財産についても調べていれば、相続放棄などせずに父の多少のマイナスの財産を相続してでも、祖父の多額の資産を相続した方が良かったということです。
再転相続では、複数の相続すべてを考慮した上で承認または放棄の判断をすることが大切です。

ケース③:一次相続「放棄」二次相続「承認」

一次相続は放棄して二次相続のみ承認したいケースは、祖父に借金があって負債を相続しないために「祖父→父」の相続は放棄し、財産がプラスである父からだけ相続をしたいようなケースです。
一次相続を承認して負債を引き継いでしまうよりも、子が相続できるトータルの財産は当然増えることになります。

一次相続・二次相続のそれぞれの被相続人(ここでは祖父と父)の相続財産を調べた結果として、二次相続のみ承認した方が有利なケースは当然あります。
その場合は、3ヶ月以内に忘れずに一次相続の放棄の手続きを行ってください。

ケース④:一次相続・二次相続とも「放棄」

負債が多い場合や、家族の仲が悪くて相続に関わりたくない場合もあるはずです。
その場合は、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをすれば良いのです。
ただし、ケース②でお伝えしたように、二次相続を放棄すれば一次相続も放棄したことになります。
相続放棄の手続きは、二次相続に対する1回の手続きだけで済むため2回行う必要はありません。

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再転相続に伴う手続き

再転相続に伴う手続き
再転相続も通常の相続と取扱いは基本的に同じであるため、手続きも通常の相続事案と原則同じです。
一般的な相続事案であれば各手続きは1回ですが、複数の相続が絡む再転相続では

  • 遺言書の有無
  • 相続人・相続財産の確認
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続税申告

などを各相続事案ごとに行います。

ただし、再転相続の事案によっては、あえて個別の相続事案ごとに分けて手続きを行う必要がない場合もあります。
そのため、一部の手続きは一次相続と二次相続の2回に分けず1回にまとめることが可能です。
以下では、再転相続の手続きの中でも特に押さえておきたい「遺産分割協議」と「相続放棄」について解説していきます。

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続事案一つひとつについて行うことが原則です。
そのため、複数の相続が連続している再転相続では(相続人が複数人いて遺産分割協議書の作成が必要であれば)各相続事案ごとに協議書を作成する必要があります。

しかし、再転相続に絡む複数の相続の相続人が全員同じ場合は、遺産分割協議は1回だけにまとめて、遺産分割協議書を1通だけ作成すれば良く、2回に分ける必要はありません。
遺産分割により登記手続きが必要な場合も、相続人が全員同じなら2回の相続事案ごとに分けずに1回の登記で済ませられます。
逆に、一次相続と二次相続で相続人が異なる場合は、各相続事案ごとに遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成する必要があり、協議に時間がかかる場合もあるので注意が必要です。

遺産分割協議そのものには期限はありません。
ただし、例えば相続人の間で協議をする中で相続放棄や限定承認の手続きが必要になった場合は、3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。

遺産分割協議を少しでも早く進めるためには、弁護士や司法書士に相談することも一つの選択肢です。
一次相続の被相続人が既に死亡している再転相続では遺産分割協議書における肩書の記載方法等で迷う人もいるため、遺産分割協議書の作成に慣れた専門家に依頼したほうがスムーズに作成を行えます。

相続放棄

先ほどお伝えしたように、二次相続の放棄手続きを行えば一次相続も放棄したことになります。
二次相続の放棄の手続きは一般的な相続放棄の手続きと同じなので、通常の相続事案と同様に放棄の手続きをすれば問題ありません。

一方で、二次相続のみ承認して一次相続を放棄する場合は、すでに亡くなっている一次相続の本来の相続人に代わって相続放棄の手続きを行う形になり、相続放棄申述書の記入では注意が必要です。

相続放棄を行う際に提出が必要な「相続放棄申述書」は裁判所ホームページからダウンロードできます。
再転相続の場合は、「申述の理由」欄の「相続の開始を知った日」には二次相続の開始を知った日を記入します。
そして、1から4の理由の選択では4を選択し、カッコ内に再転相続である旨を記入することになります。

一般的な相続とは相続放棄申述書の記入方法が異なるため、不安な場合にはあらかじめ弁護士や司法書士に相談して相続放棄申述書の記入方法を確認した方が良いでしょう。

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まとめ

再転相続について紹介しましたが、「代襲相続」や「同時死亡」などとどのように異なるのか、承認・放棄の組合せとしてどのような選択肢が取り得るのか理解してもらえたと思います。

再転相続が生じた場合は、一次相続と二次相続の承認・放棄の組み合わせで自身に最も有利な選択をすることが大切です。
また、相続関連の手続きの中には期限が定められているものもあるので、相続放棄などの手続きはスムーズに行わなければなりません。

再転相続の仕組みは一般的な相続手続きよりも複雑なので、不安な場合には相続に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
そうぞくドットコムでは相続に関する役立つ記事を他にも多数掲載しているので、実際に相続が開始されたときに慌てないためにもぜひ活用してください。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。