時代とともに、日本人の結婚観、家族観が大きく様変わりし、離婚家庭やシングルマザーなど、家族関係もさまざまになってきました。日本では、現在、約3組に1組の夫婦が離婚していると言われています。そんな状況の中、離婚をした場合、または再婚相手に連れ子がいた場合、それぞれの子供について相続は一体どうなるのでしょうか。今回は、離婚、再婚、それぞれの子供に関する相続ついて、詳しく解説させていただきます。
被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど
1.離婚しても子供には相続の権利がある
冒頭で書いたように、日本の夫婦の約3組のうち1組が離婚しているわけですから、たとえ今は夫婦円満でも、何年後かに離婚し、またその何十年後かに相続問題に直面する可能性があるということは、多くの人が考えておいた方がいいでしょう。
さて、離婚した夫婦間の子供が、親が亡くなった時に相続できるかどうかについてですが、結論を述べると相続できます。
夫婦が離婚した場合、離婚したことによって夫婦は他人になります。しかし、親と子は血縁関係にあり、親子関係は継続します。
よって、子供は親が離婚したとしても、相続する事ができるのです。
※この場合、親権がどちらにあるかどうかなどは、一切関係がありません。
また、両親が再婚した相手との間に子供ができたとしても、離婚前の子供の相続する権利は変わりません。
離婚した夫婦の間の子供も、再婚後に生まれた子供も、いずれもが法定相続人であり、相続する割合にも差はなく、同等です。
ケーススタディ
亡くなった被相続人である夫には、妻、妻との間の子供がいます。
加えて、離婚した前妻、前妻との間の子供がいました。
- 妻
- 妻との間の子供
- 離婚した前妻
- 前妻との間の子供
この場合、亡くなった夫の相続人は誰になるのでしょうか。
正解は ①妻 ②妻との間の子供 ④前妻との間の子供 の3人です。
③離婚した前妻 は相続人にはなりません。
また、
②妻との間の子供
④前妻との間の子供
に相続分の割合の差はありません。
では、被相続人が亡くなる前に、遺言書で「再婚相手とその子供にすべてを相続する」と書き残していた場合はどうなるでしょう?
前妻との間の子供は、全く相続できなくなるのでしょうか?
答えは、ノーです。
相続では、「遺留分」というものがあり、「再婚相手とその子供にすべて相続する」と書かれた遺言書があっても、前妻との間の子供は最低でも遺留分で認められた割合については権利を主張する事ができます。
2.連れ子には相続の権利はない
次に、血縁関係にある子供ではなく、再婚した相手の子供(連れ子)の場合、相続ではどうなるのか解説します。
先ほど、離婚した夫婦の場合は、離婚しても「親と子の血縁関係は変わらない」ということから相続できると説明しました。
しかし、再婚相手の子供(連れ子)は、もちろん親子としての血縁関係はありません。
再婚によって自動的に親子関係が生じるということもありませんので、法律的には親子ではありません。
よって、再婚相手の連れ子は相続することはできません。
もし、再婚相手の子供(連れ子)に相続させたい場合は、養子縁組をする必要があります。
養子縁組をしておけば、法律上親子となり、実子と同様に相続を受けることができます。
また、再婚相手の子供と養子縁組をしたとしても、その子供が、実の親と縁が切れるわけではありません。
この場合、その子供は、実の親と養子縁組した親の双方から相続することができます。
3.借金を相続しないように注意
1章、2章では、離婚した夫婦間の子供にも相続する権利はある、連れ子の場合でも養子縁組によって相続することができる、というお話をして来ました。
どちらも「相続させたい」または「相続したい」場合の立場でお話してきました。
しかし、相続財産の中には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も存在すると言うことを忘れてはいけません。
相続財産は、大きく分けると3種類になります。
- 積極財産(プラスの財産のこと)
- 消極財産(マイナスの財産のこと)
- 相続財産には属さない財産
被相続人が遺すのは、プラスの財産だけではありません。
借金、ローンが残っていることもあります。そんな場合、それを相続するのも、相続人です。
つまり、親の立場で「前妻の子供に相続させたい!」または「再婚相手の子供に相続させたい」と思う、または子の立場で「親は離婚はしてるけど私にも子供としての権利がある!」と言った状態の時は、マイナス財産の存在を考慮した上で、相続するかどうかを考えなければなりません。
残す側は受け取る側のリスクを、受け取る本人は自分が受け取った場合のリスクをしっかりと考えなければなりません。
また、あなたが財産を受け取る側の立場の時、借金などのマイナスの財産を相続したくない場合は、相続放棄をすることによって解決することもできます。
相続放棄とは、被相続人の財産のすべてを放棄すること、つまり受け取らないことです。この手続きをすると、法的には相続人ではなくなるので、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになります。
たとえ、相続放棄をしたとしても、相続に関してだけに適用されるものであり、親子関係、家族関係がなくなるということではありませんので、ご安心ください。
まとめ
今回は、「離婚した夫婦の子供に相続権はあるのか」について、詳しく解説させていただきました。
家族によって、様々な状況、条件があると思います。まず最初に、ご自身の状況をきちんと把握されることが大切です。もし、判断がむずかしいなと思ったら、専門家のアドバイスを受けるのもいいですね。
多様化する家族関係、親子関係ですが、基本は、当事者同士が納得いくよう、話し合うこと、事前にしっかり情報を集め、準備しておくことが大切です。
今回の「離婚した夫婦の子供は相続できるのか」の解説が、あなたの一助になれば幸いです。