【詳細】相続放棄の手続きの流れは?費用・必要書類・期間・注意点

相続放棄の手続き 相続放棄
この記事を監修した専門家は、

相続の開始後に遺産を相続せず放棄する場合には、家庭裁判所での手続きが必要になります。

手続きができる期限は決まっているため、必要書類の準備などは早めに行わなければなりません。

 

この記事では、相続放棄の手続きの方法や期限、費用について解説していきます。

相続放棄のメリット・デメリットや相続放棄をすべきケースについても紹介するので、相続放棄を検討する際の参考にしてください。

相続放棄とは

悩んでいる男性

相続放棄とは、「亡くなった方が残した遺産を相続する権利を放棄すること」です。

まず、相続が開始したときに「遺産を受け取る権利を持つ人」つまり「遺産を受け取る権利を放棄できる人」には、法定相続人と受遺者が該当します。

法定相続人と受遺者
  • 法定相続人:遺産を相続する権利を持つ人として、法律で規定された一定の親族
  • 受遺者:故人が遺言書を作成して財産を渡す人として指定した人

遺言によって財産を渡す方法を「遺贈」と呼び、次の2種類があります。

  • 財産の一定割合を渡す「包括遺贈」
  • 特定の財産を指定して渡す「特定遺贈」

「包括遺贈」と「特定遺贈」それぞれの方法で財産を受け取る人が「包括受遺者」と「特定受遺者」です。

 

法定相続人・包括受遺者・特定受遺者では、相続や遺贈の放棄の手続きが次のように異なります。

相続・遺贈の放棄の手続きの違い
  • 法定相続人:裁判所での手続きが必要
  • 包括受遺者:裁判所での手続きが必要
  • 特定受遺者:裁判所での手続きは不要で、他の相続人への意思表示のみで放棄が可能

配偶者・子・親・兄弟姉妹などの法定相続人が相続放棄をする場合や、包括受遺者が遺贈を放棄する場合は、「相続放棄の手続き」の章で紹介する流れに従って手続きを行います。

その一方で、特定受遺者の場合は裁判所での手続きは不要で、意思表示のみで放棄が可能です。

相続放棄を選択するケース

相続放棄を検討する女性

ご家族などが亡くなり相続が開始した場合、相続人は次の3つの選択肢から選ぶことになります。

相続人の選択肢
  • 単純承認:すべての遺産を相続する
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内で借金などのマイナスの財産を相続する
  • 相続放棄:遺産を一切相続しない

単純承認や限定承認を選択して相続するのではなく、遺産をまったく相続しない方法が「相続放棄」です。

相続放棄の手続きを行うケースとしては、主に次のようなケースが挙げられます。

  1. 故人に借金がある場合
  2. 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
  3. 相続しても資産を活用できない場合
  4. 特定の相続人に遺産を相続させたい場合

ケース①:故人に借金がある場合

相続人が相続する財産は、現金や土地などのプラスの資産だけとは限りません。

故人に借金などの債務があった場合には、このようなマイナスの財産も相続財産に含まれます。

何も手続きをしないと、相続人は借金を相続することになってしまうので注意が必要です。

 

しかし、相続放棄の手続きをすれば返済義務を負うことはなくなります。

なお、遺産にマイナスの財産が含まれる場合には、相続放棄以外に「限定承認」を選ぶことも可能です。

 

ただし、限定承認をするには相続人全員が同意して共同で手続きをする必要があります。

相続放棄のように相続人個人の判断で手続きをできるわけではありません。

他の相続人の同意を得られず限定承認ができないケースもあり得るので、そのような場合には相続放棄を検討することも考えられます。

ケース②:相続トラブルに巻き込まれたくない場合

相続が開始したときに、そもそも相続に関わりたくない人が相続放棄の手続きをする場合もあります。

親族の仲が悪くて相続トラブルになりそうな場合、相続放棄をすれば相続人ではなくなり、遺産分割の話し合いなどにも参加せずに済むからです。

 

ただし、相続放棄の手続きをすると一切の遺産を相続できません。

「何となく相続に関わりたくない」「相続に関わるのが面倒」といった理由だけで相続放棄をすると、大切な遺産を相続しなかったことを後々に後悔することも考えられます。

相続放棄の手続きをするかどうかは、遺産の中身も確認した上で慎重に検討するようにしましょう。

ケース③:相続しても資産を活用できない場合

故人に借金などがなくても、遺産を受け継いでも困るだけのケースで相続放棄をすることもあります。

 

たとえば、故人の住んでいた土地や家が相続財産に含まれるケースです。

相続人である子は地元を離れて遠くで暮らしている場合、遠くの地元の土地や家を相続しても活用できず、困るケースは少なくありません。

 

土地や家を相続すると、活用できないだけでなく固定資産税などの費用負担まで生じてしまいます。

相続して売却する方法も考えられますが、市場価値が低くて買い手を探すのさえ難しいような資産の場合は、そもそも相続せずに相続放棄の手続きをすることも選択肢の一つです。

ケース④:特定の相続人に遺産を相続させたい場合

相続人が複数人いる場合に、特定の相続人に遺産を相続させるために相続放棄を行うこともあります。

たとえば、事業を継ぐ長男が遺産を相続するために、他の相続人が相続放棄をするようなケースです。

遺産を相続する人以外の相続人が納得して相続放棄をすることが前提ですが、経営者が亡くなって特定の相続人への事業承継を進めるために行うことも多いのが相続放棄だと言えます。

相続放棄のメリット

相続放棄のメリット

相続放棄にはメリットもデメリットもあるので慎重な検討が必要ですが、メリットとしては次のようなものが挙げられます。

相続放棄のメリット
  1. 亡くなった被相続人に借金などの債務がある場合でも相続せずに済む
  2. 不動産が負動産になりそうなケースのように、活用できそうにない財産を相続せずに済む
  3. 相続が争族になりそうな場合に親族間の争いに関わらなくて良い

1点目のとおり、借金などのマイナスの財産を相続せずに済むことが相続放棄の最大のメリットです。

故人に借金があった場合、お金を貸していた債権者が相続人に対して返済を求めてきたとしても、相続放棄の手続きをしていれば相続人は要求を拒否することができます。

 

また、2点目のように、相続しても困るような財産が遺産に多く含まれる場合に行われることも多いのが相続放棄です。

そして、3点目として、相続放棄をすれば相続に関わらずに済むこともメリットだと言えます。

相続放棄の手続きをすれば最初から相続人ではなかった扱いになり、相続トラブルに関わらずに済んで心理的な負担を減らすことができるでしょう。

 

ただし、相続放棄にはメリットだけでなくデメリットも多いので、実際に相続放棄の手続きをするかどうかは慎重に検討するようにしてください。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリット

相続放棄の手続きをすると、次のようなデメリットがあるので注意が必要です。

相続放棄のデメリット
  1. 遺産すべてを放棄することになるので、遺産の中に相続したい財産があっても受け継げない
  2. 思わぬ人が相続人になって、相続放棄した人以外の相続人の利害関係が複雑になることがある
  3. 相続税の計算で生命保険金や死亡退職金の非課税枠を活用できなくなる

1点目のとおり、相続放棄のデメリットとして特に大きいのが、遺産を一切相続できないことです。

相続放棄をすれば借金などのマイナスの財産を相続せずに済みますが、プラスの財産も含めて相続できなくなってしまいます。

 

また、2点目のとおり、ある相続人が相続放棄をすると、代わりに別の思わぬ人が相続人になることがあるので注意が必要です。

相続放棄をした人は相続に関わらずに済みますが、他の相続人の利害関係が複雑になって、遺産分割の話し合いがまとまらず難航することも考えられます。

 

そして、3点目のとおり、相続税額の計算で不利になることがある点もデメリットの一つです。

相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金は受け取れますが、相続税額を計算するときに生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えません。

 

こういったデメリットがあるので、相続放棄の手続きをするかは慎重に検討するようにしましょう。

相続放棄の手続き

相続放棄の書類を記入する男性

続いて、相続放棄をするときに必要な手続きについて解説していきます。

ご家族などが亡くなって相続が開始したときはやるべきことが非常に多く、一つひとつの手続きをスムーズに進めて少しでも早く終わらせることが大切です。

 

相続放棄の手続きを行う際の流れは以下のようになっているので、各ステップで意識すべきポイントを確認して、実際に相続放棄の手続きを行う際に活用してください。

相続放棄の流れ
  1. 財産調査を行う
  2. 相続放棄が必要かどうか検討する
  3. 必要書類を揃える
  4. 管轄の家庭裁判所に提出する
  5. 照会書に回答する
  6. 相続放棄申述受理通知書を受け取る

流れ①:財産調査を行う

相続が開始したときには、故人の財産を把握するために財産調査を行う必要があります。

故人が生前に財産の一覧表を作っていたり、どこに何の資産があるのかを家族に伝えていればスムーズに進みますが、そうでない場合は一つひとつ確認するしかありません。

 

預金通帳からどこの銀行に預金があるのかを把握して、入出金の明細からお金の流れを把握します。

定期的に引き落としがされていてカードローンなどの借金がある場合は、債務残高の確認が必要です。

また、郵便物についても一つひとつ確認する必要があり、たとえば固定資産税に関する通知書が見つかれば、土地などの不動産を所有していることがわかります。

 

財産調査は、相続を承認するのか放棄するのかを相続人が判断する上で大切な作業ですが、時間も手間もかかる作業です。

相続放棄をしようと思ったときに手続き期限を超えていては大変なので、相続の開始後すぐに財産調査を行うようにしてください。

流れ②:相続放棄が必要かどうか検討する

相続財産の中身を把握したら、相続するか相続せずに放棄するかを決める必要があります。

相続放棄の期限(期限については「相続放棄の期限」で解説)までに放棄の手続きをしなかった場合は、相続を単純承認したものと見なされて相続放棄はできなくなるので注意が必要です。

そして、借金などのマイナスの財産が多い場合や、相続しても活用できそうにない財産が多い場合には、相続放棄を検討することになります。

 

ただし、相続人が複数人いる場合には、たとえば他の相続人が「借金は自分が支払うから、相続放棄はせず先祖代々の土地を相続しよう」といった形で相続放棄せずに済む場合もあります。

借金を支払うだけの資金や余裕がご自身になくて相続放棄が念頭にある場合でも、まずは他の相続人と遺産の扱い方について話し合い(遺産分割協議)を行うようにしましょう。

流れ③:必要書類を揃える

家庭裁判所で相続放棄の手続きをする際には、次の書類が必要になります。

必要書類
  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄をする人自身の戸籍謄本

このうち、相続放棄申述書については裁判所ホームページからダウンロードが可能です。

相続放棄をする人が20歳以上か未満かで用紙が異なるので、該当する用紙を使用してください。

相続放棄申述書の記入例も掲載されているので、確認してみると良いでしょう。

さらに、相続放棄の手続きをする人(申述人)が誰なのかに応じて、次の書類も必要になります。

 

申述人(相続放棄をする人) 必要書類
配偶者
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
子やその代襲相続人である孫やひ孫など
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
父母や祖父母など
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る)がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
兄弟姉妹やその代襲相続人である甥や姪
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

 

さらに、実際の手続きでは収入印紙や切手も必要になります。

相続放棄の手続きを行う際は、必要書類について事前に家庭裁判所に確認するようにしてください。

流れ④:管轄の家庭裁判所に提出する

相続放棄の手続きで必要な書類を揃えたら、家庭裁判所に提出します。

相続放棄の手続きを行う場所は、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。

相続放棄をする人が住んでいる地域の裁判所ではありません。

 

書類の提出方法は郵送または直接持参となりますが、提出方法は事前に裁判所に確認するようにしてください。

なお、住所地を管轄する裁判所は次の裁判所ホームページで確認ができます。

流れ⑤:照会書に回答する

必要書類を家庭裁判所に提出すると、照会書が後日送られてきます。

相続放棄が本当に本人の意思に基づくものなのか、相続放棄をする合理的な理由があるのかなど、裁判所が確認するための書類です。

回答すべき内容自体は難しくありませんが、書き方がわからず不安な場合には、相続に詳しい弁護士などに相談すると良いでしょう。

流れ⑥:相続放棄申述受理通知書を受け取る

必要書類の提出や照会書の返送が完了した後、相続放棄が受理されれば相続放棄申述受理通知書が届き、受理されないと相続放棄不受理通知書が届きます。

相続放棄申述受理通知書は相続放棄をしたことを証明する大切な書類です。

再発行はできないので大切に保管してください。

なお、万が一紛失した場合は、相続放棄申述受理証明書という書類を発行することはできます。

相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書は、名称が似ているので混同しないように注意しましょう。

たとえば、相続放棄をしていて故人が抱えていた借金の返済義務がないことを債権者に示す場合、債権者が提示を求めているのが通知書なのか証明書なのか、しっかり確認することが大切です。

相続放棄の期限・期間

カレンダー

相続放棄の手続きができる期間は「相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内」です。

この期間内に相続放棄や限定承認をしなかった場合には、単純承認をしたことになります。

借金などのマイナスの財産が遺産に含まれる場合でも、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしないと相続してしまうので注意してください。

 

なお、3ヶ月の基準になるのは、あくまで「相続が開始したことを知ったとき」です。

そのため、必ずしも「被相続人が亡くなった日」と一致するとは限りません。

親との関係が疎遠で亡くなったことを後になって知るようなケースや、海外勤務中で国内の親族が亡くなったことを知るまでに時間がかかるケースもあるからです。

このような場合には、あくまでその相続人が知った日が3ヶ月の基準なので、他の相続人と知った日が異なれば相続放棄の期限も異なる場合があります。

期限を超えそうな場合

相続放棄の手続きは3ヶ月以内にしなければいけないので、相続放棄の手続きをうっかり忘れたような場合でも延長はできません。

しかし、財産調査に時間がかかり、相続放棄をすべきかどうかを3ヶ月という期限までに判断できないなど、正当な理由がある場合も当然あるはずです。

 

このような場合には、3ヶ月の期限を迎える前に「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」に申請すれば、期限を伸ばすことができます。

必要な書類は次のとおりです。

必要書類一覧
  • 家事審判申立書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 利害関係人からの申立ての場合には利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)
  • 伸長を求める相続人の戸籍謄本

さらに、期限の伸長の申立てを行う人が誰なのかに応じて、「相続放棄の手続き」の章の「流れ③:必要書類を揃える」で掲載した表の書類も必要になります。

なお、家事審判申立書の用紙は次の裁判所ホームページからダウンロードができます。

この他に収入印紙や切手も必要になるので、実際に期限の伸長の申立てを行う際には、あらかじめ家庭裁判所に確認するようにしてください。

 

また、新型コロナウイルス感染症に関連して、相続放棄の手続き期間の延長が認められています。

ただし、この場合にも3ヶ月を経過する前に期限の伸長の申立てを行わなければいけません。

期限を超えた場合

3ヶ月という期限を超えている場合には、原則として相続放棄はできません。

しかし、そもそも借金の存在を知らなかったなど、相当な理由がある場合には延長が認められる場合があります。

 

そのような場合は、裁判所に申立てを行うことで相続放棄ができる可能性はあるので、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。

ただし、このようなケースはかなり稀なので、3ヶ月を過ぎると相続放棄の手続きは原則できないと考えた方が良いでしょう。

相続放棄にかかる費用

必要を電卓で計算する男性

相続放棄の手続きをする場合、必要書類を裁判所に提出する際に一緒に提出する切手代や、相続放棄申述書に添付する収入印紙800円分が必要です。

ご自身や故人の戸籍謄本を発行するために数百円ずつの発行費がかかり、財産調査や戸籍収集を司法書士や行政書士などの専門家に依頼した場合には数万円単位で費用負担が生じます。

 

相続放棄だけでなく相続関連のさまざまな手続きをまとめて専門家に依頼した場合には、費用の総額が数十万円になることも珍しくありません。

相続放棄の手続き自体にかかる費用は大して大きな金額ではありませんが、相続が開始されると時間や手間だけでなく費用も相当かかる点はあらかじめ認識しておいた方が良いでしょう。

相続放棄に関して知っておくべき注意点

チェックポイント

ここまで、相続放棄に関して特に重要な「手続き方法」や「期限」について解説してきました。

相続放棄では、メリット・デメリットを踏まえて検討を行い、実際に手続きを進める場合には手続き方法を理解した上で期限までに申述を終えることが大切です。

そして、裁判所を通して行う「法的な効果が強い重要な手続き」だからこそ、相続放棄に関しては細かい点まで含めて理解しておく必要があります。

ここでは、相続放棄に関して知っておくべきその他の注意点を紹介していきます。

注意点
  1. 原則として撤回ができない
  2. 相続放棄をできない場合がある
  3. 生前に相続放棄はできない

注意点①:原則として撤回ができない

相続放棄の手続きは、裁判所で受理されると原則として撤回ができません。

撤回が認められる可能性があるのは、他の相続人に脅迫されて相続放棄の手続きをしていたようなケースなど、ごく一部の例外的なケースに限られます。

 

基本的に撤回はできないので、相続放棄をするかどうかを決める際には慎重な判断が必要です。

なお、必要書類を提出して相続放棄の手続きを開始した後でも、受理される前に相続放棄の申立てを取り下げることはできます。

注意点②:相続放棄をできない場合がある

手続き期限の3ヶ月を経過していなくても、相続放棄ができない場合があるので注意が必要です。

例えば、遺産を隠蔽するような背信行為をしていたり、相続財産を一部でも処分してしまったケースが該当します。

 

特に、遺産の「処分」に関しては、一般の方がイメージする以上に広範囲の行為が処分行為に含まれるので気をつけてください。

遺産を売却するようなケースだけでなく、預貯金の名義変更や口座の解約・払戻し、借金の一部返済なども該当します。

そのため、たとえば故人にお金を貸していた債権者から頼まれて一部だけでも借金を返してしまうと、相続放棄ができなくなり、借金の全額を相続して背負うことになってしまいます。

 

ご家族などが亡くなって相続が開始した場合には、財産調査をすぐに行うことが大切ですが、調査して把握した遺産を間違って処分することがないように注意しましょう。

注意点③:生前に相続放棄はできない

相続放棄の手続きは、財産を残す人(被相続人になる人)が亡くなる前に行うことはできません。

あくまで被相続人が亡くなり、相続が開始した後に相続人が行う手続きです。

相続関連の手続きの中には、遺留分(相続人に最低限保証された相続権)の放棄のように生前にできるものもありますが、相続放棄は実際に相続が開始した後でないとできない制度になっています。

まとめ

遺産を相続する権利を放棄する相続放棄は、故人に借金がある場合などに行われることが多い手続きです。

相続トラブルに巻き込まれたくない場合などにも相続放棄をするケースが見られますが、相続放棄にはデメリットもあるので、実際に手続きをするかどうかは慎重に検討するようにしてください。

 

また、相続放棄ができる期間は「相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内」です。

期間の伸長の手続きを行っている場合などを除いて、原則として3ヶ月を過ぎると相続放棄の手続きはできません。

 

そして、相続放棄は家庭裁判所で一度受理されると基本的に撤回できないため注意が必要です。

相続放棄に関する制度上の特徴やメリット・デメリットをしっかりと理解した上で、遺産の中身やご自身の状況を踏まえて最も良い判断・選択をするようにしましょう。

この記事を監修した専門家は、