相続放棄申述受理通知書とは?必要になる場合や証明書との違いは?再発行不可に注意

相続放棄申述受理通知書相続放棄
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

相続放棄の手続き完了後に裁判所から届く「相続放棄申述受理通知書」。
「相続放棄も終わったし、相続に関わることは今後ないだろう」と思って通知書を適当に扱ってしまう人がいますが、実は相続放棄後にもさまざまな場面で必要になる大切な書類です。
この記事では相続放棄申述受理通知書が必要になる具体的なケースや紛失時の対処法、相続放棄申述受理証明書との違いを解説します。
すでに相続放棄をした方や、検討中の方はぜひ参考にしてください。

「相続放棄申述受理通知書」とは

「相続放棄申述受理通知書」は、相続放棄が完了したことを知らせる書類です。
相続放棄をするには裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。
必要な添付書類がそろっており、申述書や照会書への記入事項に問題がなければ、手続き開始から10日ほどで相続放棄申述受理通知書が届いて相続放棄手続きが完了します。
相続放棄申述受理通知書
相続放棄をした本人からすれば、相続放棄の手続きが終わったことを知らせる単なる通知でしかないように思うかもしれません。
しかし、実は相続に関連してこの通知書の提出を求められたり、相続関連手続きで必要になったりする場面があり、自分が相続放棄をしたことを証明してくれる重要な書類なのです。
相続放棄をしたからと言って、相続関連の手続きに関わる必要が一切なくなるわけではありません。
続いて、この「相続放棄申述受理通知書」が必要になる具体的なケースについて確認していきましょう。

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相続放棄申述受理通知書が必要になる場合

ポイントを伝える男性
相続が開始されるとさまざまな手続きが必要になりますが、そもそも「誰が相続人なのか」を確認しないと相続関連の手続きは進められません。
相続放棄をした人がいる場合は、相続人が変わって権利関係に影響するため、まずは相続放棄によって誰が相続人でなくなったのかを確認する必要があります。
相続放棄して相続人でなくなった人を確認するために、「相続放棄申述受理通知書」が必要になるのは主に次のようなケースです。

相続放棄申述受理通知書が必要になるケース
  • 金融機関などの債権者から提出を求められた場合
  • 他の相続人が相続登記を行う場合

ケース①:金融機関などの債権者から提出を求められた場合

被相続人(=相続財産を遺して亡くなった方)に借金があり、金融機関などの債権者が取り立てを行う場合、相続人が借金を相続していれば、債権者は相続人宛に返済を求めることになります。
しかし、相続放棄して相続人でなくなった人に返済義務はないため、請求することができません。
債権者にとっては「誰が相続人なのか」が非常に重要であり、相続放棄申述受理通知書によって相続放棄をしていることを確認する必要があります。
債権者が相続人(厳密には相続放棄しているので、元相続人)宛に通知書の提出を求めてくるため、その場合は「相続放棄申述受理通知書」のコピーを渡してください。
後でお伝えするように、当通知書は再発行ができない1枚限りの書類です。
そのため、債権者に渡すのは原本ではなくコピーです。
また、金融機関などによっては通知書では認めず「相続放棄申述受理証明書」の提出を求める場合も多いです。
その場合は、後で解説する証明書の申請手続きに従って証明書を発行して提出します。

ケース②:他の相続人が相続登記を行う場合

相続が発生して土地などの相続登記手続きが必要な場合も、相続放棄した人がいるのであれば「相続放棄申述受理通知書」の提出が必要です。
通知書がないと、他の相続人が相続登記の手続きを進められません。
そのため、他の相続人から相続放棄申述受理通知書を求められた場合は、通知書のコピーを取って渡すようにしてください。

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「相続放棄申述受理通知書」と「相続放棄申述受理証明書」の違い

「相続放棄申述受理通知書」とよく似た用語に「相続放棄申述受理証明書」があります。
ともに相続放棄をしたことを証明する書類として使えますが、次の点で異なるため混同しないように注意してください。

比較対象 相続放棄申述受理通知書 相続放棄申述受理証明書
発行方法 相続放棄手続きが完了すると必ず送付される 相続放棄手続きとは別に裁判所に発行申請を行う
受け取る人・発行できる人 相続放棄した本人 相続放棄した本人や利害関係人
手数料 0円(相続放棄手続き自体には費用がかかる) 150円/通
再発行 不可
「相続放棄申述受理通知書」は相続放棄の手続きの最後に相続放棄をした本人宛に必ず送付されますが、「相続放棄申述受理証明書」は必要な場合に申請を行うことで発行されます。
用語自体が似ている上に、裁判所から発行される点でも同じなので、相続や相続放棄に関連した用語に馴染みがない方は混同しやすいはずです。
金融機関などの債権者から連絡を受けて提出を求められた場合には、間違えないためにも「通知書」なのか「証明書」なのかしっかり確認するようにしましょう。

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相続放棄申述受理通知書は再発行できない

再発行できない
相続放棄申述受理通知書は再発行できないため注意が必要です。
相続放棄をする際の一連の手続きの最後に裁判所から発行される書類が相続放棄申述受理通知書であり、相続放棄の手続きとは別に通知書単独での発行や再発行はできません。
相続放棄申述受理通知書は、自分が相続放棄をしたことや、相続人ではなくなり被相続人の借金を返済する義務が自分にはないことを証明する大切な書類です。
紛失しないように大切に保管してください。

ただ、実際には相続放棄申述受理通知書を紛失してしまうケースもあるはずです。
通知書を紛失した場合は、相続放棄申述受理証明書で代用が可能なので、裁判所で証明書の発行申請を行うことになります。
大切な書類である通知書の紛失は問題ですし、証明書の発行には手間も費用もかかります。
債権者への提出や相続登記手続きで通知書が必要であるにも関わらず紛失してしまった場合は、これから解説する相続放棄申述受理証明書の取得方法に従って証明書を発行して提出すれば問題ありません。

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相続放棄申述受理証明書の取得方法

相続放棄申述受理証明書の取得
相続放棄申述受理証明書は「特定の人が相続放棄をしていることを確認するための書類」です。
相続放棄をした本人にのみ発行される「相続放棄申述受理通知書」とは異なり、相続放棄した本人が使う場合だけでなく、相続放棄の有無を確認する必要がある債権者などの利害関係人が使う場合にも発行申請を行うことができます。
相続放棄申述受理証明書の申請は、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で行います。
相続放棄した本人が申請する場合と債権者などの利害関係人が申請する場合で必要書類などが異なるので注意してください。

さらに、申請書のフォーマットや手続き方法、必要書類は家庭裁判所ごとに異なります。
被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票から管轄の裁判所を調べた上で、あらかじめ裁判所に問い合わせて必要書類などを確認しておくことが大切です。
そのため、これから解説する申請手続きの流れはあくまで一般的なケースです。
相続人として申請をする場合だけでなく何らかの相続事案に債権者として関わり証明書の発行申請をする場合もあるはずなので、相続放棄人・利害関係人いずれの申請方法についても確認しておくと良いでしょう。

相続放棄した本人が申請する場合

申請は窓口でも郵送でも行うことができ、相続放棄受理証明申請書に記入した上で、申請書の所定欄に証明書1通あたり150円の収入印紙を添付して提出します。
窓口に出向いて直接手続きをする場合には、「相続放棄申述受理通知書」や「認印」が必要です。
また、運転免許証や健康保険証などの身分証明書と、身分証明書の記載が相続放棄の申述時と異なる場合にはつながりがわかる戸籍謄本なども必要です。
郵送の場合にはこれらの書類のコピーを同封するとともに返信用の封筒や切手も同封して郵送します。
なお、裁判所によっては申請書の名前が家事事件等書類交付等申請書になっており、他の手続きと用紙が共通の場合もあるので注意してください。
裁判所ホームページから各種手続き用の申請書をダウンロードできることが多いものの、そもそも用紙の名称がわからず探すのに時間がかかることも多いため、裁判所に直接確認した方が良いでしょう。

相続放棄申述受理証明申請書の作成

申請書の様式は家庭裁判所ごとに異なるので確認が必要ですが、例えば、東京家庭裁判所で申請をする場合には次の用紙を使います。
相続放棄申述受理通知書
出典:東京家庭裁判所
難しい記入項目があるわけではないため、初めての人でも問題なく記入できると思います。
委任状を添付することで弁護士が当申請を代行することも可能です。
不安な場合には相続に詳しい弁護士に依頼しても良いでしょう。
なお、相続放棄申述受理証明申請書の記入で気を付けるべきなのが「事件番号」です。
事件番号は相続放棄申述受理通知書に記載されている番号で、もしも通知書を紛失して事件番号がわからない場合にはあらかじめ裁判所に照会手続きを行わなければなりません。

相続放棄の申述の有無の照会

そもそも、相続放棄しているかどうかを裁判所に無料で照会することができます。
相続放棄をしていることが確認できた場合には、事件番号など相続放棄の内容について裁判所から回答を得られます。
債権者などの利害関係人が照会を行うケースだけでなく、相続放棄をした本人も含めて相続人も照会することができますが、照会に使う申請書は裁判所ごとに様式が異なるので事前の確認が必要です。
相続人が照会する場合の必要書類は、

などがありますが、裁判所や事案によって必要書類が異なる場合もあります。
あらかじめ管轄の裁判所に確認するようにしてください。

債権者などの利害関係人が申請する場合

相続放棄した者以外の相続人や債権者といった利害関係人も、窓口または郵送で証明書を申請できます。
申請書を提出する際に、

といった点は相続人が申請する場合と同じです。
ただし、利害関係人の場合にはそもそも利害関係があることを示す書類も提出しなければなりません。
債権者であれば債権の契約書を、他の相続人であれば相続関係図などをそれぞれ提出することになります。
さらに、法人の場合には資格証明書原本が必要になるなど、個人が申請する場合とは必要な添付書類が異なるので事前の確認が必要です。
また、申請書に事件番号を記載しようにも、相続放棄をした本人ではないので当然わかりません。
そのため、相続放棄の申述の有無の照会をあらかじめ裁判所で行って事件番号を確認することになります。

取得費用

相続放棄申述受理証明書の取得にかかる直接的な費用は、1通あたり150円の収入印紙代だけです。
郵送の場合に切手代がかかることや窓口で手続きする場合に裁判所までの交通費がかかるなど細かい費用は発生しますが、高額な費用がかかるわけではありません。
ただし、相続放棄申述受理証明書の申請を弁護士に依頼するような場合には別途費用がかかります。

取得できる期間

相続放棄に関する資料を裁判所が保管する期間は30年間です。
そのため、30年間は相続放棄申述受理証明書の申請ができますが、30年も経過してから証明書が必要になることはほぼ考えられません。
被相続人に借金があって金融機関などから相続放棄申述受理証明書の提出を求められることはあっても、そもそも5年や10年が経過すると時効が成立して借金を返済する義務がなくなります。
そのため、それ以上経過した後になってから証明書の提出を求められることは考えにくく、30年という期間については特に気にする必要はないでしょう。

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まとめ

相続放棄申述受理通知書が相続放棄の手続きが完了したことを知らせるだけの単なる通知書ではなく、債権者への提示や相続登記の際に必要になる重要な書類であることをわかってもらえたでしょう。
そもそも、相続放棄したからといって相続手続きにまったく関わらなくなるわけではありません。
万が一相続放棄申述受理通知書を紛失した場合の対処法や相続放棄申述受理証明書の取得方法など、相続放棄完了後でも多くの相続関連知識が必要になります。
相続の手続きに慣れていない人の場合は、通知書の使い方や証明書の発行手続きだけでも一つひとつ悩んで苦労することが多いと思います。
そういった場合は、事前に管轄の裁判所に確認したり、相続に詳しい弁護士や司法書士に相談したりしてミスなく手続きを進めることが大切です。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。