遺産相続や婚姻届けの提出に必要な戸籍は、本籍地がある役所へ請求しなければなりません。
しかし、実際に戸籍を請求しようと作業にとりかかっても、自分の本籍地がどこにあるのかわからない方もいます。
ここでは、このような場合に対応するため「本籍の調べ方」について解説します。
目次
本籍とは?

自分の住所がわからない方はいませんが、本籍についてはわからない方は多くいます。
以前は、本籍は運転免許証に記載がありましたが、現在では記載されない取り扱いになっています。
このことが、本籍がわからなくなる原因の一つです。
「本籍」とは「戸籍」がある場所のこと
本籍とは戸籍がある場所の事で、日本国内であればどこへでも置くことも変更することも可能です。
そのため、人気が高い有名な場所では複数の方が同じ住所に本籍を置くケースもあります。
日本国内で人気の高い有名な場所とは次のような場所です。
- 皇居:東京都千代田区千代田1番
- 大阪城:大阪府大阪市中央区大阪城1番
- 阪神甲子園球場:兵庫県西宮市甲子園町1番
「本籍」と「本籍地」は別物
本籍と本籍地は同じ意味で使われることがありますが、実はこれは微妙に異なります。
本籍と本籍地には次のような違いがあります。
- 本籍:戸籍のある場所
- 本籍地:戸籍を管理する自治体
この違いから、東京都千代田区千代田1番に「本籍」のある方の「本籍地」は東京都千代田区となります。
未婚者の本籍は親と同じ
先ほどは、「本籍は日本国内であればどこへ置くことも変更することも可能」と解説しました。
しかし、未婚者の場合は親の戸籍の中にいるため、親の本籍がご自身の本籍となります。
これを自身の希望だけで変更することはできません。
結婚することで親の戸籍から抜け、夫婦で新しい戸籍を作ることになります。
そのため、このときになってご自身が好きな場所に本籍を変更することが可能になります。
「本籍」と「住所」の違い

本籍と本籍地に違いがあるように、本籍と住所も異なります。
本籍と住所の違いは次のとおりです。
- 本籍:戸籍を置く場所・見出し
- 住所:住んでいるところ
先ほどお伝えしたように、本籍は日本国内のどこにでも置くことが可能で、本籍の場所によって生活に影響を受けることはほとんどありません。
一方で、住所はご自身が住んでいる場所として市区町村に届け出をしている場所であり、居候や出向などの一時的な場所(居所)とも厳密に区分されています。
これは、住所を基準にして税金が課せられたり国民健康保険に加入したりするため、住所がどこにあるのかによってご自身の生活に影響があるためです。
本籍と筆頭者は見出しの役割
日本中どこにでも置くことができ、なおかつ変更することも可能な本籍の役割は、「筆頭者の表記とご自身の戸籍を取得する際の見出し」の役割があります。
あくまでも見出しとしての役割しかないため、本籍地に戸籍が保管されている必要はなく、住所の表記とは異なりアパート・マンション名も記載されません。
筆頭者とは
筆頭者とは、戸籍の最初に記載される人物の名前です。
婚姻している方は、夫・妻のどちらかが筆頭者(婚姻の際に苗字が変わっていない方)となります。
なお、一度筆頭者となった方は死亡や婚姻関係が解消されても、筆頭者のまま記載され続けます。
「本籍」と「戸籍」の違い

本籍と戸籍については、同じ「籍」の文字が使われていることから混同している方がいますが、これは間違いです。
ここでは、この本籍と戸籍の違いについて解説します。
本籍:場所、戸籍:書面
戸籍とは本籍が記載されている書面です。
戸籍は家族単位で作られており、身分を公的に証明する書類となるため多くの記載があります。
戸籍の記載事項は次のとおりです。
- 本籍
- 戸籍筆頭者氏名
- 戸籍筆頭者の家族の氏名
- 両親の氏名
- 生年月日
- 出生地
- 筆頭者との続柄
- 届出日
- 届出人
- 婚姻日
- 配偶者氏名
- 婚姻前の本籍と筆頭者など
戸籍謄本は戸籍原本の写し
パスポートや続柄を取得する際には「戸籍謄本」を取り寄せる必要がありますが、これは戸籍の原本ではなく写しです。
戸籍の原本は本籍地の役所で管理され、入手することはできません。
戸籍原本の写しには「戸籍謄本」のほかにも「戸籍抄本(こせきしょうほん)」があり次のような違いがあります。
- 戸籍謄本:「戸籍全部事項証明書」と呼ばれ原本の内容を全て写したもの
- 戸籍抄本:「戸籍個人事項証明書」と呼ばれ戸籍の中の個人事項のみを抜粋して写したもの
本籍地の調べ方

それでは、ここからは本籍地の調べ方を解説します。
本籍地の確認方法は次のとおりです。
- 住民票で調べる
- 過去の書類から調べる
- 免許証とスマホで調べる
- 警察署・運転試験場・更新センターで調べる
- 親に聞く
調べ方①:住民票で調べる
本籍地は、住民票から調べることが可能です。
住民票は、ご自身が住んでいる場所の市区町村役場で取得できるため手間もかからず、役所によっては住民票の自動発行機が設置されている所もあります。
住民票で本籍地を確認する際には、「本籍・筆頭者の記載を要する」欄にチェックを入れ、「本籍地・筆頭者が記載された住民票」を取得します。
また、住民票に世帯全員分を載せるのか、自分だけのぶんを載せるのかの選択があります。
ご自身の本籍地を知りたい場合は、自分のみの住民票で十分でしょう。
住民票はコンビニ交付でも取得可能
住民票をコンビニで交付する際には「マイナンバーカード」か「住民基本台帳カード」が必要です。
事前にいずれかのカードをお持ちの方には非常に便利なサービスですが、お住いの地域によってはサービスを行っていない地域もあります。
利用にあたっては事前の確認が必要です。
調べ方②:過去の書類から調べる
過去の書類から本籍地を調べる方法とは、本籍地が記載されている書類を探し出すというということです。
次に挙げる手続きをしている場合は、その手続きに必要な書類から本籍地を調べることが可能です。
- 婚姻届け・離婚届を作成している場合
- 住民票を取得している場合
- パスポートの申請をしている場合
- 相続手続きをしている場合
調べ方③:免許証とスマホで調べる
スマートフォンの操作が不便なくできる方なら、運転免許証をスマホにかざして本籍地を確認することが可能です。
以前とは異なり運転免許証には本籍地の記載はなくなりましたが、内臓のICチップには記載されているため、その情報をスマホで読み取ることができるのです。
現状ではiPhone(iOS)には対応しておらず、Android端末のスマホに限定される機能です。
運転免許証を取得・更新した際に設定した暗証番号を入れるだけで、その場で簡単に本籍地を確認することができます。
調べ方④:警察署・運転試験場・更新センターで調べる
運転免許証を持っている方なら、警察署・運転試験センター・免許更新センターに設置してあるICチップ読み取り装置を利用すれば、本籍地を確認することができます。
ICチップを読み取るという点ではスマートフォンを利用する場合と変わりませんが、この方法はスマートフォンがない方やスマートフォンがiPhoneの方でも、本籍地を確認することができます。
ただし、確認には免許証を取得・更新した際に設定した4桁の暗証番号が必要です。
暗証番号は3回間違ってしまうとロックがかかるため、十分に注意しましょう。
現状それほど普及している方法ではありませんが、お住いの近くに警察署がある方などには非常に便利な本籍確認方法です。
調べ方⑤:親に聞く
結婚している方であれば、婚姻届けを提出する際に親とは別の戸籍になるため、親に聞いても本籍はわからないでしょう。
しかし、未婚の方の場合は親と同じ戸籍に入っているため、親に本籍地を聞いた方が確実です。
ただし、次の場合では最初に解説した調べ方①から④で本籍を調べた方が良いでしょう。
- 親と連絡がとりづらい場合
- 親も本籍地がわからない場合
- 自身が既婚者の場合
本籍の変更手続き方法

ここでは、本籍の変更手続き方法を解説しましょう。
手続は、住所のある役所で行うことができます。
本籍が記載された戸籍の取得は本籍地でなければできませんが、変更手続きは次の場所で可能です。
- 住所地の役場
- 本籍地の役場
- 新たに本籍を置く役場
なお、本籍の変更には「転籍」によるものと「分籍」によるものの2種類があります。
いずれの場合も、変更手続きと同様に新旧の本籍地か住所地の役場で変更が可能です。
転籍すると既婚歴が記載されない
転籍をした際には新しい本籍地で戸籍を作りますが、元の戸籍の記載内容のすべてが引き継がれるわけではありません。
そのため、既婚の記載は新しい戸籍には記載されませんが、元の戸籍には離婚歴が残されます。
このような事情から、遺産相続の際には現在の戸籍謄本だけではなく、出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。
これは、転籍によって存在が確認できない相続人がいる可能性があるためです。
本籍を変えても住所は変更されない
転籍届・分籍届を提出しても変更されるのは本籍地のみで、住民票の住所は変更されません。
そのため、住所を変更したい場合には住民票を移す必要があります。
住民票の変更手続きには次の書類の提出が必要です。
- 転出届
- 転入届
- 市区町村内での転居の場合は転居届
なお、手続きを行う期限は転居から14日以内と定められています。
元日本人と外国人の本籍地について

現在外国にお住いの方であっても、日本人であれば本籍地は日本のどこかにあるため、本籍の確認方法は変わりません。
しかし、帰化して日本人でなくなった場合や外国人の場合は日本に本籍地はありません。
これは、日本の戸籍に登録されていることが日本人の証明にもなっているためです。
日本人であった方が日本人のときの本籍を確認したい場合は、まずは先ほどお伝えした5種類の確認方法を試してみましょう。
その方法で本籍地の確認ができない場合は、日本大使館か総領事館に問い合わせを行うことをおすすめします。
まとめ

本籍の調べ方について解説しました。
確認方法で一番簡単で一般的なものは、住民票から本籍を調べる方法です。
本籍は住所とは違い、日常生活への影響が少ないため普段から意識することはあまりありませんが、重要な書類の記載には本籍が含まれる場合が多いものです。
いつでも本籍が調べられるよう、必要な書類や取得方法については理解しておきましょう。