近年、身内だけで行う葬儀も一般的になりましたが、葬儀後に行う法要も身内だけで行うことは可能なのでしょうか?
ここでは、故人の追善供養の中でも一番規模が大きい四十九日法要を身内だけで行う方法を説明しながら、その法要の「特徴」「服装」「香典」についても併せて解説します。
ごくわずかな身内だけで四十九日法要を行い、故人を静かに供養したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
四十九日法要は身内だけで行っても良い

故人が亡くなってから最初に行う法要は「初七日」法要です。
現在では、この初七日法要を火葬した日に繰り上げて行うことが多くなったため、四十九日法要が最初の法要となることが多くなってきました。
このような理由から、遺族や喪主は四十九日法要を大規模に行おうとする傾向がありますが、この行為は仏教の教義からすると少し違和感を感じてしまいます。
本来の四十九日法要は誰もが参加できるものではなく、喪主が案内状を送付して近しい人物に限定して行われるため、法要の規模はそれ程大きくなることはありません。
そのため、身内だけを集めて小規模な四十九日法要を行うことには何の問題もないのです。
特に、近年猛威を振るう新型コロナウイルスの影響もあり、葬儀や法要の小規模化が進むことが予想されます。
このような状況下では、身内のみで行う四十九法要は、3密を回避することができる法要として、むしろ推奨されるべき法要の形と言えるでしょう。
法要を延期することは可能なのか?
新型コロナウイルスの影響を懸念して、四十九法要の日時を延期したいと考える方もいますが、この法要は故人の命日とも関係があるためいつでもできるわけではありません。
そのため、できることなら本来の日時に行うことが望ましいでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響を避けるためなら致し方無いと考える寺院があるのも事実です。
四十九日法要の延期に関してはそれぞれの宗派や寺院の考え方もあるため、菩提寺やお世話になっている僧侶へ相談することをお勧めします。
四十九日法要と同日に行うことが多い儀式

四十九日法要の当日には、次に紹介する儀式を同時に行う場合があります。
同時に行う儀式にはそれぞれに注意点がありますので、四十九日法要に参列したことがない方はご確認ください。
- 納骨式
- 開眼供養
- お斎(おとき)
納骨式
納骨式は、火葬後の遺骨をお墓に納めるための儀式です。
火葬後の遺骨は骨壺に納め一定期間をご自宅や祭壇で供養されますが、この期間を過ぎれば納骨式を経てお墓に納骨されることになります。
納骨を行う時期はお住いの地域や家庭ごとに期間が異なりますが、四十九日法要後に行うケースが一般的です。
なお、四十九日法要までにお墓を準備できなかった場合は、一周忌法要を目途に納骨を済ませましょう。
開眼供養
開眼法要とは新たに購入した位牌やお墓に魂を入れる儀式で、魂入れや入魂式などと呼ばれる場合もあります。
四十九日法要の際には開眼供養を行い、白木の位牌から黒塗りの本位牌に故人の魂を入れ替えます。
この黒塗りの本位牌には、次の内容を刻み仏壇に安置されるため、四十九日法要までに準備しなければなりません。
- 没年月日
- 戒名
- 俗名
- 享年
お斎(おとき)
四十九日法要が終わった後にはお斎と呼ばれる会食を行います。
このお斎は法要に参列してくれた参加者や読経を頂いた僧侶をもてなすと共に、参列者同士で生前の思い出話などをして故人を偲ぶために行います。
なお、お斎終了時には返礼品をお渡しして会食がお開きとなるため、施主は参列者の参加人数を把握して返礼品の準備をしておかなければなりません。
身内だけで行う四十九日法要の流れ

四十九日法要に参列したことがない方にとっては、この法要がどのような流れで進行されるのか疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?
そこで、ここでは一般的な四十九日法要の具体的な流れを説明しながらその内容について解説します。
- 喪主挨拶
- 僧侶の読経と参列者の焼香
- 僧侶による法話
- 各位牌の閉眼供養・開眼供養
- 納骨・お墓参り
- 会食
- 終了の挨拶
喪主挨拶
四十九日法要を開始するにあたり、喪主は僧侶を迎えて祭壇に案内し参列者がそろったタイミングで挨拶を行います。
この際の挨拶に決まった文言はありませんが、会場へ足を運んで頂いた感謝の意を込めた内容を手短に話すことがマナーとされています。
僧侶の読経と参列者の焼香
喪主の挨拶の後には僧侶による読経が始まり、その流れのまま参列者の焼香が行われます。
なお、この焼香は次の順番で行いますが、焼香を行う回数などは各宗派によって作法が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
- 施主
- 親族
- 参列者
僧侶による法話
法話とは僧侶が仏教の教えを説くことで、読経と焼香が終われば僧侶による法話が始まります。
法話の内容は僧侶により異なりますが、仏法に関する身のためになるお話をされることが一般的です。
各位牌の閉眼供養・開眼供養
閉眼供養とは、故人の魂が宿っているものから魂を抜き出す法要で、開眼供養は新たに故人の魂を入れる法要です。
四十九日法要における閉眼供養・開眼供養は、白木の仮位牌から魂を抜き取り、黒い本位牌に魂を入れる供養を指しています。
納骨・お墓参り
すでにお墓がある場合は、四十九日法要時に納骨を行いお墓参りが行われます。
寺院で四十九日法要を行う場合はお墓への移動が直ちにできるため、葬儀会館を利用する四十九日法要に比べて時間が短い傾向にあります。
会食
納骨とお墓参りが終われば僧侶や参列者を招いて会食を行いますが、この際の会食はお斎(おとき)と呼ばれ、僧侶や参列者へ感謝を示すと共に故人を偲ぶために行われます。
終了の挨拶
会食が終わり参列者へ返礼品をお渡した後は、喪主が終了の挨拶を行い四十九日法要はお開きとなります。
この際の挨拶は、法要に参列して頂いたお礼や故人との思い出を述べながら、開始時の挨拶と同様に手短に行うことがマナーです。
身内だけで行う四十九日法要の特徴

四十九日法要の一般的な流れは先ほど解説したとおりですが、身うちだけでこの法要を行う場合には基本的な流れは同じでも、その内容に特徴がある場合があります。
身内だけで行う四十九日法要の特徴は次のとおりです。
- 喪主挨拶を省略する場合がある
- 会食に関する自由度が高くなる
- 私服が許容される場合がある
喪主挨拶を省略する場合がある
一般的な四十九日法要では、次の内容を含んだ挨拶を喪主が法要開始時や終了時に行います。
- 法要に参列してくれたことへのお礼
- 法要を行えたことへのお礼
- 会食の案内
- 故人の生前のエピソード
- 終了時の締めの言葉 など
ただし、身内だけで行う四十九日法要の場合は、この喪主挨拶を完全に省略したり、非常に簡略化したりして行う場合があります。
この喪主挨拶の省略に関しては、身内である参列者の理解があるなら何ら問題はありませんが、僧侶への挨拶は一般的な四十九日法要と同じく丁寧に行わなければなりません。
会食に関する自由度が高くなる
四十九日法要を行った後の会食は、和食をメインにした料理店で行うことが一般的です。
しかし、身内だけで四十九日法要を行った後の会食は和食や精進料理が提供される料理店に限定して行うのではなく、次のように自由度の高い選択をする場合があります。
- 料理店で会食は行うが故人が生前通っていた和食以外の店で行う
- 故人の好物を自分たちで作って食べる
- お弁当を配る
- 会食自体を行わない
私服が許容される場合がある
四十九日法要の施主や親族の服装は、基本的には準喪服以上がマナーとされていますが、身内だけで四十九日法要を行う場合では私服が許容されるケースがあります。
僧侶を呼ばずに家族だけで営む四十九日法要では、お墓に手を合わせてその後に軽く会食するといった流れになりますが、この場合は私服が許容されます。
ただし、身内だけで四十九日法要を行うが家族以外の親族も参列する場合は、一般的なマナーである準喪服以上の服装が望ましいでしょう。
身内だけで行う四十九日法要の服装

忌事の際の服装は格式ごとに分けられ、次の3種類があります。
- 生喪服:喪服の中で一番格式が高い服装で喪主が着用する
- 準喪服:汎用性が高い喪服で喪主も参列者も着用する
- 略喪服:喪服の中で一番格式が低く平服に分類される
身内だけで四十九日法要を行うのであれば、その際の服装は格式を下げた服装でも構わないと考える方もいますが、基本的には正喪服あるいは準喪服を着用しなければなりません。
基本は準喪服
法事の際の喪主の服装は生喪服が正式なマナーとなり、それ以外の親族や参列者の服装は準喪服が基本となるため、たとえ身内だけで行う法事であっても私服での参加はNGです。
ここでは、正喪服に準ずる格式の喪服で、あらゆる忌事で着用することができる準喪服の具体例ご紹介します。
男性の準喪服
- 服装:黒色のフォーマルスーツ・白色無地ワイシャツ・黒色無地ネクタイ
- 靴・靴下:靴は金具がなく光沢が少ない革靴、靴下は黒色無地
- 備考:スーツはシングルでもダブルでも良い
女性の準喪服
- 服装:黒色のフォーマルドレス・スーツ・アンサンブル・ワンピース
- ストッキング:黒色
- 靴:ヒールが低く飾りや金具がない黒色のパンプス
- 備考:フォーマルドレスについているリボンやフリルは控えめな装飾なら可・袖は長袖が望ましいが5分袖までなら可(ノースリーブは不可)・スカートは膝丈以上
子供の服装
- 服装:制服がある場合は制服を着用し、制服がない場合は地味な色のブレザーにズボンやスカートを合わせる
- 靴・靴下:靴はローファーや地味な色のスニーカー、靴下は黒色もしくはグレーの無地が望ましいがワンポイントなら可
- 備考:就学前の子供の服装は地味な色味の服装を心がければ比較的自由
僧侶が同席する法要は準喪服以上の着用がマナー
「身内だけで行う四十九日法要の特徴」でも解説したように、身内だけで四十九日法要を行う場合では服装を簡素化して平服や私服で行う場合もあります。
しかし、法要に僧侶を招いて行う場合はたとえ身内しか参列しない法要であっても、通常の葬儀マナーに習って準喪服以上の服装で臨むことがマナーです。
身内だけで行う四十九日法要でも香典は必要?

身内だけの四十九日法要であっても、香典は必要です。
ただし、喪主側から香典について事前に不要の連絡があった場合は不要となるため、喪主がご自身と関係性が近い場合であれば香典について問い合わせても良いでしょう。
案内状に記載がなければ持参する
四十九日法要を行う際には、喪主側が参列して頂きたい方に対して案内状を送り法要の開催日や時間をお知らせしますが、その中に「香典は不要」と記載されている場合は、香典を用意する必要はありません。
案内状の中に、これらの記載がない場合は香典を持参しましょう。
親族として招かれた場合は持参する
身内だけで行う四十九日法要と言っても、ご自身が家族の立場で招かれているのか、親族の立場で招かれているのかによっても香典に関する判断は異なります。
ご自身が親族の立場で招かれている場合は香典を持参します。
家族の場合は不要
身内から更に範囲を狭めて、家族だけで四十九日法要を行う場合の香典は不要です。
家計を一つにする家族の中で香典をやり取りすることはありません。
四十九日法要の香典相場と一覧
四十九日法要の費用相場は故人との関係性やご自身の年齢によって異なります。
そのため、明確な費用相場を算出するのは難しいですが、一般的には5,000円から3万円ほどが選ばれやすい金額となります。
下の表は、故人との関係性やご自身の年齢ごとの費用相場の一覧です。
香典費用を考える場合の一例として活用ください。
故人との関係性 | 20代 | 30代 | 40代 |
---|---|---|---|
親 | 1万円~5万円 | 2万円~5万円 | 5万円~10万円 |
兄弟・姉妹 | 1万円~3万円 | 1万円~3万円 | 1万円~5万円 |
祖父母 | 5,000円~1万円 | 5,000円~3万円 | 1万円~3万円 |
叔父・叔母 | 5,000円~1万円 | 5,000円~2万円 | 1万円~3万円 |
友人・知人 | 5,000円ほど | 5,000円~1万円 | 5,000円~1万円 |
身内だけで行う四十九日法要でもお供え物は必要?

仏壇に供えるお菓子や果物などの物品は「お供え物」と呼ばれ、法要を行う際にはこのお供え物を持参することもあります。
このお供え物の有無については、身内だけで四十九日法要を行うかどうかは関係がなく参列者のお気持ち次第です。
遺族に手土産を持っていく場合もある
基本的には香典を持参したのであればお供え物は不要です。
ただし、手土産としてお供え物を持参する場合もあるため、香典を持参したからといってお供え物は持っていってはいけないという訳ではありません。
身内だけで法要を行うのであれば、一般的な法要よりも関係性が近い方が集まるためお供え物を持参する方は多いでしょう。
お供え物としておすすめの品
お供え物は使用したり食べることによりなくなってしまう、「キエモノ」が望ましいでしょう。
具体的には次の品がおすすめです。
- 花
- 線香
- 日本酒
- 果物
- 小分けになっているお菓子
- 賞味期限が長いお菓子(生菓子は不可) など
なお、お供え物は殺生を連想させる肉や魚、故人の墓前に供えるのには場違いな洗剤や石鹼などを贈ることはありません。
お供え物の費用相場
お供え物の費用相場は3,000円ほどです。
ただし、故人と特に親しい場合は5,000円から1万円ほどが費用相場となるでしょう。
親族間で事前に金額を決めている場合や、地域の風習によってもこのお供え物の費用相場は異なりますが、高額なお供え物は遺族に気を遣わせてしまうため相場の把握は重要です。
コロナ禍での新しい法要の考え方

2020年から世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスにより私たちの生活は一変しましたが、この疫病は忌事や法要のあり方にも影響を及ぼしています。
ここでは、コロナ時代の新しい法要の考え方について解説します。
会食は避けるべき
法要後に行う会食は、いわゆる「3密」の全てに該当するため控えた方が良いでしょう。
コロナ禍での法要は、次の方法が推奨されています。
- たくさんの弔問客を受け入れるのではなく家族だけの小規模な法要を営む
- 法要後の会食は避けパック詰めのお弁当を持ち帰ってもらう
リモートでの法要も検討するべき
寺院の中には近年注目を集めている「リモート法要」に対応できる寺院があります。
このリモート法要とは、オンライン通話アプリを使用して法要の映像を参列者で共有し故人を弔う方法です。
3密を回避することで感染リスクを無効化できるため、コロナ対策としては完璧な法要を行うことができますが、現状ではこのリモート法要に対応できる寺院は限られているのが現状です。
まとめ

身内だけで行う四十九法要は、仏教の教義から考えればその行いに違和感はなく、現在の新型コロナウイルスの影響を考えれば最適な法要のあり方と言えるでしょう。
しかし、これまでの法要のやり方に慣れている方にとっては、この小規模に行う法要を受け入れ難いと考えている方もいるもです。
このような方の中には、法要を故人の追善供養であると同時に、普段は疎遠な親戚同士が顔を合わせて近況を報告し合う場であると考えている方がいます。
四十九日法要を取り仕切る喪主は、法要後に3密を避けながら小規模な集まりを企画するなどして、身内だけで行う法要に不満を感じている方に配慮する必要があるでしょう。