法事の席に参列する際、お供え物として品物を用意する機会も多いことでしょう。
「何か喜ばれるような品物を」と思っても、大切な供養が行われる行事なだけに、どのようなお供え物がふさわしいのか悩む方も少なくありません。
今回は、法事にふさわしいお供え物や避けた方が良い品物、おすすめのお供え物・遺族への正しい渡し方まで詳しく解説します。
目次
法事のお供え物の意味

法事に参列する人は、お供え物として香典や品物を用意することが一般的です。
古くからの慣習であることはもちろんですが、実は法事のお供え物にはきちんとした意味があり、それを踏まえてふさわしい品物を用意しなければなりません。
ここでは、法事のお供え物の意味についてお伝えしましょう。
故人へのお供え
法事は、仏様や故人の魂を供養するための行事です。
仏教の供養では、「香」「花」「灯燭」「浄水」「飲食(おんじき)」という「五供」と呼ばれるお供え物を基本にし、仏前に供えで故人の魂が安らかであるよう祈ります。
あの世にいる故人へお供え物が届き、功徳が積まれて成仏できると考えられているのです。
法事のお供え物には、「故人が死後も幸せに過ごして欲しい」という願いが込められています。
遺族に対するお礼
故人へ捧げ物という意味合いが強いお供え物ですが、もう一つ忘れてはならないのが「遺族に対するお礼」です。
法事の席は、故人の遺族が事前に準備して設けられます。
長く会うことがなかった人たちが集い、故人を懐かしみながら供養する場を用意してくれるのです。
つまり、法事のお供え物には「故人を偲ぶ機会を作ってくれた感謝の気持ち」という意味も込められています。
法事のお供え物を選ぶ際には、遺族に対するお礼の気持ちも忘れないようにしましょう。
法事にふさわしいお供え物

法事のお供え物は故人や遺族への贈り物になるため、仏教の教えや遺族の気持ちを考慮した品物を選ぶことが大切です。
では、具体的にどのような品物が良いのか、法事にふさわしいお供え物の特徴について解説しましょう。
- 消え物
- 小分けされている物
- 日持ちする物
- 故人や遺族に喜ばれる物
消え物
消え物とは、「使用したり食べたりしたらなくなる品物」のことを指します。
人の死とは人生において悲しい出来事なので、「悲しみ消えてなくなりますように」という願いを込めて用意するのです。
消え物は仏事のお供え物の基本になりますので、これを基本として覚えておきましょう。
小分けされている物
小分けされているものも、法事にふさわしい品物とされています。
仏前にお供えされた品物は、法事が終わった後に「仏様のお下がり」として分けることも少なくありません。
参列者に「お下がり」を分ける際、小分けされている物なら配りやすいうえ、衛生面でも安心して配ることができます。
法要後の「お下がり」のことも考慮して、小分けされた品物を選ぶと良いでしょう。
日持ちする物
日持ちする物は、多くの人から受け取る遺族にとってありがたい品物です。
たとえば、賞味期限が近いお菓子などを受け取った場合、遺族が食べきれないと返って申し訳ない気持ちにさせてしまいます。
日持ちする品物であれば、遺族が少しずつ消費しても問題ありません。
遺族の人数や生活状況なども考慮して、日持ちする品物を探してみましょう。
故人や遺族に喜ばれる物
故人や遺族と親しい間柄で好みがわかっている場合は、相手に喜ばれるお供え物を用意するのも良い方法です。
「〇〇のお店のお菓子」や「〇〇酒造のお酒」など、故人や遺族を敬う気持ちがともなっているのなら、きっと喜ばれることでしょう。
ただし、法事は供養をする行事なので、あくまで仏前でお供えする品物であることを忘れないようにしてください。
ふさわしいかどうか判断できない場合は、必ず周囲に相談するようにしましょう。
法事で避けた方が良いお供え物

法事のお供え物は仏様と故人へ捧げられるので、たとえ故人や遺族に好まれても避けた方が良い品物があります。
ここでは、法事のお供え物として避けた方が良い品物の特徴をお伝えしましょう。
- 使っても消えない物
- 日持ちしない物
- 匂いが強い物
- 殺生に繋がる物
- 日常的に使用しない物
使っても消えない物
使っても消えない物は、「悲しみがいつまでも残る」という意味が含まれるため、法事のお供え物にふさわしくありません。
使っても消えない物はいつまでも遺族に手元に残り、返って迷惑になることもあります。
法事のお供え物では、使っても消えない物を選ばないようにしましょう。
日持ちしない物
日持ちしない物も、法事のお供え物にふさわしくありません。
たとえば、生菓子や要冷蔵の食べ物などは保管もしにくく、「お下がり」として参列者に配ることも難しいでしょう。
遺族が消費する期間も考え、日持ちしない物は選ばないようにしてください。
匂いが強い物
匂いが強い物は、仏教の教えから考えても法事にふさわしくありません。
確かに「香」は基本のお供え物の一つですが、これは浄化の力がある「お香」を指しているもので、匂いが強い人工香料は返って失礼になります。
さらに、ニンニクや玉ねぎといった刺激臭のある食べ物も、法事のお供え物としては避けるべきです。
匂いが強い物は避け、遺族に失礼のない品物を用意しましょう。
殺生に繋がる物
法事は仏教による供養の行事なので、殺生につながる品物は避けましょう。
肉・魚を使用した食べ物はもちろんのこと、たとえ印刷であっても動物柄が印刷された品物は良くありません。
自分では気がついていなくても、商品説明や成分表を確認すると肉・魚由来の材料が使われていることもありますので、法事のお供え物を選ぶ際には良く確認してください。
日常的に使用しない物
日常的に使用しないものは、受け取った遺族も扱いに困るので避けるようにしましょう。
まれに、少しモダンな石鹸フラワーや置物付きの線香などを贈る人もいますが、遺族が好むものでなければなかなか使ってもらえず、結果的に残ってしまいます。
法事のお供え物は受け取る遺族の好みも考え、日常的に使用してもらえる品物を用意しましょう。
法事におすすめのお供え物

法事にふさわしいお供え物のポイントは理解していても、実際に探すとピンとこなかったり、「これで良いのかな?」と悩んだりすることも多いですよね。
そこで、法事におすすめのお供え物にはどのような品物があるのか、多くの人に選ばれているお供え物をお伝えしましょう。
- 線香・蝋燭のセット
- 花籠などの供花
- 小分けされたお菓子
- 果物の缶詰
- 缶ジュースのセット
- そうめん・乾物
- 地域の特産品
- 故人や遺族の好物
線香・蝋燭のセット
法事のお供え物として人気があるのは、線香と蝋燭のセットです。
火を灯す蝋燭と柔らかな香りがする線香は、お供え物の基本である「五供」に倣っており、遺族にも喜ばれています。
近年では、コーヒー・紅茶・イチゴの香りがする線香も販売されており、少し変わったお供え物を探している人に人気です。
線香・蝋燭にもさまざまな種類がありますので、これはと思うものを選んでみましょう。
花籠などの供花
仏前にお供えするお花は、「供花」と呼ばれており法事では欠かせません。
仏花として有名なのは菊や胡蝶蘭(こちょうらん)、百合(ゆり)といった種類ですが、最近では「落ち着いた色合いの花であれば良い」という考えも広がっており、故人や遺族の好みに合わせて花籠を贈ることもあります。
すでに飾ってある花籠なら、遺族が改めて手入れをする必要がありません。
近年ではインターネットでも花籠を申し込めますので、実際に問い合わせて相談すると良いでしょう。
小分けされたお菓子
法事のお供え物として定番なのがお菓子ですが、その中でも人気があるのが「小分けされたお菓子」です。
おせんべいやクッキー、おまんじゅうなど、それぞれが個包装されているお菓子は「お下がり」として分けやすく、衛生面でも心配ありません。
法事のお供え物でお菓子を用意する際には、小分け包装されているものを選ぶと良いでしょう。
果物の缶詰
法事では果物籠をお供えすることも多いですが、日持ちのことを考慮して果物の缶詰セットを贈ることもおすすめです。
日持ちするので保管もしやすく、法事の後のデザートにも喜ばれます。
ただし、果物の缶詰セットは重さがあるので、手持ちで運ぶのには向いていないかもしれません。
セットの大きさにもよりますが、運ぶ手段まで考えてから選ぶと良いでしょう。
缶ジュースのセット
夏の時期に行われる法事では、缶ジュースのセットのお供え物が人気です。
特に小さな缶ジュースだとお供えもしやすく、飲みきりサイズなのでお下がりをいただく遺族にも喜ばれます。
ジュース類のセットは果物の缶詰と同様に重いので、持ち運びの手段に合わせて選ぶようにしましょう。
そうめん・乾物
そうめんや乾物のセットは、法事のお供え物の基本ともいえます。
そうめんも乾物も長期間の保存に優れていますし、法事では仏前に精進料理をお供えしますから、そうめんや乾物がセットで揃っていると便利でしょう。
有名な産地のそうめんや乾物は、高級感がありお供え物に最適です。
少し良いそうめんや乾物を用意して、故人の仏前に供えてもらいましょう。
地域の特産品
遠方から法事に参列する場合、住んでいる地域の特産品をお供え物にするのも良い方法です。
その地域でしか購入できない特産品は、「なかなか手に入らない」という点で遺族にも好まれます。
ただし、特産品が肉や魚の加工品だった場合は、喜ばれることはわかっていてもお供え物にふさわしくありません。
遺族が特産品を楽しみにしているなら、それはあくまでお土産という形にとどめておき、お供え物は別に用意しましょう。
故人や遺族の好物
故人が生前好きだった食べ物や遺族が好むような品物は、お供え物としても遺族へのお礼としても喜ばれます。
たとえば、故人が好きだったお菓子をお供え物として渡したとき、「故人が喜んでくれるから」とすぐに開けて供えてもらえると、用意した側も嬉しくなりますよね。
お供え物は、故人や遺族に対する気持ちの表れです。
贈る相手のことを考えながら、どんなものが喜ばれるか吟味して選んでみましょう。
法事のお供え物の金額相場

法事のお供え物を用意する際、どのくらいの予算で選べば良いのか迷う人も少なくありません。
お供え物の金額相場は、香典を渡すかどうかで変わってきます。
ここでは、法事のお供え物の金額相場についてケース別に解説しましょう。
- 香典を渡す場合:3,000円〜5,000円
- 香典を渡さない場合:5,000円〜1万円
香典を渡す場合:3千円〜5千円
法事で香典も渡す場合、用意するお供え物の金額相場は3千円〜5千円です。
法事の香典は3千円〜5千円が相場なので、お供え物と合わせて5千円〜1万円になるようにします。
ただし、親族内や地域の慣習である程度金額が決まっていることもありますので、まずは周囲の人に尋ねると良いでしょう。
香典を渡さない場合:5千〜1万円
法事で香典を渡さない場合、用意するお供え物の金額相場は5千円〜1万円です。
香典も品物も立派なお供え物ですから、お金を包まない場合はその分金額が高いものを用意します。
金額が高くなる分、選べる品物の幅も広がりますので、これはと思うお供え物を探してみましょう。
法事のお供え物ののし書きの書き方

法事のお供え物にはのし紙を掛けますが、掛け紙の種類や書き方にも決まりがあります。
順を追って、具体的なのし紙の種類や書き方を解説しますので、実際に用意する際の参考にしてみてください。
- 弔事用ののし紙を用意する
- 上段中央に御供物・御仏前・御霊前と書く
- 下段中央に送り主の名前を書く
弔事用ののし紙を用意する
法事は仏様や故人を供養する行事なので、弔事用ののし紙を用意してください。
弔事用ののし紙には、「黒白」「黒銀」「双銀」「黄白」といった種類があり、地域によってどののし紙にするか決まっていることもあります。
お店で相談すれば適切なのし紙を選んでもらえますので、わからない場合は店頭で尋ねてみると良いでしょう。
上段中央に御供物・御仏前・御霊前と書く
のし紙を選んだら、水引の上段中央に「御供物」「御仏前」「御霊前」のいずれかを書きます。
基本は「お供物」「御仏前」ですが、四十九日の忌明け前なら「御霊前」、浄土真宗ならすべて「御仏前」というように、宗教や状況に合わせて書き分けなければなりません。
「御供物」ならどのようなケースでも使えますので、遺族の宗教や状況がわからない場合は「御供物」にしましょう。
下段中央に送り主の名前を書く
「御供物」「御仏前」「御霊前」と書いたら、その真下にあたる下段中央に送り主の名前を書いてください。
お供え物を用意した人と渡す人が違う場合は、送り主は「お供え物を用意した人」になります。
家族の代理でお供え物を渡す際には、「こちらは〇〇(送り主の名前)からです」と一言添えるようにしましょう。
【ステップ順】お供え物の渡し方

法事のお供え物は、渡す際にも守るべきマナーがあります。
どのような渡し方なら失礼にならないのが、お供え物の正しい渡し方をステップ順に解説しましょう。
- 遺族にご挨拶をする
- お供え物を紙袋や包みから取り出す
- 表書きが遺族の正面になるようにして渡す
遺族にご挨拶をする
お供え物を渡す前には、最初に遺族へ挨拶をします。
ここで伝えるべきなのは、法事を行う遺族への労いやお礼です。
出迎えてくれた喪主や施主に対し、法事にお声掛けいただいた感謝の気持ちを伝えてください。
お供え物を紙袋や包みから取り出す
ご挨拶が済んだら、お供え物を紙袋から包みから取り出しましょう。
お供え物が見えない状態で渡すのは失礼にあたります。
いただいたお供え物をそのまま仏前に供えることもありますので、必ずお供え物を紙袋や包みから出してください。
表書きが遺族の正面になるようにして渡す
取り出したお供え物ののし書きを確かめ、遺族から見て正面になるよう向きを整えて差し出します。
向きを整えて差し出されると遺族が送り主を確認しやすく、名前を読み間違えることがありません。
お供え物を渡す際には、「どうぞお供えください」と一言添えて渡すようにしましょう。
法事のお供え物を渡す際の注意点

法事のお供え物を渡す際には、守るべき注意点があります。
具体的にどのようなことに気をつければ良いのか、詳細をお伝えしましょう。
- 4と9の数字を避けて用意する
- お供えは遺族に渡して供えてもらう
- 遺族から品物辞退を申し入れられたら香典だけにする
- お供え物選びに悩んだら周囲の人と相談する
4と9の数字を避けて用意する
4と9はそれぞれ「死」「苦」につながるため、お供え物の個数としてふさわしくありません。
たとえば、個包装のお菓子を用意する場合、「4個入り」「9個入り」が失礼にあたります。
すでにセットになっている品物もあるかと思いますが、法事であることを伝えればそれに合わせた個数にしてもらうこともできます。
品物の個数が4個、9個にならないよう気をつけましょう。
お供えは遺族に渡して供えてもらう
お供え物は、自分で仏前に供えてはなりません。
最初に遺族へ渡し、遺族から仏前に供えてもらうのがマナーです。
お供えする場所や遺族側の段取りなどもありますので、お供え物は必ず遺族に渡してから供えてもらうようにしましょう。
遺族から品物辞退を申し入れられたら香典だけにする
法事を行う遺族の中には、事前にお供え物の品物を辞退する人もいます。
品物辞退をするケースでは、「高齢なので対処に困る」「少人数の家族で使いきれない」といった理由もあるため、無理に品物を渡すのは良くありません。
このような場合はお供え物を香典だけにしておき、品物は控えるようにしましょう。
お供え物選びに悩んだら周囲の人と相談する
法事のお供え物には守るべきマナーや注意点があるため、どんな品物を選ぶべきか悩む人も多いことでしょう。
お供え物選びに悩む場合は、周囲の人と相談して決めるのも良い方法です。
他の人がどのようなお供え物を用意するのかわかれば、同じ品物が重複したり大きく金額を外したりすることがありません。
周囲の人に相談できなくても、ギフトショップの店員に尋ねればおすすめのお供え物を紹介してもらえますので、一人で悩まず相談して決めましょう。
まとめ
法事のお供え物は、仏様や故人の供養に捧げる供物であり、偲ぶ場を作ってくれた遺族に対する感謝の気持ちでもあります。
「消え物」「小分けしてある物」「日持ちする物」「故人や遺族が喜ぶ物」がふさわしいとされていますが、たとえこの条件に当てはまっていても、「匂いが強い物」「殺生に繋がる物」は避けなければなりません。
また、お供え物には渡し方にもマナーがあります。
必ず遺族に渡してからお供えしてもらい、お供え物を辞退されたら香典だけ用意することが礼儀です。
法事のお供え物を選ぶ際にはポイントとマナーを押さえ、礼を尽くした品物を用意しましょう。