近年さまざまな事情により、小規模な葬儀が行われるようになりました。
その中でもよく耳にするのが、「家族葬」と呼ばれる小さな葬儀です。
家族葬では、ごく身内の人がひっそりと故人を見送ることから、遺族が香典を受け取らないケースも見られます。
しかし、家族葬では香典が必要ないかというと決してそういうわけではなく、家族葬であっても香典を用意するべきケースもあるのです。
では、家族葬で香典を用意する場合には、どのような点に注意をするべきなのでしょうか?
今回は、家族葬における香典の決まり事や知っておくべきポイント、家族葬の香典についての注意点について、詳しく紹介します。
目次
家族葬とは

家族葬とは、故人の遺族やごく身内の人が少人数集まり、心のこもった葬儀で静かに故人を送り出す葬儀の形式です。
家族葬で集まる参列者はそれぞれですが、少なくて10人前後、多くても30人前後の人が参列し、故人との別れをゆっくり惜しみなが旅立ちを見送ります。
家族葬は、一般葬に比べると規模が小さいため費用が少なく、形式に囚われず故人や遺族の意向に沿った葬儀が行えることから、近年多くの人から注目されるようになりました。
さらに、「香典返しなどの手続きを省きたい」「費用が少ないので必要ない」などの理由から、遺族が香典辞退するケースが多いのも家族葬ならではの特徴と言えます。
しかし、規模が小さいというだけで「故人を暖かく見送る」という気持ちは一般葬と変わりませんし、家族葬だからといって必ずしも遺族が香典辞退するわけでもありません。
家族葬であっても、故人を見送り哀悼の意を表す儀式であることを忘れず、お悔やみの気持ちである香典の扱いには十分な配慮をしていきましょう。
家族葬の香典のケース

家族葬の香典では、香典の扱いについていくつかのケースがあります。
では、家族葬の香典では具体的にどのようなケースが考えられるのか、実際に家族葬で選択されている香典のケースを紹介します。
ケース①:香典を辞退する
家族葬と聞いたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのが、遺族が香典を辞退するケースです。
家族葬は葬儀の規模も小さく、さらに参列者も遺族や親しい人に限られているため、香典辞退する遺族も少なくありません。
香典は参列者のお悔やみの気持ちを包んだものではあるのですが、故人を亡くして心身共に疲労している遺族には、その後の香典返しさえままならないこともあるのです。
このような背景から、「小規模でゆっくりと故人を送り、香典返しなどの手続きもせず静かに喪に服したい」と考え、遺族が家族葬での葬儀を選択し、香典辞退をするケースがあります。
ケース②:香典を受け取る
家族葬を選ぶ遺族の中には、「故人の遺志を尊重して少人数で見送りたい」「故人らしく暖かな葬儀で送り出してあげたい」という考えを持つ人もいます。
一般葬でも希望に沿った儀式は可能ですが、参列者が多いと遺族も対応に追われてしまうので、故人との最期の時間をゆっくり過ごすために家族葬を選ぶのです。
このような理由で家族葬をする場合、一般葬と同じように参列者からの香典を受け取るケースがあります。
もともと香典は参列者の気持ちですし、家族葬だから香典辞退をしなければならないわけではありません。
「家族葬も一般葬も同じだけ大切な儀式」という意識を持ち、家族葬であっても香典と受け取ってもらえるケースがあることを認識しておきましょう。
ケース③:親族の香典のみ受け取る
家族葬の香典では、一般参列者からの香典は辞退していても、親族からの香典は受け取るというケースもよく見られます。
もともと、香典には万が一の時に親族同士が助け合うという意味合いも含まれているため、家族葬で香典辞退をしている場合であっても、親族が香典を用意することは珍しくありません。
さらに、親族は葬儀の準備を手伝う立場にもあるので、一般参列者よりも遺族に近しい立場です。
したがって、もし家族葬で香典辞退をしていても、親族は香典を渡して遺族を助けたいという気持ちを示します。
このような場合は、親族の香典を拒否すること自体が失礼になりかねませんので、家族葬で香典辞退をしていても親族からだけは受け取るという姿勢を持っておいた方が良いでしょう。
家族葬の香典のポイント

家族葬での香典を用意する時には、「受け取る遺族の気持ち」と「香典の基本」という2つの点を考慮しなければなりません。
ここでは、家族葬の香典を用意する時に押さえておくべきポイントについて、具体的な例を挙げて解説していきます。
- 遺族の意向を優先する
- 一般葬と同じ金額を用意する
- 親族はできるだけ遺族に直接渡す
ポイント① :遺族の意向を優先する
家族葬の香典は、遺族の意向を優先して用意するようにします。
最初に確認するべきことは、「遺族が香典を辞退しているかどうか」です。
遺族が香典辞退を申し出ているのにも関わらず、一般常識を優先して香典を無理に渡してしまうと、かえって遺族に負担を掛けてしまいます。
遺族が香典辞退には、表立って説明されなくてもちゃんとした理由がありますので、家族葬の香典は遺族の意向を優先して用意しましょう。
ポイント② :一般葬と同じ金額を用意する
家族葬は小規模な葬儀ですが、儀式の内容自体は一般葬と変わりません。
まれに、家族葬だからという理由で一般葬よりも少ない金額を包んだり、家族葬に香典は必要ないと自己判断する人もいますが、このような考えは失礼にあたります。
家族葬であることがわかっており、尚且つ香典辞退のお知らせを受けていない場合は、必ず一般葬と同じ金額を香典として包むようにしましょう。
ポイント③:親族はできるだけ遺族に直接渡す
故人や遺族の親族は、家族葬であっても香典を用意することが多いのですが、もし家族葬で香典辞退のお知らせを受けている場合には、受付を通さず遺族に直接香典を渡すようにします。
最低でも二親等以内の親族は、葬儀のお手伝いも兼ねて開場の1時間前には出向き、香典自体の有無に関わらず遺族に直接渡した方が良いでしょう。
もし何かしらの理由でお手伝いに間に合わず、会場で香典辞退を知らされた場合は、葬儀が終わった後に直接遺族に挨拶をし、その時に遺族に香典を渡すようにしてください。
家族葬の香典返しの基本

家族葬は、葬儀の中でもシンプルな形式になるので、香典返しもシンプルに行うケースも少なくありません。
では、家族葬の香典返しにはどのような方法があるのか、家族葬の香典返しの基本を紹介します。
- 即日返しする
- 消えものを返す
- 後日に半返しする
即日返しする
家族葬では、あらかじめ参列者を厳選して連絡するので、事前に参列者の人数がわかっていることが一般的です。
参列者の人数がわかっていれば、香典返しもスムーズに用意するできるため、家族葬の香典返しを葬儀のその日にお渡しする人もいます。
ただし、香典は人によって包む金額が違いますし、場合によっては用意した品物だけでは申し訳ないほどの金額を頂くかもしれません。
そのような場合は、四十九日の忌明けを目安に品物を送り、近況を伝えるお手紙を添えるようにしてみましょう。
消えものを返す
家族葬の香典返しで用意する品物は、使用したり食べたりすることでなくなる「消えもの」が基本です。
たとえば、お菓子・調味料・お茶・コーヒーといった食料品の詰め合わせや、洗剤などの使えば消える日用品の詰め合わせなど、消えものとして相応しい品物を用意しましょう。
もし何を用意すれば良いか悩むときは、ギフトショップの店員に相談して決めると良いでしょう。
後日に半返しする
家族葬で香典辞退をしていない場合は、四十九日の忌明けに合わせて後日に香典返しを送ります。
香典返しは、頂いた金額の半分を目安にして用意し、四十九日の忌明けに届くよう手配してください。
もし、職場の同僚から連名で香典を頂いた場合は、忌引き明けの出勤に合わせて小包装のお菓子を用意しておき、お礼として渡すようにすると良いでしょう。
家族葬で香典辞退を伝える方法

家族葬で香典を辞退する場合は、参列者に失礼にならないよう香典辞退を伝えなければなりません。
家族葬で香典辞退をスムーズに伝える方法には基本パターンがありますので、これから紹介する方法を参考にしてください。
- 香典辞退を直接伝える
- 訃報で伝える
- 受付でお知らせする
香典辞退を直接伝える
家族葬は参列者の人数が限られているため、葬儀の案内を遺族が直接相手に伝えるケースがよく見受けられます。
この際、「家族葬であること」と「香典辞退をすること」を直接伝えると、相手にも説明しやすく正確に情報を伝えることが可能です。
家族葬の香典は、参列者側も用意するか悩む人が多いため、相手に直接伝える機会があるのなら自分の口から意向を伝えるとよいでしょう。
訃報で伝える
故人の訃報を葉書やメールなどで知らせる場合は、文章内で「家族葬であること」と「香典辞退すること」を伝えます。
家族葬の参列者の人数は遺族の意向で決めるもので、訃報を受けたからといって誰でも参列できるものではありません。
しかし、訃報を受けた人は葬儀の参列を望むこともありますし、諸事情により参列できなくても香典を送る準備をする人もいます。
このような人たちに対し、「家族葬なので参列をご遠慮頂きたい」という気持ちと、「香典も辞退します」という内容を訃報という形で知らせ、家族の意向をはっきりと伝えるようにしましょう。
受付でお知らせする
香典辞退をギリギリまで悩んでしまい、直接連絡も訃報も間に合わないという場合は、葬儀の受付でお知らせする方法があります。
受付に「香典を辞退致します」という旨を書いたお知らせの看板を置き、受付に来た人に香典辞退を伝えてください。
香典辞退を何かしらの形で伝えており、それでも心配という場合にも、受付にわかる形で香典辞退の看板を用意しておくと良いでしょう。
家族葬の香典でよくある疑問点

家族葬での香典の扱いは、インターネットなどでよく知られるようになった反面、細かな部分で迷う人も少なくありません。
そこでこの章では、家族葬の香典によくある疑問点に焦点を当て、それぞれの対応方法についてお伝えしていきます。
疑問①:身内の家族葬でも香典は必要?
家族葬の香典は、遺族の意向によって香典をどうするかが決まります。
したがって、身内の家族葬であっても遺族が香典辞退をしていないのであれば、香典は必ず用意してお渡しするようにしてください。
遺族が香典辞退をするようであれば、身内の人が香典を用意しなくても問題はありません。
しかし、香典は親族同士の助け合いでもあります。
できれば親族同士で話し合いをし、香典の用意について折り合いをつけておくと良いでしょう。
疑問②:家族葬に参列できない場合の香典は?
家族葬への参列の案内を頂き、それでも参列できないという場合は、遺族の意向にしたがって香典を用意してください。
遺族が香典辞退をする場合は、香典は送らずお悔やみのお手紙を送りましょう。
遺族が香典辞退をしていない場合は、お悔やみのお手紙と一緒に香典を送ってください。
香典辞退の有無は、家族葬への参列の案内を頂いた際に遺族から伝えられますので、よく確認してから行動するようにします。
もし事前の案内がなく、家族葬へ参列できなかった場合は、まず遺族に電話や手紙でお悔やみの気持ちを述べ、「ご迷惑にならないのなら香典をお送りしたい」という旨を伝えて確認しましょう。
疑問③:香典以外に気持ちを伝える方法は?
家族葬で遺族が香典を辞退している場合でも、香典以外に気持ちを伝える方法はあります。
例えば、葬儀に合わせて弔電を送る方法も良いですし、供花や供物で哀悼の意を表すのも喜ばれる方法です。
香典以外でお供物を送る場合は、遺族のことを考えて「お返しは要りません」というメッセージを添えてください。
供花や供物を送るのもためらわれる場合は、忌明けをする四十九日を目処にして、遺族を気遣うお手紙を送ってみましょう。
【遺族側】家族葬の香典のマナー

家族葬の香典をどのようにするかは、遺族側の意向が優先されます。
しかし、家族葬で香典を辞退する場合も受け取る場合も、遺族はマナーを守って行動することが大切です。
では、遺族は家族葬の香典でどのようなことに気を付けなければならないのか、遺族側のマナーについて解説します。
- 香典辞退はできるだけ事前に伝える
- どうしてもという場合は断らない
- 親族からの香典は受け取る
マナー①:香典辞退はできるだけ事前に伝える
家族葬で遺族が香典を辞退する際は、できるだけ早い段階で香典辞退を伝えるようにします。
故人の訃報は、葬儀の規模に関係なく哀しい出来事なので、訃報を受けた人はできるだけ早く哀悼の意を伝える準備をすることがマナーです。
しかし、「家族葬では香典辞退するもの」という情報を知っている人も多いため、香典辞退の知らせを受けていないと迷う人も少なくありません。
家族葬で香典辞退をする場合は、遺族はできるだけ事前に香典辞退の連絡をし、参列者や訃報を受けた人が迷わないようにしましょう。
マナー②:どうしてもという場合は断らない
家族葬を理由に香典辞退をしていても、故人とのお付き合いが深い人は「どうしても」と香典を準備しているケースもあります。
たとえ受付で香典辞退をしても、遺族に直接話しかけて香典を渡す人も少なくありません。
このような場合は、無理に断らず参列者の気持ちをありがたく頂き、故人に変わって感謝の心を伝えましょう。
マナー③:親族からの香典は受け取る
家族葬で香典辞退をしていても、親族からの香典は受け取ることが遺族のマナーです。
親族同士のお付き合いは故人の葬儀が終わった後も続いていくものですし、親族からの香典には「身内であるからこそお手伝いをしたい」という気持ちが込められています。
香典辞退をしている以上、最初は遺族がお断りの言葉を述べることもあるかと思います。
しかし、親族がそれでも渡したいという意志がある場合には無理に断らず、親族からの香典はありがたく受け取るようにしましょう。
【参列者側】家族葬の香典のマナー

家族葬の香典は、遺族の意向によって対応が変わってくるので、家族葬に参列する人も迷うことが多いでしょう。
しかし、家族葬の香典で参列者側が守るべきマナーを知っておけば、いざというときにスムーズに対応できます。
ここでは、参列者側が知っておくべき家族葬の香典のマナーについて、具体的な例を交えて詳しく解説しましょう。
- 事前に香典辞退を知らされたら無理に渡さない
- 香典辞退かわからない場合は用意する
- 香典辞退を伝えられている場合は代わりのものを用意する
- 家族葬でも相場の金額を包む
- 香典を郵送したい時は遺族に確認する
マナー①:事前に香典辞退を知らされたら無理に渡さない
家族葬に参列する際、事前に遺族から香典辞退を知らされている場合は、無理に渡さないことがマナーです。
家族葬を行う遺族はさまざまな理由により香典辞退をしているため、それを無理に渡すことは遺族に迷惑を掛けるかもしれません。
事前に香典辞退を知らされたら無理に渡さず、遺族の意向を尊重して行動しましょう。
マナー②:香典辞退かわからない場合は用意する
家族葬の参列する時、香典辞退かどうかがわからない場合は、必ず用意をしてから参列してください。
「家族葬では香典辞退するケースが多い」という情報が広く知られているため、「家族葬だから香典はいらない」と誤解する人もいるのですが、家族葬も正式な供養の儀式です。
したがって、遺族からはっきりと香典辞退を知らされていない限りは、参列者はお悔やみの気持ちとして香典を用意しましょう。
マナー③:香典辞退を伝えられている場合は代わりのものを用意する
香典辞退を伝えられており、それでも何かしらの品物を送りたいという場合は、香典の代わりのものを用意しましょう。
実際に送られた品物の例としては、次のようなものが挙げられます。
- 故人が生前好きだった花
- 故人が好きだった食べ物
- お線香のセット
- 故人が好きだった物をかたどったろうそく
- 弔電や手紙など
香典という形でなくても、心のこもった品物であればきっと故人も喜ぶことでしょう。
マナー④:家族葬でも相場の金額を包む
家族葬は少人数で故人を見送る葬儀なので、香典の相場も少し少なめと考える人もいるのですが、家族葬であっても香典は相場の金額を包むことがマナーです。
具体的な金額は次の通りなので、こちらを参考にして香典を用意してみましょう。
- 故人の親:10万円
- 故人の兄弟・姉妹:3万円
- 故人の祖父母:1万円
- 故人の親戚:1万円
- 故人の職場関係者や友人:5千円
マナー⑤:香典を郵送したい時は遺族に確認する
家族葬に参列できず香典を郵送したい際は、必ず遺族に確認してから行動してください。
遺族が香典を辞退している場合は、お悔やみの手紙だけを送るか「お返しは不要です」という一言を添えて香典の代わりの品物を送りましょう。
遺族が香典を辞退していない場合は、故人の初七日を迎えるまでの間に到着するよう、できるだけ早く香典を郵送してください。
まとめ

家族葬の香典は、遺族の意向が強く優先されるぶん、参列者も遺族も気をつけるべきポイントがあります。
家族葬の香典で迷うことがあったら、遺族・親族・周囲の人とよく相談して、お互いの気持ちが尊重しあえる方法を取るように心掛けましょう。