お通夜や葬儀・告別式に参列する際には香典を持参することがマナーですが、故人と縁が深い方が複数人いる場合では、連名で香典を包みたいと考える方が多いのではないでしょうか?
しかし、香典に関する知識がある方でも、香典を連名で包む際のマナーを正確に理解している方はそれほど多くはありません。
そこで、ここでは連名で香典を包む場合について、香典袋の名前の書き方や香典相場、注意点について解説します。
一般的には、会社関係者に不幸事があった場合の香典は連名で包むため、この際のマナーはビジネスマナーにも通じています。
この機会に香典を深く理解し、いざというときに率先して行動できる知識を身につけましょう。
目次
香典を連名にする場合

香典は「個人」で包むことが一般的であるため、連名で香典を包むことが失礼に感じて抵抗感を覚える方も多いのではないでしょうか?
しかし、結論から言ってしまえば、連名での香典はまったく失礼にはあたりません。
事情があって葬儀に参加することができず、家族・夫婦など何名かいる内の中から代表者のみが葬儀に参列する場合は、香典袋を一つにして「連名」とすることはまったく問題はないのです。
このように、香典を連名で包む場合は次のような状況が該当します。
- 夫婦・家族で香典を用意する場合
- 「会社関係者」「会社の部署」「学生時代の仲間」などの団体として香典を用意する場合
代表者以外も式に参列する場合は連名を避けるのがマナー
連名での香典はまったく問題はありませんが、これは代表者のみが葬儀に参列する場合に限られます。
連名の中に記載される人物が葬儀に参列できる場合は、個別に香典を用意することがマナーです。
香典が個別であれば、香典返しを用意する遺族の金銭的な負担を減らすことができるのです。
【状況別】香典を連名にする際の香典袋の名前の書き方

ここからは香典を連名で包む際の香典袋の書き方を、参列者の状況別に分けて解説します。
香典を連名で包む際には、誰からの香典であるのかが一目見て分かることが重要です。
喪主はいただいた香典に対して、人数分の香典返しを用意する必要があります。
そのためにも、喪主がわかりやすい表記を心がけ、香典返しの負担に配慮しなければなりません。
夫婦連名で出す場合
夫婦で葬儀に参列する場合は、香典は夫の名前だけで包むことが一般的です。
しかし、夫婦それぞれが故人と面識があった場合や妻の親族の葬儀に夫婦そろって参列する場合は、夫婦連名で香典を包む場合もあります。
なお、夫婦連名での香典金額は一人のときと同額を包みます。
夫婦で葬儀に参列する場合
夫婦で葬儀に参列する場合では、代表者となる夫の氏名を中央に記載し、その左隣に妻の名前のみを記載します。
結婚したばかりで旧姓でなければ相手がわからない場合は、表書きに新姓を記載して中袋に「旧姓○○」と記載するとよいでしょう。
なお、中袋がある場合の記載方法は次のとおりです。
- 中袋裏面の中央:郵便番号と住所
- 住所の左隣:夫の氏名
- 夫の氏名の左隣:妻の名前のみ
夫の代理で妻が出席する場合
妻が夫の代理として葬儀に参列する場合は、表書きの下に夫の氏名を記載し、その左側に小さく「内」と表記します。
この際、妻の名前を記載することはありませんので注意が必要です。
なお、中袋がある場合の記載方法は次のとおりです。
- 中袋の裏面左側:郵便番号と住所
- 住所の左隣:夫の氏名
家族連名で出す場合
家族で香典を包む場合では、子供の年齢や収入状況によって名前の記載方法は異なります。
親子で出す場合
親子で葬儀に参列する際は通常は親の名前だけで十分ですが、子供に収入があるのかないのかで記載方法は異なります。
ちなみに、子供が独立して実家以外に居住地を構えている場合では、親と同じ葬儀に参列する場合であっても連名ではなく個別に香典を包むことがマナーです。
子供に収入がある場合
子供に収入がある場合は、原則的には個別で香典を包む方が良いでしょう。
しかし、経済的にそれほど自立できていなく、まだ親と同居している場合では連名での香典であっても違和感はありません。
世帯主の名前を中央に、その左側に子供の名前を記載しましょう。
子供に収入がない場合
子供がまだ幼く収入が無い場合は、連名ではなく親の名前だけで香典を包みます。
ただし、子供が学生で学校の友達やその身内に不幸があった状況では、親の名前のみの香典では遺族は誰なのかわかりません。
このような特殊な事情がある場合は、表書きに親の名前を記載し、中袋に子供の名前と学年を記載しておくと良いでしょう。
兄弟・姉妹で出す場合
こちらも子供と同様に、社会人で自立しているであれば、香典は個別に出すことがマナーです。
ただし、親と同居中で葬儀に一緒に参列するのであれば、香典を連名とすることも可能です。
兄弟・姉妹の連名で香典を包む場合では、名字をそれぞれに記載します。
記載する順序は、右側から年齢順に、長男・長女の順番です。
職場の同僚・友人などの有志一同で出す場合
職場の同僚・友人などに不幸があった場合には、代表者が有志を募り香典を取りまとめるケースが多く見られます。
このような場合では、葬儀に参列するのは代表者1名のみとなり、香典を連名とする代わりに他の方は参列を見合わせます。
会社を代表して葬儀に参列する際には、代表者は名刺を準備して香典と共に渡すことがマナーです。
なお、名刺が縦書きの場合は右上に「弔」を、横書きなら左下に「弔」を記入して「○○を代表して会葬いたしました」と記載しましょう。
2名の場合
2人の連名であれば、中心に名前を並べて記載します。
ただし、名前を書く順番は右側に目上の方を記載するよう心がけましょう。
3名の場合
3人の連名であれば、はじめに中央に名前を記載し、その左右にそれぞれの名前を記載するとバランスよく3名の名前が並びます。
また、個人名が中袋に収まらない場合は、白無地の便箋を準備しこの別紙にすべての情報を記入します。
別紙への記載方法は次のとおりです。
- 別紙の右側:「会社名」もしくは「団体名」
- 会社名の左隣:「部署名」あるいは「他何名」
- 部署名の左隣:個人名全員
- 友人一同のように全員の住所が異なる場合は、遺族が会葬礼状を出せるよう名前の横に住所を記載する
4名以上の場合
連名の氏名を記載できるのは、見た目のバランスを考慮して3人までというルールがあります。
そのため、4人以上の場合は名前を代表者あるいは会社名として、その他の個人名は別紙に記載することになります。
会社や団体名を書く場合
会社や団体で連名とする場合では、中央に会社名か団体名を記載します。
部署単位で包む場合は、会社名を中央よりやや右側に寄せ、「○○部署一同」と中央に記載します。
この際は、香典袋に個人名を一切記載せずすべて別紙に記載しましょう。
代表者名を書く場合
表書きの下に代表者名を記載し、その左側に「外一同」もしくは「他○○名」と記載します。
個人名はすべて別紙に記載しましょう。
名前を書く順番について
先ほども若干触れましたが、氏名を記載する順序は右側に上司や年上の方を書き、左側に進むにつれて目上から目下となるようにします。
上下関係がない場合の連名では、五十音順に名前を記載すると良いでしょう。
香典を連名で出す際の金額相場

香典を連名で包む場合は、個人で香典を出す場合と金額が異なりますので注意が必要です。
連名で香典を包む際の金額は、次の2つの決め方があります。
- 目標額を先にきめて人数で割る方法
- 同額を出し合って集まった額を香典とする方法
1の方法では、端数が出ずに平等に金額を負担することができますが、連名人数が少なくなれば負担する金額は高額となります。
連名で香典を包む際の金額相場は5,000円から1万円の範囲となるため、目標額もこれと同じ範囲で設定します。
2の方法では連名の人数によっては端数が出てしまいうため、金額の調整が必要です。
5,000円から1万円を目安に、1人1,000円から2,000円程度を出し合うよう調整すると良いでしょう。
香典を連名で出す際の注意点

続いて、香典を連名で包む際の注意点について解説します。
個人で香典を包む際の注意点とは異なる事情もありますので、慎重な対応が必要です。
- 香典金額は縁起の悪い「4」や「9」の数字は避ける
- 集めた紙幣は両替して入れる
- 葬儀に参加する場合は連名を避ける
- 芳名帳への記入は代表者の住所・氏名を書く
- 供花や供物を贈る際には香典袋と同じ表記方法にする
香典金額は縁起の悪い「4」や「9」の数字は避ける
連名での香典は、香典額の合計に端数が出ても良いとされています。
ただし、個人で香典を包む際のマナーと同じく「死」を連想する「4」や、「苦しむ」連想する「9」の数字は使用してはなりません。
集めた金額に「4」や「9」の数字がついている場合は、他の数字に調整する必要があるのです。
集めた紙幣は両替して入れる
例えば、1人3,000円を10人から集めた場合、集まった千円札をそのまま香典袋に入れることはマナー違反です。
この場合、30枚の千円札を両替して1万円札3枚で香典袋に入れなければなりません。
細かいお札は、できるだけ大きなお札に両替して香典袋に入れましょう。
葬儀に参加する場合は連名を避ける
先ほどもお伝えしたように、代表者以外が葬儀に参列する場合は連名ではなく個人での香典が望ましいでしょう。
これは、葬儀で渡される香典返しと関係しています。
一般的な香典返しの金額は2,000円から3,000円の範囲内で用意され、葬儀当日に渡されます。
そのため、連名で香典を贈ったのにも関わらず、葬儀に参列することで1人あたりの香典額が返礼品と同程度の金額になることも考えられます。
これは、遺族にとっては非常に大きな金銭的負担です。
このような事情に配慮して、葬儀に参列する場合は個別で香典を包むことが望ましいのです。
なお、連名で香典を包んだのにも関わらずどうしても葬儀に参列したい場合は、香典辞退をすることをおすすめします。
香典辞退をする際には、次のような文言を香典袋に添えておくと良いでしょう。
- 「香典返しは辞退させていただきたくお願いいたします」
- 「香典返しのお気遣いは無用にてお願いたします」
芳名帳への記入は代表者の住所・氏名を書く
連名で香典を出す際には、香典を持参した代表者の氏名・住所を会場受付の芳名帳に記入します。
香典の中にご自身より目上の方が記載されていても、その方の名前を書く必要はありません。
芳名帳は、あくまでも香典を持参して葬儀に参加する方が記入すると覚えておきましょう。
供花や供物を贈る際には香典袋と同じ表記方法にする
会社関係者や親族から、香典の代わりとして供花や供物を贈る場面は多くあります。
また、近年増加傾向にある家族葬では香典を辞退する方も多く、この場合でも供花や供物を贈るケースが多く見られます。
このように、供花や供物を贈る場合でも、名前の記載方法は香典袋と同様です。
3名以下であれば全員の名前を記載しますが、それ以上になれば団体名とその横に「一同」と表記して、個人名は別紙に記載しましょう。
【状況別】連名で香典をいただいた方への香典返しの贈り方

連名で香典をいただいた際には、「代表者の方にまとめてお返しをするのか」もしくは「連名で記載されている方全員にお返しをするのか」迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?
そこで、ここでは連名で香典をいただいた際にの香典返しについて、連名の状況別に解説します。
夫婦・家族連名への香典返し
香典返しの品は1世帯に1つとなり、故人との関係が深かったからといって、特別な香典返しを贈ることはありません。
可能であれば、皆が小分けにして使うことができる品を贈るなどの配慮があっても良いでしょう。
会社・職場連名への香典返し
会社・職場関係からの香典は、会社の経費から出されているため、香典返しは必要ないとの考えもあります。
しかし、これからの関係を考慮すれば香典返しを贈っておいた方が良いでしょう。
この場合は、頂いた額の半額から3分の1程度の金額で香典返しを用意します。
本来であれば一人ひとりに香典返しをした方が丁寧ですが、金額が少なく品物も限定されるため皆が小分けにできる品物が最適です。
その他の連名への香典返し
友人が2人から3人程度の連名で包んだ香典には、個別に香典返しを贈ることがマナーです。
いただいた香典の金額を人数で割り、1人あたりの金額の半額から3分の1程度の品物をお返しします。
香典袋の表書き・住所・金額の書き方

ここまでは連名で香典を包む際の香典袋の書き方を解説してきましたが、ここでは個人で香典を出す際の香典袋の書き方を解説します。
中袋がある香典袋の記載方法は次のとおりです。
- 表書きと名前:表書きは「御霊前」が一般的であり、氏名は表書きの下にフルネームで記載(表書きに関しては次に記載する「マナー①:香典袋の選び方」で詳細に解説しています)
- 住所:中袋の裏面の左側に郵便番号を添えて「住所」「氏名」の順で記載
- 金額:中袋の表面の中央に旧字体の漢数字で記載
なお、中袋がない香典袋では裏面左側に住所・金額を記載して、表面中央に表書きと名前を記載します。
香典袋に関するマナー

ここでは、香典袋に関する基本的なマナーについて解説します。
- 香典袋の選び方
- 香典の包み方
- 香典の渡し方
香典袋の選び方
香典袋の選び方に関しては参列する葬儀が仏教であれば、基本的には「御霊前」と書かれた香典袋で問題はありません。
ただし、葬儀に参列することができずに四十九日を過ぎて香典を渡すのであれば、表書きは「御仏前」とします。
なお、仏教の中でも浄土真宗や仏教以外の宗教での表書きは次のとおりです。
- 浄土真宗:御仏前
- 神道:玉串料
- キリスト教:献花料
香典の包み方
香典にお札を包む際には、向きを揃え香典袋を表から見た際にお札の肖像画が裏向きになるように入れましょう。
また、新札を包むのはマナー違反となっているため旧札を使用します。
どうしても新札しか使用できない場合は、お札に折り目をつけて使用してください。
香典袋に使用する水引をつける際は、外袋の上側が上になるように折り込みます。
香典の渡し方
香典を受付で渡す際には、袱紗(ふくさ)から香典袋を取り出し、受付係の方が名前を読める向きに改めます。
その後、「この度はご愁傷様です」もしくは「御霊前にお供えください」と一言添えて、香典袋を両手で差し出します。
まとめ

連名での香典は、団体や人数によって名前の記載方法が異なります。
特に、家族での連名は、子供の「年齢」「状況」「世帯環境」を考慮するため、非常に複雑に感じてしまうかもしれません。
しかし、香典で最も大切なことは誰がどのように香典を出したのかを、遺族にしっかりと認識してもらう点にあります。
そのためにも、香典を連名で包む際は、受け取る側に配慮したわかりやすい表記が重要なのです。