【2024】相続登記の期限はいつまで?2024年4月1日の義務化以降の期限を解説

相続登記の期限手続き
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

相続登記とは、亡くなった人が持っていた不動産の名義を、相続人の名義などへと変える手続きです。名義人が亡くなったからといって自動的に登記の名義が書き換わるわけではなく、相続人などが手続きをしなければなりません。

では、相続登記の期限は、いつまでなのでしょうか?今回は、相続登記の期限や手続きを放置した場合のデメリット、相続登記の必要書類などについてくわしく解説します。

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)が持っていた不動産の名義を、相続人などへと変える手続きです。
土地や建物といった不動産の情報や、その不動産の名義人の情報は、原則として法務局に登記(登録)されています。

しかし、名義人が亡くなったからと言って、自動的に相続人などの名義へと書き換わるわけではありません。仮に相続人同士が話し合った結果被相続人の長男がその不動産を相続することになったとしても、法務局はそのことなどを知る由がないためです。

そのため、故人名義の不動産を相続人などの名義へと書き換えてもらうためには、相続によって不動産を取得した人が申請をしなければなりません。この手続きを相続登記といいます。

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相続登記の期限はいつまで?

相続登記の期限は、いつまでなのでしょうか?これについては、2024年4月1日に改正法が施行されることになっています。改正法の施行前後についてそれぞれ解説していきましょう。

2024年3月31日まで

記事執筆時点である2022年12月現在において、相続登記に期限はありません。

本来相続登記は、その不動産を取得した者の権利を守るための制度です。そのため、特に法令などで義務とはされていませんでした。

ただし、相続登記を放置すれば、後ほど解説をするとおり不利益をこうむる可能性があります。期限がないからといって先延ばしにするのではなく、できるだけすみやかに相続登記を済ませておいた方が良いでしょう。

2024年4月1日以降

相続登記に期限がなかったことから、比較的価値の低い不動産を中心に、相続登記をしないままで長年にわたって放置されるケースが散見されました。これが、もはや現在の所有者が分からなくなった「所有者不明土地」の増加要因の一つであるとして、社会問題になっています。

こうした事態を受け、相続登記を義務化して期限を設ける改正法が成立しました。相続登記の期限に関する改正は、2024年4月1日より施行されます。

改正後は、原則として、取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。また、改正後に発生した相続はもちろんのこと、改正前に発生した相続もこの改正の対象です。

ただし、改正前に発生した相続に関する相続登記の期限は、施行日(2024年4月1日)から3年以内とされています。今後は、これまで以上に速やかに相続登記を進める必要があるでしょう。

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相続登記を期限後まで放置するデメリット

相続登記を期限後まで放置した場合の主なデメリットは、次のとおりです。

デメリット
    • 罰則の対象となる
    • トラブルの原因となる可能性がある
    • 売却や担保提供などができない
    • 放置すればするほど手続きが煩雑になる

なお、このうち「罰則の対象となる」は、改正法の施行日である2024年4月1日以後のみに生じるデメリットです。一方、それ以外のデメリットは、改正前から変わりありません。

罰則の対象となる

改正法の施行後において、正当な理由がないにもかかわらず期限までに相続登記をしなかった場合には、10万円以下の過料に処される可能性があります。

なお、仮に期限までに遺産分割協議がまとまらない場合には、相続人1人のみで申請できる「相続人申告登記」をすることで、義務を果たすことが可能です。

ただし、相続人の申告登記は最終的にその不動産を取得した相続人を登記するものではなく、3年以内の相続登記義務を果たすための「とりあえず」の登記でしかありません。そのため、相続人の申告登記をしただけでは、「罰則の対象になる」以外のデメリットは回避できない点に注意が必要です。

トラブルの原因となる可能性がある

相続登記を放置すると、トラブルの原因となる可能性があります。

たとえば、相続人間での遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)の結果、A土地を長男が取得することとなったにもかかわらず、長男が相続登記を放置した場合を解説していきましょう。

この場合には、たとえばいったん遺産分割協議に合意した二男がその後金銭的に困窮し、A土地のうち自分の法定相続分を、事情を知らない第三者に売却してしまう可能性があります。また、二男が借りたお金を期限までに返さなかったことを理由に、二男にお金を貸した債権者がA土地のうち二男の法定相続分を差し押さえ、第三者に売却してしまうことも想定されます。

いずれのケースでも、第三者のものとなってしまったA土地の持分を、長男が取り戻すことは困難でしょう。これらはいずれも、すみやかに相続登記さえしていれば防ぐことができた事態です。

売却や担保提供などができない

不動産の名義人が故人のままとなっていれば、その不動産を売ったり、お金を借りる際の担保に入れたりすることはできません。たとえすぐに売却などをする予定がなかったとしても、将来売却や担保提供をする事態が生じた際には、売却や担保提供の前に相続登記をする必要があります。

そのため、せっかく売却や借り入れの話が生じたとしても、時機を逸して話が流れてしまう可能性があるでしょう。

放置すればするほど手続きが煩雑になる

相続登記は、放置すればするほど手続きが煩雑となる傾向にあります。なぜなら、年月の経過とともに相続人が亡くなって権利が次世代に移ったり、相続人が認知症になったりする可能性が生じるためです。

縁遠い人にまで権利者が拡がってしまえば、権利者の居場所を探して連絡を取ること自体が難しくなるケースもあるでしょう。

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相続登記にかかる費用

相続登記を期限内に済ませるためには、どの程度の費用がかかるのでしょうか?相続登記にかかる主な費用は、次のとおりです。

なお、このうち「登録免許税額」と「必要書類の取得費用」は、相続登記を自分で行った場合にも司法書士へ依頼した場合にも、同様にかかります。一方、「司法書士報酬」は、司法書士へ手続きを依頼した場合にのみ発生する費用です。

司法書士報酬

相続登記を司法書士へ依頼した場合の司法書士報酬は、依頼先の事務所によって異なります。そのため、正確な金額を知るためには、依頼先の事務所から見積もりを取らなければなりません。

目安となる金額としては、7万円から15万円程度であることが多いでしょう。

ただし、事務所の報酬体系により、相続人の数が多い場合や不動産の数が多い場合などには、加算となる場合があります。また、戸籍謄本など必要書類の収集から依頼をした場合や、遺産分割協議書の作成から依頼した場合には、加算となる場合もあるでしょう。

いずれもしても、その事務所ごとに報酬額や報酬の計算方法が異なりますので、依頼を検討している先の事務所へ問い合わせることが必要です。

登録免許税

登録免許税とは、登記申請をするにあたって納付すべき税金です。相続登記の場合の登録免許税額は、次の式で算定されます。

  • 登録免許税額(相続)=固定資産税評価額(1,000円未満切捨て)×1,000分の4

※登録免許税額は100円未満を切捨て、1,000円未満となる場合は1,000円となります。

たとえば、相続登記をしようとする不動産の固定資産税評価額が2,000万円である場合の登録免許税額は8万円、固定資産税評価額が5,000万円である場合の登録免許税額は20万円ということです。

相続登記をする不動産の価値が高ければ登録免許税額も高額となりますので、あらかじめ算定のうえ、心づもりをしておくと良いでしょう。

必要書類の取得費用

相続登記には、次で解説をするとおり、さまざまな書類が必要となります。この必要書類を集めるのにかかる費用は、配偶者や子どもが相続人である場合、おおむね5,000円から1万5,000円程度となることが多いでしょう。

一方、兄弟姉妹や甥姪が相続人である場合には取得すべき書類が増えるため、これよりも1万円ほど高くなる傾向にあります。

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相続登記の必要書類

相続登記には、さまざまな書類が必要となります。被相続人が遺言書を遺しておらず、遺産分割協議で不動産の取得者を決めた場合における一般的な必要書類は、次のとおりです。

なお、状況によってはこれら以外の書類が必要となることもありますので、実際に自分で相続登記をする際には、あらかじめ法務局の登記相談を活用して必要書類を確認すると良いでしょう。

登記申請書

登記申請書とは、登記したい内容をまとめた、相続登記の基本となる書類です。金融機関などの相続手続き書類のように穴埋め形式ではなく、原則として自分で一から作成しなければなりません。

書き方については、法務局のホームページに記載例が掲載されていますので、こちらを参考にすると良いでしょう。遺産分割協議で不動産の取得者を決めた場合の記載例は、「20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」です。

原則としてこの登記申請書に記載をしたとおりに登記がされますので、誤りのないよう正確に作成してください。不安がある場合には、本申請の前に法務局の登記相談で確認してもらうと良いでしょう。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類です。協議の結果として誰がどの不動産を取得することになったのかがわかるよう、明確に記載しましょう。

記載があいまいでは、相続登記ができない可能性があります。作成した遺産分割協議書には、相続人全員が内容に合意していることの証明として、署名と実印での捺印を行います。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書が必要です。

なお、印鑑証明書を代理で取得するためには、印鑑カードなどを預からなければなりません。そのため、同居親族などよほど近しい間柄である場合を除き、本人に取得してもらうことが多いでしょう。遺産分割協議書への押印時に、印鑑証明書を預かることができるとスムーズです。

印鑑証明書は、住所地の市区町村役場で取得できます。最近ではマイナンバーカードを持っていることを条件に、コンビニエンスストアに設置されているコピー機の操作で印鑑証明書が取得できる市区町村も増えていますので、こちらも活用するとよいでしょう。取得に要する手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度であることが一般的です。

なお、金融機関の相続手続きなどでは取得から使用までの期限を設けている場合がありますが、相続登記で使用する印鑑証明書は相続が起きた後で取得したものであれば問題なく、特に期限はありません。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

被相続人の相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。それぞれ、その時点で本籍地を置いていた市区町村役場で取得します。

なお、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合などには、これらに加えて被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も添付しなければなりません。その他、相続人の状況に応じて別の書類が必要となる場合がありますので、あらかじめ法務局へ確認しておくと良いでしょう。

取得手数料は、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。

これらの書類のうち、取得時点で除籍謄本や原戸籍謄本となっているものはその後何年経っても内容が変わることはないため、どれだけ前に取得したものであっても使用できます。また、戸籍謄本も死亡の事実が載っていればよく、相続登記に使用するうえでは特に期限はありません。

被相続人の除票

登記上の名義人と被相続人とが同一人物であることを証するため、被相続人の除票が必要です。除票は被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。手数料は市区町村によって異なり、1通200円から400円程度です。

なお、除票に掲載された被相続人の住所と登記上の名義人住所などが異なる場合には、別の書類が必要となる可能性があります。こちらも、相続が起きてから取得したものでさえあればよく、特に期限はありません。

相続人全員の戸籍謄本

相続人が存命であることを証するため、相続人全員の戸籍謄本が必要です。

戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得でき、取得手数料は1通450円です。相続が起きてから取得したものでさえあればよく、特に期限はありません。

不動産取得者の住民票

新たに不動産所有者となる人の情報を正しく登記するため、不動産を取得する相続人の住民票が必要です。住所地の市区町村役場で取得できるほか、印鑑証明書同じく、マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアのコピー機の操作で取得できる市区町村も増えています。

取得に要する手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度です。こちらも、相続が起きてから取得したものでさえあればよく、特に期限はありません。

不動産の固定資産税評価証明書または評価通知書

上で紹介をした登録免許税の額を正しく算定するために、不動産の固定資産税課税明細書または固定資産税評価通知書が必要です。いずれも、不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得できます。請求先の窓口は市区町村によって異なるものの、「固定資産税課」や「資産税課」などの名称であることが多いでしょう。

取得手数料は、課税明細書の場合、1通300円前後です。一方、評価通知書は無料で取得できます。こちらは、相続登記をする年度分のものを取得することが必要です。

相続関係一覧図

相続関係一覧図とは、相続関係を一覧にまとめた図です。家系図のうち相続に関係する部分のみを抜き出したもののイメージであり、記載例は次のとおりです。
相続関係一覧図

相続関係説明図は、相続登記における必須の書類ではありません。しかし、各書類のコピーとともに相続関係説明図を添付することで、一部の書類について原本還付を受けることが可能となります。

相続登記に使用する書類は、金融機関などの相続手続きにおいても必要となるものが大半です。そのため、相続関係説明図を添付して、原本還付の手続きを踏んでおくと良いでしょう。

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まとめ

2022年12月現在、相続登記に特に期限はありません。しかし、不動産登記法などの改正により、2024年4月1日以後は3年という期限が設けられることが決まっています。

相続登記の放置はトラブルの原因となりかねないため、これまでもスムーズに手続きを済ませておくことが推奨されていました。改正後に相続登記を放置すれば罰則の対象となる可能性があるため、今後はより期限を意識して手続きを進めていく必要があるでしょう。

しかし、相続登記には多くの書類が必要であり、これらを期限内にすべて揃えて手続きを進めることは、容易ではありません。そのような際には、当サイト「そうぞくドットコム不動産」のご利用がおすすめです。

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2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。