故人が亡くなった後、その遺族や親族は故人を偲ぶ喪中の期間に入ります。
「喪に服する」という言葉のとおり、喪中の期間には普段よりも慎んだ行動を取らなければなりませんが、人によって考え方は異なるため、どんな行動をしてはいけないのか悩むことも少なくありません。
そこで、今回は喪中にやってはいけないことについて、具体的な例を挙げて詳しく解説していきます。
喪中とは

喪中とは、簡単にいうと「故人の死に哀悼の意を持って過ごすための期間」で、故人の死を受け入れつつ緩やかに心を癒していく大切な時間のことです。
明治時代には喪中に服する期間が細かく決められており、故人の偲ぶために服装や行動まで詳細に気を配って過ごしていました。
近年では、ライフスタイルの変化にともない「忌明けをしたら普段通りの生活に戻る」という考え方が主流になりましたが、それでもある程度の秩序を保った行動が好まれる傾向にあります。
さらに、地域によっては喪中であることを理由に「大きなお祝い事」を避けることも多く、自分の基準では大丈夫だと思ったことが受け入れてもらえないといったケースも少なくありません。
喪中は、故人への気持ちと遺族の心を癒す時間だということを意識し、やっていはいけない行動を避けるようにしましょう。
忌中との違い
よく「喪中」と「忌中」を一緒に考える人が多いですが、この2つには明確な違いがあります。
忌中とは、故人が亡くなった日から数えて四十九日間の期間のことで、遺族は故人の魂が無事に極楽浄土へ辿り着けるよう7日ごとに供養をしなければなりません。
四十九日の間は、故人の魂もまだ現世にとどまっていると考えられているため、その遺族も穢れを負っているとされ、故人の魂を弔いつつ日常生活とは離れた時間を過ごします。
穢れがある間は、神社や神棚への参拝も禁止され、慶事も延期や中止されることが一般的です。
四十九日目には大きな法要が行われ、これをもって遺族は忌明けとなり少しずつ普段の生活へ戻っていきます。
忌中は、喪中と比べるともう少しやってはいけないことが多いため、忌中と喪中を区別して考えるようにしましょう。
喪中にやってはいけないこと

喪中の期間にやってはいけないことがある、という点は理解していても、では具体的にどのようなことをやっていはいけないのか悩む人も多いですよね。
そこで、ここでは喪中の期間にやってはいけないことについて、具体的な例を挙げて詳しく紹介していきます。
- お正月のお祝い
- 年賀状
- 初詣
- 入籍や結婚式
- 大きなお祝いの席への出席
- 旅行や宴席への出席
お正月のお祝い
お正月のお祝いは、日本で大切にされている慶事ですが、喪中の人はお正月のお祝いをしてはなりません。
玄関先に飾る門松やお正月飾りはもちろんのこと、お雑煮やおせち料理などのお祝い膳、お正月を祝って大勢での宴席を設けることもやってはいけないことに含まれます。
ただし、遺族同士で慎ましくお正月のご挨拶をしたり、ごく身内だけでお食事をする程度なら問題ありません。
年賀状
年賀状は、新年を迎えた喜びを親しい人やお世話になった人へ伝えるものなので、喪中にやってはいけないことです。
ただし、毎年やり取りをしていた人に対して何も連絡をしないのは失礼にあたりますので、年末には喪中の葉書を送り、新年のご挨拶ができないことを伝えましょう。
最近では、メールで新年のご挨拶をすることも増えてきましたが、これも年賀状と同じなので、できるだけ控えるよう心掛けてください。
初詣
新年を迎えると神社へ初詣をしますが、これは神様へ新年の喜びを伝える行為であるため、喪中の人は控えるようにします。
実は、忌明けをすれば神社へ参拝すること自体は問題ありませんが、神社は聖域で穢れを嫌う場所であるため、新年の大きな慶事である正月に初詣をすることは好ましくありません。
もし、地域の神社の氏子などでどうしてもお手伝いなどしなければならない場合は、神社の神主や氏子の人達とよく相談してから行動を決めるようにしましょう。
入籍や結婚式
入籍や結婚式といった慶事も、喪中には相応しくないという理由で中止や延期をする人もいます。
ただし、亡くなった故人が入籍や結婚を待ち望んでいたというケースや相手の家族がどうしてもと申し出る場合には、忌明けを待ってから入籍や結婚式を行うことも少なくありません。
故人を思い偲んでいる人は、喪中の期間でゆっくりと心を落ち着かせていきますから、相手の気持ちや状態をよく考慮した上で入籍や結婚式の日取りを決めましょう。
大きなお祝いの席への出席
喪中の人が、結婚式や出産祝いといった大きなお祝いの席へ出席することも、やってはいけないこととして挙げられるケースです。
ただし、近年では「相手の人が気にしなければ出席しても良い」と判断することも多く、実際に出席したという人も少なくありません。
しかし、まだ心が癒されていない状況でお祝いの席に出席することは、遺族にとっても相手にとっても気を使う可能性があります。
自分の気持ちを正直に伝えて相手と相談するようにしましょう。
旅行や宴席への出席
旅行や宴席への出席することは、喪に服して慎ましく生活する行為にそぐわないと判断されるため、喪中にやってはいけないこととして挙げられます。
地域によっては、「喪中の人が遠出をすると悪いことが起こる」と考えることもあるため、できるだけ旅行や宴席を控える方が良いでしょう。
ただし、喪に服する人の心を癒したいと思う人が、良かれと思い旅行や宴席へ誘うこともあります。
このような心遣いは、心が沈んでいる遺族にとっても良いケアになりますので、大人数ではなく静かに語り合えるような旅行や宴席ならば、少し前向きに検討してみても良いでしょう。
喪中の範囲と期間

喪中は、故人との続柄によって喪に服する期間が異なります。
では、喪中の期間はどのくらいが目安になるのか、故人との関係別に詳しく解説しましょう。
- 故人の配偶者と両親:約1年
- 故人の子供と兄弟:3ヶ月〜1年
- それ以外の親戚:忌明けが目安
故人の配偶者と両親は約1年
故人の配偶者や両親は、約1年が喪中の期間です。
これは、明治時代の決まりがもとになっている期間です。
故人の配偶者や両親は死後の手続きに追われることが多く、1年をかけてようやく生活が落ち着くという人もいます。
1年が経てば、故人の一回忌を迎えて心の区切りもつけやすくなりますから、無理に元の生活に戻ろうと頑張り過ぎないように気をつけましょう。
故人の子供と兄弟は3ヶ月〜1年
故人の子供と兄弟は、3ヶ月〜1年が喪中の期間です。
故人の年齢によっては、子供や兄弟の年齢がちょうど学生や社会人にあたるため、忌明けを境にして日常生活へ戻るケースもよく見られます。
学校行事や仕事で断れないお付き合いの範囲ならさほど問題ありませんが、故人の楽しみとして旅行や宴席に出席するのは好ましく思われません。
状況にもよりますが、最低でも3ヶ月は喪中であることを意識し、プライベートでの行動に注意しましょう。
それ以外の親戚は忌明けが目安
故人から3親等以上の親戚は、四十九日の忌明けまでが喪中期間の目安です。
しかし、そもそも喪中とは故人を偲ぶ期間ですから、故人との付き合いの深さで自主的に喪中を続ける人もいます。
大切な人を亡くした悲しみは、血縁としての続柄以外に縁の深さも関係しますから、忌明けを過ぎても急がずゆっくりと心を癒していきましょう。
喪中にやってはいけないことに関する疑問

喪中にやってはいけないことの代表的な例はわかっていても、日常生活における細かな部分で疑問が出ることも多いですよね。
そこで、この章では喪中でやってはいけないことでよくある疑問点について、代表的な疑問を挙げて詳しく解説します。
喪中に結婚式をしても良い?
喪中の結婚式は、できれば慎んだ方が良いというのが一般的な考えです。
しかし、すでに忌明けをしているのであれば結婚式を挙げることも多く、必ずしも喪中だからと結婚式を中止しないケースもあります。
また、結婚式の時期によってはキャンセルできないこともあります。
喪中の期間に結婚式の予定がある場合には、双方の家族で話し合って結論を出すようにしましょう。
喪中にお宮参りや七五三をしても良い?
お宮参りや七五三は、人生の節目を祝う年中行事なので、簡単に時期をずらすことはできません。
したがって、基本的には喪中であってもお宮参りや七五三をお祝いして問題ありません。
ただし、まだ忌明けをしていない場合は神社でお参りできませんので、気になる人は必ず神社の神主にお伺いを立ててから予定を立ててください。
喪中に家を建てても良い?
喪中に家を建てるのは、忌明けをしているかしてないかによって判断が違ってきます。
例えば、忌明けをしていない場合、故人を弔うことよりも家を建てる方に集中することは、あまり良いことではありません。
すでに忌明けしており、喪中でも心の余裕があるのでしたら、家を建てる計画を進めても大丈夫です。
ただし、家を建てるにあたり行われる地鎮祭については、神主や施工会社とよく相談してから決めるようにしましょう。
喪中に引っ越しをしても良い?
喪中の行われる引越しは、引越しをする本人やその家族の考え方、引っ越しの状況によって対応が変わります。
基本的な考え方としては、喪中は故人を偲び静かに過ごす期間ですから、心が落ち着いた頃に引越しをするのが理想です。
しかし、転勤や進学にともなう引っ越しの場合は、喪中であっても延期や中止ができないことも多いですよね。
このようなケースの引っ越しの場合は、喪中であっても引越しをして問題ありません。
喪中にどうしても引越しをしなければならない時は、周囲の人とよく話し合って時期を見極めるようにしましょう。
喪中に大きな買い物をしても良い?
喪中に車や家のリフォームといった大きな買い物をするのは、平常心が保てず判断を誤りやすいことからやめた方が良いこととされています。
また、地域によっては喪中に大きな買い物をすることで金銭的な悪い噂が立ってしまい、遺族の行動を咎められることもあるため、あまりおすすめできません。
ただし、生活をする上でどうしても必要なものであれば、大きな買い物をしても問題ありません。
喪中に大きな買い物をしなければならない場合は、周囲の人にも相談して時期を見極めてからにしましょう。
喪中の生活でのマナー・注意点

喪中の過ごし方には、守らなければならないマナーや注意点があります。
では、具体的にどのようなことに気をつけるべきなのか、その内容について解説しましょう。
- 喪中と忌中は分けて考える
- 結婚式への出席はお伺いを立てる
- 故人を偲ぶ期間であることを意識する
- 住んでいる地域の慣習に気をつける
- 喪中の葉書は11月~12月初旬までに出す
マナー・注意点①:喪中と忌中は分けて考える
最初に説明したように、「喪中」と「忌中」では明確な違いがあります。
忌中は「遺族が故人の魂を弔うための期間」なので、喪中よりもやってはいけないことが多いです。
喪中もやってはいけないことがありますが、忌中に比べるとできることが多いです。
そのため、四十九日を境にして忌中と喪中で分けて考え、それぞれにやってはいけないことを確認しましょう。
マナー・注意点②:結婚式への出席はお伺いを立てる
喪中の人が結婚式へ招待されている場合は、出席する前に相手にお伺いを立ててください。
喪中であることを伝えた上で、それでも新郎新婦とその家族が望むのであれば、喪中でも結婚式へ出席して問題ありません。
ただし、結婚式へ出席しても喪中であることを忘れず、披露宴が終わったらすぐに帰宅するなど節度を持った行動を取りましょう。
マナー・注意点③:故人を偲ぶ期間であることを意識する
喪中とは、故人を偲んで自分の気持ちを見つめ、少しずつ心を癒していく期間です。
故人を亡くした悲しみは、その別れ方が突然で辛いものであるほど癒す時間が必要で、自分でも気がつかないうちに心を病んでしまう可能性があります。
喪中は、故人を偲びながら心を癒す時間であることを意識し、少しでも心に不安定さを感じたら無理をしないようにしてください。
マナー・注意点④:住んでいる地域の慣習に気をつける
住んでいる地域によっては、喪中の人が普段通りの生活をすることに難色を示されることがあります。
特に、地域のつながりが強い場所ではお互いが観察されていることも多いため、自分では普通だと思う買い物やお出かけでさえ難色を示されることも少なくありません。
物事のすべてを合わせることは難しいですが、住んでいる地域での喪中の過ごし方を意識して、わからないことは周囲に尋ねてみましょう。
マナー・注意点⑤:喪中の葉書は11月~12月初旬までに出す
喪中の人は、年賀状の代わりに喪中葉書を出しますが、送る相手が間違って年賀状を準備しないよう、早ければ11月、遅くても12月初旬までに届くよう出すことがマナーです。
送る人が多い時には早めの取り掛かり、マナー違反にならない時期に喪中葉書が届くよう手配しましょう。
まとめ

喪中にやってはいけないことには、宗教的な考えだけではなく遺族の気持ちや周囲とのつながりに配慮した心遣いが含まれます。
喪中の人はもちろんのこと、それを見守る周囲の人も喪中でやってはいけないことを確認し、お互いが穏やかに過ごせるよう心掛けましょう。
なお、喪中についてはこちらでもう少し幅広く解説しています。
「やってはいけないこと」だけではなく、もう少し喪中について深く確認しておきたい方は、目を通しておくことをおすすめします。