法事や法要を営む際にはお布施が必要になりますが、お布施袋を準備するにあたり、「どのような袋を使い、何を書けば良いのかわからない」と頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
現在では、僧侶と頻繫にお付き合いを行う機会も減り、またご自身が葬儀や法事の喪主となることも少ないため、お布施袋に関する作法がわからないのも仕方ありません。
そこで、ここではお布施袋の種類ごとの正しいマナーを説明しながら、「書き方・お金の入れ方・渡し方に関する作法」「費用相場」「包む際の注意点」などについて詳しく解説します。
お布施袋の書き方は宗教・宗派によって異なるため、いざお布施を準備する当日になって慌ててしまいがちです。
この機会にお布施に関する正しいマナーを身につけ、法事・法要を円滑に行うことができる知識を深めましょう。
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お布施を包む封筒の種類

読経を頂いた僧侶に対し感謝の気持ちを表すために差し出すお布施は、次に紹介するお布施袋に包んで渡すのがマナーです。
ここでは、お布施袋の種類を解説しながら、それぞれのお布施袋の特徴を解説します。
伝統的な奉書紙
伝統的なお布施の包み方としては、奉書紙を使用する方法が挙げられます。
この奉書紙とは「楮(こうぞ)」を原料に作られる和紙の一種です。
長い歴史の中で公文書を記載するために用いられてき用紙として、その品質の高さが証明されています。
この奉書紙を使用したお布施の包み方は、最も丁寧なお布施の包み方とされています。
そのため、僧侶への感謝の気持ちをより強く伝えたい場合には、奉書紙を使用してお布施を包むのがおすすめです。
奉書紙でお金を包む手順
奉書紙を使用してお布施を包む際には、半紙や封筒などで現金を包んで中袋を作り、その中袋を奉書紙で包みます。
奉書紙で中袋を包む手順は次のとおりです。
- 真ん中に中袋を置く:中包みの折り返しの空いた部分が左上になるように置く
- 左側を内側に折る:三等分するイメージで左側を折る
- 右側を内側に折る:三等分するイメージで右側を折る。この時点で長細い形になる
- 上側を内側に折る:上側を内側に折る
- 下側を内側に折る:下側を内側に折り、先ほど上側から折った部分にかぶせる。つまり上包みの折り返しの重なりは「下側が上」になる
先ほど解説したとおり、お布施には僧侶に対する感謝の気持ちと言う意味合いがあります。
そのため、この際の包み方は慶事の際の包み方と同じです。
確かに、お布施は忌事の中でやり取りされますが、故人を弔うための金銭ではありません。
そのため、不祝儀の際に使用される折り方は避けることがマナーです。
簡易的な白無地封筒
奉書紙を使用する以外の包み方としては、簡易的な白無地封筒を使用する包み方が一般的です。
この白無地封筒を使用する際には、郵便番号を記載する枠が記載されていない真っ白な封筒を用います。
なお、白無地封筒の中には封筒が二重になっているものもありますが、これは「不幸事が重なる」ことを想起させるため、使用することはできません。
白無地封筒を使用する際には、郵便番号枠の記載がない一重の封筒を使用すると心得ましょう。
金額が多い場合は白無地封筒の口を閉じる
正式なマナーではお布施袋として奉書紙を使用するため、封筒の口を閉じるべきかどうかというマナーはありません。
しかし、現在ではここで紹介した白無地封筒でお布施を包む方が多くなったため、このような疑問を持たれる方が多くなったことも事実です。
結論としては、お布施の金額が高額な場合は、お布施袋の口を糊付けして閉じてしまった方が良いでしょう。
お布施の金額に関しては、次の「お布施の相場費用」の中で解説しますが、お布施金額は戒名を頂く際には非常に高額となるケースがあり、この金額を口を閉じないで渡すのはあまりにも不用心です。
このような考えから、高額なお布施を白無地封筒で包む場合は、金額の過多によってお布施袋の口を糊付けして閉じるのが一般的となっています。
気軽に購入できるのし袋
奉書紙や白無地封筒などは気をつけるべきマナーはたくさんありますが、のし袋であれば気をつける点も少なく、またコンビニなどで気軽に購入することも可能です。
のし袋を使用したお布施の包み方は、格式としては奉書紙や白無地封筒を使用した包み方より劣りますが、お布施の包み方として間違いではありません。
あらかじめ表書きが記載されているのし袋も多いため、お布施のマナーに自信がない方にとっては最適なお布施袋と言えるでしょう。
お布施袋の書き方の作法

お布施袋の種類がわかれば、次はお布施袋の書き方に関する作法を押さえましょう。
お布施袋は「表面」「中袋」「裏面」で構成され、その場所ごとに記載する内容が異なります。
ここでは、この3ヶ所の書き方をそれぞれ解説します。
お布施袋の表面の書き方
お布施袋の表面には、目録としての表書きを記載しその下にご自身の氏名を記載します。
この表書きは「お布施」もしく「御布施」と記載することが一般的です。
お布施は、戒名や読経を頂いたことに対する感謝の気持ちのため対価ではありません。
そのため、「戒名料」や「読経料」といった「料」の文字を使った書き方は避けた方が良いでしょう。
ただし、お住いの地域や宗派によってはこの表書きを、「御廻向料(ごえこうりょう)」や「御礼」と記載する場合もあるため、この点に関しては宗派や地域の風習に従う必要があります。
お布施袋の中袋の書き方
お布施袋に中袋がある場合は、その中袋の表側に金額を、裏面には住所と氏名を記載します。
金額は中袋の表側の中央に旧字体の漢数字である「大字(だいじ)」用いて記載します(大字に関しては次の「お布施に関する注意点」の中で解説していますので、そちらを確認してください)。
中袋の裏面には、名前と住所を左下に縦書きで記載しますが、この住所を記載する際の番地などは大字ではなく一般的な漢数字を用います。
なお、お布施袋には必ずしも中袋が必要な訳ではないため、中袋がないからといって改めて購入する必要はありません。
お布施袋の裏面の書き方
お布施袋の裏面には、「香典金額」「氏名」「住所」を記載します。
この際の書き方は、裏面の右側に「金○○圓」と大字を用いて記載し、氏名と住所は裏面の左下に縦書きで記載します。
なお、住所を記載する際の番地は、中袋と同様に一般的な漢数字を用いましょう。
お金の入れ方に関する作法

お布施に関する作法では、お金の入れ方も重要です。
ここでは、お布施に入れる紙幣の種類や向きを解説します。
できるだけ新札を使用する
お布施として使用する紙幣は、できるだけ新札を用意するように努めましょう。
時間があるなら銀行に出向き、新札を用意することをおすすめします。
稀にお布施を忌事の中で使用するお金ということで旧札を使用する方がいますが、これは間違いです。
確かに、香典などの忌事で使用する紙幣は旧札を用いるのがマナーですが、これは不幸事を予見して新札を用意していたとの憶測を避けるためのマナーです。
これに対して、お布施はあらかじめ渡すことが決まっているため、一般常識として新札を準備します。
なお、どうしても新札を準備できない場合は、できる限り綺麗な紙幣を包めば問題はないでしょう。
お布施袋の表面に紙幣の表が来るように入れる
お布施袋へ紙幣を入れる向きには作法があります。
紙幣に描かれている肖像画がお布施袋の表側になるように入れなければなりません。
一万円札を使用する際には、福沢諭吉の肖像画が表側になるように揃えましょう。
紙幣の向きを揃える
紙幣の肖像画が表側になるように揃えたら、肖像画の人物が上に来るよう向きを揃えます。
いくら肖像画が表側でそろっていても、その上下の向きが違えばお布施として包む紙幣のマナーとしては不十分です。
お布施袋から紙幣を取り出した際に、最初に肖像画が見えるのが正しい紙幣の入れ方です。
お布施の渡し方に関する作法

お布施は僧侶と対面して渡すため、正しい作法でこの動作を行わなければ、ご自身が恥をかくばかりか、僧侶に礼を欠いてしまいます。
そのため、場合によっては寺院との関係性が悪くなる可能性もあります。
お布施の渡し方に関する作法を抑え、僧侶に対する感謝の気持ちを態度で表せる所作を身につけましょう。
お布施を渡すタイミング
葬儀費用であれば、葬儀業者に銀行振込などで支払いますが、お布施は僧侶と対面して手渡して渡すため、タイミングやマナーが重要です。
お布施を渡すタイミングは葬儀や法要の状況によって異なりますが、次の2種類のタイミングで渡すことになります。
- 葬儀・法要会場に僧侶が到着し挨拶を行うタイミングで渡す
- 葬儀・法要が終了しお礼の挨拶を行うタイミングで渡す
葬儀・法要の開始時間まで余裕あがり、ゆっくりと挨拶を行うことができれば初めにお布施を渡します。
あまり時間がない場合は、葬儀・法要後にお礼と共にお布施を渡しましょう。
お布施は直接手で渡さない
お布施を僧侶へ渡す際に気を付けるポイントには、「お布施を直接手で渡さない」というものがあります。
お布施は切手盆の上か袱紗の上に乗せて渡すのがマナーです。
お布施を渡す際の挨拶の文例
お布施を僧侶へ渡す際には、次のような挨拶を添えることで感謝の気持ちが伝わります。
葬儀・法要前の挨拶と葬儀・法要後の挨拶の文例は次のとおりです。
葬儀前の挨拶文例
この度の法要大変お世話になります
本日はどうぞよろしくお願いいたします
こちらをお納めください
葬儀後の挨拶文例
本日は故人のために、お心のこもった供養をいただき誠にありがとうございました
どうぞこちらをお納めください
お布施を渡す手順
先ほど解説したとおり、お布施は切手盆と袱紗を使った2種類の渡し方があります。
ここでは、この2種類の渡し方の手順を紹介します。
- 切手盆を自分の方向に向けておく
- お布施を自分の方向にして切手盆の上に置く
- 切手盆の向きを時計回りに90度回転する
- もう一度切手盆の向きを90度回転して、僧侶から表書きが読める向きにする
- 両手で切手盆を差し出しお礼の言葉を述べる
- 袱紗からお布施を取り出す
- 素早く袱紗を畳む(「右」「下」「上」「左」の順番で中央に袱紗の端を折り返す)
- 僧侶が表書きを読める向きでお布施を袱紗の上に置く
- 両手で袱紗ごとお布施を差し出しお礼の言葉を述べる
お布施の相場費用

お布施の相場は葬儀や法要の種類によって異なります。
葬儀・法要ごとのお布施の相場は次のとおりです。
法要の種類 | 金額相場 |
---|---|
葬儀のお布施相場 | 3万~5万円 |
四十九日法要 | 1万円~3万円 |
閉眼供養・開眼供養 | 1万円~5万円 |
初盆 | 3万円~5万円 |
百か日法要 | 3万円~5万円 |
一周忌法要 | 3万円~5万円 |
3回忌以降の年忌法要 | 1万円~3万円 |
ここで紹介したお布施の相場費用は、葬儀方法や法要の行い方などさまざまな条件で異なります。
また、お住いの地域や宗派に寺院によっても金額が異なるため、あくまでも参考としての金額と理解してください。
お布施以外に必要な費用

葬儀・法要の際にはお布施が不可欠ですが、必要なる費用はお布施だけではありません。
ここでは、お布施以外に必要となる費用としてお車代と御膳料を解説します。
お車代
葬儀や法要を葬儀会館やご自宅などで行う場合は、僧侶にその場所まで足を運んでいただく必要があるためお車代が必要です。
このお車代の費用は、5,000円から1万円が相場です。
なお、菩提寺で葬儀・法要を行う場合は僧侶の移動は必要がないためお車代も不要となります。
御膳料
法要を行った後は、お斎(おとき)と呼ばれる会食の場を持つのが一般的ですが、僧侶がこのお斎に出席しない場合は御膳料を包むのがマナーです。
この御膳料の費用は、5,000円から1万円が相場です。
なお、料亭などでお斎を行う場合には、一人当たりの飲食代金が2万円を超えるケースも少なくありません。
そのような場合であっても、御膳料の上限は1万円となります。
お布施袋に関する注意点

ここまでお布施袋についての作法を中心に解説してきました。
お布施袋に記載する内容や書き物の種類には、注意しなければならないポイントがあります。
ここでは、お布施袋に関する注意点を紹介していきましょう。
- 毛筆・筆ペンを使用する
- 墨は濃墨を使用する
- 金額は大字で記載する
- 水引は基本的には使用しない
- 「お布施」「お車代」「御膳料」は別々に包む
毛筆・筆ペンを使用する
お布施袋の内容を記載する書き物に厳密な決まりはありませんが、できる限り毛筆を使用するよう心がけましょう。
最近では、サインペン感覚で毛筆の書体がかける筆ペンも発売されています。
どうしても毛筆が苦手な方は、こちらの筆ペンの使用がお勧めです。
墨は濃墨を使用する
お悔やみ事や忌事では、香典を薄墨で書く慣習がありますが、僧侶へ渡す香典はお悔やみ事ではないため、通常の濃い墨を使用することがマナーです。
葬儀などの急な忌事では、急いで駆けつけるため墨を十分に擦ることができなかったことが由来して薄墨を使用します。
しかし、あらかじめ予定されていた葬儀や法要で僧侶へ包む香典は、しっかりと準備できていたことを示すために濃い墨が良いとされています。
金額は大字で記載する
お布施金額を記載する際には、先ほども述べたように大字を用いるのがマナーです。
大字とは漢数字の「一」「二」「三」などの代わりに用いる旧字体の漢数字で、その文字の複雑さから主に改ざんを防ぐ目的で使用します。
一般的な金額の記載方法は、大字を用いることで次のように記載されます。
- 1万円:金壱万圓
- 15万円:金壱拾伍萬圓
- 20万円:金弐拾萬圓
- 30万円:金参拾萬圓
金額の末尾に付ける「也」は不要
大字で金額を記載した最後に「也」の文字をつける方がいますが、この「也」の文字は、円よりも小さな単位が存在していた時代に、円以下の端数がないことを表すための文字のため現在では不要です。
水引は基本的には使用しない
お布施袋には、基本的には水引を使用する必要ありません。
この水引は故人を供養する意味合いで使用され、地域による風習や金額によって「黒白」「黄白」「双銀」などさまざまな色が使い分けられます。
そのため、僧侶に対するお礼として包むお布施は故人を供養するための金銭ではないことから、水引を使用する必要はありません。
ただし、不祝儀袋をお布施袋として使用する際には水引をかける必要が出てきます。
その際の水引には、「今回だけで済むように」という意味を込めむずび切りの水引を用い、色は「黒白」もしくは「黄白」を用いることが一般的です。
「お布施」「お車代」「御膳料」は別々に包む
「お布施」「お車代」「御膳料」は、それぞれ別々のお布施袋に用意して僧侶に渡した方が誤解を与えずに丁寧です。
僧侶へ渡す際には、お布施を一番上にしてその下にお車代と御膳料を重ねて、3つのお布施袋を同時に渡すのがマナーとされています。
宗教・宗派ごとのお布施袋の違い

最後に、宗教や宗派ごとに異なる表書きの書き方を詳しく紹介します。
異なる宗教の葬儀に参列する際には、ちょっとした間違いから相手に不快感を与えてしまうことも少なくありません。
ご自身とは異なる宗教の葬儀でもいつもどおりに対応できるよう、宗教や宗派ごとの表書きについての理解を深めましょう。
浄土真宗のお布施袋
仏教の一派である浄土真宗では、阿弥陀如来により故人は極楽浄土へ導かれ仏になると考えられているため、お布施も阿弥陀如来への感謝の気持ちと捉えます。
このような宗教上の教義から浄土真宗のお布施の表書きは、「御礼」「御回向料」と記載することはなく、「お布施」「御布施」が一般的な表書きとなります。
神道のお布施袋
神道のお布施袋では次の表書きが用いられます。
- 御玉串料
- 御祈祷料
- 御祭祀料
- 御祭祀料
- 御初穂料
これらどの表書きを記載しても、マナー違反とはなりません。
なお、神道では葬儀の翌日に翌日際を行いその後に十日祭、二十日祭と供養を行います。
仏教における四十九日は神道では五十日祭となり、この法要は仏教と同じく忌明けの法要となるため、他の法要と比べて多くの参列者を招いて行われます。
キリスト教のお布施袋
キリスト教における法要は宗派によっても異なり、2大宗派であるカトリックとプロテスタントでは次のように法要を行います。
- カトリック:故人が亡くなった日から3日目、7日目、30日目に「追悼ミサ」と呼ばれる法要を行う
- プロテスタント:故人が亡くなった日の翌日と、7日目、20日目に「記念集会」と呼ばれる法要を行う
なお、ここで紹介した法要の日付には厳密な決まりがあるわけではありません。
そのため、日本におけるキリスト教は、仏教に習って四十九日の前後に追悼ミサや記念集会を行うこともあります。
この際のお布施の表書きも宗派により異なり次のようになります。
- カトリックの表書き:謝礼
- プロテスタントの表書き:記念献金
無宗教のお布施袋
無宗教であれば、何らかの宗教の教義に従う必要はないため、法要に関する決まりはありません。
しかし、先ほど紹介したキリスト教と同様にたとえ無宗教であっても、日本古来の慣習に従って故人が亡くなってから四十九日目に追善供養を行うケースは少なくありません。
この際の供養は、無宗教であるため僧侶から読経を頂くことはありませんし、法話を聞くこともないためお布施は不要です。
まとめ

お布施袋の封筒に関するマナーは、その袋の種類にとどまらず金額の書き方からお金の入れ方まで多岐に渡ります。
そのため、始めてお布施を用意する方にとっては少しハードルが高いと感じてしまうかもしれません。
しかし、一つひとつのマナーを順序立てて行えば、マナーに沿ったお布施を用意することはそれほど難しくないはずです。
お布施は僧侶に対する感謝の気持ちを伝えるための手段であり、また一族の安泰を願う当代の使命でもあります。
これまで良い関係を続けてきた寺院との関係が継続するよう、正式な作法にのっとったお布施を包むことは、親族の代表者の務める人物の責任と言えるでしょう。