法事・法要の際には、僧侶からの読経に感謝の気持ちを表すためお布施を包むことがマナーです。
しかし、最近は僧侶との関係性も希薄になり、このお布施の渡し方について正式な作法で渡せる方は少なくなっています。
そこでここでは、このお布施の正式な渡し方を解説しながら「袱紗(ふくさ)や切手盆の使い方」「お布施相場や不祝儀袋へのお金入れ方」などを解説します。
目次
お布施の渡し方

僧侶にお経を読んでいただくお礼として「お布施」と呼ばれる金銭を渡しますが、この際の渡し方には古くからの決まりごとがあり、その作法に従ってお布施を渡すことで僧侶に対する感謝の気持ちを表すことができます。
また、作法以外にもお布施を渡すタイミングや、僧侶へかける感謝の言葉なども重要です。
お布施を渡すのが初めての方は多少緊張するかもしれませんが、親族を代表して僧侶と対峙(たいじ)していることを忘れずに、正しい作法と感謝の気持ちをもってお布施を渡すことを心がけてください。
お布施とは
お布施は「お経をあげて頂いた読経料」や、法事・法要を通してお世話になった「僧侶への謝礼」と捉えられています。
しかし、ここで重要なことは、お布施は「謝礼」であっても労働に対する「料金や対価」ではないという点です。
このような考えから、お布施は僧侶の経済的な行為ではなく「寺院への寄付金」という位置付けです。
この点についての認識が間違っていると、僧侶や寺院とのトラブルに発展する可能性も考えられるでしょう。
仏事を行う際には必ずお布施とは何であるのかを思い出し、感謝の気持ちをもって僧侶へ対応するよう心がけてください。
お布施を渡すタイミング

お布施を渡すにはタイミングが重要です。
お布施を渡すタイミングは、式の前と式の後の2種類がありますが、どちらにしても時間的な余裕をもって渡すことが大切です。
くれぐれもご自身の都合だけを優先し、雑多な雰囲気の中で片手間で渡してはなりません。
そのような渡し方をされれば、いくら仏門に帰依した僧侶といえども、気分を悪くして今後のお付き合いに影響が出る可能性もあります。
そこでここでは、お布施を渡す最適なタイミングを「法事・法要で渡すタイミング」と「葬儀で渡すタイミング」に分けて解説しています。
法事・法要でお布施を渡す場合
法事・法要でお布施を渡すには、式が始まる前に僧侶に挨拶を兼ねて渡すと良いでしょう。
ただし、法事・法要の直前は慌ただしく僧侶や喪主もゆっくりしている時間はありません。
このような場合は忙しい時間を避け、式が終わった時点でお経をいただいたお礼をしながらお布施を渡します。
なお、合同で法要を行う場合は寺院入口に受付が用意されている場合があり、この際には受付にお布施を渡すことが一般的です。
葬儀でお布施を渡す場合
葬儀を行う際の僧侶は、葬儀会場に到着した時点で葬儀社によって控室に案内され、その場で一時待機します。
この時間を利用して、僧侶への挨拶を兼ねてお布施を渡します。
しかし、参列者の対応などで時間が取れずに短時間の挨拶しかできない場合は、式終了時にお礼の挨拶をかねてお布施を渡す方が良いでしょう。
なお、葬儀を菩提寺で行う場合は、僧侶への対応はすべて葬儀の喪主が行う場合があります。
このような場合は、喪主は僧侶への対応に専念することで十分な時間が取れ、式が開始される前に僧侶への挨拶と打合せををしながらお布施を渡すことができます。
お布施を渡す際のマナー

ここからは、お布施の渡し方で気をつけなければならないマナーについて解説します。
特に、袱紗や切手盆などは、冠婚葬祭以外では使う場面はありません。
この機会にマナーを覚え、いざというときに供えましょう。
- 渡す際には挨拶の言葉を添える
- お布施はお盆に乗せる
- お布施は袱紗(ふくさ)に包む
マナー①:渡す際には挨拶の言葉を添える
お布施を渡す際は、僧侶への挨拶の言葉を添えることで感謝の気持ちが一層強く伝わります。
法要が始まる前に渡す際には、次のような言葉とともに渡します。
この度の法要大変お世話になります
どうぞよろしくお願いいたします
こちらをお納めください
法要が始まる前に時間がとれない場合は、法要終了後もしくは会食終了後にお布施を渡します。
この際には、次のような言葉とともにお布施を渡します。
本日はお心のこもったおつとめをいただき誠にありがとうございました
こちらどうぞお納めください
お布施を渡す際の言葉に特別な表現は必要ありません。
飾らない言葉と表現でも感謝の気持ちは十分に伝わるものです。
マナー②:お布施はお盆に乗せる
僧侶へ直接手渡しでお布施を渡すはマナー違反です。
正しいお布施の渡し方は、お盆(通常のお盆よりも一回り小さい切手盆が最適)に乗せた状態で僧侶へ渡す方法です。
この際には、お布施の表書きの向きを僧侶の方から見やすいよう方向にしてお盆に乗せます。
なお、お盆に載せて渡すのはお布施だけではありません。
御車代や御膳料を渡す必要があるときも、お布施とともにお盆にのせて僧侶へ渡しましょう。
自宅にお盆が無い時の対処法
ご自宅にお盆がない、もしくは切手盆を準備できなかった場合は、袱紗に乗せた状態で渡しても問題はありません。
この際にも僧侶から見て表書きが読める向きにして、封筒を袱紗に乗せましょう。
なお、御車代や御膳料をお布施とともに渡す場合も、袱紗に乗せた状態で渡します。
マナー③:お布施は袱紗(ふくさ)に包む
僧侶へ渡すお布施は、袱紗に包んで持ち運ぶことがマナーです。
この袱紗とは新物を進呈するために使われる包みとして、冠婚葬祭のお金を包むために使われます。
僧侶へお布施を渡す際には、この袱紗からお布施が入った封筒を取出し、お盆において渡すのが正式なマナーです。
ただし、お盆が無い場合ではこの袱紗を四角に折って、その上にお布施が入った封筒をおいて僧侶へ渡しても問題はありません。
この際は、お盆を使う場合と同じくお布施の表書きが僧侶から見やすいように置くのがマナーです。
お布施を袱紗に包む手順
ここでは、もっとも一般的な「爪付き袱紗」を使ったお布施の包み方を解説します。
お布施を袱紗に包む手順は次のとおりです。
- 袱紗がひし形になるように広げる
- やや右側に表書を表側にして不祝儀袋をおく
- 「右」「下」「上」「左」の順番に袱紗の角を中央へ向けて折り曲げていく
この手順通りに行えば、忌事の基本となる左開きで袱紗を開くことができます。
お布施を包む袱紗の色
袱紗はその色によって使用される場面が異なります。
お布施を包むことができる袱紗の色は次のとおりです。
- うぐいす色
- 紺色
- 深緑色
- 灰緑色
- 灰青
- 緑色
- 紫色
- グレー
ちなみに、この中で紫色だけは慶事にも兼用できる色となっています。
お布施の渡し方の作法

ここでは、袱紗・切手盆を使ったお布施の正式な渡し方の作法や手順について解説します。
袱紗を使ったお布施の渡し方の作法
袱紗を使ったお布施の渡し方の作法と手順は次のとおりです。
- 袱紗からお布施を取り出す:僧侶へお布施を渡す直前にお布施を取り出す
- 素早く袱紗をたたむ:袱紗を広げ「右」「下]「上」「左」の順番に端を中央に向け折り返し長方形を作る
- 袱紗の上にお布施をおく:お布施の表書きが僧侶に読める向きで袱紗の上にお布施をおく
- 両手で袱紗ごとお布施を差し出す:お礼の言葉を述べながら両手で袱紗ごとお布施を差し出す
切手盆を使ったお布施の渡し方の作法
切手盆を使ったお布施の渡し方の作法と手順は次のとおりです。
- 切手盆を自分の方へ向けておく:家紋などがある場合はその家紋を目印に方向を定める
- 切手盆の上にお布施をおく:お布施は自分が表書きを読める向きにおく
- 切手盆の上下を持ち90度回転する:切手盆の上下を持ち時計回りに90度回す
- さらに90度回転する:手を持ち換えてさらに90度回転させ僧侶から見て表書きが読める向きにする
- 両手で切手盆ごとお布施を差し出す:お礼の言葉を述べながら両手で切手盆ごとお布施を差し出す
お布施のお金の入れ方の注意点

お布施のマナーは、渡し方だけではなく包み方も重要です。
ここでは、お布施の包み方について「お金を入れる向き」と「使用する紙幣」について解説します。
向きを揃えて入れる
お布施を包む際には、お布施袋にに入れるお札の向きは重要です。
お札は封筒の表側にお札の肖像画が印刷された面がくるように揃え、さらにその肖像画が上側に来るように入れましょう。
このお札の入れ方は、慶事でお金を包むやり方と同じです。
お布施は遺族から寺院へ渡すため、弔意を示すものではありません。
そのため、葬儀の場であっても慶事と同じお金の入れ方をするのです。
新札を使用する
お布施として用意するお札は新札を用意します。
香典として用意するお札は、不幸ごとを予想していたととらえられるため旧札を使用しますが、お布施のお札にこのような配慮は不要です。
むしろ、古くボロボロのお札は僧侶に対して失礼に当たると考えましょう。
【法要時期別】お布施の金額相場

お布施に関する疑問の中でも、特にお布施金額については多くの方が疑問に思っているのではないでしょうか?
ここからはそのお布施金額について、四十九日法要までのお布施と、一周忌法要以降のお布施についてそれぞれ解説します。
初七日法要から四十九日法要までのお布施相場
故人が亡くなってから7日目に行う初七日法要から、四十九日法要までのお布施相場は3万円から5万円です。
なお、初七日法要と四十九日法要では同じ額のお布施を包むのが一般的です。
一周忌法要以降のお布施相場
故人が亡くなってから1年目に行われる一周忌法要から定期的に年忌法要が行われますが、その際のお布施相場は次のようになります。
- 一周忌法要:3万円~5万円
- 三周忌法要以降:1万円~5万円
なお、通常の年忌法要は三十三回忌をもって最後となります。
まとめ

お布施とは、葬儀や法要をつとめていただいた僧侶に対する感謝の気持ちを表すためのものなので、昔から伝わる正式な作法にのっとって渡すことが重要です。
落ち着いた状況の中で僧侶への感謝の言葉を伝え、今後につながる良縁を寺院と築くよう努力するのは、親族を代表して僧侶と対峙する者のつとめであることを忘れてはなりません。