相続は放棄することもできる?単純承認・限定承認・相続放棄を解説!

相続放棄
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相続では必ずしも「全ての財産を相続しなければならない」という訳ではありません。本項では、相続財産の種類、とその相続方法についてまとめました。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.相続する相続財産は3種類

相続によって相続人に引き継がれることになる財産(遺産と言ってもよい)を相続財産と言います。遺産と言うと、物などの形ある財産というイメージかもしれませんが、かならずしもそれだけには限りません。

例えば、被相続人が持っていた「特定の地位」や「権利」なども相続財産に含まれます。では、相続財産というものは、どんなものなのでしょうか?大きく分けると3種類になります。

相続財産には、

  1. 積極財産(プラスの財産のこと)
  2. 消極財産(マイナスの財産のこと)
  3. 相続財産には属さない財産

があります。

それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

積極財産

積極財産とは、相続人にとってプラスになる財産のことです。例えば下記のようなものが挙げられます。

● 不動産(土地、建物など)
● 動産、貴金属類(自動車、宝石、書画、家財道具など)
● 現金、預貯金など(売掛金、貸付金、家賃など)
● 権利(電話加入権、ゴルフ会員権など)

消極財産

消極財産とは、相続人にとってマイナスになる財産のことです。例えば下記のようなものが挙げられます。

● 債務(借金のこと)
● 買掛金
● ローン債務
● 未払い金(家賃、医療費、光熱費などの未払金)

相続財産には属さない財産

相続財産には属さない財産とは、本来は被相続人の財産ではないが、被相続人が亡くなったことで相続人のものになった財産のことで、みなし相続財産といいます。例えば下記のようなものが挙げられます。

● 死亡保険金
● 死亡退職金

2.単純承認とは

相続する財産には3種類あるということがわかりました。冒頭で説明した通り、相続財産は「必ずしも全ての財産を相続しなければならない」ということではありません。

ではどのような方法があるのでしょうか。それぞれ見ていきます。

 

単純承認とは、民法の相続法上の一つで、被相続人の一切の権利・義務(プラスの財産もマイナスの財産も)を無条件で継承、相続することです。これは、一番簡単で、一般的な相続方法と言われています。

気を付けるべきこと

1.マイナスの相続財産の存在

単純承認は、プラスの相続財産も、マイナスの相続財産も、すべてまとめて相続する方法ですから、被相続人がプラスの財産だけを残しているなら、問題はありません。

しかし、被相続人にマイナスの財産(例えば、借金)があれば、相続人は借金も引き継ぐことになり、「債権者から取り立てらる」といったような事態が起こる可能性があるため要注意です。

2. 法定単純承認

上記のようにマイナスの財産が存在する場合は、限定承認(3章で説明)または相続放棄(4章で説明)を取るという選択肢ができます。

しかし、ある一定の条件において「相続人が被相続人の権利義務を何らの限定なく包括的に承継すること」が適用される場合があるため注意が必要です。

これを法定単純承認と呼び、法定単純承認となると、相続放棄や限定承認ができなくなります。

以下の条件において法定単純承認となります。

① 相続財産の処分行為

相続人が被相続人の財産の全部、又は一部を処分したとき。財産を処分すると言う事は、相続財産を自分のものにしようとしていると判断されてしまい、相続放棄や限定承認を選択することができなくなります。

② 熟慮期間の経過

相続方法(単純承認、限定承認、相続放棄)について、基本的に相続人が何もしなければ「単純承認」として扱われます。相続方法について考えることができる、ある一定の期間を熟慮期間と言いますが、熟慮期間は3か月以内とされており、この期間内に限定承認や、相続放棄の手続きを行わない場合、法定単純承認となります。

③ 背信行為

相続財産の隠匿、消費、相続財産目録への悪意の不記載などの背信行為があった場合。基本的に相続放棄や限定承認は「相続人の権利保護」という観点で作られた制度ですが上記のような行為を行う者まで保護する必要はないという考えのもと、上記行為を行なった場合は、法定単純承認となります。

3.限定承認とは

限定承認というのも、相続方法の一つで、被相続人のプラスの相続財産の範囲内でマイナスの相続財産も引き継ぐ方法です。

以下のような場合、限定承認を選択することをお勧めします。

● 財産を相続したいが、後から借金を請求されるかもしれないと不安
● 財産を合計すると、プラスよりマイナスの方が多くなる可能性がある

つまり、被相続人のマイナスの財産を相続人が背負うことなく、被相続人のプラス財産の範囲からだけで行えますから、相続財産を越える借金は背負わなくてすみます。この点が、限定承認のメリットと言えます。

◆ ケーススタディ

相続財産が1000万円、相続債務(借金)が5000万円の場合、限定承認を選択すると、1000万円の財産を相続すると同時に、1000万円の債務も相続します。結果としてプラスマイナス0で、手元には残りませんが、債権者に少しでも返すことができます。

一方、限定承認の注意点も考えておく必要があります。限定承認を選択する場合、熟慮期間中(3か月以内)に、家庭裁判所にその旨を届け出、裁判所に認めてもらう必要があります。また、財産を確認してもらうのに、煩雑な手間と時間が必要になります。

加えて、限定承認の申し出をする場合、共同相続人全員で手続きをしなければなりません。相続人の中の一人でも、限定承認に反対なら、単純承認か相続放棄しか選択できません。

4.相続放棄とは

相続放棄とは、一切の遺産相続をせずに、すべてを放棄してしまうことです。相続放棄のメリットは、一言で言い表すなら、「負債を相続せずに済む」ということです。

一例をあげれば、被相続人がサラ金で多額の借金を抱えていたり、誰かの連帯保証人になっていたりする場合、そのまま相続すれば、相続人がマイナスの財産を背負うことになります。

また、煩雑な遺産分割手続きをする必要がなくなります。この手続きは思いのほか、煩雑で時間がかかります。途中、相続人同士でトラブルになる場合もあります。そうなれば、ますます時間がかかります。これらの問題を避けることができます。

では、相続放棄のデメリットとは何でしょう?相続放棄をするならば、プラスの相続財産も相続できなくなります。

また、相続放棄をすると、先祖伝来の不動産などの資産が失われてしまうことです。自分しか相続人がいない場合、全員が相続放棄をした場合、それらの資産は相続財産管理人が精算して売り払ってしまいます。この点も考慮する必要があります。

そして、限定承認同様、熟慮期間の3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出しなければなりません。

まとめ

相続財産には3種類あること、相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3つの方法があることをご理解いただけたでしょうか?

大切な方を亡くした後のバタバタとしている間にも、時間はどんどん経っていきます。限定承認、相続放棄の場合、3か月の熟慮期間内の手続きが必要であるということを忘れないでくださいね。

方法によっては、素人だけで手続きを行うことが難しい場合もあります。そんな時は弁護士など専門家に依頼するのも一つの方法であるということを覚えておくのがいいかもしれません。

いずれにせよ、いざというときのために事前に理解し、心準備をしておくことは大切です。

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